日本の豊かな文化芸術を海外へ紹介

伝統芸能から現代アートまで多様な日本文化の魅力を、展覧会、舞台公演、翻訳出版、映画等さまざまな形で世界に向けて紹介しています。2023年度は、コロナ下に始めたオンラインを活用した取り組みを継続してより広い層に日本の文化を届けつつ、日本のアーティストが海外に渡航して観客の熱気の中で行う対面の催し事業や、人と人が直接顔を合わせて対話する交流事業を、本格的に再開しました。

交流の基盤づくり ― 専門家同士の対話の機会創出

国や言語、文化を越えて専門家同士が絆を深め、交流を重ねることが、共に新たな芸術を創り出していくためには不可欠です。2023年度は、コロナ下ではやむなく中断していた文化芸術専門家交流事業を全面的に再開し、文化芸術諸分野において専門家同士の交流・対話事業を行いました。
美術分野では、2023年10~11月に大洋州と欧州の美術館キュレーターを5名ずつ招へいし、日本各地での現代アートの現場視察、情報収集とネットワーキングの機会を提供しました。
舞台芸術分野では、2023年12月の横浜国際舞台芸術ミーティング(YPAM)開催時期に合わせて、世界5か国から、影響力の大きいフェスティバルや劇場のディレクターら計6名が来日。日本の舞台作品を集中的に鑑賞し、自国で紹介する日本のアーティストを選んだり、自身の活動について発表したりしました。
また、文学・文芸分野でも、2024年2~3月、中東欧11か国から11名の出版編集者グループの招へい事業を行いました。10日間の滞日中、日本の文学や出版事情について最新情報や専門知識を得てもらうとともに、日本の出版社とのネットワーキングと協議・交渉の機会を作りました。成果は早くも形を見せ始め、参加者の帰国と同時に、それぞれの国で計20余件の日本文学翻訳出版企画が動き出しています。

早稲田大学国際文学館(村上春樹ライブラリー)の階段本棚に参加者が腰かけた記念写真
中東欧出版編集者グループ招へい
早稲田大学国際文学館訪問

専門家交流の成果 ― UAE「久門剛史:丁寧に生きる」展

「久門剛史:丁寧に生きる」展の展示作品の写真
‘Tsuyoshi Hisakado: Polite Existence’ (2023), Jameel Arts Centre, Dubai.
Courtesy Art Jameel. Photography by Daniella Baptista.

外交関係樹立50年を記念し2022年に行ったアラブ首長国連邦(UAE)キュレーター招へいでまかれた種が、2023年に展覧会として実を結びました。
2023年5~9月に、中東初の現代アートセンターであるUAEのアート・ジャミール・センターで開催された「久門剛史:丁寧に生きる」展。前年にネットワークを構築した日本・UAE両国の学芸員らが企画を練り、世界中の人々が集まる都市ドバイで、これまで中東で紹介される機会が少なかった日本の現代アートに焦点を当てた意欲的な試みです。
専門家同士の交流が生んだ成果は、「会場全体を効果的に満たした繊細な彫刻と音は、両国の文化交流の重要性を示した」、「ドバイで見た最高の展覧会の一つ。……作品の質と普遍的なメッセージに強く感銘を受けた」等、現地でも大きな評判と高い評価を得ました。両国美術関係者は、本展の成功を踏まえ、次なる協働に向けてさらに交流を深め続けています。

世界各地での日本映画上映

80か国・地域において日本映画の上映会を開催し、約24万人の観客に日本映画を届けました。外交関係樹立100周年を迎えたトルコでは、オープニング事業として日本映画祭が開催され、震災からの復興を描いた作品『岬のマヨイガ』の川面真也監督が登壇されました。米国では小津安二郎監督生誕120周年記念特集を開催。メキシコでは女性監督の特集として田中絹代監督作品が上映され、日本研究者や映画史研究者を招いた鼎談も行われました。
また、2023年に日本ASEAN友好協力50周年を迎えたASEANのうち、インドネシア、カンボジア、タイ、シンガポール、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ラオスの8か国とオーストラリア、インドを加えた10か国で日本映画祭(JFF:Japanese Film Festival)を開催し、日本の文化や社会の多様性を伝えました。インドでは、新海誠監督の最新作『すずめの戸締まり』インド公開にあわせ、ファンに向けたプレミア上映会をムンバイで開催し、新海監督による舞台挨拶やサイン会、コミカライズ版の作者甘島伝記氏によるサイン会やワークショップ等、インドのファンとの交流の場を創出しました。

マイクを手に舞台挨拶をする新海誠監督
JFF関連企画:映画『すずめの戸締まり』インドプレミア上映 舞台挨拶(新海誠監督)

スクリーンの前で椅子に座ってマイクを手に話す川面真也監督
外交関係樹立100周年を迎えたトルコにて、『岬のマヨイガ』上映後の川面真也監督のQ&Aの様子

スクリーンをバックに舞台中央のスタンドマイクの前とハンドマイクを手に舞台袖に2名の人物が立っている会場の様子
チェコ・プラハにおける日本映画祭の会場の様子

斜め横から見た観客の様子。
インドネシア日本映画祭にて、観客の様子

ミニシアター特集配信企画「JFF+ INDEPENDENT CINEMA

日本の地域社会と深く結びつきながら多様な日本映画の秀作を上映している地方都市の小規模な映画館(ミニシアター)に焦点を当てた特集配信事業「JFF+ INDEPENDENT CINEMA」を、2022年12月から2023年6月、2023年8月から同年10月の2回にわたって全世界向けに実施しました。
第2回においては、2023年8月から2024年3月末までに特設サイトを訪問したユニークユーザー数は約27万人、ページビュー数は約71万回を記録し、132か国・地域で視聴された配信映画の延べ視聴者数は約6.2万人、再生回数は約9.3万回に及びました。また、ミニシアター紹介映像の視聴回数は1.5万回を数えました。

Step into Japan JFF+ INDEPENDENT CINEMA2023の広報イラスト

映画『きみの鳥はうたえる』のワンシーン
『きみの鳥はうたえる』

映画『わたしの見ている世界が全て』のワンシーン
『わたしの見ている世界が全て』

映画『左様なら今晩は』のワンシーン
『左様なら今晩は』

上田映劇(長野県上田市)の外観
上田映劇(長野県上田市)

シネコヤ(神奈川県藤沢市)の内部
シネコヤ(神奈川県藤沢市)

シネマ尾道(広島県尾道市)の内部 入り口付近
シネマ尾道(広島県尾道市)

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