2021年度国際交流基金地球市民賞 受賞団体

文化・芸術による地域づくりの推進

2021年度 受賞

一般社団法人 エル・システマジャパン

東京都千代田区

代表者
菊川 穣
設立年
2012年
ウェブサイト
https://www.elsistemajapan.org/
ソーシャルメディア
https://www.facebook.com/elsistemajapan/
エル・システマジャパンの写真 クリックすると紹介動画にリンクします。

授賞理由

子どもたちが音楽を通して生きる力を育む

エル・システマとは、オーケストラ活動を通じて貧困等の社会課題に取り組むことを目的に、南米ベネズエラで始まった音楽教育プログラムです。このプログラムを日本で展開する同団体は、福島県相馬市という東日本大震災と原発事故で甚大な被害を受けた町で、日常を失った子どもたちに何か生きる希望を持ってほしいとの思いから設立されました。その活動は、その後岩手県大槌町、長野県駒ヶ根市まで広がり、海外の子どもたちと合同でオーケストラやコーラスの練習、コンサート開催にまで至るという大きな成長を見せています。音楽を通じて子どもたちが世界とつながり、自分に自信を持つよう工夫された活動であり、同時に地域活性化にも貢献しています。

受賞団体活動紹介

東日本大震災や原発事故の影響を受けた子どもたちも、音楽を通して尊厳を回復し、自己肯定感を高めていける。この理想を掲げ、エル・システマジャパンは、行政、公的機関、地域の民間組織と協力して、2012年に福島県相馬市で活動を始め、2014年からは岩手県大槌町にも広げました。2017年からは、国内における文化芸術活動へのアクセス格差の是正を掲げ、長野県駒ヶ根市で、そして、障害の有無に関わらず誰もが自由に自己表現できる場づくりを目指し、東京都でも事業を展開しています。

活動の礎となっているのは、南米ベネズエラで46年前に産声をあげた「エル・システマ」という音楽教育プログラム。家庭の経済状況や障害の有無にかかわらず、希望する子どもなら誰でも無料でオーケストラ、吹奏楽や合唱に参加できる環境を整え、継続的に質の高い指導を行う「エル・システマ」は、世界70以上の国・地域で、貧困、ジェンダー、エスニシティ等の社会課題に応える形で、独自に展開されています。

環境を整え、彼らの学びに寄り添えば、子どもたちは持てる力を大きく開花させることができます。なにより、音楽を愛し、自分の目標に向かって努力し、他者の存在を大切に思える子どもたちが育ってきています。アンゴラ、ドイツ、米国、ベネズエラ等、さまざまな海外交流を経て、より広い視野を持って社会に貢献したいと願う子も少なくありません。地域社会にも活力をもたらし始めていることも、外部評価調査等から認識されつつあります。

誰もが何らかの困難に直面しています。コロナ禍を経た今であれば尚更です。私たちも、オンラインとリアルを可能な限り組み合わせながら工夫を重ねてきましたが、わずかでも仲間とつながり歌い奏でる場をつくれたことは、制約続きの生活を送っていた子どもや保護者から、助かったとの声をもらいました。

設立10年となる今年。これまでの活動を謙虚に振り返りながら、誰も取り残さない音楽教育の新たな地平を切り開くため尽力します。

受賞の言葉

地球市民賞受賞の喜びを、活動を支える全ての仲間と共有したいです。10年前の今頃、日々悶々と考えていました。被災地の子どもたちの未来をつくるために、エル・システマは何ができるのかを。資金はなく、実現できる保証は全くありませんでした。そうした中、志の高い地域の人々や、背中を押し、支援してくれた国内外の応援団がいました。心より感謝の気持ちを伝えたいです。これからも、ますます精進していきたいと思います。


多様な文化の共生の推進

2021年度 受賞

学校法人 ムンド・デ・アレグリア学校

静岡県浜松市

代表者
松本 雅美
設立年
2003年
ウェブサイト
http://www.mundodealegria.org/index.html
ソーシャルメディア
https://www.facebook.com/Colégio-Mundo-de-Alegria-110320977183255/
ムンド・デ・アレグリア学校の写真 クリックすると紹介動画にリンクします。

授賞理由

かけはしとなる「ダブルアドバンテージ」の人材を育成

静岡県浜松市には、数多くの南米からの日系二世・三世が居住し、地域の企業の生産現場を支えています。長きにわたり地域で働き、子どもが生まれ、家族と共に地域住民として生活をしていますが、地域で公教育を受ける際には、職場での環境以上に言葉の壁が高くそびえ立ち、子どもたちが教育現場で辛い立場になる場面も多々生じてきました。その状況に課題を感じた地域の日本人女性が、外国人学校ムンド・デ・アレグリア学校を設立し、幼稚園から高校生の外国人の子どもたちが、日本と母国の両方に対応した教育を受けられるようになりました。さらには、進学や就職等の進路相談にも対応し、一人ひとりが自分の未来を切り拓くサポートを行い、国籍や年齢にかかわらないダイバーシティ社会実現への一助となっています。

受賞団体活動紹介

「すべての子どもたちに学ぶ歓びを~教育に国境はありません」と、きっかけは小さな志でした。出稼ぎの両親と一緒に来日し、日本語がわからず勉強についていけない、さらには母国語も中途半端になり、親子の会話ができなくなってしまったスペイン語圏の子どもたちが目の前にいたのです。その親たちから、母国語で学べる学校をつくってほしいと懇願されたのがムンド・デ・アレグリア学校(歓びの世界)設立のきっかけです。

子どもたちは日本語がわからない状態で日本の学校で勉強しなければならず、さらには母国語を学習する機会がないため母国語の読み書きも出来なくなってしまう状況でした。そして、学習現場からドロップアウトしたり、非行に走ったり、自らの夢や希望を失い自己実現が出来なくなってしまっていたのです。

子どもたちが「日本に来てよかった、日本でよかった」と思ってほしいとの願いから、「母国語教育で豊かな心を育み、日本語教育で生きる力をつける」をモットーに、日本社会で孤立せず、自立でき、自分の将来に夢が持てるような教育を目指しています。母国語で学習を積み上げ、第二言語としての日本語力をつけ、自らが望めば日本でも母国でも進路を見出すことができます。

スペイン語圏の子どもたちを受け入れて2年後、ブラジル人保護者の願いからブラジル課程を開講し、これまで多くの卒業生たちが日本、母国、そしてアメリカへと進学していきました。母国で医者を目指して猛勉強中の卒業生、日本で教育学部に進学し日本の学校での小学校教師を目指している卒業生、そして卒業後就職して活躍している卒業生それぞれが自己実現に向けて歩んでいます。

数々の困難な状況の中で、生徒たちからの「先生、学校をつくってくれてありがとう」という言葉がこれまで私を支えてくれています。子どもたちは地球の資源であり宝です。これからも歩みを止めず、子どもたちの未来を守るため努力していきたいと思っています。

受賞の言葉

この度は栄えある賞をいただき誠にありがとうございます。
教職員一同の努力が報われ、学校に集う南米の子どもたちの存在意義が認められたように感じております。ムンド・デ・アレグリアという名前の通り、まさに歓びの世界を感じました。地球市民、そう、私たちは何人であれ、母なる地球に誕生し平和で安全に仲良く暮らしていくことがそれぞれにとっての幸せであり、心の平和だと感じています。この賞をいただき、さらに精進し「すべての子どもたちに学ぶ歓び」の実現を目指していきます。


多様な文化の共生の推進

2021年度 受賞

特定非営利活動法人 名古屋難民支援室

愛知県名古屋市

代表者
名嶋 聰郎
設立年
2012年
ウェブサイト
https://www.door-to-asylum.jp/
ソーシャルメディア
https://ja-jp.facebook.com/door.to.asylum/
名古屋難民支援室の写真 クリックすると紹介動画にリンクします。

授賞理由

難民(及び難民申請者)を支援する東海地方唯一のNPO

名古屋難民支援室は、難民申請の手続きや申請中の生活支援、手続き後のサポート等、長期に寄り添う必要がある難民を対象に支援活動を行ってきた弁護士や地域の支援者らが、2012年に設立した東海地方唯一の難民の拠り所です。法的な手続きだけでなく、社会的な保障がない難民からの年間1,000件以上に上る相談に対応。フードバンクを通じた食料支援や難民認定後の地域での定着支援等、相談者へのヒアリングを重ねながら幅広いサポートを行っています。コロナ禍で困窮する難民からの相談も急増する中、近年は難民への理解を広めるための啓発活動にも力を入れており、多様な担い手が連携しながら難民を支える取り組みが地域に浸透しつつあります。

受賞団体活動紹介

特定非営利活動法人名古屋難民支援室(Door to Asylum Nagoya, DAN)は、東海地域に暮らす難民が法的に保護され、安定して自立した生活を送れるよう支援する団体です。

名古屋入管への難民申請者数が急増したことをきっかけに、2012年に設立され、翌年にNPO法人として登記しました。

活動の三本柱は、(1)難民や難民申請者への個別支援(法的支援及び生活定住支援)、(2)難民支援のためのネットワーク構築、及び(3)難民問題に関する理解促進です。

日本に逃れて来ている難民の中には、母国で地域のリーダーとして活躍していた人や、マイノリティーの権利を守る活動をしてきた人等、社会のあり方を考え、強い信念を持ち、自ら行動する人が少なくありません。しかし、難民はその特性上、逃れた先の国においても、同国出身者からの迫害を恐れ、彼らと深く関わることが出来ず、同国人との関係でも孤立しがちです。言葉の壁や、長期にわたる難民申請手続きの間、在留資格が不安定である等、日本の難民法制自体が抱える問題に晒される一方、擁護を求めた日本社会との文化の壁等も課題です。

そこで、名古屋難民支援室は、東海地域に暮らす難民一人ひとりに寄り添い、基本的な活動の目標として、弁護士等の協力を得ながら、難民申請手続きの法的面での支援を行っています。

また、第2の課題としては、難民申請者の脆弱な立場を支えることです。難民申請中の生活保障が法律で定められていないことや難民であるがゆえに入国時点から非正規滞在者となること、さらに、新型コロナウイルスの影響を受けているここ2年においては、在留資格や就労資格があっても職を失ったり、健康保険証や就労資格がないまま仮放免されたりして、生活に困窮する難民が増加したことを受け、地域の他団体の協力を得て、緊急生活支援等を行っています。

加えて、第3に、難民への個別の支援を通じて明らかになる日本社会の課題等をさまざまな切り口から発信し、難民の保護にとどまらず、その先いかにより良い多文化共生社会を共につくっていくかという視点で、難民問題に関する理解促進の活動を行っています。

受賞の言葉

この度は、地球市民賞をいただき、誠にありがとうございます。
日本に逃れ、東海地域に暮らしている難民の人々、難民支援のためご協力いただき、応援してくださる地域の支援団体や弁護士、そして個人の皆さま、弊団体の役員やスタッフとこの賞を分かち合います。
地球市民として、今後も難民の人々のために尽力し、より良い社会を築いていけるよう、努力し続けます。

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