平成25年度 海外日本語教師日系人研修 参加者の声
野沢真吾さん(ベネズエラ/ベネズエラ日系人連盟)
1月15日に日本へ着いてから2ヶ月、時には遅く、ときには早く感じた57日間でした。 研修を終えて、あらためて実感したのは、この研修の内容の濃さです。文法クラスを含めた、9つの教授法の科目では、すべてが新しく新鮮で、今すぐ実践したいものがたくさんあり、とてもいい刺激になりました。先生方全員が海外の日本語教育に関わってこられ、そこで得られた知見を惜しみなく提供してくださることに深い感謝の念をもちました。 日本文化・日本事情の授業では日本のポップカルチャーの影響の大きさをあらためて実感しました。また、日本文化体験では茶道や和太鼓、埼玉・東京見学など合計8つのイベントに参加させていただきましたが、個人的にはお茶を飲んで和菓子を食べるという行為を芸術にまで発展させ、音楽以外のすべての日本文化をつめこんだ茶道というものに感動しましたし、消しゴム工場を訪問したときには社長さんの絶対あきらめない姿勢、あくなきチャレンジ精神から出るすばらしい消しゴムの数々におどろきました。 ポルトガル語でfechando com chave de ouro、スペイン語で cerrar con broche de oroと言う表現があります。「最後にとてもいいもので締めくくる」という意味ですが、その意味では今回の研修旅行はまさにそれにふさわしかったと思います。研修旅行で訪問した小学校では生まれて始めてとも言える盛大な歓迎、『はらぺこあおむし』では演じている子供達があまりにもかわいすぎて泣けてしまうという初めての経験もしました。また、みんなと踊ったquadrilha、そして京都でのすばらしい庭園や神社、お寺の数々。まさに最後を飾るのにふさわしい旅行だったと思います。これらはすべて僕の個人的な意見ですが、研修参加者一人ひとり思い出に残っているものは違うと思います。みなさんはどうでしたでしょうか?何が一番心に残りましたか?
雪でしたか?温泉でしたか?デパ地下でしたか?教授法でしたか?消しゴム工場の社長さんでしたか?『はらぺこあおむし』でしたか?日本での日系人事情でしたか?読み聞かせでしたか? 国に帰ればそれぞれ仕事、問題や課題が山積みだと思いますが、日本で経験した色々なこと、ブラジルやペルー、ボリビア、ベネズエラまたは全世界に日本語や日本文化を伝えるために日々努力している人たちがいることを心の支えに、一緒にがんばっていきましょう。 最後になりましたが、研修を無事に過ごせたのも、日本語国際センターの皆様、講師の先生方、訪問先で出会った方々が、温かくぼくたちを受け入れ、指導してくださったおかげです。
日本語教師というものを続けていく限り、近い将来皆様にまた会える機会があると思います。 本当にありがとうございました。
中島強志ヘナトさん(ブラジル/ミナス日本語モデル校)
僕が少し前に見たドラマ「3年B組金八先生」の中で一つ面白いセリフがありました。それは「私たちは機械やミカンを作っているんじゃないんです、私たちは人間を作っているんです」と言うセリフです。先生としての使命がこのセリフにあるのではないかと思いました。 この2か月の間、私たちは沢山の勉強を重ねて、今ここにいます。 センターの中では教授法、日本事情、日本文化体験など多彩なプログラムの中、自分が国でする日本語教育を考えて勉強をして、どうすれば学習者が日本語、日本の文化に興味を持ってくれるか、どうすれば日本語のことを覚えてくれるかなどを考え、センターの外では日本人の生活、研修旅行、埼玉見学などの日本のそのままの姿を見て、どうやって学習者に経験した今の日本を伝えようかと日々考えていました。 この期間、先生方と一緒に笑う日もあれば、忙しくて自分が泣きそうになった日もありました。
学習者をより良い日本語話者として育てるために、教師自ら勉強をして研究を重ねて他の人に教えるために何倍も努力をして、母国にいる生徒のことを考えながらここまできました。 金八先生のセリフのように、「みかんや機械のようにすれば育つものじゃない」と知っているからこそ、自分と同じ「人間」として日本語を教えるためには自分自身が良くならなければならないと知りました。 そういう私たちの研修を支えてくださったセンターの先生方、スタッフの皆様、ボランティアの方々、文化体験プログラムの先生方、この2か月間、本当にありがとうございました。
これから、世界の日本語教師として国へ帰っても、ここで出会った教師たちと一緒に日本語教育を考えて改善していきたいと思います。
研修報告レポート
萩野リカさん(ブラジル/リオデジャネイロ日系協会)
2014年1月15日から3月14日まで国際交流基金日本語国際センター(浦和)で実施された「海外日本語教師日系人研修」に参加しました。研修には南米4ヵ国(ブラジル6名、ベネズエラ1名、ペルー1名、ボリビア1名)男女合計9名が参加しました。他州や他国の日本語教師と積極的な交流もでき、情報・知識の交換をし、大変有意義な時間となりました。 本研修は、(1)日本の社会や文化を実際に体験し、現在の日本に対する知見を深め、さらに、その知見を自国の教育の中で生かす方法を考える、(2)教授能力向上のため、教授法や教材に関する情報や知識を整理した上で、自身の教授活動を振り返り、他の教師との協働の中で新しい視点や方法などの具体的な活用法を考える、(3)文法を中心に日本語の知識を整理し、教授上の課題を解決する。ノンネイティブ教師については、合わせて自らの日本語運用力の向上を図る、(4)所属機関およびその周辺地域または自国における日本語教育の現状に鑑み、帰国後、日系人教師として自らが現場で担うことのできる役割を考えることを目標としています。 研修の内容は大きく分けて「教授法」「文法」「日本文化・日本事情」でした。センターで受講した授業の他、日本の教育機関の訪問・見学、日本人の大学生との協働の日本文化・日本事情についての教材作成、日系社会を支援する団体の訪問・見学、特別講義などもありました。大変充実した内容の研修で、教授法や教材に関する知識・技術を深め、日本語教師としてのスキルを磨くことができました。また、現在の日本社会、日本文化などの最新情報を取り入れることができ、最近の日本に対する知識も深めることができました。 大変豊富な内容の研修でしたが、特に勉強になったのは教授法関連の科目でした。「教授法各論(音声・聴解・会話・読解・作文指導法、授業の流れ)」の授業ではこれまでの授業を振り返り、効果的な授業ができるために必要な知識を得ることができました。「音声指導法」では、学習者に教えるために必要な日本語の音声についての知識を整理し、教えるときに注意しなければならないことや練習方法について考えました。「聴解指導法」では特に、未習の単語や表現を含んだテキストを理解するために必要なストラテジー(情報選別、予測、推測、モニター、質問、反応)を考えた教室活動を取り入れた授業計画の指導が勉強になりました。「会話指導法」、「作文指導法」では、「話すこと・書くこと」とは何か、話す力・書く力を育てるためにどのような活動をすればよいか、学習者に合わせた授業計画や教材作成、そして、その評価を考えました。「読解指導法」の授業では、「読解指導をもっと多様にすること」「読解指導の中に、背景知識を生活化させる活動を入れること」「読解指導の中に、ストラテジーを意識させる活動を入れること」の重要性が取り上げられ、それを考えた「読むこと」を教えるための読解練習や授業設計が紹介されました。「授業の流れ」の授業では、授業の立て方、授業の目標設定などを見直し、効果的な授業を考えました。絵教材や動画の使い方、学習者に推測させるゲームなどを使ってアウトプットさせる方法などが参考になりました。 また、「JF日本語教育スタンダード」「Can-do」についての授業も受け、JFスタンダード、Can-doの考え方、活用方法を理解することができ、授業を計画するときの重要な知識を得ることができました。「JFスタンダードの木」を利用し、Can-doで授業の学習目標を設定すると、目標をより明確にし、その目標や対象に合った授業の流れ、内容、活動、学習成果の評価を取り入れた授業を組み立てることができることが分かりました。 今後、研修で学習したことを踏まえ、自分自身の教師としての指導法を改善し、 また、学習したことをリオデジャネイロの日本語教師と共有していきたいと思います。
お問い合わせ
国際交流基金日本語国際センター
教師研修チーム
電話:048-834-1181 ファックス:048-834-1170
Eメール:urawakenshu@jpf.go.jp
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