平成28年度 海外日本語教師上級研修 研修参加者紹介
東京見学にて
平成28年度海外日本語教師上級研修には、2か国から3名が参加し、以下のプロジェクト・テーマに取り組みました。
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No | 氏名 | 国 | 所属機関 | プロジェクト・テーマ |
---|---|---|---|---|
1 | LI, XU 李 旭 |
中国 | 電子科技大学 | 「中日文化比較演習」のシラバスの開発 -自国の文化を再認識するための授業の試み- |
2 | REN, HAIDAN 任 海丹 |
中国 | 大連東軟信息学院 | 「標準ビジネス基礎日本語」の自習用副教材の開発 -言語知識の補強と読解能力の育成を目指して- |
3 | CHINVIGAI, WANNA チンウィガイ ワンナー |
タイ | イースタンアジア大学 | Japanese for Engineerのシラバス開発 |
「理解が『和』への架け橋」
李 旭 LI, XU(中国)
世界がグローバル化しつつある21世紀の今、国と国の交流がいっそう盛んになります。国と国の交流は最終的に文化と文化の交流になると言われています。いずれにせよ、人間により実現されます。ある日、センターのホールでたくさんの研修者の皆さんが同じ言葉―日本語を使って共同作業をしているところを目にして、聖書の物語が頭に浮かびました。まさかあの神様に言語を乱され、全地に散らかされたバベルの塔を作っていた人々が戻ったかと一瞬スキップしたような気がしました。その場面は正に「和」そのものでした。それに感銘を受けた同時に、自分のプロジェクトとの合致点が感じられたようでした。 このたびの上級研修でのプロジェクトは「『中日文化比較演習』シラバスの開発」です。「中日文化比較演習」は、日本語教育における自国文化の不在が問題視されたことから開講予定の授業で、中国と日本を比較しながら文化学習を行なうものです。文化学習に関しては、相手の国の文化を学び、理解することはもちろん大事です。同様に自国の文化について積極的に発信して、理解してもらうことも大事なのです。それゆえ、学習者の発信しようという意識と、発信するための言語能力を養成することを授業の目的としています。そして比較という方法で、当たり前のように思われていた自国の文化を再認識させるきっかけを作ることもこの授業の目的です。 この授業の意義はどこにあるかと度々聞かれました。それについて一生懸命に説明しました。今回、その答えを「和」に求めることができました。「和」の真髄は「平等」にあり、「平等」の真髄は「理解」にあるのではないかと思います。言い換えれば、理解がないと、平等に付き合うことができない、平等に付き合えないと、「和」には至りません。要するに理解が「和」への架け橋となるものです。これをこの授業の理念として活性化していきたいと思います。 センターでの約2ヶ月の研修期間中、先生方のご指導のもとでシラバスの開発に専念した末に、「和」のインスピレーションに照らされたように、シラバスの雛形がかすかにピカピカしたものに見えるようになりました。これから引き続きやるべきことはシラバスを完成させ、試行錯誤を経て、磨き上げることです。
「やればできる」
任 海丹 REN, HAIDAN(中国)
時間が経つのは速いものです。2か月の上級研修はあっという間に終わりました。短い間ですが、たくさんのことを得ました。 研修前半の授業で、JF日本語教育スタンダード、コースデザイン、第二言語習得、語彙指導とコーパス、話すことの教え方、表現法演習、パフォーマンス評価、読むことの教え方並びに教材分析といった理論と実践を教えていただき、本当に貴重な勉強になりました。諸先生方がいつも私たちの理解具合を見ながら、親切に指導してくださいました。先生方の姿を見て、自分の授業を振り返ってみると、本当に感無量で、自己内省もできました。これからもこういう教育理念をよく勉強し、実際に自分の授業で使ってみたい気分になりました。 後期はプロジェクトの個別指導に「『標準ビジネス基礎日本語』の自習用副教材――言語知識の補強と読解能力の育成を目指して」というテーマに取り組みました。研修に来る前に、一応原稿ができていましたが、全体的な統一に欠けていました。また、読解文の取り扱い方法が分からなくて、立ち往生の状態でした。指導担当の先生のおかげで、シラバスを作成して、副教材1課分のサンプルもできました。何より、これからの進め方がはっきりしてきました。いつも親切にご指導いただき、貴重なアドバイスをいただいた先生に心から感謝しております。 また、研修中で各国からの研修生と交流ができ、各々の教育現場の事情や経験について交流して、視野を広げました。上級研修の皆さんはいつも楽しく話したり、出掛けたりして、とても素晴らしい思い出を作り、一生の宝物にもなりました。 帰国後、こちらで勉強したことを同僚たちと共有し、学生のためによい副教材を完成するために頑張ります。
チンウィガイ ワンナー CHINVIGAI, WANNA (タイ)
11年ぶりに日本語国際センターで研修を受けました。懐かしい先生に再びお会いできてとても嬉しかったです。2か月という短い時間でしたが、指導教官の先生にアドバイスを受けながら勉強できました。また、新しい外国人の友達もたくさんでき、貴重な時間だったと思っています。 この研修が縁で、帰国後、バンコク日本文化センターの授業を見学する機会をいただきました。その授業の中で、学習者たちはたった2時間で新しい語彙と文型が楽しく言えるようになっていました。学習者に想像力を働かせて日本語を教えるのはとても素晴らしいことです。私はそれを見習って少しずつ自分の教え方を変えようと思っています。今は授業が始まる前に、学習者に今日のCan doを知らせ、授業が終わる時に学習者とCan doをチェックするようにしています。これは私にとって新しい教え方の第一歩です。
お問い合わせ
国際交流基金日本語国際センター
教師研修チーム
電話:048-834-1181 ファックス:048-834-1170
Eメール:urawakenshu@jpf.go.jp
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