2013年8月1日 安倍総理夫人のご訪問

2013年8月1日(木曜日)、安倍晋三内閣総理大臣夫人・昭恵様が国際交流基金日本語国際センターを訪問されました。

総理夫人は外遊時にも日本語教育機関を訪問されるなど、日本語教育にご関心が高いとうかがっています。
今回のご訪問は約3時間の短いご滞在でしたが、日本語教師研修や図書館の視察、政策研究大学院大学と連携実施している「日本語教育指導者養成プログラム(修士課程)」及び「日本言語文化研究プログラム(博士課程)」の学生との懇談などを通じて、当センター事業への理解を深めていただけたことと思います。

1. 授業見学

大韓民国中等教育日本語教師研修

韓国の中等教育レベルで教えている56名の日本語教師が参加しています。研修が始まってちょうど1週間がたったところで、当日の授業内容は、研修参加者が日本語を教えるうえで抱えている課題の解決案を模索するためのグループディスカッション。「文化をどう理解させるか」「学習意欲のない生徒のやる気を引き出すにはどうするか」といったテーマごとにグループに分かれて解決策を話し合いました。
 韓国語で話し合いがなされていたところへ総理夫人が韓国語で話しかけられると、研修参加者は相好を崩し、流暢な日本語での会話に切り替わりました。
 総理夫人から「韓国と日本のために、これからも頑張ってくださいね」と励ましていただき、研修参加者の議論も一段と活発になったようです。

韓国研修参加者の皆さんとの1コマの様子の写真

韓国研修参加者の皆さんとの1コマ

研修参加者の集合写真1

海外日本語教師短期研修(夏期)

29の国・地域から49人の先生をお迎えして7月10日にスタートした研修です。大学の先生もいれば、中等教育や一般成人教育の先生もと、バラエティに富んでいます。まずは、日本語運用力が高いクラスの総合日本語の授業を見学していただきました。多くの国々から研修参加者が参加していることに驚かれた様子で、日本語教育が世界に広がる様子を実感していただきました。授業内容は、翌日の高校生との交流会に備え、留学事情に関する新聞記事を読み、研修参加者がディスカッションするものでした。実際に教材の新聞記事を手にされ、難しい読解に挑戦する参加者に感心されていました。

研修の様子の写真1

もうひとつ、夏期の短期研修から。こちらは文法の授業で「自動詞と他動詞の使い分けとそこから見られる日本の文化」という内容です。自動詞と他動詞の使い分けと、その背後にある「配慮」や「丁寧さ」について考える授業でした。ノンネイティブの日本語教師にとって、構文や表現を自ら使えるだけでは十分ではありません。どうしてそのような使い方をするのか、生徒にきちんと説明ができるよう整理された理解が必要になります。ネイティブスピーカーは深く意識せずに使い分けているところもあり、総理夫人は「なかなか難しいわね」と感想を漏らしながら、楽しんでご覧になっていました。

研修の様子の写真2

2. ご昼食

センター食堂にて、研修参加者がふだん取っている食事を召し上がっていただきました。同席した研修参加者お一人おひとりにお声をかけ、海外で日本語を教えている友人のお話をなさるなど、終始和やかな雰囲気での昼食会となりました。

昼食会の様子の写真

3. 修士・博士コースの学生との懇談

日本語教育指導者養成プログラム(政策研究大学院大学と連携実施している大学院修士コース)及び日本言語文化研究プログラム(同博士コース)の学生と懇談の時を持たれました。修士は、インドネシア、タイ、ミャンマー、チェコ、博士は、中国、ベトナムからの学生です。
 研究テーマを交えた自己紹介を学生から行ったあと、各国の日本語教育事情や文化事情など、さまざまな話題に花が咲きました。学生といっても、もとをただせば現役の日本語教師。「日本語を勉強した学生は日本語を使う仕事につけているのかしら?」という総理夫人のご質問に、教師の顔に戻って「難しい状況です。なんのために日本語を勉強したのか分からなくなる学生もいます」(チェコ)といった発言も聞かれました。日本語を勉強することにより、どのような可能性が拡がるのか。各国の日本語学習者や日本語教師、さらには教育行政に携わる方々に明瞭な示唆を与えることが、国際交流基金にとっても大きな課題だと感じた一瞬です。

学生との懇談の様子の写真
研修参加者の集合写真2

懇談終了後、而学堂前で(建物正面の「而学堂」の額は
安倍晋太郎氏の揮毫)記念撮影。


4. 図書館・国際交流基金制作教材についての説明

当センターには、教科書・教材をはじめ日本語教育に関する専門書籍を収蔵した図書館が併設されています。蔵書のなかには、国際交流基金がこれまでに開発してきた教材や辞書、助成事業によって各国で制作された教科書などがありますが、いくつか代表的なものをご覧にいれながらご説明しました。
現在開発中のJF日本語教育スタンダードに準拠した『まるごと 日本のことばと文化』をご覧いただいたところ、「楽しく勉強できそうですね」とのご感想も。
また、「ウェブ版エリン」「みんなの教材サイト」など、同じく国際交流基金が開発したウェブ教材も画面をご覧に入れながら説明しました。特に、ドラマ仕立ての教材に関心を示され、笑い声も聞かれました。

研修の様子の写真3

まとめ

現職の総理大臣の夫人が当センターを訪問されるのは、1989年の開設以来、初めてのことでした。研修参加者に対するさまざまな角度からのご質問、また日本語教材やWEBサイトのひとつひとつを真剣に見つめられるご様子から、総理夫人が日本語教育に並々ならぬ関心をお持ちであることがうかがわれ、職員一同たいへん励みになりました。

今回のご訪問を契機に、日本語教育の意義を見つめ直し、日々の事業を精力的に行っていきたいと思います。