国際交流基金日本語国際センター20周年記念シンポジウム 「JF日本語教育スタンダード—その活用と可能性—」 (第15回海外日本語教育研究会) 報告
JF日本語教育スタンダードのWebサイトを新たにオープンしました。JF日本語教育スタンダード2010に関する資料や過去に発表した資料をご覧いただけます。「みんなの「Can-do」サイト」へもリンクしています。
国際交流基金参与挨拶 2009年10月4日、日本語国際センターは、現在開発中の「JF日本語教育スタンダード(以下、JFスタンダード)」に焦点を当てたシンポジウム「JF日本語教育スタンダード—その活用と可能性—」を開催しました。本シンポジウムは同センターの設立20周年記念事業であり、同時に、効果的な教師研修の企画・実施に必要な海外日本語教育の情報を蓄積し、その成果を広く共有する目的で、1996年より年に1回開催されている「海外日本語教育研究会」の15回目にもあたります。
まとめのセッション 本シンポジウムでは、JFスタンダードの概要説明に続き、開発の過程において国際交流基金の国内外の拠点で行なわれた取り組み事例を、実際に現場の実践に携わった講師が報告しました。 概要説明では、JFスタンダードの理念は「相互理解のための日本語」であり、それは「課題遂行能力」と「異文化理解能力」によって実現されるという考え方を開発担当者が示しました。続いて、2010年3月に発表する第1版で、JFスタンダードが教育現場を支援するために以下の3つを提供することを報告しました。
関連資料展示
- 能力記述文データ検索ウェブサイト(みんなのCan-doサイト)
「~できる」のかたちで言語能力を記述している、能力記述文(Can-do)を利用した日本語教育実践を支援するウェブサイトです。 - ポートフォリオサンプル
ポートフォリオは、異文化理解能力の育成や自律学習支援を目指した評価ツールです。JFスタンダードの取り組み事例で実際に使用されたサンプルを提供します。 - 事例集
国内外の国際交流基金拠点において、Can-doやポートフォリオを実際に活用した取り組み事例を、日本語教育現場で参照できるよう、わかりやすいかたちで提供します。
様々な言語のポートフォリオ そして、JFスタンダードは教育現場の様々な実情に応じて利用することができ、教育実践をSEE(現状分析)→ PLAN(目標設定)→ DO(実施)→ SEE(ふり返り)のサイクルで捉えることを確認しました。
第1セッションでは、JFスタンダードが提案する、Can-doを利用した「See-Plan-Do-See」のサイクルによる「内省と対話」の実践例として、国際交流基金ケルン日本文化会館、同ソウル日本文化センターから、シラバス改訂や授業目標の共有についての報告を行ないました。
第2セッションでは、異文化理解能力や学習者の自律性を支援するポートフォリオ評価の活用事例として、国際交流基金関西国際センター、同日本語国際センターから、自律学習支援や作文評価についての取り組みを報告しました。
伊東祐郎東京外国語大学教授をモデレーターに迎えたまとめのセッションでは、まず始めに、開発担当者から2010年3月発表予定のJFスタンダード第1版の一部である「能力記述文データ検索ウェブサイト(みんなのCan-doサイト)」についての説明を行ないました。同ウェブサイトは、日本語教育実践(デザイン・評価・ツール開発など)を支援する目的で開発が進められており、CEFR Can-doのほか、日本語教育現場での使いやすさを考慮して国際交流基金が作成・検証したJF Can-doを提供します。利用者は、日本語コースのデザインや授業設計などの目的に応じて、Can-doを検索し、自分のフォルダに入れ、Can-doの記述を自分の現場に合わせて加筆・修正することができます。更に、利用者同士でCan-doを共有する仕組みを備え、拡張性を持ったウェブサイトとすることを計画しています。
次に、発表者と各実践を振り返りながらディスカッションを行ないました。
会場では、『JF日本語教育スタンダード試行版』をはじめ、JFスタンダードが参照しているCEFRやドイツ語プロファイル、国際交流基金の教育現場で作成されたポートフォリオ等の関連資料、日本語国際センターの制作教材を展示しました。また、図書館ではヨーロッパ各地で作成されたポートフォリオや、各地の授業シラバスなど貴重な資料の展示を行ないました。
本シンポジウムでは、日本語教師および日本語教育関係者、企業関係者、学生等各方面から多くのご参加をいただき、発表者と参加者、開発担当者の活発な意見交換を通じて、JFスタンダードが、日本語教育の現場に携わる多くの人々の協働によって展開していくものであるとの認識を共有する機会となりました。
ご参加のお申込をいただきました皆様に、改めて御礼を申し上げるとともに、当日定員超過によりご来場いただけなかった皆様にお詫び申し上げます。
皆様からいただいたご意見を踏まえ、今後もJFスタンダード第1版の発表に向けて開発を進めていきたいと思います。
「JFスタンダード」の概要
(国際交流基金日本語国際センター・三原龍志)
セッション司会:国際交流基金日本語国際センター・古川嘉子
<第1セッション>
「JF日本語教育スタンダードの試行を通した初級講座シラバスの見直し
—教師の協働によるコース改善—」(国際交流基金ケルン日本文化会館・三矢真由美)
「上級コースにおける教師と学習者の学習目標の共有と教師の内省」
(国際交流基金ソウル日本文化センター・大田祥江)
<第2セッション>
「体験交流活動を中心としたコースにおける自律学習支援とポートフォリオ」
(国際交流基金関西国際センター・石井容子、熊野七絵)
「Can-doを活用した作文活動のポートフォリオ評価の試み—実践と課題—」
(国際交流基金日本語国際センター・金孝卿、来嶋洋美)
全体のまとめ及びJFスタンダード第1版について
(国際交流基金日本語国際センター・石司えり)
全体ディスカッション
国際交流基金日本語国際センター・島田徳子
モデレーター: 伊東祐郎東京外国語大学教授
担当:日本語国際センター教材開発チーム
Eメール:JFstandard@jpf.go.jp
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