アルゼンチン(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は46件、教師は206名。初等教育は490名で全体の9.7%、中等教育は180名で全体の3.6%、高等教育は0名で全体の0.0%、学校教育以外は4,384名で全体の86.7%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 アルゼンチンにおける日本語教育は、これまで日系社会中心に行われてきた。国内各地の日本人会は、戦前の移住者達が、「二世以降の世代に日本語を残そう」「日本の文化を継承させよう」という目的で日本語学校を設立してきた。この時点では、まだ継承語教育としての日本語教育が主流であったが、現在は、日系社会の世代交代を反映して「継承語日本語教育」も継続しながら、「外国語としての日本語教育」へと移行している。

背景

 日系社会の世代交代が進み、家庭内で日本語が使用されなくなったことや、経済的な理由による日本への出稼ぎ増加の影響から、日系人の日本語学習者の数は年々減少していたが、近年は世界的なオリエンタルブーム、特に日本のアニメやインターネット等の普及の影響により、日本文化の流れがアルゼンチンの若者へ大きな影響を与え、さらに現地の大学機関への日本センターの設置(例:ラプラタ国立大学の日本研究センター、サンタフェ州国立リトラル大学の日本語公開講座、サンタフェ州ロサリオ大学の日本語公開講座、トゥクマンカトリック大学、ブエノス首都圏やブエノス近郊の語学センターの日本語公開講座)により、日本語学習、日本文化さらには日本の伝統行事や武道への関心が非常に高まっている。

特徴

 2004年には最大58%(*)を占めていた日系子弟学習者の割合が2018年の統計では20%(*)にまで下がった。非日系人学習者数は年を追うごとに増加の一途を辿っており「継承語日本語教育」から「外国語としての日本語教育」への本格的な転換が始まっている。
 日系子弟の学習動機は、低学年の場合、両親の希望というケースがほとんどだが、中・高学年の学習者は将来日本への研修や留学を目的としたものや日本文化を日本語で理解してみたいという動機が多い。
 非日系人学習者の場合、実質的な利益へと結びつける動機(留学・就職・昇進の為など)もあるが、国際交流基金が主催している日本語能力試験受験の目的も少なからずある。
 また、学習者は自己啓発・趣味的な動機が多く、自分の意志で楽しく日本語・日本文化を学習している様子がうかがえる。さらに、日本の武道を学ぶアルゼンチン人が日系人との交流で日本語を学び始めるケースもある。
 このように、日本語教育関係者は、非日系人学習者だけでなく、移住を背景として日系社会が継承語教育として行ってきた南米特有の歴史も含め、日本語教育の普及に取り組んでいる。

(*)この数値は社団法人・在亜日本語教育連合会に所属する日本語教育機関の学生数より算出したもの。
それ以外の学習者を加えると更に非日系人学習者の割合が上がると推測される。

最新動向

 在亜日本語教育連合会(以下、「教連」と記す)に所属する日系日本語学校26校の学習者数のデータをもとに近年の学習者数の推移を記す。

  2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年
学習者数(名) 2,023 2,023 1,922 1,844 (不明) 1,844 1,884 1,944 1,953 2,293 1,957 2858
日系人(%) 37 33 41 41 41 41 25 24 23 21 20 20
非日系(%) 63 67 59 59 59 59 75 76 77 79 80 80
注:学習者数は情報未提出校もあるので減少しているケースもある。
アルゼンチンでは近年、非日系(アルゼンチン人)学習者が拡大してきている傾向があるが、拡大している理由は2020年のオリンピックやパラリンピックの東京開催で日本に興味を持つ人達が増加していることに関連しているとも考えられる。

教育段階別の状況

初等教育

 (下記【中等教育】参照のこと)

中等教育

 アルゼンチンで日本語教育を行う初等・中等教育機関として認定されているのは、私立ブエノスアイレス日亜学院のみである(日亜学院の前身はブエノスアイレス日本人会附属日本語教習所として1927年に設立)。2002年度から英語も正規授業とし、日本語は2010年から正規の科目となり、トリリンガル教育を実施している(ただし、英語・日本語は語学教育のみ)。スペイン語・英語・日本語の受講率は100%、日本語の到達目標は「中学卒業時に日本語能力試験N4取得程度」となっている。日亜学院に通う学生のうち、3割が日系子弟、7割が非日系人(アルゼンチン人、中国系、韓国系)。
 また、成人クラスの受講者は90%がアルゼンチン人である。

高等教育

 高等教育機関による正規の日本語学科・講座は唯一、ブエノスアイレス市立語学学院(通称:レングアス・ビバス)で開設されている。ただし、一部の大学・学部の中に「日本語公開講座」が存在し、興味のある学生は受講している。

学校教育以外

 アルゼンチンにある日本語教育機関の大半は、全国に散在する在亜日系団体(日本人会)が運営する日本語学校(日本語クラス:教連加盟校)で、日亜学院以外に25校あり、ほとんどの学習者はそこに含まれる。平日は地元の学校に通い、土曜のみ父祖の言語である日本語を学習する。また、首都圏やブエノスアイレス近郊には日系団体附属の日本語クラス(特に成人対象)や私塾での日本語教育機関がある。ほかにブエノスアイレス近郊や地方都市等では、個人授業で日本語を教えている場合もある。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 ブエノスアイレス市 7-5(普通/商業は5年、工業は6年)制。
幼児教育が2年間(4/5歳)、初等教育が7年間(6~12歳)、中等教育が5/6年間(13~17/18歳)。

ブエノスアイレス州およびその他の州では幼児教育が2年間(4/5歳)、初等教育が6年間(6~11歳)、中等教育が6年間(12~17歳)。ブエノスアイレス州、市ともに、4~17歳の14年間が義務教育となっている。

教育行政

 初等、中高等教育機関全てがアルゼンチン教育省の管轄下にあるが、各州には連邦政府の干渉を受けない州の教育審議会があり、小・中学校を管轄している。

言語事情

 公用語はスペイン語。アルゼンチンではカステジャーノと呼ばれている。
なお、アルゼンチンは多種民族国家のため、英語、イタリア語、ポルトガル語、アラビア語、ドイツ語、ポーランド語、ヘブライ語、フランス語、ロシア語等、各種民族の言語がそれぞれの民族の中では使用されている。また、アルゼンチン北部の一部の地方ではケチュア語が使用され、隣国パラグアイからの多数の居住者や、年配の人の間ではグラニー語も使用されている。都市部では中国系、韓国系移民による中国語、韓国語も話されている。

外国語教育

 ブエノスアイレス市
 初等教育1~7年(6~12歳)で英語が必修。
 初等教育1~6年(6~11歳)で英語が必修。
 ブエノスアイレス市および州で、中等教育でも英語が必修。

外国語の中での日本語の人気

 英語、フランス語、ドイツ語、ポルトガル語など欧米圏の言語の人気が高い。アジア圏の言語の中では日本語の人気は比較的高い一方、近年中国語の人気が高まっている。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 (下記【中等教育】参照のこと)

中等教育

 ブエノスアイレス日亜学院では2017年4月現在以下のテキストが主に使用されている。

  • 児童初級『ひらがなマニア』『カタカナマニア』(ブエノスアイレス日亜学院)
  • 児童初級『にほんごドレミ』公益財団法人海外日系人協会(国際協力機構)
  • 児童中級『こどものにほんご1、2』ひょうご日本語教師連絡会議子どもの日本語研究会(スリーエーネットワーク)
  • 児童上級『日本語ジャンプ』公益財団法人海外日系人協会(国際協力機構)
  • 日本語能力試験対策コース集(N1~N4)
  • まるごと

 また同校が成人向けに開設している日本語教室では以下のテキストが主に使用されている。

  • 成人初級:『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』(スリーエーネットワーク)
  • 成人初中級:『中級へ行こう~日本語の文型と表現59』(スリーエーネットワーク)
  • 成人初中級~中級 「中級を学ぼう 前/中」(スリーエーネットワーク)
  • 成人中級:『みんなの日本語中級Ⅰ Ⅱ』(スリーエーネットワーク)
  • 日本語能力試験対策集

高等教育

 成人初級『みんなの日本語初級Ⅰ Ⅱ』(前出)が多く使用されている。

学校教育以外

 教連加盟の日系日本語学校では自作テキストのほか、以下の教材が主に使用されている。

  • 『みんなの日本語 初級』(前出)
  • 『こどものにほんご』(前出)
  • 『ひろこさんのたのしいにほんご』(凡人社)
  • 『日本語ドレミ』(前出)
  • 『日本語ジャンプ』(前出)
  • JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社USA

IT・視聴覚機材

 ブエノスアイレス日亜学院では、2016年度よりコンピューター環境が整い授業への活用が本格化。クイズやゲームを楽しみながら学習できるように工夫され、おもに補習用として使用されている。
 一方、地方の日系日本語学校にもICTに熱心なところが増加。コルドバ日本語学園では補助教材をペンドライブに入れてモニターに投影。特に日本の事物などをインターネットから取り込み定番化。板書と併用して効果を上げている。サンタフェ日本語学校では、パワーポイントを使って、初級学習者を引きつける授業がなされている。またロサリオ日本語学校では、学生管理がデータベース化されており、学生の学習記録が授業に活かされるような取り組みがなされている。
 また、ブエノスアイレス州南部校では東京外国語大学多言語・多文化教育研究センター監修の「漢字コンドル」http://www.tufs.ac.jp/common/mlmc/kyouzai/southamerica/ が年少向けの手軽なプリント教材として利用されている。2020年はコロナ禍の影響により、各日本語学校、日本語クラスのオンライン化が否応なく進められた。課題やビデオの提供、またオンライン通信ソフトを利用した同期型授業やクラス管理の取り組みが多く見られる。

教師

資格要件

初等教育

 アルゼンチンにおいては日本語教師となる公的試験制度はなく、特に資格要件はない。(その他、【学校教育以外】を参照のこと)

中等教育

 アルゼンチンにおいては日本語教師となる公的試験制度はなく、特に資格要件はない。(その他、【学校教育以外】を参照のこと)

高等教育

 アルゼンチンにおいては日本語教師となる公的試験制度はなく、特に資格要件はない。(その他、【学校教育以外】を参照のこと)

学校教育以外

 アルゼンチンにおいては日本語教師となる公的試験制度はなく、特に資格要件はない。
 最近は日本語教育能力検定試験取得者や日本語教師養成講座修了の資格を持つ者やJICAボランティアOB/OGが現地に定着し、日本語教育を行うケースも増えており、「生の日本語」を教えるというメリットに加え、現地側としては直接日本文化と触れ合う機会が増え、意義は大きい。
 二/三世の日本語教師に関しては、全体の約20%が現地の教師資格を持っている。アルゼンチンの教師資格は中等教育を終えて師範学校2年半で小学校の教師、中等師範4年で中学校教師、また大学の課程で50~75%の科目を終えていると中学校教師の資格が得られる。

日本語教師養成機関(プログラム)

教連附属アルゼンチン日本語教育センターがあるほか、アルゼンチン国内日本語教師は教連が主催する研修会、ブロック毎の研修会、JICAや国際交流基金などの日本語教師本邦研修で日本語指導法などを習得できる。

2005年より、教連では附属のアルゼンチン日本語教育センターと現地ベテラン教師が中心となり、アルゼンチン国内で日本語教師を育成していこうという目的のもと、現地スタッフによる現地のための講座を実施。2007年12月に第1回教師養成講座が修了し、14名が日本語教師として認定された。2020年10月現在、7月予定していたスクーリングがコロナ禍のため、2021年1月に延期されており、第7回養成講座最終スクーリングを準備中である。

講座概要は以下のとおり。

  • 期間:2年間
  • 講座合計:300時間
    • 通信講座:70時間
    • 7月冬期スクーリング:72時間
    • 1月夏期スクーリング:144時間
    • 教育実習:14時間
  • 修了資格:
    • スクーリング出席率75%以上ですべての資料を提出した者に修了証
  • 認定資格
    • 上記資格を満たし、且つテスト平均が60点以上、通信講座のレポートがABCDの4段階の内B以上である者
    • 日本語能力試験N2以上取得した者
    • 教育実習を行った者

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 教連に加盟している日系日本語教育機関の教師160名のうち、一世は31名(約19%)であり、指導的立場にある教師が多数であるが、近年は2・3・4世教師も増加。(2019年度)

教師研修

 国内研修としては、教連・アルゼンチン日本語教育研究会(略称:ア日研、教連加盟校教師で構成)主管の全国日本語教師研修大会(毎年2月)がある。また、ブロック別教師研修会も開かれる。アルゼンチン国外の研修では、JICAの日系継承教育研修及び国際交流基金による日本語教師研修へ参加。しかし、これらの研修経験者でも経済的な理由により日本語教師への定着率は低い。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

アルゼンチン日本語教育研究会(略称:ア日研)

 教連加盟日系日本語学校教師で構成され、日本語指導の推進と普及に努めている。全国日本語教師研修大会(2009年1月より第1回目を開催)の企画・実施、またその記録誌「かけはし」の編集・発行を行っている。ブロック毎の教師勉強会も定期的に開いている。

アルゼンチン日本語教育センター(通称:日語センター)

 教師養成講座担当の講師を対象とした研究会を毎月1回実施。
 日本語教授法の相互研究や教材分析、情報交換、「アルゼンチンときめき日本語レベルテスト」の作成・実施・分析を行っている。

最新動向

 特になし

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣(2020年11月現在)

JICA海外協力隊 3月末頃全員帰国

 ブルサコ日本人会 1名
 ポサーダス日本人会 1名
 国立ラ・プラタ大学 1名
 社団法人在亜日本語教育連合会 2名

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 アルゼンチン日本語教育センター作成の低学年、中学年、高学年の日系日本語学校学習者を対象とした統一シラバス、ガイドラインを2016年に作成。

評価・試験

評価・試験の種類

日本語能力試験

 アルゼンチン国内すべての日本語学習者の到達度を測る為に、非常に重要な試験として各日本語教育機関は位置付けている。
 例えば、ブエノスアイレス日亜学院では中学部卒業時に、N4取得を目標にしている。

アルゼンチンときめき日本語レベルテスト(教連附属日本語教育センター作成)

 13歳以上を対象にし、日本語能力試験N5に到達しない日本語学習者を対象とし、日本語能力試験N5の受験可否の判断としている。N6及びN7の2段階を設けており、「文字・語彙」、「文法・読解」、「聴解」の3科目がある。

アルゼンチンときめき会話テスト(教連附属日本語教育センター作成)

 日本語での会話力を測る。日本語能力試験N4またはN5レベル程度の学習者を対象としている。

日本語教育略史

1927年 アルゼンチン最初の日本語クラス(学習者36人)が、日本人会図書室で開始
1934年 ブルサコ学園、双葉日本語学校設立
1935年 ロサリオ日本語学校設立
1937年 サンタフェ日本語学校、モロン日本語学校、エスコバール日本語学校設立
コリエンテス、メンドサ、チャコ、ミシオネス各州でも日本語学校設立
1947年 第二次世界大戦中、閉鎖されていた日本語学校が再校
1988年 日本語能力試験開始
1994年 「日本語力だめし大会」というテスト実施
2002年 「日本語力だめし大会」が「アルゼンチン日本語レベルテスト」に改称
2004年 「アルゼンチン日本語レベルテスト」が「ときめき日本語レベルテスト」に改称
2005年 教連にて「日本語教師養成講座」開始
2007年 「日本語会話テスト」を企画・実施開始。現在は「ときめき日本語会話テスト」に改称
2010年10月 在亜日本語教育連合会創立50周年
2016年2月 全国日本語教師夏季研修大会を全国日本語教師研修大会と改称
2020年10月 在亜日本語教育連合会創立60周年

参考文献一覧

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