学生と共に成長できた一年

レイク・オスウィーゴ・ハイ・スクール
レイクリッジ・ハイ・スクール
大石 日奈

人気沸騰中の町、ポートランド!

オレゴン州は、北米西海岸に位置しており、ワシントン州とカリフォルニア州の間にあります。州の面積は日本の7割程度、人口は約380万人です。夏以外はほとんど雨、という降水量が多い州ですが、そのおかげで緑に囲まれた自然がたいへん美しい州です。州最大の都市は、今日本でも人気を集めているポートランドです。ポートランドは全米一環境にやさしい都市と言われていて、ファーマーズマーケットやオーガニックフードのレストランが並び、自転車で移動する人たちでいつも賑わっています。また、ポートランドは個性的な人が住みやすい都市としても有名で、「Keep Portland Weird」(ポートランドをヘンテコにし続けよう!)というスローガンのもと、ユニークで面白いアーティストが集まったり、風変わりで楽しいイベントが多く開催されたりしています。
オレゴン州にはATJO(Association of Teachers of Japanese in Oregon)という団体があり、同じ地域で教えている日本語教師で定期的に集まって、意見交換をしたり、勉強会を開いています。日本語教育機関も、小学生対象の日本語イマージョンスクール、公立高校、州立大学など様々です。日本語学習者対象のスピーチコンテストや日本文化を紹介するイベントも盛んで、今年からは日本についてのトリビアを競うジャパンボウル大会やJLPT(日本語能力試験)もポートランドで開催されることになりました。

「もったいない」って何?

レイクオスエゴ高校とレイクリッジ高校という2つの公立高校でアシスタントティーチャー(以下、AT)をしています。両校は湖の両サイドにあって、勉学の面でもスポーツの面でも良きライバルとして競い合っています。学生数は両校とも約1100人、教師数は50人程度です。学校があるレイクオスエゴという町は大変治安がよく、裕福な家庭が多い地域です。
両校とも日本語クラスは4レベルに分かれており、レベル3と4は混合クラスです。各クラスの学生は10人から30人ほどで、両校合わせて約120人が日本語を履修しています。教材は主にAdventure in Japaneseを使っていますが、レベル3と4のクラスは教科書は使わず、日本文化の学習を通して、それに関係した語彙や文法、フレーズなどを教えています。
最近このレベル3・4のクラスで行ったレッスンでは、「もったいない」をテーマに取り上げました。アメリカにもある3R(リデュース、リユース、リサイクル)のコンセプトをベースに、日本の「もったいない」とは何か、どんな文化的背景や考え方があるのかをクラスで考えながら学びました。最後のプロジェクトとして、学生一人一人が「もったいない」をテーマにした絵本を作り、クラスの前で発表する活動をしました。全員が個性あふれる素晴らしい絵本を作り、クラスの前で自信いっぱいに読み聞かせをする姿を見て、本当に感動しました。何よりも学生が心からレッスンを楽しんでくれたことに大きな達成感を感じました。

ジャパンボウル大会、初出場!

ジャパンボウルとは1992年からワシントンDC日米協会が行っている日本語や日本文化に関する知識を競う大会です。今年初めてポートランドでジャパンボウル北西部大会が行われ、私たちの高校からも10名の学生が参加しました。私はその大会の準備を担当し、放課後に学生と一緒に日本語や日本文化、社会、歴史、地理など様々なことを学んで本番に備えました。初めてのジャパンボウルということで、何から準備したらいいか、どう勉強したらいいか手探り状態でしたが、学生たちが懸命に学ぶ姿を見て、私も教材作成や学生のサポートにさらに気合いを入れて臨みました。北西部大会では、何と私たちの学校から参加した4チームのうち、2チームが3位入賞、そして1チームが1位優勝を果たし、初めて全米大会に出場することができました。この経験で一番嬉しかったことは、学生が心から放課後の準備の時間を楽しみにして積極的に参加してくれたことです。週1回から週2回に変更して集まりたい、とモチベーションを上げてくれたり、風邪で学校のクラスを休んでも放課後には参加してくれた学生もいました。そして本番では勝敗に関わらず全員が達成感を持てたこと、そして来年も参加すると意気込んで話してくれたことに、教師として大きなやりがいを感じました。来年も全米大会出場を目標に、学生と楽しみながら臨みたいです。

ATとしてのやりがいとは?

1年目はATとして多くの素晴らしい経験をすることができました。毎日学生と顔を合わせ、少しずつ日本語で自分を表現できるようになっていく姿や、さらに日本に興味を持ってくれる学生の姿を身近に見られることが、このプログラムとしての醍醐味だと感じます。特に私を心から信頼し、励まし、サポートしてくれるリードティーチャーと巡り合えたことは一生の宝物です。
2年目の目標は、「日本文化」を通して学生のモチベーションを上げることです。ATだからこそ、リアルな日本を紹介できると思います。学生が「日本って面白い!」「もっと知りたい!」「日本に行ってみたい!」と興味を持ってくれるように、伝統的なものから現代の文化まで幅広く日本文化を紹介して学生を惹きつけていきたいです。その際は、日本のテレビ番組やコマーシャル、流行の歌やドラマなど、できるだけ本当の日本を体験できる生教材を取り入れていこうと思います。そしてどんな教室活動も、成績のためではなく、実生活でどう役立つか、どう使えるかを学生が自然と考えられるような、意味のあるもの、現実味のあるものを常に心掛けたいです。2年目もさらに日本語教育の発展に貢献していけるよう、頑張ります。

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