瀬戸内国際芸術祭2025共催トーク「ベトナムの団地から考えるコモンズ」
国際交流基金は2025年8月8日金曜日、香川県で開催される瀬戸内国際芸術祭2025との共催で、スペシャルトークイベント「ベトナムの団地から考えるコモンズ」を実施します。同芸術祭公式プロジェクト「Cộng Moments~食と手仕事と雑貨のベトナムマルシェ~ 」の関連事業として、高松港キャッスルプロムナードに特設されるベトナムマルシェ内イベントスペースで、午後6時から開催予定です。日越通訳あり、入場無料。
国際交流基金が2023年から、新しい国際対話事業としてリサーチに取り組んできた「東南アジアの「ケア」プロジェクト(仮)」。本年はそのアウトプットを還元するフェーズに入ります。今夏にはプロジェクトの公式ウェブサイトもオープンする予定です。キックオフイベントとなる本トークには、ベトナム・ハノイから建築家集団「Kecho Collective」創設者のグエン・マイン・トゥアン氏を招へい。美学者の伊藤亜紗・東京科学大学教授をモデレーターに迎え、インドネシアやフィリピンのインフォーマル居住区(スラム)で活動・研究される日本のリサーチャーと座談会を行います。ベトナムにおける建築や町のあり方、人々の生活に見られる慣習を題材に、インドネシアやフィリピンの事例を踏まえて「シェア」や「所有」の意味、公共財・共有地としての「コモンズ」について考える対話イベントです。
トークテーマ
ベトナムで1950~1980年代に公務員向けの住宅として各地に建てられた集合住宅「クー・タップ・テー(KTT)」。ハノイのとあるKTTは50平米の居室に共有キッチンが一つ、そこを二家族で分け合うスタイルの共同住宅として建てられたが、自室を広げるためのインフォーマルな増改築が繰り返されてきた。上階部分では、ベトナム名物ともいえる庇のように大きく張り出した増築部分が目立ち、共有スペースであるはずの中庭では植木鉢をおいて自分の「領土」を拡大しようとする住民同士のせめぎあいが繰り広げられる。
1986年のドイモイによる社会主義からの転換により「私有財産」や「所有」という概念が再びもたらされたベトナムでは、近隣住民との絶え間のない「交渉」により私的領域の境界が揺れ動く。最大公約数的なルールや規範によって領域が定められるのではなく、他者や周囲と折り合いをつけながらその時々の条件においての最適解を見出すベトナムのダイナミックな「ケア」が、社会における「コモンズ」の活用において示唆するものは?
概要
タイトル | ベトナムの団地から考えるコモンズ |
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日時 | 2025年8月8日(金曜日)午後6時開始(午後5時30分開場)午後7時40分終了 |
会場 | 高松港キャッスルプロムナード(香川県高松市玉藻町10-32) ベトナムマルシェ内イベントスペース |
参加費 | 無料 |
言語 | 日本語・ベトナム語(通訳あり) |
登壇者 | グエン・マイン・トゥアン/Kecho Collective創設者、建築家 岡部明子/東京大学大学院工学系研究科教授(建築設計・都市リサーチ) 石岡丈昇/日本大学文理学部社会学科教授(社会学) 伊藤亜紗/東京科学大学リベラルアーツ研究教育院教授(美学) |
関連情報 | 瀬戸内国際芸術祭2025公式ウェブサイト 瀬戸内国際芸術祭「Cộng Moments~食と手仕事と雑貨のベトナムマルシェ~」 |
登壇者略歴
グエン・マイン・トゥアン/Nguyen Manh Tuan(講演者)
建築家。ベトナム・フンイエン(興安)市出身。ハノイ建築大学で建築学の学士号を取得後、都市デザイン、遺産保護、持続可能な開発を学び、都市デザインに関する修士課程を修了。仏Remi Papillault建築事務所(AARP)でのインターンを経て、ハノイのPTW Architectsで勤務。渡米し、ニューヨークのプラット・インスティテュートで学び、さらにレンセラー工科大学Center for Architectural Science and Ecology(CASE)で訓練を受ける。2012年からニューヨーク市で建築と都市デザインの実務に従事。美的感覚と持続可能な開発への深い関心を持ち、住居設計やコミュニティデザインに関する学術研究・専門実務を多岐にわたって行っている。2018年よりハノイの旧公務員団地(Khu Tap The)に設計事務所兼ラボ「Kecho Collective」を構える。
伊藤亜紗(モデレーター)
美学者。東京科学大学未来社会創成研究院DLab+ディレクター、リベラルアーツ研究教育院教授。MIT客員研究員(2019)。もともと生物学者を目指していたが、大学3年次より文転。2010年に東京大学大学院人文社会系研究科基礎文化研究専攻美学芸術学専門分野博士課程を単位取得のうえ退学。同年、博士号を取得(文学)。主な著作に『目の見えない人は世界をどう見ているのか』(光文社)、『どもる体』(医学書院)、『記憶する体』(春秋社)、『手の倫理』(講談社)など。第13回(池田晶子記念)わたくし、つまりNobody賞、第42回サントリー学芸賞、第19回日本学術振興会賞、第19回日本学士院学術奨励賞受賞。
岡部明子(ディスカッサント)
東京大学大学院工学系研究科教授。専門は建築設計・都市リサーチ及び都市デザイン。環境学博士。磯崎新アトリエ(バルセロナ)を経て1990年、堀正人とHori & Okabe, architectsを設立。千葉大学教授を経て2015年より東京大学教授。著書に『バルセロナ』、『サステイナブルシティ-EUの地域・環境戦略』、『ユーロアーキテクツ』ほか。「スーパーマクロな視点を持って、スーパーミクロな実践を行う」環境学的アプローチで、近代の計画学の限界を克服できるオルタナティブな空間環境デザインの理念を探求しつつ、実践面では、ミクロ介入の経験をアジア・アフリカ・ラテンアメリカに広げてシェア。これを支える理論を、公共空間を軸に構築している。ジャカルタ中心部に位置するインフォーマル高密居住地区「カンポンチキニ」をフィールドとし、既存の物的環境を受け入れつつ居住環境を改善するための方策を実践的な取り組みの中から模索するなどしてきた。
石岡丈昇(ディスカッサント)
専門は社会学/身体文化論。筑波大学大学院人間総合科学研究科博士課程単位取得退学。北海道大学大学院教育学研究院准教授を経て、現在、日本大学文理学部社会学科教授。フィリピン・マニラを主な事例地として、「からだひとつ」で生きている人びとの世界から、現代社会を捉え返す視座を探究。ボクサーや肉体労働者、さらには家政婦などケアワークに携わる人の日常をエスノグラフィーとして記している。単著『タイミングの社会学:ディテールを書くエスノグラフィー』(青土社、2023年:紀伊國屋じんぶん大賞2024 第2位)、『ローカルボクサーと貧困世界:マニラのボクシングジムにみる身体文化』(世界思想社、2012年:第12回日本社会学会奨励賞、増補新装版 2024年)、『エスノグラフィ入門』(ちくま新書、2024年)など。
[お問い合わせ]
国際交流基金(JF)
国際対話部 企画開発チーム
電話:03-5369-6025
Eメール:gpk_1@jpf.go.jp
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