ボリビア(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
6 40 557
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 272 48.8%
中等教育 66 11.8%
高等教育 0 0.0%
学校教育以外 219 39.3%
合計 557 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1950・60年代に日本人移住地での日本語教育が始まった。現在は主に初等教育の非正規科目として、または、学校外教育の場で日本語教育が実施されている(詳細は日本語教育略史参照のこと)。

背景

 ボリビアには約1万人(推定)の日系人(一世から六世まで)が居住しており、各日系社会の所在地において日系人を中心とした学習希望者が多い。ラパス市、サンタクルス市、オキナワ移住地及びサンファン移住地では、幼児期から日本語教育が実施されている。一方、ベニ県及びパンド県に居住する日系人の中心は三世及び四世であり、日本語を解さない者がほとんどである。
 また、日本製品やアニメを通じ、一般ボリビア人の日本への関心が育まれ、日本語学習への動機付けに繋がっている。

特徴

 日系移民社会を背景に、年少者対象の日本語教育が中心になっており、高等教育段階での日本語教育は行われていない。
 日本語は、非公認校で正規の授業終了後に特別に教えられている。その他、日本人会や日系人会運営の日本語学校(非公認校、土曜日に開設)があり、非日系人を対象としたクラスも開講されている。

最新動向

 特になし。

教育段階別の状況

初等教育

 サンファン移住地においては、社団法人サンファン日ボ協会の運営する提携公立学校(サンファン学園)において正規の外国語科目として日本語が認められていたが、教育制度の変更により正規の外国語科目とは認められなくなり、午前中の正規の授業外に午後クラブ活動的に日本語授業を行っている。オキナワ移住地においては、第1地区の私立学校(オキナワ第1日ボ校)ならびに第2地区の公立学校(ヌエバ・エスぺランサ校)において、午前中の正規授業の後、午後から非公認の日本語学校として同校舎にて、日本語授業を行っている。

中等教育

 上記【初等教育】を行っているオキナワ第1日ボ校では中等部6年生の生徒が、ヌエバ・エスペランサ日本語学校及びサンフアン学園では中等部2年までの生徒が日本語を学習している。

高等教育

 日本語教育は正式には実施されていないが、山形大学の支援で2015年12月よりラパス市の国立サンアンドレス大学技術学部調査・技術研究所内の教室において同大学学生希望者に対するサンアンドレス大学出身の元山形大学推薦国費留学生(研究)による夜間の日本語講座(非正規科目)が開始された。

学校教育以外

 サンタクルス市では、日本人会が、日系子弟を対象として毎週土曜日に日本語学校を開設している。また、同日本人会は非日系人を含め、一般成人を対象とする日本語普及講座も開講している。
 ラパス市では、ラパス日本人会が満5歳以上の会員及び非会員子弟を対象に毎週土曜日に補習授業校を開設している。非日系人を含む一般人を対象とする日本語普及学校は、ラパス、ボリビア日本文化財団(法人格所得)により運営されている。
 コチャバンバ市では、コチャバンバ日本ボリビア文化協会が、日本語に関心のある人を対象とした日本語講座を開講している。
 他には2019年からチュキサカ県スクレ市のスクレ日ボ文化協会において青年向け日本語講座が不定期的に開講されている。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 2・6・6・4制。
幼児教育2年、初等教育6年及び中等教育6年が義務教育となる。

教育行政

 初等、中等及び高等教育機関のすべてが教育省の管轄下にある。

言語事情

 スペイン語が主たる公用語で国語、36の先住民言語全てが2009年に公用語となった。
 主要先住民言語であるアイマラ語、ケチュア語及びグアラニー語のうちの一つは教育が全ての初等・中等教育機関で必修言語となっている。

外国語教育

 都市部では、初等教育中間課程(7年生)から、英語またはフランス語(第1外国語)が必修。主要都市のアメリカンスクール、ドイツ学校及びフランス学校では英語、ドイツ語及びフランス語での授業が行われている。なお、日本語は日系人コミュニティの中で教えられている。

外国語の中での日本語の人気

 英語やフランス語、ポルトガル語などの欧米言語の人気が高いが、アジア圏の言語の中では、日本の製品やアニメをきっかけに、日本語は比較的高い人気を得ている。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 サンファン移住地のクラスでは、光村図書版の国語教科書(小1~6)が使用されている。家庭において日本語の使用がない学習者には、『にほんごだいすき』(横浜・児童生徒のための日本語教育研究会(むぎ書房))、『にほんごドレミ』及び『にほんごジャンプ』(国際協力機構)などが使用されている。
 オキナワ移住地のヌエバ・エスペランサ日本語クラスでは、光村図書の国語教科書(小1~6)、『にほんごドレミ』、『にほんごジャンプ』及び『にほんごチャレンジ』(国際協力機構)が使用されており、第1日ボ学校では、国際協力機構の『にほんごドレミ』、『にほんごジャンプ』、『にほんごチャレンジ』、『みえこさんのにほんご』及び『にほんごだいすき1.2』と並行して東京書籍版と光村図書の国語教科書を使用している。

中等教育

 上記【初等教育】を行っている学校のうち、オキナワ第1日ボ学校は中等科4年まで、ヌエバ・エスペランサ校及びサンフアン学園では中等部2年までの生徒が日本語を学習している。内容は同項参照。

高等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

学校教育以外

 ラパス市での使用教材は、2017年度より『こどものにほんご』(スリーエー出版)を、高学年の生徒には光村図書版の国語教科書(中3まで)と並行して、その他自作教材を使用している。サンタクルス市の日本語学校では、光村図書の国語教科書、『にほんごだいすき1.2』及び『にほんごドレミ』を、サンタクルス市及びコチャバンバ市の各日本語普及講座では、『みんなの日本語』(スリーエーネットワーク)、『こどものにほんご』(スリーエー出版)及び『にほんごだいすき1.2』(国際協力機構)と並行して、その他自作教材が使用されている。

IT・視聴覚機材

 一部の学校で使用している。

教師

資格要件

初等教育

 資格要件は特にない。

中等教育

 資格要件は特にない。

高等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

学校教育以外

 資格要件は特にない。
 現在は日本語を母語として学習してきた一世が教師となっている。
 二世及び非日系の教師のうち15名は日本語能力試験1級合格者でありバイリンガル。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成機関は存在しない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 日本人の長期滞在者(ボリビア人と結婚して移住した人)や一時滞在(地域での日本語教師募集に応募したボランティアの人)などが日本人教師として授業にあたっている。日系社会においては、日本人の考え方や習慣・生活文化などを継承させるためには、日本で育った日本人教師が必要であると考えている。

教師研修

 国内研修としては、ボリビア日本語教師合同研修会(ボリビア日本語教育研究委員会主催)がある。第三国研修としては、汎米日本語教師合同研修会(ブラジル日本語センター)。訪日研修としては、日系継承教育研修(JICA主催)及び日本語教師研修(国際交流基金主催)がある。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 全国規模のものとして、1997年に組織された「ボリビア日本語教育研究委員会」がある。これは、JICAから派遣された日本語教師の指導の下に活動してきたサンタクルス県日本語教育研究会(1978年設立)が、ボリビア日系社会のネットワークを目的として、「ボリビア日系協会連合会」(1996年設立)の教育委員会の中に、日本語教師のネットワークとして再編されたものである。ただし、距離的な問題、予算的な問題などがあり、その活動の中心はサンタクルス県内に限定されている。
 主たる活動は、年に2回開催される全国規模の合同研修会である。また、サンタクルス県内の活動としては、同県内の4地区(オキナワ第1、オキナワ第2、サンファン及びサンタクルス市)にある日本語学校の「スポーツ交歓会」や「お話大会」などもある。1996年からはこの「お話大会」にラパス市の日本語学校の代表も参加している。

最新動向

 特になし。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣(2019年10月現在)

JICA海外協力隊

 サンフアン日本ボリビア協会 1名

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1952年 日本からの招聘教師(1名)による日本語授業開始<ラパス市>
1954年 最初のウルマ植民地に幼稚園・小学校低学年の日本語による授業開始<オキナワ移住地 サンタクルス県>
1955年 転地先のパロメティーヤにて、幼稚園・小学校設立(低学年は日本語による授業)<オキナワ移住地 サンタクルス県>
学校教育(小中学校)開始(スペイン語の授業の後、日本語で授業)<サンファン移住地 サンタクルス県>
1957年 再度の転地先オキナワ移住地にて日本語塾開始(学校はスペイン語で授業)この後、幼稚園・小・中学校にてスペイン語の正規の授業の後、日本語の授業実施<オキナワ移住地 サンタクルス県>
1958年 有志により日本語学校開設(1年で閉鎖)<ラパス市>
1965年 「サンタクルス日本語学校」(幼稚園・小・中学校)設立<サンタクルス市>
1969年 「ラパス日本人会日系子弟補習教室」開校<ラパス市>
1970年 「ラパス日本語普及学校」開校<ラパス市>
1980年 「サンタクルス州日本語教育研究会」設立
1980年代
後半
JICA海外協力隊、日系社会ボランティアの日本語教師派遣<リベラルタ市>
JICA海外協力隊員の活動外ボランティアとして、日本語学習希望者のクラス開設<トリニダー市>
1981年 「ラパス日本人会日系子弟補習教育教室」が、日本政府により「ラパス補習授業校」に認定される。<ラパス市>
1987年 私立「オキナワ第1日ボ学校」(小中学校)開校
午後の部は日本語学校として日本語で授業を実施
<オキナワ移住地 サンタクルス県>
「サンファン学園」(小・中学校)がボリビア政府との試験的協定校を設立し、日本語を外国語科目として採用<サンファン移住地 サンタクルス県>
1994年 日本語能力試験実施開始
1995年 「サンファン学園」(幼稚園・小・中学校)はボリビア政府との協定校として無期限の認定校となる<サンファン移住地 サンタクルス県>
1997年 「サンタクルス州日本語教育研究会」がボリビア日系協会連合会の一委員となり「ボリビア日本語教育研究委員会」として再編
2003年 JICA日系社会ボランティアの日本語教師派遣により、日本語クラス継続<トリニダー市>
2008年 学習希望者の減少により日本語クラス閉鎖 <トリニダ市>
2008年 「ラパス日本語普及学校」が「ラパス、ボリビア日本文化財団日本語普及学校」として法人格取得
2009年 リベラルタ日本語普及講座休講
2011年 教育法改正
2013年 コチャバンバ市に日本語普及クラス「ひのき学級」が同地の日系人有志により開設
2016年 コチャバンバ市の日本語普及クラスは、コチャバンバ日ボ文化協会の「日本語教室」として再編された。
2018年 オキナワ第1日ボ学校 中等科3年クラスを開設
2019年 オキナワ第一日ボ学校 中等科4年クラスを開設
サンタクルス日本語普及校・補習部が非会員日系子弟を受け入れるようになった
2020年 オキナワ第一日ボ学校 中等科5年クラスを開設
コロナ蔓延防止措置に伴い、サンタクルス日本語普及校、ラパス日本語補習校が閉校、他校はオンライン授業に切り替え
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