平成29(2017)年度 海外日本語教師テーマ別研修(1.コースデザイン、2.教材作成)
キンさん(金 華/JIN HUA/中国/華南理工大学外国語学院)
日本語を学び始めてから日本語国際センターの存在は知っていましたが、まさか自分がお世話になるとは夢にも思いませんでした。センターでの1か月という研修期間はあっという間に終わってしまいました。センターでは、肌の色も言葉も習慣も違う様々な国の参加者と日本語だけで毎日話を交わす不思議な体験をして、日本語の魅力をしみじみと感じました。
一番の収穫が何かといえば、やはりコースのデザインを改めて考え、その見直しを少なくとも具体的に形づけることができたことです。私たちのコースを再考させるために、先生方はいろんな工夫をなさって披露してくれました。先生方の授業の進め方、特に理論と実践の組み合わせを上手にマッチングさせる教授法は本当に勉強になり、今後自分の授業でも積極的に取り組んでいきたいと思うようになりました。コースをデザインする際、スタンダードの木で授業活動を考えるということ、振り返り、フイードバック、学習者自己評価などを取り入れることでさらに授業効果を上げることができるということを改めて考えることができました。それに今回はコースをデザインすることだけではなく、国際化に伴う日本や日本人の変化を、身をもって感じることができました。そして帰国後は、日本語学習者に、今の日本、日本の変化、特に日本の現状をわかりやすく伝えることができるようになりました。
今回の研修ではとてもいい頭の体操ができましたし、今後も3年ごと、長くても5年ごとに自分の国の日本語教育、シラバス、カリキュラム、コースなどを改めて再考していかなければならないと強く反省しました。時代とともに学習者のニーズや社会のニーズは変わっていくもので、そのニーズに応えられる日本語教育であるには改革が求められることになるからです。また、今回の研修では収穫も多かったですが、生け花、茶道、着物の着付け、歌舞伎、相撲など日本の伝統文化には残念ながら触れることができませんでした。まだまだ学ばなければならない、学んでいきたいものがいっぱいありますが、この研修での学び、気づきや新しい発見を充分に活用し、引き続き日本語教育の改善案を考えていきたいと強く思っています。最後になりますが、センターにはお世話になり、感謝の気持ちでいっぱいです。センターのますますの繁栄と皆様のご健康をお祈りいたします。
黄さん(黄 静儀/HUANG CHING-YI/台湾/中国文化大学推広教育学部)
長年台湾の高等教育機関で、グローバル社会における学習者の多様化、AI技術による学習スタイルの変貌を見て、日本語教育に新たなコースデザインが求められているのがしみじみ感じられます。この度、国際交流基金に貴重な機会をいただき、コースデザインの研修に参加させていただいたことを、心から感謝しております。
6週間の充実した研修で、様々な課題に直面し、壁にぶつかったことも何度もあります。個人作業に慣れた教師にとっては、他の教師と協働して作業を進めるのは想像より難しいです。先入観を捨て、壁を越えてリサーチを進める中で、他の教師との横の繫がりが広げられたことは、協働作業から得られた貴重な経験だと思っています。
しばらく教育現場を離れ、より客観的な目線で自分の教育観、学習観、評価の方法を振り返り、新しい発想や視点が生まれ、自分の成長の喜びを深く味わえました。日本語教育の現場に戻り、どうやって他の教師と一緒に協力して成果を生むかを、今後の課題として頑張ります。
最後に、所長をはじめ、ご指導いただいた先生方、それからこの研修を支えてくださった皆様のおかげで、貴重な体験ができました。心からお礼を申し上げたいと思います。
岡安さん(岡安 江津子/OKAYASU ETSUKO/メキシコ/アグアスカリエンテス自治大学)
メキシコでは近年特に日本語学習者が増えています。アニメ、まんが、ゲームなどの日本文化への興味とともに、自動車産業を中心とする日系企業の進出がその理由です。本学でも、約350人の大学生や社会人が日本語を学んでいます。数年前から、学習者のニーズに合わせたコミュニケーション重視のシラバスに書き換える必要を感じていました。それとともに、自分で目標を設定・管理できる自律的な学習者を育てるために、教師は何ができるかを考えてきました。
今回参加したテーマ別研修「コースデザイン」は、こうした問題意識に応えてくれるものでした。ニーズ調査・分析、目標設定、シラバス、カリキュラム、評価についての講義とワークを通して、コースデザイン各段階での重要ポイントを学びました。実習Ⅰでグループでのコースデザインを経験し、目標、授業、評価の整合性をとることの難しさとともに、コースを組み立てる楽しさも実感しました。教えている環境や考え方も異なる参加者間での協働作業は、必ずしも容易ではありませんでしたが、ビジネス日本語コースをデザインすることができました。実習Ⅱは所属機関のコ-ス改善案の作成で、今度は一人で作業を進めました。先生方のアドバイス、ご指導のおかげで、学習目標を明確にしたコミュニケーション重視の改善案が完成し、研修参加の目的を果たすことができました。
学習者にわかりやすい形で目標を提示するためのCan-doサイトの活用、自律を促すためのポートフォリオの導入、良質なインプットの重要性、筆記試験では測れない学生の能力を測り、伸ばそうとするパフォーマンス評価など、多くのことを学びました。同時に、世界の様々なところで日本語を教えている大切な仲間ができました。今後は、ここで学んだことを実践し、共有していきたいと思っています。
ツヴェティさん(ラデヴァ ツヴェテリナ ボリスラヴォヴァ/RADEVA TZVETELINA BORISLAVOVA/ブルガリア/アゴラ ソフィア)
まず、「コースデザイン」という、貴重な研修の機会をくださいました皆様に厚く御礼申し上げたいと思います。おかげ様で、日本語教授法に関する意識・理解を深めることができました。
午前は理論、午後は実践という合理的な授業構成を通じて、教えていただいた知識をただ頭に詰め込むのではなく、少しずつ消化しながら、先生方のご指導の下でその知見を自分で活用してみる、という体験がとても勉強になりました。実習Ⅰにおいてグループに分かれ、新しいコースを一から作り上げる実践を行ったことも、習ってきた「コースデザイン」の理論をどうやって実際に使えばいいか理解するための貴重な経験で、実習Ⅱにおいて各自の勤務先におけるコースの改善案を考えるという重要な目標にも繋がったと思います。
素晴らしい先生方や素晴らしいクラスメートに恵まれて、とても有意義な時間が過ごすことができました。たくさんのことを学びましたし、人的ネットワークも楽しく形成することができました。他国の参加者たちとの交流の中で、世界における日本語教育事情も或る程度把握することができましたし、自分の所属する教育機関や自分の普段の指導法についてもいろいろ振り返ることができました。
ブルガリア帰国後も、いつも研修参加者たちを見守ってくださっているセンターの方々がいらっしゃるということを心に留め、これからも日本語教師として一層の努力を重ねてゆきたいと存じます。本当にありがとうございました。 いつかまた再びご指導を受ける名誉が与えられんことを祈念しつつ。
鴛海さん(鴛海 芙美/OSHIUMI FUMI/オランダ/ゾイド大学)
所属機関の新しい課題遂行型コースのための教材を自主作成するには何を知っておく必要があるのか、また、今自分が作成している教材は、学生の日本語学習に効果的で、効率の良いものになっているのだろうか、つまらないものになってはいないだろうか。このような不安を感じていた時に、今回のテーマ別研修の募集を知り、幸運にも参加させていただけることになりました。
研修前半は、コース・授業と教材の目標設定、授業・教材の効果的な内容構成、著作権など、教材作成に必要なことについての講義を受け、自身の知識・情報をアップデートし、改めて現在の自身のコース・授業・教材を振り返ることができました。また、既存教材を客観的に分析することで、どの順番で学習項目を並べるのがいいのか、新出語彙はどのぐらい出すのがいいのか、ふりがなや訳はどこまで示すべきなのか、どのような練習をどのタイミングで入れるのがいいのかなど、教材作成の際考慮するべき点に改めて気づくこともできました。研修後半は前半で得た知識・気づきをもとに実習に取り組みましたが、実習Ⅰでは「観光日本語コース」のコースデザインと教材作成をグループで実践し、研修最後の実習2では所属機関のコースで使用する教材の素案を作成しました。
短い研修期間ではありましたが、緻密に設計された研修プログラムのもと、教材作成に必要な知識を身につけ、実際に教材を2つ作成することができました。また、ディスカッションやグループワークを行ったり、研修開始時に自己目標を立て、研修中は学びの記録をポートフォリオに残し、終了時には目標を振り返るなど、普段所属機関で学生にさせていることを実際に自分がすることで、一つ一つの活動が学習にどのような意味があるのか、体感することもできました。帰国後は、今回得た知識と経験をもとに、教材の作成、試用、評価、改善を繰り返し、より良い教材を使った、より良い授業を目指していきたいと思います。
お問い合わせ
国際交流基金日本語国際センター
教師研修チーム
電話:048-834-1181 ファックス:048-834-1170
Eメール:urawakenshu@jpf.go.jp
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