日本語教育指導者養成プログラム(修士課程)18期生 参加者の声
(研修期間:平成30(2018)年9月~令和元(2019)年9月)
日本語教育指導者養成プログラム(修士課程)は、各国の日本語教育界において指導的役割を担う人材を養成する目的で、平成13年度に開設された政策研究大学院大学との連携プログラムです。平成30年度のプログラム(研修期間:1年)は、4か国から4名が参加し、全員、日本語教育の修士号を取得しました。
リさん(李 念念/リ ネンネン/LI NIANNIAN/中国/河北工業大学)
【研究テーマ】ペアとグループの話し合いを取り入れたロールプレイの試み-河北工業大学の「基礎日本語」授業の改善を目指して-
私は中国の河北工業大学で日本語を教えています。学生時代では、日本文化、日本経済についての知識を学びましたが、教師になってから、どのように教えればいいか、どのように学生たちの学習意欲を向上させるかについて、ずっと悩んでいました。日本語教師向けの研修会に参加した時、このプログラムのことを知り、教師としての腕を上げようとする考えで修士プログラムを申し込みました。 この1年間で、日本語教授法、第二言語習得、日本語表現法、教師教育論、異文化コミュニケーションなどを履修し、日本語教育に関する基本的な理論を学び、自分の教育現場の状況に合わせて、どのようにそれを現場に活かすのかを授業でいろいろ考えてやってみました。また、自分の教育現場の問題を見出し、授業の改善案をデザインして実施し、実践授業の効果を考察する特定課題研究をしました。研究報告を作成したプロセスでは、先生が直接的にどのようにやるべきかを教えずに、自分で分析の方法や結果の考察を考えなければなりませんでした。その時、自立的に思案することに慣れなかった私は先生が直接教えてくれればいいと思ったこともあります。振り返ってみると、自分で知恵を絞って考えないと、問題が現れる時、どのように解決すればいいか、またわからないでしょう。今まで自分の授業では、いつも知識を教えることに重点を置き、学生たちに考えさせ、知識を運用させる活動は少なかったのは、そのような考えを持っていたからです。今回の実践授業の結果を踏まえ、知識を覚えることより、学生たち自分で日本語を活用する活動がもっと学習に役立つことがわかってきました。 帰国後、ここで学んだことを現場の教師たちと共有し、共同で現場の状況を分析し、引き続いて授業の改善を行うと同時に、日本語教育についての研究を続けたいと思います。
ムギーさん(ドゥルブンチョロー ムンフトヤ/DURVUNCHULUU MUNKHTUYA/モンゴル/モンゴル・日本人材開発センター)
【研究テーマ】モンゴル・日本人材開発センターにおけるポートフォリオの意義とは-総合日本語1コースの学習者と教師のポートフォリオの取り組みを例に-
私はモンゴル・日本人材開発センターで日本語を教えています。2012年から国際交流基金でJF講座講師訪日研修を連続で3回受けました。そこで、はじめて、1年間の修士のプログラムがあることが分かりました。私は今まで、日本語教師としてたくさんの勉強会や講師研修に参加してきました。しかし、それでも自分自身が日本語教師としての知識や能力が足りないことに気づきました。また、日本語教育についての理論的な知識がまだ不十分だと自覚し、今回の日本語教育指導者養成プログラム(修士課程)に申請して、日本語教育について理論的な知識を得、研究というものについて深く学びたいと決心しました。 1年間の修士プログラムでは、日本語や日本国、さらに日本語教授法や日本語教育についての幅広い知識を得ることができました。また、研究で使われる表現や方法などについての理論的な内容や実践的な活動を通して、実際に研究論文を書く演習をしました。これらのすべての科目を受けながら、特定課題研究に取り組み、最後に研究論文を完成することができました。これも、全て政策研究大学院大学、国際交流基金日本語国際センター、モンゴル・日本人材開発センターの支援のおかげだと思います。また、1年間指導したすべての先生方に深く感謝します。 帰国後、ここで得られた知識をもとに一番初めに日本語教授法の改善に生かしていきたいです。さらに、研究の活動に積極的に取り組んでいき、自国の日本語教育の発展のためにあらゆる努力を惜しまず、教師としての活動や日本語教育の研究活動に自分なりに貢献できればと考えております。
ベトさん(ファム フイン アイン ベト/PHAM HUYNH ANH VIET/ベトナム/レホンフォン専門高校)
【研究テーマ】中等日本語教育における日本人参加型授業の意義-ベトナム、ホーチミン市の高校を例に-
海外日本語教育の知識が豊富な先生方のご指導の下での、有意義な学びや満足感に満ちた1年間があっという間に経ちました。ベトナムの高校で日本語を教える私にとって、この修士プログラムに参加できたことは一生のうちの貴重な学習機会になりました。これまで「留学など考えたこともない」私でしたが、ベトナムの中等日本語教育に貢献するため、このプログラムに参加することにしました。 「修士の勉強は大変だよ」とよく言われましたが、国際交流基金の他の研修と大体同じではないかと考えた私はこの一年間を通して、その「大変さ」を強く実感できました。しかし、ベトナムの諺では「苦い木は甘い木の実を育てる」と言います。自分の教授法の改善だけではなく、今までの日本語教師の道を深く振り返って、何が不十分なのか、それはどうしてなのか、目に見えないことは何か、各授業を通して、先生方に自分で考える場、仲間と相談する場を与えて頂き、自律的に考えられるようになりました。この一年間の学びは自分が研究したいテーマを深く理解する機会だけではなく、今後の中等日本語教育について考える場にもなったと気づきました。 プログラムの先生方をはじめ、日本語国際センターのスタッフの皆さん方の温かいサポート、指導の先生の熱心な支援のおかげで、無事に「甘い木の実を育てる」ことができました。責任感が強くて、海外の学習者の心理や学び方を理解してくださる先生方、充実した一年間のカリキュラム、研究会の参加、最新の研究情報を聞く機会、それから、文楽や歌舞伎などの文化体験のおかげで、たくさんの知識やスキルを獲得したような気がします。現在勤めている学校のカリキュラム・シラバスの改善、教科書の選択、聞く・話す・読む・書く、各スキルのレベルアップのための指導、教師や学習者と日本語のネイティブ話者との協力等、今後帰国して色々活躍していきたいと思います。
ローさん(ロー カイシエン/LOH KHAI XIAN/マレーシア/マレーシア工科大学)
【研究テーマ】ロールプレイ活動を取り入れた会話能力育成の試み-マレーシア工科大学の日本語会話授業の改善-
平成最後、令和最初の第18期生として、日本の歴史的な瞬間を体験しながら、研修に参加しました。日本語教師歴約5年になっても、日本語教育に関する資格がないまま、自分の学習経験を頼りに日本語を教えていました。 もともと、理工学の卒業生なので、本プログラムに参加する前に、日本語授業を受講しましたが、教授法などについてはまったく知りませんでした。日本に352日間滞在した間、私にとって完全に新たな分野との出会いになって、毎日新大陸を発見したような気持でした。また、授業だけではなく、特定課題研究で自分の現場の問題を見直す機会も頂きました。1年間で修士号を得るのは大変でしたが、指導担当者、他の先生方、日本語国際センターと政策研究大学院大学のスタッフさん達の献身的な支援を頂いて、無事に卒業することができました。心より深く感謝を申し上げたいです。 お別れは終わりではなく、新たな出会いの始まりです。出会いは偶然でなく、選択の連続あっての必然です。同じ世界に、変化する時代の中で、色合いを変えていく絆は、掛け替えのない宝となりました。
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国際交流基金日本語国際センター
教師研修チーム
電話:048-834-1181 ファックス:048-834-1170
Eメール:urawakenshu@jpf.go.jp
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