平成26(2014)年 受賞者
平成26(2014)年度の国際交流基金賞の受賞者と記念講演について「をちこちMagazine」で紹介しています。
受賞者プロフィール *基金が定める国順
柳家 さん喬(落語家) [日本]
1948年8月4日生まれ。1967年に五代目柳家小さんに入門し、1981年に真打昇進。古典の人情噺や滑稽噺を得意とする実力派。日本全国で寄席や独演会の高座に出演し、五代目小さん一門の高弟として弟子や後進の育成に励む傍ら、日本語学習者に小噺をさせることで、落語を通して日本語表現や日本文化理解を深める活動を継続してきました。とりわけ、2001年から行われている筑波大学留学生対象の落語会では、落語を通して日本語表現法や文化を教えるために企画段階から参加、2006年以降毎年実施している米国ミドルベリー大学夏期日本語学校における落語公演・小噺指導のほか、韓国、シンガポール、チェコ、ハンガリー、フランス、ポーランドなどにおいて公演・指導を行っており、その活動は、各地の日本語教育関係者から高く評価されています。
1987年選抜若手演芸大賞真打部門大賞受賞。2013年第63回芸術選奨文部科学大臣賞(大衆芸能部門)受賞。2006年落語協会常任理事就任。芸術表現としての落語の魅力を生かしつつ、国内および海外における日本語教育に対する長期にわたる継続的取り組みが高く評価され、今回の授賞が決定しました。
またこれまで国際交流基金は、柳家さん喬氏の2006年海外公演(米国)を皮切りに、2007年韓国・ソウル日本文化センター主催の落語会、2012年チェコ、ハンガリー、フランスでの落語講演会、2013年ブタペスト日本文化センターでの落語講座、小噺指導の支援を行なってきました。なお、ブタペスト日本文化センターでの落語講座・小噺指導のレポートを、国際交流基金「をちこちマガジン」 よりご覧頂けます。
コメント
私の様な者がこのような大きな賞を頂けました事は夢の様な名誉でございます。海外の日本語学習者の皆さんや学生さん、更に日本の留学生の方々、と落語を通じて日本語と接している時、皆さんが日本語の感情で物事を捉えてくださった時、「あっ!お役にたてた!」と思います。そして皆さんが表現した事で聴衆が笑ったときの皆さんの嬉しそうな顔を見る時、無類な喜びを感じます、 そして改めて皆さんから教えられます。
ピーター・ドライスデール(オーストラリア国立大学名誉教授) [オーストラリア]
1938年10月24日生まれ。オーストラリア国立大学にて日豪経済関係で博士号を取得。1980年に日豪両国の官民協力の下で同大学内に設立された豪日研究センターの創始者。東アジア及び日本経済の政策研究で世界的に知られており、特にアジア太平洋地域における経済協力に力点を置いたその研究は、APEC(アジア太平洋経済協力)の創設にも大きな役割を果たしました。
著書『アジア太平洋の多元経済外交』 (英語版Allen & Unwin and Columbia University, 1988; 日本語版 毎日コミュニケーションズ、1991)でアジア調査会及び毎日新聞社主催のアジア・太平洋賞を1989年に受賞。1998年オーストラリア社会科学学術会議(ASSA)フェロー、2001年日本政府より旭日中綬章を受章。現在は同大学の名誉教授である他、東アジア経済研究所長と東アジアフォーラム編集長も務めています。長年にわたる日豪間の相互理解促進への貢献が高く評価され、今回の授賞が決定しました。
コメント
今から50年前のこの年、私は日豪関係の発展について研究するため、初めて日本を訪れました。以来長年にわたり、私が日本及びアジア太平洋地域での仕事を通じて育んできたつながりと深い友情は、決して尽きることのない創造と激励の源になっております。この賞は大きな栄誉であり、また何よりも、私たちのアジア太平洋地域における地域間協力に対する彼らの支援・献身を表彰するものであります。
モスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学日本語学科 [ロシア]
モスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学 日本語学科は、約260年の歴史を持つモスクワ国立大学の一機関として、東洋語大学(アジア・アフリカ諸国大学の前身、1972年に改称)が創立された1956年に開設。以来、ロシアをはじめ、旧ソ連地域における日本語教育の中心的な役割を担い、日本語教師・研究者の育成や日本語教材の開発に尽力。同学科の卒業生はロシア及び旧ソ連地域をはじめ、ハンガリー・ドイツ・ベトナム・中国・モンゴル等、各地の大学で日本語教育の開始・普及に携わり、同学科の開発教材はこれらの国でも広く活用されてきました。また同学科は、卒業後に同大学の大学院に進んで日本語理論や日本文学を専攻した教師も多数輩出しており、日本語教育と共に、日本語文法論・語彙論・文体論・翻訳論や日本文学の研究にも力を入れ、多数の書籍を出版してきました。
90年代以降は、日本語教育を開始する大学・学校等が大幅に増加した中、ロシアの中核的日本語教育機関として学校設立や教員の供給を支える他、生徒の学習意欲向上を図る一環として、同学科卒業生が中心となって組織された「ロシア日本語教師会」を通じ、学生を対象とした「モスクワ国際学生日本語弁論大会」や「子供日本語祭り」を企画・実施してきました。昨今急速に拡大しつつある初等・中等教育における日本語教育の導入も、同学科が付属校において先鞭をつけた実績があります。同学科の卒業生は開設以来約2000名にのぼり、教職はもちろんのこと多方面で幅広く活躍しており、日本語理論・日本文学・日本文化の研究、日本映画や小説等の文化コンテンツ普及、日露外交・経済関係の拡大にも貢献しています。また同学科卒業生を中心とする前出の「ロシア日本語教師会」は、設立25周年を迎えた2012年に外務大臣表彰を受賞しました。文化交流を支える日本語教育に、同地域で50年以上にわたって尽力し、日露両国間のかけ橋として貢献してきたことが高く評価され、今回の授賞が決定しました。
コメント (ステラ・アルテミェヴナ・ブィコワ学科長)
私は1961年にモスクワ大学に入学、1967年に卒業し、以来47年間、日本語学科で同僚の教師達と一緒に日本語教育を推進してまいりました。この度、私たちの日本語学科が国際交流基金賞を受賞することになり、大変光栄なことと、日本語学科を代表して深く感謝申し上げます。これからも私たち日本語学科の教師は、日本語・日本文学・日本文化を教えながら若い人材の育成に努め、日露相互理解をより一層深めるため全力を尽くしたいと思っております。
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国際交流基金(ジャパンファウンデーション)
コミュニケーションセンター
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