2005年度上半期 調査研究プロジェクト
オンラインコミュニティの活性化を推進するプロジェクト(報告書)

2005年度上半期 調査研究プロジェクト オンラインコミュニティの活性化を推進するプロジェクト 概要
計画者 中村雅子
プロジェクト参加者 柴原智代、島田徳子、長坂水晶、久保田美子、高野千恵子
外部協力者 なし
日程 開始2005年5月~終了2006年3月

目的と概要

日本語国際センターが運営する日本語教師向けのオンラインコミュニティは、現在「オンライン同窓会」と「みんなの教材サイト」の二つがあるが、それぞれユーザ同士の情報発信・交換があまり活発ではないという課題を抱えている。特に、日本語国際センターが中心的に支援しているノン ネイティブ教師(日本語を母語としない教師)からの情報発信・交換はネイティブ教師よりさらに少なく、これら事業を実施する上での問題点と指摘されよう。

本プロジェクトは、ノンネイティブの日本語教師が情報発信・交換をしやすいコミュニティを実現させることを目的に、1) 「オンライン同窓会」「みんなの教材サイト」の利用実態の分析、2)コミュニティ活性化のための方策検討、3) 試験的コミュニティの形成、を行い、「オンライン同窓会」「みんなの教材サイト」のコミュニティ機能の改訂計画を立案する。


成果の概要

1) 「オンライン同窓会」「みんなの教材サイト」の平成17年度の利用実態の分析

オンライン同窓会は投稿数も新規登録者も少ない。コンテンツがないため、再来訪が見込めないことが低利用の原因と見られる。みんなの教材サイトは登録者、閲覧数ともに多いがユーザからのアイディア投稿は8件と少ない。問い合わせは多く1日10件程度あり、日本語教育に関する質問は全体の約4%。日本語教育に関する問い合わせをするユーザの多くは経験の浅い教師、日本語教育を専門に学んでいない教師と見られ、具体的な教え方や教材に関する質問が多い。一方で、アイディア投稿をするユーザはある程度経験を積んだ教師と見られるが、誰が見ているかわからない場への投稿は、彼らにとって評価を受ける場としてよりも貢献する場としての意味合いが強いように思われる。発信しやすい内容は質問や相談であるが、現在、質問や相談は個別対応となっているために非効率的でしかもユーザ同士のコミュニケーションを活性化させる方向に向いていない。海外からの質問が多いことからも、この部分を公にすることで、コミュニティの活性に結びつくのではないかと考える。

2) コミュニティ活性化のための方策検討

コミュニティの活性の前提として、そのサイト自体が信頼され訪問したくなる場であることが必要である。そのためには、情報の量、質、鮮度が確保されていること、情報が探しやすいこと、きめ細かい対応、安全で管理が行き届いていることが不可欠である。海外の日本語教師が必要としている情報の多くは、最新の日本語教育情報、研修の詳細の情報など、実は日本語国際センターホームページ上にあるべきものである事が多いことがわかった。しかし、実際には不十分で、見つけにくい構造となっている。第一段階として、日本語国際センターHPで提供される情報を整理し、閲覧者が見つけやすい構造に再構築することが求められる。次に、「オンライン同窓会」、「みんなの教材サイト」では、日本語国際センターHPで提供されない情報を、相互に補完しつつ限定ユーザに対して発信するような役割を明確にする。ユーザからの発信を促す方策は4)の提言にまとめた。

3) 試験的コミュニティの形成

研修のフォローアップとして形成することを試みたが、研修のプログラムや他の業務と調整がつかず、実現しなかった。

4) 提言

  1. (1) 日本語国際センターHPの情報を再整理し、閲覧者に必要な情報が容易に見つけられる構造にする。日本語国際センターの事業、特に研修事業に関する情報提供を充実させる。日本語教育最新情報として、図書館の蔵書・サービス情報や「日本語教育通信」等の情報を有効に活用する。また、閲覧者の動向や求めている情報に対応できるよう、日本語国際センターの顔としてのHPを管理運営する体制を再構築する。
  2. (2) 「オンライン同窓会」では、現行の掲示板スタイルを改め、「センター便り」として、職員や専任講師からセンターの今がわかる親しみのあるメッセージを定期的に発信する。メールマガジンにするのも一案。「オンライン同窓会」のページには、研修修了者からの「お返事」や近況報告、情報提供などを掲載する。研修修了生からの発信が平均的に多いことが良いのではなく、「オンライン同窓会」のページの定期利用者を増やし、センターとのつながりを確保することのほうが重要であろう。
  3. (3) みんなの教材サイトでは、「みんなのアイディア」のページを改修し、非掲示板方式の相談コーナーを設ける。教材制作に限らず、日本語教育関連のことについて、意見交換できる場を設け、ユーザ間の情報交換の場を作る。また、投稿機能は、従来のように「顔の見える人」に呼びかけをすると同時に、研修やワークショップのフォローアップとして利用することを奨励する。また、全体的に、使用する日本語のレベルが難しいことが指摘される。表示される文字のサイズをユーザが選べるようにしたり、漢字を減らすなどの工夫の余地が残されている。