理事長からのごあいさつ
2023年度は、コロナ禍以降、訪日インバウンドはじめ、国境を越えた人々の往来が急速に回復した1年でした。
国際交流基金(JF)は、2023年度も、25か国・26か所に有する海外事務所などを通じて「文化(文化芸術交流)」「言語(日本語教育)」「対話(日本研究・国際対話)」の3つの分野で、広く世界で事業を展開しました。
「文化」の分野では、日本ASEAN友好協力50周年を記念し、民謡ユニットMIKAGE PROJECTによるコンサートをタイとマレーシアで、またシンガーソングライター・アニメソング歌手の伊東歌詞太郎氏による公演をフィリピンとベトナムで行う等、様々な記念行事や交流事業を実施し、ASEAN各国で熱狂的に迎えられました。また、新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』のインド公開に合わせて、監督及びコミカライズ版の作者甘島伝記氏を現地にお招きしてプレミア上映を開催する等、世界各国で日本映画の上映会を開催し、ファンや映画関係者との交流の場を創出しました。
「言語」の分野においては、日本国内47都道府県、海外91の国・地域、269都市で実施された「日本語能力試験(JLPT)」の応募者数が過去最高の約148万人を記録し、在留資格「特定技能1号」の取得に必要な日本語能力水準の測定にも活用されている「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」の受験者数が10万人を突破しました。日本国内の外国人就労者増に関わるさまざまな動きも視野に入れつつ、海外日本語教育機関への支援や、教師・専門家を対象とする研修の実施、学習教材やeラーニングコースの開発・提供等の方策を効果的に組み合わせながら、日本語学習ニーズの高まりと多様化に応えています。
「対話」の分野では、村上春樹作品を切り口に、国内外の作家やアーティストが現代日本文学の国際化を議論するシンポジウム「世界とつながる日本文学 ~after murakami~」を早稲田大学と共催し、国内外の注目を集めました。また、日本ASEAN友好協力50周年記念事業として、日本とASEANの大学生が、共通する社会的課題の解決に向けたアクションを共に思索する「日ASEANユース・フォーラム Take Actions for Social Change 2023」を実施して、フィールドトリップ等の協働体験を通じた若者間の信頼づくりや次世代のリーダー育成を図りました。
2024年度には、2023年12月の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議で発表された、日本とASEAN間の包括的な人的交流事業「次世代共創パートナーシップ -文化のWA2.0-」を本格的に開始します。JFが掲げるミッション「日本の友人をふやし、世界との絆をはぐくむ」を職員一同今一度心に刻みながら、今後とも国内外で積極的に活動してまいります。引き続き皆様のご理解・ご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。
2024年10月
独立行政法人国際交流基金(JF)
理事長 黒澤 信也