2025年度国際交流基金地球市民賞 受賞団体

2025年度 受賞

多言語絵本の会RAINBOW

東京都目黒区

代表者
石原 弘子
設立年
2006年
ウェブサイト
多言語絵本の会(Multilingual Picture book Club ) RAINBOW
ソーシャルメディア
RAINBOW 多言語絵本の会(Facebook)
多言語絵本の会RAINBOWの写真

授賞理由

母語を大切にしながら、多文化共生社会の基盤を育てる

多言語絵本の会 RAINBOW は、「国を超えて移動する子どもが母語を忘れないように、日本語で育つ子どもが外国語に関心をもつように」という活動理念のもと、日本人と外国ルーツの人々の間に共感が生まれることを願い活動を展開している。多言語よみきかせ、多言語電子絵本の制作、小中学校での国際理解授業の実施を通じた多角的なアプローチで外国にルーツを持つ子どもの母語継承や日本の子どもの異文化理解のきっかけを創出している。「人と人が心でつながる地球市民」の理念を実践する市民活動としての意義は大きく、その活動がより多くの人々に認知され、今後も継続的に発展することを期待し、本賞を授与する。

受賞団体からの活動紹介・メッセージ

日本で暮らす外国出身の人々に対しては、日本語教育が盛んに行われていますが、外国ルーツの方の母語や母国語も、同様に大切にされるべき言語です。

2003年、日本語支援の現場で、「私の言葉は日本では必要がない」と話した外国出身の母親に出会ったことが、活動の原点の一つです。外国出身者にとって日本社会では日本語が必要ですが、母国語や母語も親、親戚、友人とつながり続けるために必要で、子ども世代にとっても、親の言語は自分のルーツです 。

母語や母国語が親から子どもへ受け継がれることを願い、2006年に、都内の図書館で外国語と日本語を交互に読む「多言語よみきかせ」を始めました。2009年には、目黒区が発行した『目黒区子ども条例のえほん「すごいよ ねずみくん」』を外国ルーツの親子にも読めるようにしたいと考え 、マルチメディアデイジー絵本(多言語電子絵本 )の制作を始めました。インターネット上で外国語と日本語を同時視聴できる作品です。

また2009年以降、 都内の小中学校で外国人と協力し国際理解の授業を行ってきました。授業の中では多言語よみきかせを行い、子どもたちにさまざまな外国語と日本語を聞いてもらっています。

2023年から2025年にかけては、『子どもの歌 カラオケ付き』も制作しました。同じ曲でも国によって内容が異なる歌が存在します。複数の言語話者が集まる場で、それぞれの国の歌を歌えるようにすることを目的として、歌集も発売しました。

2025年7月に童心社が発売した9言語対応の赤ちゃん絵本『いち にの さん!』(スギヤマカナヨ作)を電子絵本化した際、この作品が「みんな違って、みんないい」という価値観を体感できるものであることに気が付きました。この作品を活用することで、複数の言語を用いた参加型のよみきかせを通して、いっしょにいることの楽しさを味わってもらえると考えています。

受賞の言葉

2009年から始めた多言語電子絵本制作では、多くの外国人が喜んで、日本語の絵本やお話を自国語に翻訳し、朗読してくださいました。この受賞の喜びを多くの協力者にお礼の気持ちとともに届けたいです。外国人は社会に問題があって生じる「社会モデルの障害者」だと言われるようになってきました。読書がだれにとっても楽しいことになるように、この受賞のニュースで、バリアフリー図書に注目する人が増えることを願っています。


2025年度 受賞

特定非営利活動法人 越後妻有里山協働機構

新潟県十日町市

代表者
理事長 北川 フラム
設立年
2008年
ウェブサイト
大地の芸術祭
ソーシャルメディア
越後妻有 大地の芸術祭の里(十日町市・津南町)(Facebook)
大地の芸術祭(X)
大地の芸術祭 (Instagram)
越後妻有里山協働機構の写真

授賞理由

違いを祝し、共に走る――「大地の運動会」から始まる協働の祝祭

越後妻有里山協働機構は「大地の芸術祭」で培われた協働の精神を受け継ぎ、地域とアートを結びつけ た文化活動を展開するために 2008 年に設立。廃校を活用した拠点づくりや住民・アーティスト・教育機 関・企業との連携を通じて、地域文化を支える社会基盤を築いてきた。その理念のもと地域に実装された 「大地の運動会」は日本独自の運動会を再解釈し、多様な人々が身体を通して交流する場をつくり出し ている。在住の外国人を含む多様な人々が同じチームで競技し、応援し、食事を共にし、互いの息づかい を分かち合う時間は、共に生きる感覚を身体で実感できる特別な体験であり総合芸術活動である。笑い 声と声援が交差する共生社会の祝祭として「大地の運動会」を高く評価し、本賞を授与する。

受賞団体からの活動紹介・メッセージ

NPO法人越後妻有里山協働機構は、「大地の芸術祭」で生まれた作品や施設、プロジェクトを通年事業として運営し、越後妻有を魅力ある地域にしていくために2008年に設立されました。地元出身者や県内外からの移住スタッフで構成され、地元の方々や作家、こへび隊(「大地の芸術祭」の里・越後妻有(十日町市・津南町)を舞台に、芸術祭を支えるために活動するボランティア)、地元サポーターの方々に支えてもらいながら3年に1度の「大地の芸術祭」、合間2年間の作品メンテナンス、企画展・イベント・ワークショップの開催、農業、ツアーの実施、グッズやお米の販売、食宿泊施設の運営、それら全ての広報や誘客促進に従事しています。

農業事業は、「大地の芸術祭」からの派生プロジェクトとして、2003年から「棚田バンク」サービスを導入・スタートしました。松代エリアは色濃い農耕文化をもつ一方、棚田の多い山間地域は大型機械を使えず、高齢化とともに耕作放棄地が増え続けています。それらをできる限り引き受け、耕作しながら棚田の保全活動に努めており、「まつだい棚田バンク」として会員から資金提供を受ける代わりに、NPO法人が農作業を担い、収穫した新米を分配する、それが「まつだい棚田バンク」の制度です。企業会員も増え、2025年現在約11.5haを耕作、会員参加型の田植えや稲刈りイベントには毎年200人以上が参加され、採れた新米はショップ販売や食施設でも提供しています。

さらに2015年には女子サッカー実業団「FC越後妻有」を発足。NPO法人職員としてサッカーをしながら「大地の芸術祭」運営のほか担い手不足の農業に従事する、「他に類をみないプロジェクト」の先駆け的なプロジェクトです。まだまだマイナーな女子サッカーは、環境整備や引退後の保証など様々な問題を抱えています。FC越後妻有の選手は、農業、作品メンテ、ツアー、食、美術館運営、広報など「大地の芸術祭」の各事業に携わっており、サッカーと合わせて選手が農業や芸術祭運営などの技術を身に着け、高齢化する地域を支えながら自身のキャリアを形成しています。現在地域リーグで活躍していますが、地域リーグの試合では珍しい300人以上が応援に駆け付けることもあり、選手たちの存在が地域を活気づかせる風景が広がっています。

NPO法人越後妻有里山機構は、「大地の芸術祭」によって地域・世代・ジャンルを超えたネットワークを育み、越後妻有の未来につなげることで、第一に、住民がいきいきと暮らすこと、第二に、地域の働く場所が増えること、第三に、価値観や境遇の異なる人々が共存できる地域にしていくことを目標にしています。

受賞の言葉

日本の小・中学校の運動会は、爺さま、婆さまから未就学児まで参加する、世界にも珍しい、地域をあげての伝統的な催しです。玉入れ、大玉送り、綱引き、駆けっこ、借り物競争等の種目に始まって、満艦飾(まんかんしょく)のグラウンドに音楽・ダンス付きの応援、食事の交換、手縫いのゼッケン、立看等、五感全開の楽しい交流・歓待の時空間が展開される喜びです。

ホモ・サピエンスが辿り着いた日本列島の、雪深い土地の米の収穫時に、異邦人、障がい者、経済的格差に生きる子どもたち、地球市民の遊びが受賞でき、とても嬉しいです。

2025年度 受賞

一般社団法人 多文化リソースセンターやまなし

山梨県甲府市

代表者
代表理事 加藤 順彦
設立年
2012年
多文化リソースセンターやまなしの写真

授賞理由

情熱を持って多文化社会の未来を切り拓く「みんなのいばしょ」

一般社団法人多文化リソースセンターやまなしは、外国籍の子どもと家庭への保育・教育支援を軸に、 電話相談、多文化共生事業など多様な活動を行う。団体設立者は長年のブラジル駐在経験から日本で暮 らす外国人の生活課題を痛感し、行政と連携して継続的な支援体制を築いてきた。バイリンガル職員を 配置した先進的な小規模保育園「みんなのいばしょ」と「イノヴェ学園」は地域から高く評価され、幼少 期からの日本語教育や地域交流を重視して多文化共生を促進している。強い情熱をもって課題解決と社 会の調和をめざす取り組みを高く評価し、本賞を授与する。

受賞団体からの活動紹介・メッセージ

海外から就労目的で初めて日本に来る外国人が耳にする言葉に「3つの壁」があります。「言葉、制度と心の壁」です。この3つの壁を乗り越えるためには、まずは日本語の勉強が大事であり、日本語が話せて読み書きができれば次の課題はクリアできます。20年前にブラジルから戻った目的は、家族と共に来日し、日本語で苦労している外国籍の子ども達のために通訳がいる保育園を作ることでした。認可外保育園から出発して3年目にようやく中央市からの認可を受けることができ、その間、保育園職員の養成に努め、通訳ができる外国人スタッフも育成しました。日本語が分からない外国人家族の存在は予想以上に多く、幼い子どもを抱えての慣れない国での生活はママ達にとって容易ではありません。家族みんなが楽しく過ごせるような心温まる小規模保育園を目指し、園の職員全員で頑張った結果、10年目にしてようやく日本の保育制度に準拠した今の小規模保育園の形ができました。こうした活動と並行して、依然として多文化共生という言葉が一般市民には耳慣れない日本の中で、外国人を市民として受け入れてもらえるような環境づくりにも力を注いできました。特に、外国人がさらに積極的に日本人社会に溶け込んでいけるような政策の推進を絶え間なく地方行政に求めてきました。その結果、日本人と外国人の交流につながる現場中心のイベントを行政と共に行えるようになりました。現在は、当法人が運営する小規模保育園「みんなのいばしょ」では0歳~2歳児の園児しか預かることができないので、子ども達の日本語の勉強が途切れないよう3歳~5歳児向けの小規模保育園を作りたいと企画を練っています。ママ達が子育ての楽しさを感じることができるような、「放課後児童教室」「放課後デイサービス」「学習塾」「産前産後レスパイト・スペース」「子ども達の発表用ステージ」「目いっぱい遊べるプレイグラウンド」「簡易宿泊所」等、保護者と子ども達が一体化した新しい形の保育園を追求していきたいと情熱を滾らす今日この頃です。

受賞の言葉

世界中から日本にやってくる外国籍の子ども達が、日本で一日も早く自立の道を歩んで欲しいとの思いから通訳がいる小規模保育園を作りました。毎日、日本語の勉強に励む子ども達の努力に応えるためにも、子ども達が楽しく学んで遊べて家族みんなが幸せを感じられる「みんなのいばしょ」づくりに挑戦中。今回の受賞を励みにして、一人でも多くの子ども達を輝かしい未来に送り出したいと思います。

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