平成13年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 平山郁夫氏 挨拶

平山郁夫氏写真1

 ただいまご紹介賜りました平山でございます。本日は国際交流基金賞受賞を心から御礼申し上げます。国際交流基金、あるいは推薦された方々、選者の方々に心から厚く御礼申し上げます。またご多忙のところ、この表彰式にご出席賜りました大勢の皆様方にも厚く御礼申し上げます。

 ご紹介いただきましたように、私は文化による平和を提唱しております。かつて日本は第2次大戦中アジア太平洋を戦場として、多くの国々、多くの方々に迷惑をかけました。そして私は、昭和20年8月6日に広島で被爆いたしました。九死に一生を得ましたが、長く放射能障害の影響を受け、大変苦しんだ時期もありました。

 画家となってこうした経験を平和への祈りとして、1959年、仏教伝来と題して作品を描きました。これが実質的に画家としてのスタートになり、日本の文化の源流である仏教東漸の道や東西文化交流の道シルクロードを歩き、取材し、学ぶようになりました。

 何回も行なっているうちに、ところどころで民族紛争あるいは宗教紛争といった内戦が多発してきました。それにつけましても、こうした東西文化の世界史を飾る数々の文化遺跡が自然崩壊あるいは戦争による崩壊、盗掘等でたくさん失われていくのを目の当たりに見て、これをなんとか保存できないものかと考えるようになりました。

 そこで私はモノとしての文化遺跡だけでなく、そこに住んでいる人を物心ともに支援する、元気づけるということで文化財の赤十字を提唱するようになりました。人道的に傷ついた兵士を敵も味方もなく戦闘力を失った場合は助けるように、どんな民族、どんな国が時代を超えて素晴らしいものを残した場合にも、こうしたものを研究し、救うことをだれかがやらなければいけないと思ったわけです。特に日本の場合は第2次世界大戦の歴史的教訓として、私は文化による平和を願っております。

平山郁夫氏写真2

 こうしてカンボジアのアンコール遺跡、あるいは中国の敦煌石窟といった素晴らしい人類の文化遺産が保存に困っているのを、少しでもと思って保存協力をいたしました。只今では、日朝関係が断絶し東アジアの平和・安定の重要な課題である北朝鮮、朝鮮民主主義人民共和国にある高句麗古墳壁画の保存を支援しております。わが国の古代奈良文化と大変深い、歴史的な関係のある優れた高句麗古墳の壁画を保存することで、文化によって日朝関係が、また東アジアの平和がソフトランディングすることを願いながら交流しております。

 こういうことに対しまして交流基金で賞をいただき、大変ありがたく感謝しております。今後とも私の創作の作品を通じて、またでき得る限りの協力でこうした文化遺産を守り、あるいは人材育成に協力して、日本の国際貢献の一助になれば大変ありがたいと思っております。本日は受賞、そしてお祝いをいただきまして、どうもありがとうございました。心から感謝してごあいさつをいたします。(拍手)

What We Do事業内容を知る