2022年度国際交流基金地球市民賞 受賞団体
2022年度 受賞
特定非営利活動法人 アレッセ高岡
富山県高岡市
- 代表者
- 青木 由香
- 設立年
- 2010年
- ウェブサイト
- https://www.alece.org/
- ソーシャルメディア
授賞理由
多様性を地域の力に 外国人散在地域における多文化共生のモデル的活動
アレッセ高岡とは、外国ルーツの青少年が、日本とルーツ国の架け橋や地域社会の一員として活躍する人材となるよう、学習支援などの事業を推進する団体である。高岡市では1990年頃より多くの外国人労働者を受け入れており、外国ルーツの子どもたちが日本の学校で学ぶようになった。さまざまな課題解決を目指し、2010年に同団体が設立された。2020年度からは、こうした外国ルーツの子どもの「支援」という枠組みを超え、地域のすべての人々が互いの違いを理解・尊重し、多様性を真に受けとめる市民となっていくような教育プログラムを展開。外国人散在地域であるだけに実務的課題は多いが、多文化共生社会の実現に向けて努力を重ね、地域活性化にも貢献している。
団体活動紹介
アレッセを設立した2010年頃、富山県では外国ルーツの子どもは勉強ができない・進学できないことが「当たり前」でした。しかも、このおかしな「当たり前」は議論どころか一般の意識に上ることすらない。私たちはとにかく目の前の子どもたちを支えようと学習支援教室を始めました。それから約10年。子どもたちは大人になり、地域に住み着き、富山生まれ・育ちの子どもも随分増えました。しかし、子どもたちを取り巻く状況は依然厳しいです。一方で足元を見れば、私たちの住む地域は急速な少子高齢化や人口減少、地域経済の縮小・逼迫に喘いでいる。このまま子どもたちの可能性を見過ごし続けていてよいのか。むしろ、複数の言葉や文化の間で、物事を複眼的に捉える力と変化にしなやかに対応する柔軟性を備えた外国ルーツの子どもたちこそ、膠着した地域や世界の課題に対して風穴を空けることができるのではないでしょうか。
アレッセ高岡は、外国ルーツの子どもの本来の力を生かすことによって地域の新しい未来を築くことを目指し、市民性教育事業を進めています。これは、外国ルーツの子どもを中心に据えつつ、地域に住む全ての人が「民主的で主体的な生き方を志向し、それを実践し、他者と共に生きようとする人」すなわち「市民」となるための教育プロジェクトです。講座やSDGsフォーラム、フィルム・フェスティバルなど、既存の「支援」フィルターを外した仕掛けを通して、地域のさまざまな人を巻き込み、さまざまな違いを越えて、共に課題解決に向けて考え取り組んでいます。その過程で外国ルーツの子どもたちの可能性を示すことで、多様性の価値を共有する輪を広げつつあります。また、自分たちの教育活動を市民性という観点から見つめ直し、子どもたちと新たな関係性を築いています。
自分と異なる背景を持つ人と、互いの価値を認め、補い合い高め合いながら、共に新しい価値を創造する、そんな社会が「当たり前」になることを目指して、アレッセ高岡はこれからも活動していきます
2022年度 受賞
特定非営利活動法人 Peace Culture Village
広島県広島市
- 代表者
- スティーブン・リーパー
- 設立年
- 2014年
- ウェブサイト
- https://www.peaceculturevillage.org/
- ソーシャルメディア
授賞理由
テクノロジーと若者の参画で平和の尊さを後世につなぐ
世界から広島を訪れる人々への平和ガイドや対話プログラムを提供するPeace Culture Villageは、原爆投下から77年が過ぎ、多くの団体が語り部の高齢化や組織の維持に悩むなか、オンラインツアーやXRといったテクノロジーを活用し、若い世代も参画する新たな取り組みを展開してきた。コロナ禍で経営的にも危機を迎えるなか、広島を直接訪れることができない人に何ができるかをスタッフたちが考え、旅行会社と連携しオンラインツアーや授業を企画。また若者が有償で仕事として参画するしくみを構築し、平和文化の分野に留まらず、これからの国際交流活動のあり方にも新たな可能性を示している。
団体活動紹介
PCV(Peace Culture Village)は、広島にて平和教育を行うNPO法人です。 平和記念資料館を運営する広島平和文化センターの元理事長のスティーブン・リーパーにより設立され世界中、日本中の人々へ平和を考えるきっかけを提供しています。
1945年に人類初の原子爆弾が投下された広島は、焼け野原から復興し世界へ平和の尊さを発信し続けてきました。 その役割を担う多くは被爆者でしたが、被爆者の高齢化に伴い課題を抱えています。2025年には被爆者団体の37%が活動困難になると言われています。 理由の一位は継承者不足 二位は資金不足です。 PCVはこれらの課題を解決し継承者の育成、持続可能な平和活動の仕組み作りを行うため”平和をつくる仕事をつくる”をスローガンに活動しております。
活動内容としては、平和を探求する若者のためのオンラインスクール“Peace Culture Academy”の運営、広島の若者達による団体・学校向けの有償ガイドツアー、ワークショップの運営のほか、テクノロジーを活用した継承活動の創造や、世界に向けたオンラインプログラムの提供など、多岐にわたります。
2021年度は44カ国10000名へプログラムを提供する事ができ、今年度は16000名への提供を予定しています。また、現在は同じ課題を抱える長崎・鹿児島(知覧)・沖縄と連携し、地元団体への支援を行なっています。私たちの活動がお役に立てますと幸いです。
これからも広島から持続可能な平和活動の創造を目指していきます。
受賞の言葉
この度は名誉ある賞へ選定を頂きありがとうございます。私たちにとって「地球市民」という概念は大きなものです。 被爆者の田中稔子さんが私たちへ「世界中に友達を作ってください」と伝えてくれます。「もしも世界中に友達がいれば、戦争が起きた時に友達の顔が浮かぶでしょう。その時に平和が自分ごとになる」と。 「世界中へ友達を作る」は大きな夢ですが、地球市民の立場で友達と力を合わせ、より良い未来を創造していきたいと思います。
2022年度 受賞
特定非営利活動法人 地域サポートわかさ
沖縄県那覇市
- 代表者
- 上原 廣保
- 設立年
- 2005年
- ウェブサイト
- https://cs-wakasa.com/
- https://cs-wakasa.com/kouminkan/
- ソーシャルメディア
授賞理由
ともに考え、住民の活動を創造的に後押しする地域づくりの要
地域サポートわかさは、沖縄県那覇市若狭地域で住民主体のコミュニティ形成を担うNPO法人である。住民の宝である那覇市若狭公民館の民営化に際し、管理運営を担うべく近隣住民が協力して2005年に設立。住民自治を尊重し、地域住民の自発的な活動を後押しする一方、アーティストとの協働などユニークな視点で企画する質の高いプログラムや細やかな情報発信に定評があり、全国的にも注目の存在となっている。
「誰一人取り残さない」をモットーに、地縁組織に属さないひとり親世帯やさまざまな家庭環境にある子どもたち、在留外国人も意識し、セーフティネットの役割も果たす。近年は増加するネパール人住民の活動も支援し、住民との交流と相互理解に一役買っている。
団体活動紹介
地域サポートわかさは、若狭が浦地域(那覇市西側の沿岸部)を明るく住み良いまちにすることを目的としたNPO法人です。地域の強い要望によって設置された那覇市若狭公民館の民営化が検討されはじめた頃、その受け皿となることを視野に入れて、地域住民や自治会、民生委員、PTAや学校関係者、公民館利用者などによって2005年に設立されました(2007年NPO法人認証)。
2010年に若狭公民館の一部業務を受託し、2015年からは指定管理者として、若狭公民館を拠点に多様な機関団体と連携・協働しながら、地域に根ざした取り組みを行なっています。
「公民館のあるべき姿と今日的指標」(全国公民館連合会/1967年)の理念をもとに「人間尊重の精神」を基底に、「住民の自治能力の向上」をねらいとして、地域のネットワーク組織である強みを生かしながらも、地縁組織に属さないひとり親世帯やさまざまな環境にある子どもたち、そして急増する外国人労働者や留学生など、多様な背景を持つ方々の主体性を尊重しながら、自発的な活動が生まれるように促しています。
その中で、生活圏に公民館のない地域に出向く『パーラー公民館』やアーティストを顧問とする『アートな部活動』、ユニークな防災プログラムの取り組みは全国的にも注目されています。
コロナ禍においては、収入源を失い困窮している非正規雇用のシングルマザーや留学生に対する食糧支援をはじめ、オンラインを活用したやさしい日本語で伝えるコロナ対策など、当事者団体や専門家、NPOなどと連携・協働しながら、幅広く活動を展開しています。
地域にある多様なコミュニティを顕在化し後押しすることで、それぞれの活動が広がり、その重なりから豊かな関係性が生まれます。その積み重ねにより属性を超えて包摂する地域社会が実現すると信じて取り組んでいます。
受賞の言葉
この度は、栄えある国際交流基金地球市民賞に選考いただき感謝申し上げます。若狭公民館開館30周年の記念の年にこのような大きな賞をいただき、喜びもひとしおです。
「誰一人取り残さない地域社会の実現」を目指して、多くの機関・団体、そして地域住民の皆さまと共に学び合いながら日々模索しています。協働パートナーとの喜びの分かち合いを励みとしながら、さらに前進できるよう尽力していきます。
受賞の言葉
人も金も不足し保守的な地方、しかも、外国ルーツの子どもの存在自体なかなか認識されない外国人散在地域。全く光が当たらない暗闇の中で、ただただ子どもたちの可能性を信じて活動を続けてきました。そんな私たちの活動に地球市民賞が光を照らしてくれたと感じています。それは、外国ルーツの子どもたちの可能性を照らす光でもあると思います。受賞をきっかけに、多様な子どもたちが市民として切り拓く、自らの、そして、地域の未来への視座を、地域の多くの人と共有したいと思います。