国際交流基金賞 特別企画~受賞者が見るコロナ下での国際交流~
谷川 俊太郎さんからのメッセージ

谷川 俊太郎さんの写真 copyright 深堀瑞穂

2019年受賞

詩人

谷川 俊太郎

―この一年、コロナは活動にどのような影響を及ぼしましたか。また今後の国際交流の在り方、展望についてお聞かせください。

手元に2020年に出版された一冊のコンパクトな本があります。『ホモサピエンス詩集』――四元康祐翻訳集現代詩篇。表紙にはずらりと老若男女の顔写真、日本人の顔は見当たりませんが、この人たちは皆それぞれの国の言葉で詩を書いている詩人たちなんです。オランダ、ベルギー、トルコ、中国、イスラエル、ブラジル、マケドニア、キプロスなど22か国32人の詩人たちはいずれも四元さん本人が詩祭などで直接会ったことのある人たち。現代詩というどこの文化圏でもさほどポピュラーとは言えないジャンルでの国際交流は、地味ですが文化の地下水のように脈々と続いているのですが、美術や音楽と違って文芸には翻訳という、 創作に勝るとも劣らない難事がついて回ります。 四元さんは海外の大学を出て、海外で日本企業の実務に携わりながら詩を書いている人ですから、私の目からは国際交流を日々生きている人です。彼の活動を見ていると、個人の熱意、個人のエネルギーとでも言うべきものが、国際交流をダイナミックにする動力源になっていることがよくわかります。感染していない以上物書きは、COVID-19に基本的に言語によって関わっていますが、それで事足れりとしていいのかというわだかまりは否定できません。アタマとココロに生まれる言語だけでなく、行動するカラダも国際交流に欠くことができないと思います。私の場合老いがそれを自分に許さないので歯痒いのですが、今はパンデミックが行動を制限している状況です。リモートでライブの映像と肉声を通して行動する工夫が必要ですね。

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