平成14年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 選考委員会座長 神田外語大学学長 石井米雄 氏

受賞者紹介  選考委員会座長 神田外語大学学長 石井米雄 氏

 今年度の国際交流基金賞・国際交流奨励賞の選考にあたりましては、過去の受賞者を含む世界各国及び日本国内の有識者、文化交流関係団体、大学等教育研究機関、在京の各国大使や海外にあります日本の在外公館長など多くの方々から推薦のありました169件の候補者・候補団体を対象とする第一次選考を経て、7月31日に都内で選考委員会が開催され、厳正なる選考の結果、国際交流基金賞2名、国際交流奨励賞3団体の受賞者を決定致しました。

石井米雄氏写真1

今年度の選考委員は、私の他に次の8名の方々です。
 国際交流基金顧問  浅尾 新一郎(あさおしんいちろう)氏
 東京外国語大学学長  池端 雪浦(いけはたせつほ)氏
 フェリス女学院院長  小塩 節(おしおたかし)氏
 文化庁長官・臨床心理学者 河合 隼雄(かわいはやお)氏
 国連広報センター所長  高島 肇久(たかしまはつひさ)氏 
 ピアニスト  中村 紘子(なかむらひろこ)氏
 オリックス株式会社会長  宮内 義彦(みやうちよしひこ)氏
 評論家・劇作家  山崎 正和(やまざきまさかず)氏
なお、高島委員は外務報道官ご就任に伴い、7月31日をもって選考委員を辞退されました。

 平成14年度の国際交流基金賞は、詩人の大岡信(おおおかまこと)氏と、米国の日本研究者でコロンビア大学教授のジェラルド・カーティス氏に決定しました。また、国際交流奨励賞は、東京YWCA「留学生の母親」運動、タイのタイ国元日本留学生協会、ポーランドのワルシャワ大学東洋学研究所日本韓国学科に決定しました。

 大岡 信(おおおかまこと)氏は、詩人として、また評論家・歴史家として、「ことば」に関する深い分析と広範な文学活動を展開し、日本語の魅力を内外にひろめることに多大なる貢献をなされました。とりわけ氏が創案された世界初の試みとしての「連詩」は、日本古来の詩歌制作の根本原理たる連歌・連句の伝統を現代詩によみがえらせたもので、諸外国の詩人が数日間差し向かいで共同制作の詩を作るものです。
 氏はすでに20年以上にわたってこの斬新な創造行為を各国で続けてこられ、いまや「RENSHI」は海外の詩人や日本現代詩研究者たちにすっかり定着した感があります。文学・ことばの分野で新しい国際文化交流の地平を拓いた功績が高く評価され、今回の授賞を決定しました。

 ジェラルド・カーティス氏は、世界の中で傑出した知日派政治学者として、日米欧にわたる学術交流と相互理解に多大なる業績を挙げるとともに、すぐれた後進の育成に尽力されています。日本の政策決定過程や日本の政治の本質に迫る、氏の鋭い分析と日米両国のメディアや学会を通じての発言は、米国においてアジア研究をリードする10人の1人として高く評価されています。
 「日本型政治の本質」、「日本の政治をどう見るか」、近著「永田町政治の興亡」など数多くの著書に加え、永年にわたるコロンビア大学東アジア研究所所長としての米国の日本研究へのご尽力、また慶応義塾大学、政策研究大学院大学、コレージュ・ド・フランスなどでのご指導などにより、日米相互理解促進に大きく貢献されてきたことが高く評価されました。

石井米雄氏写真2

 東京YWCA「留学生の母親」運動は、留学生の受入れ環境がいまだ整っていなかった1961年から40年余にわたり、ひとりの留学生とひとりの母親という組合せを通して心の交流をはかり、留学生が直面する問題を母親たちが受け止め、その改善のために力を惜しまず取り組んでこられました。
 留学生と「おかあさん」の組合せはこれまでで、54カ国・地域3555人になります。留学生談話室や相談室の活動、日本語補習教室の開催、奨学金制度の設定など、日本を離れて勉学に励む留学生の生活を物心両面で支援する粘り強く、こまやかな運動は、世界の若者との相互信頼と真の国際交流を深めるものであり、その努力が高く評価され国際交流奨励賞に決定しました。

 タイ国元日本留学生協会は、アジア地域の元留学生会の中で最も長い歴史を有し、タイ人の間で「ソーノーヨー」の名で親しまれてきました。1951年の設立以来、元日本留学生の結束と地位の向上及び相互の交流の強化、日本語教育の総合的振興、生け花・茶道などの日本文化紹介は、日本とタイ国との相互理解と友好親善の発展に大きく貢献しており、会員数は現在2700人を数えます。
 次世代を担うべき若者を対象とした日本留学フェアなども活発に行なわれており、将来にわたる息の長い人材育成と日・タイ友好関係の促進への貢献が高く評価され、今後益々のご活躍を期待して国際交流奨励賞に決定しました。

 ワルシャワ大学東洋学研究所日本韓国学科は、ポーランドで最も古い伝統を有する日本研究学科として、日本研究と日本語教育の発展に貢献してきました。ヴィエスワフ・コタンスキ教授をはじめとする優れた日本研究者の尽力により、独自の日本学の発展を促し、言語教育、言語学、文学・演劇、思想・宗教、歴史などの各分野で質の高い研究成果をあげ、中欧の中心的存在として確固たる地位を築いています。
 地域情勢が常に激しく変転する中欧地域という厳しい環境下にありながら、1919年の設立以来83年間にわたり、すぐれた研究者の輩出に努めてきた同大学の、今後ますますのご発展を願って国際交流奨励賞に決定しました。

 以上、簡単ではありますが、今年度の国際交流基金賞及び国際交流奨励賞の各受賞者と授賞理由の紹介とさせていただきます。

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