平成30(2018)年度 海外日本語教師テーマ別研修(1.文法指導法、2.コースデザイン)

研修参加者の声

1. 文法指導法

2. コースデザイン

 東京見学(浅草・雷門前)の集合写真
 東京見学(浅草・雷門前)

楊さん(楊 広亮サムエル/YEONG KWONG LEONG SAMUEL/シンガポール/シンガポール教育省語学センター)

楊さんの写真 日本語を教えて八年になりますが、日々の授業に追われている中で、授業がどうしてもマンネリに陥ってしまい、はたと立ち止まってみると、このままでいいのかと自問することも多くなりました。そんな中で巡り合ったのが日本語国際センターの「テーマ別・文法指導法」の研修でした。教壇から降りて久しぶりに「学習者」側に回った一か月が大変充実しており、マンネリを打破する手掛かりを掴んだと実感しました。 研修内容は文法指導の理論と実践、そして言語知識からなっていたのですが、個人的に特に勉強になったのは、第二言語習得論のまとまった紹介でした。それまで自分の中で「点」だった、外国語学習に関する知識が、ようやく「線」でつながり、色々な示唆を得ました。中でも、私の授業で疎かにしがちなインプット練習の大切さ、そして「ディクトグロス」という、文法指導の要素を取り入れたディクテーションのような活動が一番印象的で、帰国後の今、どのように授業で生かせばいいか試行錯誤中です。 嬉しいことに、研修は教室の中での勉強だけにとどまらず、授業後の調べ学習や課題発表、東京見学なども行われて、まさに第二言語習得論を地で行くような様々な「インプット」と「アウトプット」がありました。また、役に立つ本やウェブサイトも数多く紹介され、今後の授業改善と自己研鑽のための道筋がついたような気がしました。でも最もためになったのは、やはり世界各国からの研修参加者たちとの交流でした。それぞれの国の日本語教育の事情や授業の進め方について話を聞いているうちに、自分の所属機関を相対化し、日本語の教え方をより多角的に考えられるようになりました。 今回の研修で得たものを糧に、学習者に「日本語を勉強して本当によかった」と思わせるような授業を提供していきたいと思います。この研修を大変有意義なものにしてくださった日本語国際センターの皆様方に心より感謝申し上げます。


佐々木さん(佐々木 真実/SASAKI MAMI/カナダ/カールトン大学言語学・言語研究所)

佐々木さんの写真 カナダの所属機関では近年学習者の言語学習背景、学習の動機や方法に多様性が見られ、それに伴い文法指導法に変化をつけ対応することが課題となっていました。
文法指導法に関する理論や方法論の知識を高め、実践できる能力を身につけることを目標に今回のテーマ別研修「文法指導法」に参加させていただきました。研修のはじめに、各自の具体的な目標をリストアップし、研修中は毎回授業をふりかえりながら、ポートフォリオで自身の研修過程を記録していくのは非常に効果的なプロセスでした。
実際に研修では、第二言語習得論やコミュニケーションのための日本語教育論を学び、文法指導における文脈化の大切さを再確認することができました。また研修参加者間での、ディスカッションや課題の成果をシェアすることで、知識を深め視野を広げることができたのも大きな収穫です。
研修カリキュラムには、理論に基づく実践法の紹介の他、様々な評価法や文法テストの作成法、教材リソースの収集法、コーパスの使用法等、現場で直ぐに実践できる要素も多く組み込まれ、在外日本語教師には大変役立つ情報が提案されていました。 研修後半の実習では、目標の一つであった「ディクトグロスの理解と実践」を達成するために、所属機関で使用している教科書に沿ったディクトグロスの作成を行いました。成果発表会では、センターのたくさんの先生方からフィードバックをいただくことができ大変ためになりました。
内容の濃い1か月間の研修はあっという間に過ぎてしまいました。世界各地で活躍する仲間に出会い、研修経験を共有できたことも大きな喜びとなりました。担当講師の先生方をはじめ、特別授業を行ってくださった先生方、研修全体を通してお世話になったセンターのスタッフの皆さんに感謝の気持ちで一杯です。
今後はこの研修で得たことを糧により良い日本語教師を目指し精進していきたいと思います。ありがとうございました。


黒崎さん(黒崎 充/KUROSAKI MITSURU/メキシコ/ベラクルス州立大学)

黒崎さんの写真 2018年11月6日火曜日:到着、水曜日:施設とコースのためのオリエンテーション、木曜日:袋いっぱいの教材を受け取ってクラスのスタート、木曜日授業後:センターに他の研修で参加されているみなさんとティー・パーティー、金曜日:各参加者による事前課題の発表と質疑コメントなど、到着後の1週目から大変盛りだくさんの内容の研修が始まりました。
インドネシアからアイさん、ベトナムからトアさん、ハインさん、カザフスタンからサマルさん、ロシアからアンナさん、ディアナさん、オリガさんとメキシコから私と、合計8名が研修に参加しました。
このテーマ別研修では、各参加者が日本語クラスのコースのデザインについて課題を持って取り組み、理論や方法を学び、その課題への対策、試案を作成できるように取り組んでいくというものでした。ここでは、はじめにコースデザインの流れを確認し、それから一つ一つのチェックをしていくというものです。研修は、午前中3時間、午後2時間の合計5時間で、土日は休みとなって各自の課題をこなしたり、掃除や洗濯をしたり、近くへ散策に出かけたりという日々でした。
授業の内容は、各国の日本語教育事情についての発表会のほか、コースデザインの流れや概論から始まり、その内容・方法・各論へと進みました。テキスト『国際交流基金日本語教授法シリーズ1日本語教師の役割/コースデザイン』を基本として、ニーズ分析/目標設定/シラバス/カリキュラム/評価とテキストの流れに沿ってすすみました。そして、JF日本語教育スタンダード、みんなのCan-doサイトを使いながら、実習1:JFスタンダードを活用したコースデザインとして課題遂行型のコースデザインを『ビジネス日本語コース』と『観光案内のための日本語コース(ガイドさんの日本語)』とのそれぞれグループに分かれて実践的な取り組みを行いました。ここでは、チームで協働作業を行いながら、そのプロセスやデザインする上での課題を実践的に学びました。発表後もお互いに苦労したところ、面白かったところなど振り返りながら、まとめることができました。
その後、地方研修として金沢への地方研修に参加し、研修で学んだことやリソースの収集に努めるとともに、金沢ならではの金箔はりをみんなで経験しました。
金箔はりは、とても繊細な部分もあって、緊張しながら作業しつつも、それぞれ個性ある作品を仕上げることができたと思います。この実習1の協働作業ならびに地方研修を通して、より一層参加者同士でのコミュニケーションがよくとれるようになりました!
地方研修後、すぐに振り返りを行うとともにいよいよ実習2:研修生の機関でのコースデザイン改善案への取り組みと個別指導へと進みました。これまで学んだことをもとに機関でのコースの現状の分析、改善すべき点やその理由と改善案について各自での作業を行い、資料を作り最後の発表となりました。ここでは、それぞれが自分の課題に対して、研修で学んできたことを取り入れながら自分たちなりの改善案を提示するところまで進められ、個々の発表と振り返りを行いました。振り返りの中では、これまでになく活発に意見交換も進み、最後の締めくくりとしてそれぞれが改善案を持って帰ることになります。
この5週間という中で大変充実した日々を過ごし、あっという間であったと感じています。この研修を通して、コースデザインの流れにそって、その各部を体系的に学ぶことができました。特に、限られた条件・状況の中で機関にあってどのように日本語を教えていくことができるか、コース・学習目標から教える内容そして評価まで、いかに整合性のあるコースを考えていけるのかについて深く学んでこれました。研修のはじめに先生がおっしゃっていた「コースデザインというのはこうした流れのなかを行ったり来たりしてすすんでいく」ということを実感しながらの日々を過ごしました。同じような立場にいる同僚の先生方とともにここで学んだことを、これから持ち帰ってそれぞれの機関で試してみたいと振り返りにも話をしていました。
最後になりましたが、この実習でお世話になった皆様に、こころよりお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。


アンナさん(ブラコワ アンナ/BURAKOVA ANNA/ロシア/ウラル連邦大学)

アンナさんの写真 2014年に海外日本語教師短期研修のときはセンターの先生方からJFスタンダートや教授法をはじめ、コースデザインについても教えていただきましたが、学ばなければならないことが多くて、いつかコースデザインの授業をしっかり勉強したいと思っていました。
2017年所属機関の学習者のニーズに応じて教科書をコミュニケーション重視の教科書に変えることにしましたが、思った通りになかなかうまくいきませんでした。どうやって学習者のモチベーションを支援するか、どんな評価やテストをすればいいか悩んでいました。ですので、海外日本語教師テーマ別研修「コースデザイン」に参加できることになり、とても嬉しくてワクワクしていました。
センターが用意してくれたこのプログラムは私にとってとても有意義でやりがいのある研修でした。それぞれの授業は「コースデザインの流れ」という図から始まり、調査・分析、目標設定、シラバス、教材選択、授業の構成内容、課題遂行型の教科書と授業構成、評価などについていつも笑顔でいる先生方が丁寧に教えてくださいました。毎日、講義も実践もあったおかげで、私たちは教科書を分析し、自分が担当しているコースに合う教科書を選んだり、『みんなの日本語』の第8課をPCPPモデルの授業にしてみたりして、コースデザイン各段階に重要な知識を身につけました。
実習1では3人グループで観光案内のための日本語コースをデザインしてみました。コース全体を設計する難しさも楽しさも実感することができました。実習2では、先生方の丁寧なご指導、アドバイスのおかげで、教室活動、ロールプレイ、学習者が作るビデオのための評価基準を考えて、研修参加の目標を果たすことができました。
内容の濃い5週間の研修はあっという間にすぎてしまいました。JFをはじめ、すべての関係者のみなさまに言葉で表せないくらい感謝の気持ちでいっぱいです。この研修中に得た知識や情報などを生かして、より良い授業を目指していきたいと思います。
本当にありがとうございました。

お問い合わせ

国際交流基金日本語国際センター
教師研修チーム
電話:048-834-1181 ファックス:048-834-1170
Eメール:urawa@jpf.go.jp
(メールを送る際は、全角@マークを半角@マークに変更してください。)