平成26年度 海外日本語教師上級研修 研修参加者紹介

平成26年度上級研修には、6か国から10名が参加し、以下のプロジェクト・テーマに取り組みました。

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平成26年度 海外日本語教師上級研修 研修参加者概要
No 氏名 所属機関 プロジェクト・テーマ
1 XUE, Chun
薛 春
中国 宜賓学院外国語学院 聴解授業を改善するための教材開発 —「過程」重視の聴解指導をめざして
2 WANG, Yanan
王 雅楠
中国 廊坊師範学院 日本語専攻上級段階における学生参加型の精読教授法
3 LIU, Shuo
劉 碩
中国
4 LAMAADAN, Sarangerel
ラマーダン サランゲレル
モンゴル 科学技術大学 専門技術(建築土木)日本語教材作成
5 Khine Khine Zin
カィン カィン ジン
ミャンマー ヤンゴン外国語大学 『日本生活事情』の副教材開発
6 CHANDRA, Janashruti
チャンドラ ジャナシルティ
インド ジャワハルラールネルー大学 「意味論と語用論入門」-授業用教材
7 NAKAHIRO, Mie
中広 美江
ドイツ ハイデルベルグ大学 自主開発教科書の改訂(学士課程対象)
8 TAKAHASHI, Yukie
高橋 雪絵
ドイツ
9 PURIK, Irina
プーリク イリーナ
ロシア ノボシビルスク市立「シベリア・北海道」文化
センター
言語活動Can-doの達成度をはかるテスト開発~ロシアの一般人向け、コミュニケーションCan-doを目標としたコースブック『どうぞよろしくⅠ』のテスト集を目指して~
10 MIRONOVA, Ryudmila
ミロノワ リュドミラ
ロシア

「日本語教師力アップにつながる研修」
薛春 XUE, Chun (中国)

薛春氏の写真 この度、私は、「聴解授業の改善のための教材開発——『過程』重視の聴解指導を目指す」という課題を持って、日本語国際センターの上級研修に参加しました。本研究プロジェクトは、学習者の聴解ストラテジー使用の意識化及び効果的な聴き方を身につけさせるための教材開発を目指したものです。 今回の研修は、知的情報を収集することや、人的交流の機会を得るものとなり、充実した2ヶ月でした。研修において、経験豊富な専任講師の先生方に、理論から実践へと今まで触れたことがない日本語教育理念JFスタンダードCan-doやコースデザイン・日本語環境マップの作成・テスト開発・学習評価・教材作成などの教授法の講義を受け、経験不足の私にはとても貴重な勉強でした。また、各国からの日本語教員の研修参加者たちとも話し合い、それぞれの国の日本語教育事情の情報交換をし、お互いを知り、理解することも出来て、楽しい日々でした。 さらに、今回の研究プロジェクトは来日前に計画しましたが、具体的な実施について不安でいっぱいでした。先生の個別指導のお蔭で、明確な目的を定めプロジェクトを確実に進めてきました。例えば、聴解過程を支えるストラテジーの理論的概念を明確にした上で、市販の教科書の特徴や問題点を整理し、教材開発のねらいを定めました。また、教材の枠組みを設定し、聴解材料の作成への取り組みを試みました。教材開発にあたって、教材に使用する材料の選択・収集・編成が最も難しいですが、研修を通して学んだ文献・情報検索の方法を生かし、最終的にはプロトタイプ材料を作成することが出来ました。このような達成感と満足感は、課題にチャレンジしたからこそ味わえるものであり、研修を通して私の日本語教師力がアップした印だと感じます。帰国後も引き続きオリジナル教材の作成に取り組みながら、研修の成果を日本語教育の現場に活用することを心に決めています。 光陰矢のごとく。いまはただ先生方に感謝がいっぱいです!


「上級研修で学んだこと」
王雅楠 WANG, Yanan
劉碩 LIU, Shuo (中国)

王雅楠氏と劉碩氏の写真 中国廊坊師範学院から上級研修に参加させていただき、誠にありがとうございました。 2008年中国大学日本語教師研修で日本語国際センターで2カ月過ごしましたので、今回の上級研修でセンターに戻ったとき、里帰りの気持ちと懐かしい思い出で心がいっぱいでした。 最初の1か月間、経験豊富な先生方からコースデザイン・学習目標設定とCan-do・第二言語習得・学習を評価する・テスト作成・教材分析などの教授法を理論から実践へと教えていただき、とてもいい勉強になりました。日本語教授法を学ぶのにやはり日本語国際センターが最適だともう一度強く感じました。 研修の後半はプロジェクトの時間で、「日本語専攻上級段階における学生参加型の精読教授法」という研究テーマに取り組みました。最初はどこから着手したらいいかと途方に暮れてしまいましたが、指導講師をはじめとするセンターの先生方に熱心に指導していただいたり、クラスのメンバーと相談したりして、やっと困難を乗り越えました。最後は、全体計画と一部の課の教案が出来上がりました。今までよりずいぶん改善した教授法を見ると、そのうれしさは言葉で表せないものです。 帰国後、研修で勉強した教授法と研究プロジェクトの成果を教育現場で実践していきたいものです。 滞在中、ちょうどセンター設立25周年の記念イベントである「国際交流まつり」が開催されたので、幸いにも参加できました。世界各国の人々と交流し、視野を広めることができて、人生の素晴らしい思い出になりました。 最後、研修中ずっと熱心に指導してくださった先生方、親切に配慮してくださったセンターのスタッフの皆さんに心よりお礼を申し上げます。


「一人一人違う種を持つ」
ラマーダン サランゲレル LAMAADAN, Sarangerel (モンゴル)

ラマーダン サランゲレル氏の写真 上級研修を一文でまとめると、「一人一人違う種を持つ、その花を咲かせることだけに、一生懸命になればいい」というSmapの歌詞に当てはまると思う。 例えば、課題は種で、教授法、特別講義などは肥料で、研究プロジェクトに取り組むことは花を咲かせるための本人の努力である。 私の研究プロジェクトのテーマは、「専門技術(建築土木)日本語教材作成」だった。課題は、授業に使う教材が建築・土木を学ぼうとする日本人のための本であることであった。この本を、モンゴル人日本語学習者のための、教室活動を含んだ教材にアレンジすることである。 研修中の教授法、特別講義などで得た知識がプロジェクトを進めるのに欠かすことのできないヒントだった。ヒントになる授業とともに、自分も成長しているのがわかった。例えば、日本語能力試験についての特別講義で、文字・語彙の試験問題作成方法についての説明が、研究プロジェクトを進めるための大きな支えになった。だからこそ、教授法や講義で得た知識を生かして、ただの本を教室活動のある教材にアレンジすることができたと思う。例えば、教室活動として、語彙マップ、ロールプレイなどをうまく取り組むことができたこと。国ではなかなかできないことをこの上級研修でできたといえる。だから、この短い期間を有効に使うために一生懸命になればいいということがわかった。 帰国後も、日本語国際センターの先生たちの授業のヒントを踏まえながら、研究を進めたいと思う。また、いろいろな種を持つ私たちのいろいろな花を一つのバケツでうまく育ててくださった先生たちにも感謝を申し上げます。


「上級研修に参加して」
カィン カィン ジン Khine Khine Zin (ミャンマー)

カィン カィン ジン氏の写真 1997年ヤンゴン外国語学院の専門課程を卒業したばかりの頃、国際交流基金(関西国際センター)の研修生としての二週間が日本へはじめての旅行でした。その頃から日本についてもっと興味が深くなって日本と日本文化、日本語に興味を持って、日本語教師になることにしたのです。2003年には日本語国際センターで短期研修を受けました。また、今回の上級研修に参加できて、『日本生活事情』副教材開発プロジェクトによって日本語教師に欠かせない知識を勉強しました。コースデザイン、学習目標設定とCan-do、第二言語学習、ICTと日本語教育学習評価、学習を評価する、テスト作成教材分析、文化と日本語教育、その他、時代の変化と共に変わってきた日本の最新事情も勉強できて本当によかったです。国際交流基金本部にて特別講義も受けました。日本語教育に関する知識、教授メソッドをより上達させる講義でした。 東京見物の日は風が強くても、雨が降っていても皆で楽しく見回ったり、写真を撮ったりして本当に楽しかったです。一番印象に残ったのは国際交流基金日本語国際センター設立25周年記念イベントに参加することが出来たことです。 上級研修生同士でアイデア交換、体験交換、様々な国々の日本語教育についてより分かるようになりました。帰国後、センターで学んだ知識、日本語教授法及び教材作りの技術を活かしてミャンマーの日本語教育発展に全力を尽くして行きます。また、日本の文化、日本の最新事情についてもより詳しく教え、より効果な授業ができると信じています。 ミャンマーの日本語学習者に日本語を教えながら、日本で体験した日本人の温かい心、何をしてもきちんとする日本人の国民性、日本人の素晴らしい努力などを学習者に伝えながら、学習者の日本についての興味及び日本語能力を高めます。


「上級研修を終えて」
チャンドラ ジャナシルティ CHANDRA, Janashruti (インド)

チャンドラ ジャナシルティ氏の写真 1997年、国際交流基金の関西国際センターの一番最初のプログラムが私にとって初めての日本体験でした。その後、日本語の世界に魅力を感じ、日本語教育の道を歩んで来ました。教えはじめてからも国際交流基金にたびたびお世話になっております。 今回は「意味論・語用論入門」−授業用教材作成プロジェクトを進めるためにこのプログラムに参加しました。多言語社会のインドで比較研究の基盤を作り上げることが出来たら、学習者のニーズに応えられると思ってプロジェクトに取り組みました。 共通点探し活動で始まった最初の授業は私たちにとって大発見でもありました。全員女性という共通点は以前の上級研修にはあったでしょうか。また、東京見学はあいにくの雨で、全員スカイツリー体験も今後の課題になりました。そして自国の教育事情の発表では、それぞれの国や教育機関の事情を共有し、どこも同じだ、皆がんばっていると実感しました。研修中、教授法、教材開発・コースデザイン、ICTと日本語教育、第二言語習得、教材分析・文化等の面白い授業がたくさんあって、とても勉強になりました。JFスタンダードの詳しい話やCan-doシラバスは私にとって新しい概念でしたが、帰国後他の先生たちとぜひシェアしたいと思っています。プロジェクトの方は、指導の先生やセンターの教師のサポートがあって、少しあるべき形になってきました。貴重なアドバイス・指摘ありがとうございました。 また、研修がセンターの25周年のお祝いと重なって祭りに参加できたことによって、日本そして日本語との縁を深められたと思います。日本語があって、世界のいろいろな国の人と出会いました。修士・長期・博報の参加者と食堂での楽しい会話ができて、ネットワークが広がりました。これからも、日本語を通して出来た出会いを大切にして行きたいと思います。


「実り多き2ヶ月の研修」
中広美江 NAKAHIRO, Mie
高橋雪絵 TAKAHASHI, Yukie (ドイツ)

中広美江氏と高橋雪絵氏の写真 ドイツのハイデルベルク大学から自主制作教科書改訂のために、二人で研修に参加させていただきました。日頃ドイツでは日々の授業に追われ、まとまった研究や勉強のための時間がとれない私たちですが、ここ北浦和では落ち着いた環境で約2ヶ月間、勉強とプロジェクトに専念することができました。 前半は専門家の先生方に最新の教授法(コースデザイン、学習目標設定とCan-do、第二言語習得研究、評価法、テスト作成、教材分析、日本事情、e-learning)について学びました。後半は指導教官のご指導の下、プロジェクトを進めていくことがメインでした。私たちは当初、教科書第3部の改訂を予定していましたが、教科書全体のシラバスを見直す必要性を感じ、第1部からの改訂に変更しました。教科書をより良いものにするために、(1)Can-doによる目標設定、(2)実際の場面に近い会話、(3)学期ごとに1冊の教科書となるように改訂を進めていきました。研修中に第1部(全13課)のシラバスと、プロトタイプとしてトピック1を完成させました。課題はまだまだありますが、帰国後引き続き改訂作業に取り組み、2015年10月の新学期からこの新教科書を使いたいと考えています。 センターは今年ちょうど25周年ということもあり、お祭りにも参加できました。また、東京見学ではあこがれのスカイツリーに行ったり、食品サンプルを作ったりしたこともいい思い出です。私たちは唯一の日本人の研修参加者でしたが、他の国のすばらしい研修参加者たちと意見交換や情報交換ができ、大変勉強になりました。 最後に、私たちのお世話をしてくださったスタッフの皆様や、専任講師の先生方に心より感謝申し上げます!Vielen dank!


「上級研修での取り組み」
プーリク イリーナ PURIK, Irina
ミロノワ リュドミラ MIRONOVA, Ryudmila (ロシア)

プーリク イリーナ氏とミロノワ リュドミラ氏の写真 私たちは、ロシア・ノボシビルスク市の市立「シベリア・北海道」文化センターで日本語と日本文化を教えているプーリク・イリーナとミロノワ・リュドミラです。「シベリア・北海道」文化センターでは、日本語や日本文化への興味を持っている一般市民が200人ぐらい日本語を勉強しています。ノボシビルスク市と札幌市は姉妹都市であり、さまざまな市民交流プログラムが行われています。「日本人と交流して、友達になりたい」、「日本へ旅行で行ってみたい」「日本人のビジネスパートナーと日本語を使って、友好関係を造りたい」という日本語教育に対するニーズが増え、「日本語でのコミュニケーション能力を見つける」ことは、われわれの日本語講座の主な目標となっています。 2010年にJF日本語教育スタンダードに基づき、Can-do(日本語で~できる)シラバスを開発、導入し、2012年に『どうぞよろしくⅠ・コミュニケーションのための20 Can-do』という教科書を開発して、コースブックとして日本語講座に取り入れてきました。今回、上級研修プログラムに参加させていただき、『どうぞよろしくⅠ』のためのCan-do達成度を測るテストの開発に挑戦しました。JF日本語教育スタンダードを開発した日本語国際センターの先生の皆様の授業と指導を受けて、貴重なアドバイスを頂き、従来ロシアで行われたテストと大きく異なっているテストを作成しました。研修期間が限られていて、やりたいことは、全部完成させませんでしたが、残りのことを課題としてはっきり意識して、国へ帰って、プロジェクトを現場の教師と力を合わせて、積極的に続けたいと思います。指導の先生、研究作業を支えていただいた先生、勉強しやすい環境を作っていただいたセンターの皆様に心から感謝しております。

お問い合わせ

国際交流基金日本語国際センター
教師研修チーム
電話:048-834-1181 ファックス:048-834-1170
Eメール:urawakenshu@jpf.go.jp
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