平成25年度 海外日本語教師上級研修 研修参加者紹介
平成25年度上級研修は2013(平成25)年10月23日(水曜日)~12月20日(金曜日)まで、9カ国から10名が参加しました。
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氏名 | 性別 | 国 | 所属機関 | プロジェクト・テーマ | |
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1 | タン チンイエン TAN, Chyn Ngian |
男 | シンガポール | シンガポール教育省語学センター | シンガポール教育省語学センター日本語学科カリキュラムの開発 |
2 | ウィン ウィン タン WIN WIN THANT |
女 | ミャンマー | ヤンゴン外国語大学 | 「日本語ビジネス文書の書き方」の副教材開発 |
3 | 永田 憲子 NAGATA, Noriko |
女 | 米国 | サンフランシスコ大学 | 中・上級の日本語教科書作成 プロジェクト「道:日本をさぐる」 |
4 | ガルシア・リベロ スサーナ・マリア GARCIA RIVERO, Susana Maria |
女 | キューバ | ハバナ大学・外国語学部 | CEFRとJF日本語教育スタンダードを応用したカリキュラムデザイン「みんなの日本語」を中心に」 |
5 | 森 由卯子 MORI, Yuko |
女 | アルゼンチン | 社)在亜日本語教育連合会 | 「アルゼンチンときめき日本語レベルテストN6・N7の分析」-アルゼンチン日本語指導の一助のために- |
6 | コスラ 恭子 KHOSLA, Kyoko |
女 | オランダ | アムステルダム応用大学 | 商科大学の副専攻としての日本語のシラバス・教材開発 |
7 | アナニエフ ヴラジミル ANAN’EV, Vladimir |
男 | ロシア | イルクーツク国立言語大学 | 総合教科書作成(日本語専攻の大学生対象、CEFR準拠) |
8 | タバダ ルーシーリン TABADA, Lucillyne |
女 | ロシア | イルクーツク国立言語大学 | |
9 | ハンドーク タイムール HAMDOKH, Tymoor |
男 | ヨルダン | JICAヨルダン研修員同窓会 | 日本語学習支援Eラーニングシステム「日本語らくだ」の設計の見直し |
10 | ラクトマナナ スルフニアイナ アンビニンツア RAKOTOMANANA, Solofoniaina Ambinintsoa |
男 | マダガスカル | アンタナナリボ大学 | マダガスカル人日本語ガイドのための「観光日本語」教科書作成 |
「私が上級研修で得たこと」 タン・チンイエン TAN, Chyn Ngian (シンガポール)
自分の授業では、いつも生徒に「根拠を示して、意見を言いましょう。」と口を酸っぱくして、言っています。ここでも、ひっくり返る事例を通して、国際交流基金日本語国際センターの研修で得たことを紹介します。辛抱強く、お付き合い願います。
最初たくさんの国から来た研修生のそれぞれの国や教育機関の事情の発表などが行われました。その時、私は本当に「活発」にすぐ意見やアドバイスを連発していました。でも、そのうち、段々大人しくなり、ほとんど無口になってしまいました。それは、いやになったとか、興味がないのではなく、よく耳を傾けて、みんなの話を聞くと、それぞれの機関で、実に様々な問題や悩みを抱え、その解決法を探るために研修に来ているのだということがわかったからです。相手の事情もよく知らないで、自分の「当たり前」、「常識」を相手に押し付けてしまった自分が恥ずかしくてたまりませんでした。自分の「当たり前、常識」がひっくり返され、もし自分があんな大変な環境にいたら、何ができるのだろうと考えさせられ、反省させられたのです。
また、自分の機関や自分のやプロジェクトに関して、「結論ありき」のように、こうすればよいとか、こう進めて行きたいという「固定観念、固い意志」にも似たようなものがありましたが、いろいろな人、講師から質問され、またも自分の中の「あるべき姿」のものがガタガタと崩れたり、ひっくり返されたり、変容していくのです。ここで、まったく想像したことのない視点から、素朴な疑問から、新しい「発見」と出会った瞬間の興奮というのは素晴らしい経験でした。
この研修でいろいろな国の日本語教師と交流して、知らない日本語を教える機関のことについて様々な情報や悩みを共有し、お互い知恵を絞って、問題を解決していくことを通して、自分の今まで知らなかった世界に触れることで、視野を広げることができたのです。もちろん、教師としての成長も著しかったのです。まさに、自分ひとりの限界を超えた、仲間同士の新たな知識、発見、学び、そして、成長の素晴らしい旅のようでした。みなさんも、一緒に素敵な仲間を作って、旅立ってみませんか。
「私が上級研修で得たこと」 ウィンウィンタン WIN WIN THANT (ミャンマー)
ミャンマーのヤンゴン外国語大学で教えているウインウインタンです。1995年度の長期研修が国際交流基金で初めての研修でした。今回は18年ぶりの研修です。上級研修に参加することができて、まことにありがとうございました。日本語教師として21年以上になったが、国際交流基金での研修はいつも新しい経験になっています。
研修の前半は教授法の授業を受けて、プロジェクトを進めました。プロジェクトのことなんかはまだ慣れていないので、どうすればいいか悩んでいました。本当に心配な気持ちで大変でした。でも、先生方のおかげでなんとか出来上がりました。コースデザイン、SLA、異文化コミュニケーション、自己評価チエック、JFスタンダートの使い方、テスト作成、教材分析、教師ネットワーク論などが勉強できてよかったです。研修旅行がなくて残念でした。でも、食品サンプルの体験で楽しかったです。素晴らしい国会議事堂も見学できてよかったです。
今年の研修生たちは世界中それぞれの国々から来ていて、自国の教育事情をお互いに話し合うことができてよかったです。文化、宗教などが違っても交流ができて良い巡り合いだと思います。授業での活動や宿題は多くて大変でした。でも二ヶ月はあっという間に経ってしまいました。プロジェクトはまだまだ終わらないですが、シラバス、スケジュール、計画書、プロトタイプ、評価シート、教案、模擬授業、企画書などができたことを本当に嬉しく思います。
「私が上級研修で得たこと」 永田憲子 NAGATA Noriko (米国)
私は、アメリカのサンフランシスコ大学教授で、日本語、言語学、文化を教え、日本研究科の主任をしています。今回、中・上級用の日本語教科書作成プロジェクトを進めるために、このプログラムに参加しました。作成中の教科書のタイトルは『道:日本を探る』で、日本各地の独特な文化や歴史を探り、日本文化をつっこんで教えるものです。それと同時に、ACTFLのガイドラインに基づいた日本語言語運用能力の向上を目標にしています。研修では、プロジェクト担当の先生と相談する面談が毎週あり、私がこれまで作成してきた10課の本文と会話について、詳細なコメントを頂きました。また、教科書の構成要素や練習教材についても、幅広く話し合うことができ、教科書の修正・改善・方向付けに大変役立ちました。プロジェクトの最後の報告会では、グループのメンバーやセンターの先生方にもいろいろ有意義なコメントを頂きました。個別の研究プロジェクトに加え、研修期間中の前半は、日本語教授法や教材開発に関する授業が多数あり、グループワーク、ディスカッション、参加者同士の意見交換など、実りあるものでした。JFスタンダードとCan-doという実践的な言語活動目標も詳しく学ぶことができ、今後の練習教材にどんどん取り入れて行きたいと思っています。
研修中の自由な時間は、プロジェクトの教科書に使う写真の撮影や資料集めで、忙しい毎日でした。そして、何と言っても、この上級研修プログラムには9カ国から10名のメンバーが集り、とても楽しい2ヶ月間でした。カフェテリアでの会話は笑いがいっぱいでした。みんな日本語の言葉遊びが上手なので、いつも機知(駄洒落)に富んでいました。また、いっしょに東京見学に行って、食品サンプルを作ったり、六本木ヒルズから素晴らしい東京の夜景をみたり、どれも思い出深いものでした。センターには、様々な研修プログラムがあって、合計35各国から日本語教育に携わっている人々が来ていました。その人たちと国際交流ができ、文化的にも刺激のある日々でした。
「私が上級研修で得たこと」 ガルシア・リベロ スサーナ・マリア GARCIA RIVERO, Susana Maria (キューバ)
初めまして。私はガルシア・リベロ スサーナ・マリアです。1984年に旧ソ連の大学を卒業してから現在まで、ハバナ大学・外国語学部で外国語を教えています。最初の10年間、ロシア語を教えていましたが、ソ連の崩壊の影響で仕事がなくなりました。そのことが日本語を勉強し始めるきっかけとなりました。日本語教育の歴史がまったくなかった国なので、教科書や辞書はありませんでした。国際交流基金の名前を始めて聞いたのは教材の寄付をもらったときです。3年間の日本語のコースを卒業して、ハバナ大学・外国語学部で開かれた一般成人のための日本語のコースで教え始めました。日本語教師として経験が非常に浅い私は1994年に国際交流基金の日本語国際センターの長期研修に参加しました。その後は2000年のフェローシップ、2002年修士課程など、様々な研修に参加させていただきました。
今回の上級研修は2ヶ月で、最初から最後までとてもハードなスケジュールでした。でも、現場でずっと教えている教師にはレベルアップしたり、理論的な文献を読む時間はありません。上級研修に参加して、教師としてレベルアップしながら、現地の教育に役に立つプロジェクトを書くことができます。さらに、同じ上級研修に参加している教師は世界の様々なところから来ているので、実りのある経験になります。そして、支えてくださる指導教官、研修の担当者、センターの先生や職員の方々のおかげで私たちは適切な道を進むことができます。
「エネルギーが結集した2か月間」 森由卯子 MORI Yuko (アルゼンチン)
アルゼンチンから参加させて頂きました。私のプロジェクトは所属先で開発された「アルゼンチンときめきレベルテストN6,N7」のデータ分析と発展でした。
まず、この研修に参加しなければ実現できなかったことは、プロジェクト担当講師、コース担当の先生方のおかげで「日本語能力試験の試験センター」への訪問ができ、試験センター主任研究員から色々なアドバイスをいただけたことでした。このことは、私の所属先で「レベルテスト」に関わっている研究員の励みになりました。そして、プロジェクト担当の先生、コース担当の先生方から貴重なコメントやアドバイスをいただけたこと、アルゼンチンにいては得られなかった人脈も貴重な財産となりました。
始めは、他の国からの研修参加者の方々のプロジェクトは教材開発、シラバス作成などが主だったので、私との接点はあまりないのではないかと思っていましたが、それぞれの国の事情やプロジェクトの内容を共有することで、別の視点から自分のプロジェクトを見直すことができました。特に毎日の講義の中で行われたグループ発表は、他の研修参加者の考え方、知識などに触れることができ大変有意義なものでした。また、上級研修の研修参加者だけでなく、センター内で他の研修参加者との意見交換などもでき、色々な国の日本語教育事情、課題などを知ることができました。
2か月間という研修期間は長いようであっという間でしたが、講師の先生方も研修参加者も全員がよりよい日本語教育という目的のために動いているエネルギーを常に感じられる期間でした。
「上級研修に参加して」 コスラ恭子 KHOSLA Kyoko (オランダ)
日本語国際センターの研修に初めて参加しました。教える立場から教わる立場になってもう一度「学ぶこと」の喜びと楽しさを味わい、学習者の気持ちを久しぶりによく理解することが出来ました。こういう経験も大切ですね。日頃、授業や事務に追われゆっくり本も読めないことに比べると、図書館に行けば日本語教育に関するどんな本も揃っていて、アドバイザーの先生もいらっしゃり、こんなに恵まれた環境で勉強できるなんて最高!!でした。それに、センターには日本語教育に関する様々な図書や資料がそろえてあり、研究プロジェクトのために先行研究を調べたり、資料を集めたりできました。
最初の 1ヶ月間は経験豊富な先生方からコースデザイン・教材制作・カリキュラム開発・テスト開発・授業デザインなどの教授法を理論から実践へと教えていただき、日頃は忘れがちな理論がもう一度頭の中に入ってきたのは自分のプロジェクトのためにもとてもよかったです。図書館の司書の方も蔵書に関してはいろいろアドバイスをくださいました。
各国から集まった先生の仲間と話し合えるのは毎日の楽しみでした。自分の国の教育事情に始まって、教授法にいたるまでいろんな話をして意見交換できたのは得難い体験です。それも2ヶ月間授業を受けたりしながら話を続けることができるのですから、実践的な点においても大変参考になりました。仲間からは、たくさんの勇気と元気とやる気をもらいました。この「Yes, we Can-do」の上級研修仲間とは、オリエンテーション旅行で童心にかえって食品サンプルをつくったりもしました。楽しかったです。仲間が今後もそれぞれの国でますます活躍することを願っています。
最後に、今後もこの上級研修で、多くの日本語教師が自身と自分の国の日本語学習者のために学ぶ機会を与えられ、私たちのような有意義な体験が出来るよう祈っています。
「上級研修による国際交流」 アナニエフ ヴラジミル ANAN’EV, Vladimir (ロシア)
ロシアのイルクーツク出身のアナニエフ・ヴラジミルと申します。
今回の上級研修で12年ぶりに浦和日本語国際センターに来ました。懐かしいセンターは前と同じように暖かく迎えてくれました。
また、相変わらず字義通りに国際的です。長期研修はクラスの人数が多く、全世界の日本語教師が集まるのが当たり前に思えますが、今回は決して大きくない上級研修のクラスもほぼ全世界を代表できると言えます。北中南米、アフリカ、中東、東南アジア、西欧、それから、東欧… 参加者の背景、経験、考え方、教えるスタイルそれぞれ違い、お互いに知り合うことだけでも大変勉強になります。
授業や国際交流基金本部訪問、修士プログラムの発表会などの特別イベントのおかげで普段やっていることを振り返り、ロシアと他の国の状況を比較し、日本語教育の最新情報を得て、これからの自分の仕事やプロジェクトがさらに充実したものにできます。
また、一緒に研修を受けた皆さんにもありがたい気持ちでいっぱいです。
今後ともこのようなプログラムによって世界の日本語教育が発展し、日本語教師の交流・協力が盛んになっていくことを望んでいます。
「日本語を通じての国際的なつながり」 タバダ ルーシーリン TABADA, Lucillyne (ロシア)
タバダ・ルーシーリンと申します。フィリピン出身ですが、今回はロシアのイルクーツクから参りました。
教師は、何かを教えるばかりではなく、いつも勉強しつづけるべきだと思います。フィリピンにいたころと違って、最近は勉強会・日本語教育関係の発表会がなかなか少ないですから、今回はさまざまな新しいことを勉強できてとてもよかったです。授業の内容も充実していましたし、一緒に研修を受けた皆さんとの交流もたいへん有意義なものでした。皆さんは全世界から集まった経験のある日本語教師で、今回の自分のプロジェクトに関してさまざまな意見、コメント、アドバイスなどの貴重な情報をいただきました。これからは、それを自分のプロジェクトにも活かし、また、他の人にも伝えていきたいと思っています。
なお、このプログラムに参加して以前の研修のときに知り合った方々に再会しましたし、今回の同級生は前の同級生と他の研修のときに一緒だったということを知って、改めて「世間は狭い」と痛感しました。このような日本語教師のつながりはとても大切なものだと思っています。前、一緒にいた友達にも、今回一緒に研修を受けていた方々にも、これからいつまでもあらゆる方面での成功を祈っています。
「心に残る思い出、これからの活動の励ましになる経験の日本語教師上級研修プログラム」 タイムール・ハンドーク HAMDOKH, Tymoor (ヨルダン)
私と日本語国際センターとの付き合いは2003年の日本語成績優秀者研修プログラムのセンターの一日の訪問、そして2006年の修士課程で過ごした1年から始まりました。今回の上級研修で日本語国際センターに戻ったとき、久しぶりの里帰りの気持ちで心がいっぱいでした。
今回の研修は短い2ヶ月でしたが、実りおおい充実した経験でした。現場で行う授業で忙しく、日本語教育の最新の情報や研究に目を向ける暇もなくて、興味を持つ研究ができないことは教師の共通の悩みです。でも今回の研修で最新の情報を収集し、すぐ役に立つ知識やスキルを身に付け、センターの経験豊かな先生方の丁寧な指導を受けながら、私がずっと前から希望していた研究に専念することができました。これからは国に戻っても、今回の研究の成果を積み重ねながら、自信を持って新しい研究テーマに挑戦していきたいと思います。
この2ヶ月間の上級研修プログラムは私にとって、一生忘れられない思い出になると思います。申請したときは「上級研修」という言葉には少し怖い印象がありました。経験の浅い私のような日本語教師でもうまくいけるかは少し不安でしたが、最初の一日でこの不安は完全に消えました。同じプログラムに参加している9カ国の先生方と初めてお会いしたとき、研修の担当の先生方と始めてお目にかかったとき、「みんなと一緒だったら、がんばれる!できる!」と強く思いました。今はこの2ヶ月でできた「上級家族」と離れることを考えてしまうと本当にさびしく思います。これからも、この研修で使ったネットワークを大事にしたいと思います。世界中にいつでも相談になってくれる味方がたくさんできましたので、心強く活躍できると思います。
「わたしが上級研修で得たこと」 クトマナナ スルフニアイナ アンビニンツア RAKOTOMANANA, Solofoniaina Ambinintsoa (マダガスカル)
私は、マダガスカルのアンタナナリボ大学で日本語を教えています。「観光日本語の教材」を作成したいと思い、2013年の上級研修に参加させていただきました。
2ヶ月の研修はあっという間に経ってしまいました。10月22日に来日してから新しい環境の中、新しい友達と生活しています。様々な国から来た人たちと一緒に生活しているため、考え方、文化、習慣や宗教などが異なりますが、ほとんど問題がないと言えます。
教師の仕事を離れて学生の立場になりました。10月22日に上級研修は始まって、10人のメンバー、9ヶ国からの人が研修前半、毎日同じクラスで授業を受けながら、各自のプロジェクトを進めました。忙しくてもみんながお互いに応援し合いました。参加者たちが一生懸命に頑張っているところをみて「私もがんばらなければならない」と励まされました。参加者の皆さんありがとうございました。
授業やプロジェクトでとても忙しかったですが、様々な知識を得ました。指導教官から色々なアドバイスやコメントをいただき、順調にプロジェクトが進むことができました。
2013年度の上級研修をさせて頂きましてありがとうございました。
お問い合わせ
国際交流基金日本語国際センター
教師研修チーム
電話:048-834-1181 ファックス:048-834-1170
Eメール:urawakenshu@jpf.go.jp
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