平成15年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 加藤 幹雄氏スピーチ

平成15年度国際交流基金賞・国際交流奨励賞

国際交流奨励賞/加藤 幹雄氏

国際交流奨励賞をいただくことは私にとって大きな喜びであり、誇りでもあると同時に、このような栄誉に浴しますことは文字通り晴天霹靂であり、夢想だにしませんでした。と申しますのは、私が40数年やってきたことは、このような晴れがましい舞台に自らは立たず、国際交流の裏方に徹することであり、それが私の天職であると信じて仕事をしてきたからであります。表彰に値するとすればそれは私個人ではなく、私に意欲と情熱を持って取り組める仕事を与えてくれた組織としての国際文化会館であり、またそこでの先輩、同僚、後輩の方々であろうかと思います。裏方の仕事が認められ、評価されましたことは、国際交流に携わる多くの方々にとって大きな励みになるだろうと思います。

顧みますと、創立後間もない国際文化会館に公募第一期生として1959年に就職した当時は、戦後日のそう経っていない時期でしたから、国際文化交流事業を組織的に行なう団体は、国際交流基金の前身として戦前からあった国際文化振興会と国際文化会館など極めて限られておりました。国際文化会館は、新渡戸稲造の門下生たちが中心にロックフェラー財団の財政援助を得て、海外との学術交流、文化交流を民間のレベルで進めていくための組織として、1952年に発足しました。創生期の勢いと熱気に満ちあふれる国際文化会館で仕事をはじめることができたのは、私にとって大きな幸運でした。

なぜなら、そこには高木八尺、松本重治、前田陽一、マリウス・ジャンセンなど、いずれも国際交流基金賞に輝いた大先達が、国際文化交流論を論じ、さまざまな交流事業を実践していた姿を至近距離から観察し、直接学ぶ機会に毎日恵まれたからであります。こうした先達をはじめ、国際文化会館に集まり散じた多くの内外の学者、芸術家たちが異口同音に強調していたある一つの理念が、今思い起こされます。それは、文化交流は、様々な文化や価値を体現する存在としての個人が、お互いに知的・文化的刺激を受けて、新しい創造エネルギーが発生するような接触の場を作り、それを膨らませていくことにある、従って短期的な費用と効果という観点に縛られてはならない、遠回りではあっても種を蒔き、それを丹精こめて育てていくという長期的な観点を重視すべきである、そして究極的には、狭い国益を超えるような普遍性の高い知的交流、文化交流への貢献を目指すべきである、ということでした。

このような信念は、高度情報化とグローバライゼーションが急激に進展していく21世紀の中においてもなお意味を持つであろうという信念を持ち続けながら、そしてこの栄えある賞を心強い励みとして、いっそう精進していくつもりでございます。ありがとうございました。


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