第19回海外日本語教育研究会
「「日本語教育機関調査」から見えること、現場からわかること−ベトナムとフィリピンを例に−」 報告

2014年1月25日(土曜日)に日本語国際センターのホールで開催されたこの海外日本語教育研究会には、日本語教師および日本語教育関係者、企業関係者、大学生、また当センターで研修中の研修参加者など約80名が参加しました。

研究会では、まず、国際交流基金が2012年に実施した「日本語教育機関調査」から得られた数値データを中心に、前回調査からの変化や国ごとの特徴と比較しながら、海外の日本語教育を概観しました。
さらに、ベトナム及びフィリピンに絞って、日本語学習の目的や教育上の問題点を取り上げ、分析しました。両国では「将来の就職」「今の仕事で必要」など実利的な学習目的が全世界平均よりかなり高い点が共通しています。

続いて、ベトナム、フィリピンの調査結果の背景にある社会状況や日本を含む他国との関係、さらにそれらが日本語教育にどのような変化をもたらしているかなどについての発表を、両国に派遣されていた日本語専門家と日本語国際センター海外日本語教師長期研修に参加している両国からの現職日本語教師が行いました。
ベトナム、フィリピンとも「China+1」として日本企業が進出している国ですが、フィリピンからの研修参加者が勤務する日本語学校が行っている企業内教育の内容・様子や、勤務している大学の卒業生の進路などは、「日本語教育機関調査」の学習目的の結果を裏付けるものでした。また、フィリピンからさまざまな仕事で来日した人が帰国後日本語教師になるなど教師の背景が多様化してきていることが報告されました。

ベトナムでは、学校教育機関以外での学習者が多いこと、日本語を身につけて日系企業への就職を目指す学習者が少なくないことが特徴として紹介されました。学校教育以外の機関には、民間学校の他、企業内クラス、技能実習生送り出し機関、看護師・介護福祉士候補生対象の日本語研修などがあり、日本とのさまざまな結びつきと日本語学習のニーズの多様性がうかがえます。

現職教師へのインタビュー形式での発表では「日本語教師になった理由」「抱える課題」「日常のエピソード」などに触れ、両国の現場の生の状況が報告されました。

閉会後には、ベトナム及びフィリピンの現職日本語教師と研究会に来てくださった参加者の交流の場を設けました。そこでは発表内容に関連した質問や意見交換に加えて、参加者それぞれの関心事について問いかけ、答え、話がはずんでいました。参加者は研究会に関連する資料として展示されたベトナムやフィリピンで使われている教科書なども閲覧していました。

終了後のアンケートでは、「「2012年度日本語教育機関調査」などの資料を通して、地域別、学習者別、教師数、機関数を知ることができ、非常に参考になった」、「データからわかることと先生方の生の声、どちらも聞けて良かった」、「ベトナムとフィリピンの日本語教育の特徴を対照でき、この研究会を通して、ベトナム、フィリピンをはじめ海外での日本語教育の現状を把握できるようになった」といったコメントが多く寄せられました。

当日は、図書館を開放し、日本語教育に関する図書や資料などの閲覧もできるようにし、参加者に訪問していただきました。

日本語国際センター西原所長挨拶の写真

日本語国際センター西原所長挨拶

大野日本語事業部企画調整チーム長の写真

大野日本語事業部企画調整チーム長

ベトナムの現職教師と有馬専任講師の写真

ベトナムの現職教師と有馬専任講師

フィリピンの現職教師と雄谷専任講師の写真

フィリピンの現職教師と雄谷専任講師

プログラム

13時
開会の挨拶
西原鈴子(日本語国際センター所長)
13時10分-13時50分
「2012年度日本語教育機関調査」から見えること
大野徹(国際交流基金日本語事業部企画調整チーム長)
13時55分-14時45分
ベトナムの状況からわかること
有馬淳一(日本語国際センター専任講師、元ベトナム日本文化交流センター日本語上級専門家) チャン・ティー フォン・ウェン(グエン・チー・フオン中学校)レ ジェウ・フエン(フエ外国語大学)
ドー ヴァン・カイ(ホンバン国際大学)
ライ・フエン・トン・ヌー カィン・クイン(フエ高等師範大学)
グエン フォン・タオ(ハノイ大学)
ボー ミン・ベト(カントー大学)
14時45分-15時
休憩
15時-15時50分
フィリピンの状況からわかること
雄谷進(日本語国際センター専任講師、元国際交流基金マニラ日本文化センター日本語上級専門家) マグノ シエバ(ミンダナオ国際大学)
チョティコ キャサリン(JLRC 日本語研究センター)
15時50分
閉会のあいさつ
16時
ベトナム、フィリピンの日本語教師との意見交換
16時30分
散会

参考文献

国際交流基金(2013)『海外の日本語教育の現状 2012年度日本語教育機関調査より』 くろしお出版

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