2023 海外事務所の取り組み
JFは、25か国に26の海外事務所(2024年3月31日現在)を設け、地域・国別事業方針のもと、各国・地域の状況に合わせ、「文化芸術交流」、「日本語教育」、「日本研究・国際対話」の各分野でさまざまな活動を展開しています。各事務所による活動報告をご紹介します。
1. イタリア 
ローマ日本文化会館
松田青子氏トークイベント「おばあちゃんたちの粘り強さ」
イタリアに日本の近代文学を広めることを目的に創設された伊日財団の「第2回日伊ことばの架け橋賞」の第2回受賞作家・松田青子氏と翻訳家・ジャンルーカ・コーチ氏(トリノ大学)によるトークイベントを、同財団との共催で実施しました。イベントには、特別ゲストとして、現代イタリアを代表する作家であり日本ともゆかりの深いダーチャ・マライーニ氏を迎えました。250名の来場者を得た会場からは時折拍手が湧き、女性作家同士の対談企画を評価する声が寄せられました。
2. ドイツ 
ケルン日本文化会館
ケルン・京都姉妹都市提携60周年記念事業
© june ueno
2023年はケルン市と京都市の姉妹都市提携60周年にあたり、在デュッセルドルフ総領事館と共に実施した「第5回京都デー」や、両市にゆかりのある日独現代アーティストのグループ展「boder/less」を主軸に、ケルン市、京都市をはじめゲーテ・インスティテュート、ケルン独日協会、天理日独文化工房等とも連携して幅広い分野の文化芸術交流事業を展開しました。また、JETRO、JNTOにも協力して、ビジネス交流や観光促進にもスポットをあてました。
3. フランス 
パリ日本文化会館
「工匠たちの技と心―日本の伝統木造建築を探る」展
竹中大工道具館との共催により実施したこの展覧会は、「堂宮大工」「数寄屋建築」「木組み」の3要素に光を当て、茶室のスケルトンや数多くの大工道具、極限まで薄く削られた鉋屑、実際に木の香りを嗅いでいただくコーナーなど、工夫を凝らしたものでした。フランスは日曜大工好きが多く、環境への意識が高いといわれるだけあって評判を呼び、入場枠を求めて建物の外にまで長蛇の列ができる盛況を呈しました。
4. 韓国 
ソウル日本文化センター
韓国における日本文化開放25周年記念シンポジウム「今、日韓文化交流の深層を考える」
2023年は韓国における日本文化開放25周年の節目であることを記念し、「サブカルチャー、国、大衆、民主主義」といったキーワードで、日韓の文化交流の歴史を振り返りながら未来のあり方について考えるシンポジウムを、仁川大学日本研究所と共催しました。日本からキム・ソンミン教授(北海道大学)、福島みのり准教授(名古屋外国語大学)を招へいし、韓国の研究者と議論を行いました。当日の模様を収めた動画はセンターのYouTube及びウェブサイト上で公開しています。
5. 中国 
北京日本文化センター
伊藤比呂美氏講演ツアー
北京日本文化センター設立30周年記念事業として、詩人・小説家の伊藤比呂美氏と中国語翻訳者の蕾克氏を招へいし、上海、杭州、北京、天津の4都市の書店や大学など計10か所で講演ツアーを行いました。読者との交流会では、伊藤氏は若い読者からの人生相談に答えた後、一緒にズンバを踊って交流を深めました。日本研究・国際対話事業のフェロー交流会では、「説教節」が自らの創作に与えた影響についてお話しいただきました。
6. インドネシア 
ジャカルタ日本文化センター
JF日本語教育スタンダードセミナー
2024年3月にスラバヤでJF日本語教育スタンダード(以下、JFS)に関するセミナーを開催。東ジャワ州各地から日本語講師が70名以上集まり、JFSの考え方や教材の紹介、『まるごと 日本のことばと文化』、『いろどり 生活の日本語』などの教材を通してJFSを理解するためのワークショップを実施しました。近年、JFSの教材は広く普及しつつありますが、本セミナーはその理念を知ってもらう有意義な機会となりました。
7. タイ 
バンコク日本文化センター
作家の川口俊和氏をバンコクへ招へい
バンコクで開催されたNeilson Hays Bangkok Literature Festivalへ作家の川口俊和氏を招待し、トークセッションと同氏の作品が映像化された『コーヒーが冷めないうちに』の映画上映を行いました。またチュラロンコン大学文学部と共催で実施した特別講演会では、日本語を学ぶ学生と対談形式で講演を行い、作家になった経緯や作品に込められた思いなどについてお話しいただきました。
8. フィリピン 
マニラ日本文化センター
和太鼓「倭」公演
コロナの影響で一旦は中止された和太鼓グループ「倭」の公演を、日ASEAN友好協力50周年を契機に、民間企業からの支援を得て実施。14名の奏者、総計1.5トンを超える和太鼓の公演が実現し、マニラ、ダバオにおいて4100人を超える観客を魅了。公演後はマニラ日本人学校とミンダナオ国際大学への太鼓寄贈も行われ、現地太鼓クラブの活動活性化に貢献するなど、多くの人々の記憶に残る事業となりました。
9. マレーシア 
クアラルンプール日本文化センター
ASCA × spira spica from SACRA MUSIC Live Stage in Malaysia!
日本ASEAN友好協力50周年事業として、ComicFiesta(マレーシア最大規模のゲーム・アニメ・マンガ関連イベント主催者)、在マレーシア日本国大使館と共催で、アニソンアーティストのASCAとspira spicaの2組を招へい。12月23日(土曜日)のミート&グリートには1500人、翌24日(日曜日)のライブコンサートには約2900人が参加するなど、好評を博しました。
10. ミャンマー 
ヤンゴン日本文化センター
日本のお正月体験イベントの実施
お餅つきや書初め、福笑いやかるた取り等、日本の伝統的なお正月行事や習慣を紹介し、実際に体験できるイベントを開催したところ、会場にはあふれんばかりのたくさんの参加者に来場いただきました。ミャンマーでは政変以降、気軽に楽しめるイベントが限られており、当センターが実施する各種イベントは多くの方々に楽しい時間を提供するとともに、当地で急増する日本語学習者にとって日本文化に触れることができる貴重な機会となっています。
11. インド 
ニューデリー日本文化センター
FOIPの核インドの有識者ネットワークを育てる
自由で開かれたインド太平洋(FOIP)を具現化するための人づくりとネットワーキングを行うJFIPPプログラムは、印米豪日を主要参加国としたリサーチ・フェローシップをコアに2023年度から開始しました。FOIPの重要な核であるインドから優れた知識人、実務家が参加し共通課題に関する活発な議論が行われるよう、機関・研究者の調査を行いながらインド各地で第1期フェローを含む主要メンバーによるラウンドテーブル・ディスカッションを行いました。
12. オーストラリア 
シドニー日本文化センター
「AI SASAKI: WAYFINDERʼS PASSAGE 渡りの道しるべ」展
© Document Photography
2023年9月から2024年2月にかけて「AI SASAKI: WAYFINDERʼS PASSAGE 渡りの道しるべ」展を実施しました。本展では、水戸芸術館現代美術センターの井関悠氏のキュレーションにより、現代美術作家である佐々木愛氏のロイヤルアイシングの壁画、ドローイング、絵画、彫刻作品を展示しました。展示開始後、北海道から豪州タスマニアまで移動する渡り鳥オオジシギを描いた壁画の作品制作過程を一般公開し、アーティストによるロイヤルアイシングの子ども向けワークショップも実施しました。
13. カナダ 
トロント日本文化センター
「動きの感覚:日本のスポーツ・ポスター」展
DNP文化振興財団と共催した「動きの感覚:日本のスポーツ・ポスター」展では、1964年東京五輪を皮切りに多彩に発展したスポーツ関連ポスター68点を展示。日本よりキュレーター・北沢永志氏を招き、日本のグラフィックデザインの系譜を紹介。会期中には、元大関・把瑠都氏の相撲トーク、カナダで活躍する日本人ジョッキー福元大輔氏の講演会、ブレイキン選手の山佐小夏氏とオントン・シー氏による公演も開催。スポーツという万人共通のテーマを通じて、多くの来場者に日本の芸術やスポーツ文化を紹介しました。
14. 米国 
ニューヨーク日本文化センター
ミレヤ・ソリス博士の出版記念講演会をNYで実施
日本の対外経済政策等を専門に活躍するミレヤ・ソリス博士(ブルッキングス研究所東アジア政策研究センター所長)をお招きして、新著『Japanʼs Quiet Leadership: Reshaping the Indo-Pacific』の出版記念講演会をコロンビア大学のウェザーヘッド東アジア研究所と共催で実施しました。いかにして日本が「失われた30年」から立ち上がりインド太平洋地域の重要なアクターになりえたのかについてソリス氏に講演いただいた後に、コロンビア大学名誉教授のジェラルド・カーティス博士を交えて討論を行いました。
15. 米国 
ロサンゼルス日本文化センター
日本語会話サロン「Tea Time」が復活、他団体との共催も
日本語母語話者と日本語学習者が集う会話サロン「Tea Time」は、2012年から続く当センターの人気レギュラーイベント。初級から上級まで4レベルに分かれ、ボランティアの日本語母語話者を中心に会話を楽しみます。コロナ禍後の2023年はセンター内での開催のみならず、近隣の大学や高校生グループとの共催により、映画上映や三味線演奏を加えた出張Tea Timeも実現しました。毎回100名近くが集まり、対面ならではの交流の場としても有意義な会となっています。
16. メキシコ 
メキシコ日本文化センター
多和田葉子氏・高瀬アキ氏によるパフォーマンス『POEMAS PARA FRIDA』
メキシコを代表するアーティスト、フリーダ・カーロの作品に着想を得た朗読パフォーマンス『POEMAS PARA FRIDA』を実施しました。フリーダ・カーロにゆかりのあるアナワカリ美術館で行われた、ベルリン在住の作家・多和田葉子氏による朗読、ピアニスト・高瀬アキ氏の演奏に、満席となった会場からは拍手喝采。メキシコのアーティストと日本のアーティストが時を超えて作品を紡ぐ、稀有なイベントとなりました。
17. ブラジル 
サンパウロ日本文化センター
「アニメソングダンスバトル」ブラジル初開催
© Sarara Rodrigues
2024年のパリ五輪で「ブレイキン」が正式種目となり、ストリートダンスへの注目が高まる中、ブラジルにおける新たなダンス表現スタイルを模索する動きを受けた挑戦的な試みとして、日本発のアニメソングに合わせてダンス演技を行う「アニメソングダンス」の普及を目指す大会を開催しました。ゲストに「Real Akiba Boyz」を日本から迎え、約60名のダンサーがアニメの魅力とダンステクニックを見事に融合させた白熱したダンスバトルを繰り広げました。会場は初めて体験するダンススタイルに大いに沸きました。
18. ペルー 
リマ日本文化センター
白崎映美&東北6県ろ〜るショー!!ペルー公演
『白崎映美&東北6県ろ~るショー!!』ペルーツアーを実施。日系学校、デイサービス、日系人協会、AELU運動場、旧市街でのパレードなどでの演奏で多くの人々と触れ合いました。日系人の学校「インカ学園」ではこどもたちの熱烈な歓迎を受け、メンバーに抱きついて離れない子が続出。リマの旧市街を現地で制作した巨大人形「東北の神様」とともに練り歩き、リマっ子の熱い声援を受けました。最後のリマ市立劇場では観客が総立ちで、日本語で歌って踊ってくれました!
19. 英国 
ロンドン日本文化センター
菊池亮太氏ピアノコンサート
YouTuberとしても人気のピアニスト、菊池亮太氏を英国に招へいし、ロンドンとバーミンガムでコンサートを開催。日英のアニメ・映画音楽や、ビートルズ、クイーンの楽曲などの演奏に、子供からお年寄りまで観客は大いに盛り上がりました。ロンドン滞在中にはストリートピアノの演奏も行い、菊池氏のチャンネル(www.youtube.com/@komuro_metal)に投稿されたその時の動画は、合計で1200万回以上視聴されています。(2024年7月末現在)
20. スペイン 
マドリード日本文化センター
スペインの中等教育機関で正式に日本語教育が始動!
カタルーニャ州の中等教育機関で2021年から試験的に導入された日本語コース(選択科目)の成功を受けて、同州教育庁の主導のもと、2023年秋学期より6校で正式に日本語教育が始まりました。10月には市長、教育庁関係者、在バルセロナ総領事など60名以上の参加者を迎えて記念式典と和太鼓ワークショップを当センターが主催しました。当日の様子は日西双方の15社以上の主要メディア等で取り上げられるなど幅広く関心を集め、両国の歴史上記念すべき催しとなりました。
21. ハンガリー 
ブダペスト日本文化センター
発酵レクチャー・ワークショップ
2024年3月に、ルーマニアとハンガリーにおいて、発酵デザイナーの小倉ヒラク氏による一般向けの日本酒レクチャーや出汁づくりのワークショップ、プロの料理人向けの麹づくりワークショップ等を実施し、約180名の参加者の方々に、日本食・発酵に関する正しい知識と技術を身に付ける機会を提供しました。今後、受講した料理人の方々が、各々のレストランで日本の食文化を地元の人々に届けることが楽しみです。
22. ロシア 
モスクワ日本文化センター
かばんの中の日本語
本プログラムは、日本文化や日本語の備品を詰め込んだスーツケースを、日本語教育を実施する初等教育機関に貸与するものです。今年度、現下の情勢による在留邦人の減少により、現地在住の日本にルーツを持つ子供たちが日本文化や日本語に触れる機会が少なくなっていることを踏まえ、モスクワ日本人学校とサンクトペテルブルク日本語補習授業校に貸与しました。モスクワ日本人学校では、現地校との交流会等の若年者世代の交流活動で活用されました。
23. エジプト 
カイロ日本文化センター
アニメ監督招へい事業
カイロで開催された日本映画週間に合わせてアニメ監督の渡辺歩氏を招へいし、同監督の『漁港の肉子ちゃん』を上映、約420名が観賞しました。その後、トークイベントや、若手アニメーター約20名を対象にワークショップを実施しました。ワークショップでは、参加者の作品に対して渡辺氏がコメントを述べると、活発な議論が生まれました。本事業ではエジプトでの日本アニメへの関心の高さが伺えると同時に、アニメの奥深さを伝えることができました。
24. ベトナム 
ベトナム日本文化交流センター
日越50周年記念事業 漆画展「月」
日越外交関係樹立50周年(2023年)記念事業の一環として、ベトナムの伝統的な漆画の技法を使って活躍するアーティスト・安藤彩英子氏の「月」をテーマとする展覧会を当センターの展示ホールで開催。安藤氏は、50周年記念日越共同制作オペラ『アニオー姫』のキービジュアルも手掛けており、オペラ公演と合わせ、日越の文化交流を象徴する展覧会であるとして大きく注目され、山田駐ベトナム大使(当時)をはじめ、合計2000人以上の方々にお越しいただきました。
25. カンボジア 
プノンペン連絡事務所
過去最大規模となるカンボジア日本映画祭
2023年は「日・カンボジア外交関係樹立70周年」、そして「日ASEAN友好協力50周年」という節目の年ということで、9回目を迎えたカンボジア日本映画祭も、過去最大規模となる5都市で実施しました。地方でも積極的に行い、学生や家族連れなど、これまで日本文化に触れたことがなかった多くの方に映画を通した日本文化体験を届け、合計8000人を超える動員を達成することができました。
26. ラオス 
ビエンチャン連絡事務所
「DigiCon6 ASIA」ラオスコンテスト
優れたコンテンツクリエーターの発掘を目的として、株式会社TBSテレビ主催で日本を含むアジア15か国・地域を対象に行われた「第25回DigiCon6 ASIA」のラオス国内における予選を実施し、上位3作品を本選に送付しました。10月7日に東京で行われた本選では、クアンチャイ・パ二ヴォン氏がRising Star Awardを受賞。ラオス人クリエーターが受賞するのは昨年度に続き2回連続の快挙となります。