平成14年度 国際交流基金賞/奨励賞 授賞式 ジェラルド・カーティス氏 挨拶

国際交流基金賞 ジェラルド・カーティス 氏 挨拶文

ジェラルド・カーティス 氏写真1

 国際交流基金がこの権威ある賞を私に下さることは誠に光栄なことであり感謝申し上げます。特に、基金の歴史の上で重要な節目となる三十周年目にこの賞を頂くことをとても嬉しく思います。
 国際交流基金は、米国や諸外国の若い研究者に博士号取得のためのフェローシップの供与、日本の研究者と外国の研究者間の共同研究奨励、多様な文化交流・知的交流プログラムを援助する上においてなくてはならない役割を果たしてきました。基金で働く多くの方々を知り得たことは私にとって大きな喜びです。
 彼らの水準の高いコミットメントがあればこそ基金は世界的な名声を得た組織になったのです。このような国際交流基金が私の仕事を認めて下さったことに大変感激しております。

 私が最初に日本を訪れたのは1964年、日本が東京オリンピックの最後の準備をしている年の初夏でした。23歳の私はコロンビア大学の大学院生で、米加大学連合日本研究センターで日本語を勉強するために訪日しました。その時は分かりませんでしたが、私が日本と一生係わり合いを持つ始まりでした。

 当時、私も含めて多くの若い米国人は好奇心から日本に興味を持っていました。私の先生の多くは、第二次世界大戦中に陸軍や海軍の日本語学校で学んだことがきっかけで日本研究者となりました。60年代に私の世代が日本へ興味を持ったのは、日米の悲劇的対立であった太平洋戦争とは余り関係がありませんでした。米国と太平洋の反対側の国が経験していたダイナミズムや成功に興味を抱いたからです。

ジェラルド・カーティス 氏写真2

 日本経済は驚異的なスピードで伸び、日本は世界有数の先進経済国入りする時代でした。また、それは活気のある民主的な政治システムの下での経済発展でした。
 日本と西洋は歴史的にも文化的にも異なっているにもかかわらず、基本的な政治システムはよく似ている反面、民主的統治は同じであっても日本の政治制度の中には西ヨーロッパや米国で見られない特有のものもあるという日本政治の複雑さに興味を引かれました。
 とにかく、当時、うまく機能していた日本型政治システムは、どのように機能しているのか、なぜそうなったのか、それを知りたいと思って研究し始めました。それ以後40年にわたる日本政治に関する私の著作はこの好奇心を満たすためのものでした。

 日本の政治システムが今日過去にそうであったようには有効に機能しなくなったことは明らかです。民主主義的で急激的な経済成長を促進させた戦後日本のシステムはある意味でその成功の犠牲となったのです。
 日本は今根本的な経済および政治構造改革に責められています。必要な改革は行なわれるでしょうが、それがどれほど時間がかかるか不透明です。変化の方向よりもその速度が大きな問題であると思います。
 いづれにしても、変化を促進させる要因とそれを束縛する要因に関心を持つ政治学者にとって今の日本は私が40年前に訪れた時と同様に魅力的な国であります。

 今までに私が成し遂げたものはすべて私の家族、友人そして文字通り何千人もの日本の方々のご援助のおかげです。最後になりましたが、いつも変わらず私を支えてくれた妻みどり、娘エリサとジェニファー、そして、何人かの方は今日お見えになっていらっしゃいますが、たくさんのことを教えて下さった多くの友人、同僚、学生に感謝の意を表したいと思います。有難うございました。

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