顕彰事業
国際交流基金賞
学術、芸術その他の文化活動を通じて、国際相互理解の増進や国際友好親善の促進に特に顕著な貢献があり、引き続き活躍が期待される個人・団体へ国際交流基金賞を授与しています。50回目となる2023年度は、78件の中から、3件の受賞者を決定しました。授賞式後に開催された国際交流基金賞50周年記念レセプションには秋篠宮皇嗣同妃両殿下のご臨席を賜りました。
2023年度国際交流基金賞の受賞者・団体及び授賞理由
宮城 聰
(演出家/SPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督・静岡県コンベンションアーツセンター館長)【日本】
1990年に「ク・ナウカ」を旗揚げし、「語る」俳優と「動く」俳優が二人一役で演じる独自の演出手法で注目を集め、2007年にはSPAC-静岡県舞台芸術センター芸術総監督に就任し、自作の上演と並行して世界各地から現代社会を鋭く切り取った作品を招き、「世界を見る窓」としての劇場づくりに尽力している。2014年のアヴィニョン演劇祭での『マハーバーラタ』、2017年同演劇祭での『アンティゴネ』で、日本人の死生観を反映した同時代的テキスト解釈とアジア演劇の身体技法や様式美を融合させた演出が国際的に高い評価を受け、上演や演出の依頼が絶えない世界的な演出家となる。こうした活動が国際相互理解の促進に貢献している。
© Ryota Atarashi
小川 洋子
(小説家)【日本】
1988年のデビュー以来、数多くの長編・短編小説を生み出し、『博士の愛した数式』『密やかな結晶』をはじめとする作品世界は、多忙な現代社会からは距離を置いた一見穏やかな空間であるが、登場する人物たちは、失われゆく記憶や命と向き合い、それらを慈しみつつ、普遍の物語を生きている。端正な日本語で書かれた作品は、2023年半ばまでに36作品が、合わせて37言語に翻訳され、世界各地で読者の共感を得てきた。近年は国際的な文学賞へのノミネートも相次ぎ、世界各地の読者だけでなく、日本語作家、さらには日本語教育に携わる人々を牽引する存在となり、文学や日本語を通じた国際相互理解の促進に大きく貢献している。
© 講談社
ペルー日系人協会
(APJ)【ペルー】
10万人超のペルー日系人コミュニティーを支え、日本文化の普及に努めてきたペルー日系人協会は、日秘文化会館を中心に日本語教育を促進し、今では南米における日本語教育のハブ的存在となり、日本の古典文学の翻訳出版や、中南米各国の日系人対話を企画するなど、日本研究、国際対話分野でも中心的存在となっている。また医療分野でも広く評価を得るなど活動の幅を広げている。日ペルー外交関係樹立から150周年、移住開始から124年を迎えた記念の年に、多分野で日本とペルーの国際文化交流に大きく貢献してきたことを評価した。
© APJ
地球市民賞
日本と海外の市民同士の結びつきや連携を深め、互いの知恵やアイディア、情報を交換し、ともに考える先進的で独自性のある活動に取り組む日本国内の団体を顕彰しています。39回目となる2023年度は3団体が選出されました。授賞式及びレセプションには高円宮妃殿下のご臨席を賜りました。
2023年度地球市民賞の受賞団体及び授賞理由
特定非営利活動法人 WELgee
WELgeeは、来日する難民のキャリアや人生の目標に基づく教育プログラムを提供し、雇用企業とのマッチングや就労後の伴走支援を通じて、誰もが未来を描ける日本をめざす活動を行っている。就職支援に留まらず、難民のキャリアアップと国際理解の促進にも新たな挑戦を行うそのアプローチは、難民支援のみならず、在留外国人支援や国際理解活動においても示唆に富むものである。
社会福祉法人 国際視覚障害者援護協会(IAVI)
国際視覚障害者援護協会(IAVI)は、アジアをはじめとする発展途上国から視覚障がいのある若者たちを日本に招き、盲学校への留学支援を通じて、あん摩マッサージや鍼灸の職能を身に付ける手助けとなる活動を行っている。自立や社会参加が困難な国々の視覚障がい者に対して未来を切り拓くきっかけを提供するとともに、発展途上国の障がい者理解の増進にも貢献している。
特定非営利活動法人 ABCジャパン
ABCジャパンは、日系ブラジル人当事者によって設立され、神奈川県鶴見区を中心に、教育・進学・就労等、外国人住人の人生に寄り添った支援を行っている。各種事業で学校や行政と連携し、在住外国人自らが地域の中で積極的に活動する同団体の取り組みは、「日本人が外国人を支援する」という従来の関係性を超えるものであり、今後他地域のモデルとなることが期待される。