平成24年度 海外日本語教師日系人研修
児玉純男さん(ベネズエラ)
日本で過ごした1分1秒は、個人的にそして学習という意味でもとても有意義で、一言ではとても言い表すことが出来ません。今回の研修は、人生の中で忘れることの出来ない思い出の一つになることは間違いありません。思い出も数多く作りました。これらをバネにこれからも今まで以上に頑張って参りますので、ご参加されている皆様も含めてエールを送り続けて下さい。
各日本語教師の皆様方、帰国後も課題が山積しているかと思いますが、滞在中に知り合ったすばらしい仲間達を思い出しながらそれらを乗り越える気持ちで頑張って下さい。その仲間達とも、時には言い合いになったかも知れません、喧嘩をしたかも知れません、恋愛をしたかも知れません、お互い愚痴をたたいたかも知れません。しかし、今となっては思い出や笑い話として心に残る筈です。
この2か月の間に習得された事を忘れてしまっては日本へ来た意味がありません。各自自国で日本文化や日本語を愛する人達に得た知識、技術や経験を伝達すべき “架け橋” となる事がお世話になった方々へのせめてもの恩返しであると確信します。
「我以外皆師」 という大好きなことわざがあります。私にとって皆さんは恩師であり、そこから得たものを手土産の一つとして持って行きます。どうでしょう皆さん、この手土産には重量制限はありません、どうぞお持ち帰り下さい。
最後になりますが、これは “さよなら” ではなく “また世界のどこかでお会いましょう” と言う思いを込めてスピーチとさせて頂きます。先生方そして皆さん、本当にありがとうございました!!!
遠藤利江さん(ブラジル)
二ヶ月という短い期間でしたが、多くの方にお世話になりありがとうございました。
私は今回が二度目の研修参加ということで、八年ぶりに訪れた日本に驚くことがたくさんありました。
特にプロジェクトワークでも調べたカタカナ語が、非常に多く使われていることには驚きました。レストランのメニュー、雑誌、広告など、カタカナ語の入っていないものはありません。漢字よりも簡単なカタカナは私たちにとっても読みやすいですが、反対にあまりに多く使われているために意味が分からないときも多いです。それは、日本語教授法でもおなじことで、年配の先生方の中には、使われている用語や新しい概念のために教師研修の講義が分からないと言っている方もいます。ですので、そういった知識を身につけるためにも研修に定期的に参加することは大切だと思います。
あわせて今回の研修でいただいた指導書はとても分かりやすく素晴らしかったと思います。先生方の専門的なご指導にも感激しました。模擬授業では一人一人授業を行って一人一人が日本語教師として一歩前に進んだと思います。
また、学校や財団法人訪問で得たこともたくさんありました。日本の小中学校や外国人が通う学校の現状を知ることができ、これからの指導に生かせるのではないかと思いました。
中南米の初めて会った先生方とも、意見交換ができ、貴重な情報を大いに得ることができました。2か月お互いに協力し合った毎日は、決して忘れられない思い出になると思います。
ほかにも色々な経験をさせていただきました。書道の時には字の下手な私がほめられて、皆さんの前で先生に名前を書いていただき、大変嬉しく以前より習字が好きになりました。
それによって生徒を指導する時にほめることの大切さが分かりました。
研修中日本の伝統的な歌舞伎や、相撲も見ることができ、特に国技館でブラジルの力士の応援ができたのは最高でした。負けてはしまいましたが、言葉に表せない喜びでした。
帰国後もここで立てた目標が達成できるように、先生の言葉を思い出し、あきらめず、所属機関や、地区の研修会などで学んだ成果を共有しそれが実現できるよう、日々の授業を改善していくつもりです。
地球の反対側に移民した祖父母の教え、教育する大切さを忘れず、日系人として誇りをもって頑張っていきたいと思います。
最後に今後もこの様な研修が継続されますことを心から願っております。皆様本当にありがとうございました。
西澤マルガリータさん(アルゼンチン)
「ほっ。」温かい味噌汁を一口飲んで溜息がでました。気が付くと隣に座っていた年配の方も同じことをしていました。「お味噌汁は落ち着きますねぇ。」と笑顔で声をかけられました。そうです。飛行機で国を出て12時間以上も経つと味噌汁で気持ちが落ち着く私は日本人の血が流れている日系人だからなのだと思います。声をかけられたその人は福島出身の方で、東北大震災のつらい出来事をいろいろ話してくださいました。その方と話しているうちに自分はもう既に研修が始まったのだと思い始めました。日本は大震災の問題や他にも色々な問題を抱えているにもかかわらず私たちを日本語教師の研修生として温かく受け入れてくださいました。それでその方に感謝を述べられずにはいられなくなってしまいました。ありがとうございます。おかげさまで私たちは研修を受けられることができます。
1月16日の北浦和は14日に降った雪があちらこちらに積もっていました。あまり雪が降らない中南米から来た私たちは、もの珍しそうにはしゃいで写真を撮ったりしました。が、本格的に勉強にも取り組みはじめました。どのテーマも「何ができるようになるか」を踏まえた授業を考えることを学びました。初めて触れた言葉がたくさん出てきました。JFスタンダード、JFスタンダードの木、Can−Do、受容、産出、ポートフォリオ、スキーマーの活性化、オーセンティティシー、・・・・。どれもコースデザインを立てる時欠かせない重要な言葉です。でもやはり学習者の立場から考えることが最も大切なことだと、この2か月間の研修を通して以前より強く思うようになりました。そうすれば何ができるようになりたいかということが見えるからです。つまりCan−Doです。先生のお言葉のように、「これを教えなければいけないという呪縛からある程度、逃れることができると学習者も教師も楽しくなれる」と私も思います。
又、講義でお聞きしましたように、現代の日本の事情は多文化共生に基づいた日本語教育が求められています。実際に研修旅行で学校や財団を見学して実感することができました。多文化共生を考えながら日本語教育のために努力を尽くしているたくさんの方々にお会いすることができました。やはりその方々も相手のことを考えながらそれぞれの活動を行動に移されたのです。その熱心さに私たち一人一人は色々な形で心を打たれたと思います。 私なんかは、浜松市から鈴鹿市まで感動のあまりずっと泣きっぱなしでした。
又、金閣寺や清水寺、稲荷神社や三十三間堂の見学では息をのむような美しさと迫力で足がすくみそうな感激を受けました。日本の人々の信仰の熱さが映し出されていたからです。私自身は別な宗教ですが、リスペクトする気持ちが心の奥から湧いてきました。これも多文化共生の一つの心得だと思いました。
私たち日系人研修の12人はメキシコ、ベネズエラ、ペルー、ブラジル、アルゼンチンとそれぞれの国から来ました。12人も集まると12人分の考え方に出会うことになります。プラス講師の先生方の考え。更に他の研修に参加されていた先生方の考え方。様々な考え方や姿勢が飛び交っている環境の中で2か月間過ごすことができました。私にとってとても充実した2か月間でした。相手を受け入れたその時、自分のアイデンティティーに気づきます。自分ができること、又は自分ができないことに向き合えました。先生が開講式の時に言われた通りでした。自分を振り返ることができました。辛い時もありました。でも仲間がいました。悩みを聞いてくれた仲間。病気になったとき差し入れを持って来てくれた仲間。10分の休み時間に3階から図書館まで本を検索して貸し出してくれた仲間。毎日、毎回写真を撮ってくれた仲間。馬鹿笑いをした仲間。一緒に涙を流してくれた仲間。色々なコミュニケーションを通して私たち12人は今の自分に至ることができたと思います。
これもこの日本語国際センターのおかげです。スタッフの皆さんありがとうございます。国で私たちのサポートをしている学校の先生方、ありがとうございます。そして家族、この2か月間国から支えてくれてありがとうございます。最後に日系人研修の皆さん、皆さんと出会えてとても嬉しいです。ここで皆さんを代表し挨拶をすることになりましたが、皆さんの気持ちも少し伝えられたかどうか分かりません。でも部分的に伝わっていたらそれだけでうれしいです。この2か月間共に過ごしたことを忘れません。毎日の生活の中で何らかの形でみんなのことを思い出すことでしょう。どうもありがとうございました。心から感謝しています。
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