エルサルバドル(2020年度)
日本語教育 国・地域別情報
2018年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
4 | 24 | 424 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 10 | 2.4% |
学校教育以外 | 414 | 97.6% |
合計 | 424 | 100% |
(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
エルサルバドルにおける日本語教育は、1970年代初頭に派遣されたJICA海外協力隊員により国立エルサルバドル大学に開設された日本語講座を唯一の日本語教育機関として発展してきた。しかし、1980年に勃発した内戦による社会情勢及び治安の悪化により、JICA海外協力隊の撤退が決定し、これに伴い同大学における日本語講座も一時、閉鎖された。その後、1992年の内戦終結における治安情勢の改善により、1995年より国立エルサルバドル大学に日本語教師としてJICA海外協力隊員の派遣が再開され2012年よりJICAシニアボランティアの派遣も開催されたが,2017年より現在(2020年10月)までは隊員不在となっている。
2020年10月現在、日本語教育機関は、国立エルサルバドル大学(UES)内の日本語講座(公開講座を含む)及び同大学外国語教育センター(CENIUES)、私立ホセ・シメオン・カニャス中米大学(UCA)及び私立クリストーバルコロン校がある。これらの機関の日本語学習者を合計すると約300名(2020年10月)と若干減少しているが、新型コロナウイルス感染症の影響で閉鎖したクラスが多いためである。この内、国立エルサルバドル大学の日本語講座の一部は、大学の単位取得が認定される正式科目となっており、それ以外は公開講座となっている。
私立ホセ・シメオン・カニャス中米大学(UCA)での日本語公開講座は2009年9月に開設され、エルサルバドル人教師が指導に当たっている。また、同校は2018年12月に日本経済大学と学術協定を締結し、日本語分野の人材育成を目的として週1回日本語教員の研修会を行っている。
また、2020年にエルサルバドル日本語教師会が「エルサルバドル日本文化センター」と言う機関名でオンラインクラスを開始したところ、地理的条件で日本語教育機関に通うことができていなかった地方在住者をはじめ、中米やヨーロッパといった国外からの受講者があるなど良い傾向も見られた。
更に、2020年11月からは以前より要望が多かった子供向けの日本語クラスを実施することとなっている。
2003年より日本語スピーチコンテストを実施しており、年々、参加者の語学レベルが上がっている。更に、2005年より国際交流基金の日本語学習者訪日研修(成績優秀者研修)への参加が開始したのに加え、日本語学習者の文部科学省国費留学生への合格が、日本語学習者の意欲向上のきっかけとなっている。
JICA海外協力隊の指導により現地人の日本語教師が育っており、2012年に国立エルサルバドル大学(UES)において初めて現地人の日本語教師が正式雇用され、その指導を目的としてシニア海外ボランティアの派遣も開始された。また近年、日本語学習者の中には、個人でジャパン・リターン・プログラム(JRP)の作文コンクールに応募し日本へ招聘されたり、国際漫画祭に日本語で応募したりと積極的な活動が行われている。
2018年、日本語能力試験第(7月)が開始され、近隣諸国からの参加も含め200人余りの受験者がある。
背景
エルサルバドルは「中米の日本」と呼ばれており、エルサルバドル国民の対日感情は良好である。1970年代には約400名の在留日本人がおり、政治的、経済的にも深い二国間関係を有していた。内戦による治安の悪化により、在留日本人のほとんどが退去すると共に、日本国大使館も1979年から12年間にわたり閉鎖されたが、1992年以降、内戦終結による民主化の進展と共に、各分野における二国間交流は再活性化している。エルサルバドル国民の日本に対する関心も高く、2020年には、二国間関係の更なる増進の契機となる両国外交関係樹立85周年を迎えた。
特徴
このほか近年では、民間の語学学校でも学習者の需要に応じて日本語の授業が開講されており、個人クラスの希望者も増えている傾向にある。
二国間における経済・文化関係の緊密化と共に、日本語学習希望者も徐々に増加傾向にある。かつては、日本語講座受講者の大部分が日本への留学及び研修予定者等、特定の関心をもつ者に限られていたが、最近は日本の文化、中でもアニメやJ-POP等のポップカルチャーに関心を持つ受講者も多い。受講者のレベルは初級が中心である。
最新動向
2015年11月にはホセ・シメオン・カニャス中米大学(UCA)が国際交流基金によるJFにほんごネットワーク「さくらネットワークメンバー」に認定された。また,2017年2月に「メキシコ・日本語シンポジウム」,8月には「第9回中米・カリブ日本語教育セミナー」に当国日本語教師が参加した。2020年10月、16名のエルサルバドル人が日本語教育活動を行っている。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。第2外国語として英語が必須科目となっている。
高等教育
国立エルサルバドル大学に日本語講座があり、現在は単位取得も可能になっている。
学校教育以外
日本語学習者はアニメやJ-POPに関心のある若者や、日本への留学を希望する者、日本文化に関心のある者が中心である。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
6-3-2(3)制。
初等教育が小学校(プリマリア)の6年間(6~12歳)。前期中等教育機関の中学校(セクンダリア)が3年間(12~15歳)、後期中等教育機関の普通科高校(バチジェラート)が2年間(15~17歳)(技術系は3年間)。高等教育機関は大学(5年、医学部8年)及び技術短期大学(3年)。
小学校及び中学校の9年間が義務教育。
教育行政
初等、中等、高等教育機関のすべてが教育省の管轄下にある。
言語事情
スペイン語が公用語。
外国語教育
公立の小学校では外国語の授業は行われていないが、私立の小学校の一部では外国語教育(英語のみ)が行われている。
中学校では、公立、私立共に英語教育(第一外国語)が必修。
高校では、公立、私立共に、英語教育が必修。また、私立高校の一部では、第二外国語としてフランス語、ドイツ語の教育も実施されているが、日本語教育は皆無である。
外国語の中での日本語の人気
エルサルバドルの外国語学習者の人気第一位は英語、続いてフランス語となっており、ドイツ語、イタリア語、日本語等は前記の言語を習得した者が学習を希望する。但し、日本語の場合、アニメ等の普及で学び始める者が多いが、ある程度のレベルに達すると行き詰まり、習得後に活用する機会が少ない等の理由から継続した学習を断念する者が多い。また近年は、日本への留学を目的に学習を始める者も増加傾向にある。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
日本語学習者のほとんどが初級であるが、年々多様化するレベルに合わせて国際交流基金から寄贈された「みんなの日本語」(スリーエーネットワーク)や「まるごと」(三修社)や「BASIC KANJI BOOK」(凡人社)の教材を主として使用している。
学校教育以外
国際交流基金のオンライン学習「みなと」へのエルサルバドル人登録者は2020年7月時点で約1,600名である。
IT・視聴覚機材
各機関によって教室での機材使用状況は異なるが、IT・視聴覚機材を使用し、視聴覚的効果を考慮したクラスの実施を心がけている。
教師
資格要件
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
資格要件に定めはない。
学校教育以外
教育省では、日本語教師の資格を特に規定していない。
国立エルサルバドル大学人文科学学部言語学科や各日本語教育機関で日本語をある程度学習した生徒が日本語初級・中級クラスを受け持っているが、上級クラスを指導できる人材がいないのが現状である。
日本語教師養成機関(プログラム)
当国内で日本語教師養成を行っている機関はないが、国際交流基金事業の「海外日本語教師長期研修」に、2020年10月までに6名、「海外日本語教師短期研修」に2名参加している。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
日本人教師の正式雇用はない。
教師研修
現職の日本語教師対象の研修はない。2017年より「メキシコ・日本語シンポジウム」に毎年参加している。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
2016年にエルサルバドル日本語教師会が発足し、会議や研修会、情報交換など定期的に行われている。
最新動向
2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックを機に、日本語教師会運営の「日本語能力試験のためのオンラインクラス」を開設している。
また、中米・カリブ海日本語ネットワークを通じて月1回交流会を実施し、各国学習者の発表や専門家や国費留学生の講演等積極的に行っている。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際交流基金からの派遣は行われていない。
国際協力機構(JICA)からの派遣
2017年8月以降、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
シラバス・ガイドライン
初等教育
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
中等教育
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
高等教育
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
学校教育以外
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
評価・試験
日本語学習者の到達度を測るための共通の評価基準や試験はないが、1講習が終了すると試験を実施し、合格者は次のレベルへ進める。また、希望者には日本語能力試験の模擬試験を実施している。
日本語教育略史
1970年代初頭 | JICA海外協力隊員により国立エルサルバドル大学において日本語教育開始 |
---|---|
1970年代後半 | 内戦勃発のためJICA海外協力隊員が撤退、これに伴い日本語講座も閉鎖 |
1995年 | 内戦終結3年後に再びJICA海外協力隊員1名が派遣され同大学で日本語教育が再開 |
2001年 | 日本留学経験者の会(ASEJA)により日本語教室が開始され、現在はASEJA事務所において実施している |
2002年 | 国立エルサルバドル大学で活動する隊員が2名となる |
2007年 | 国立エルサルバドル大学外国語教育センター(CENIUES)の日本語教室開始 |
2008年 | JICA海外協力隊が1名となる |
2009年 | 国立エルサルバドル大学で活動する隊員が再び2名となる ホセ・シメオン・カニャス中米大学(UCA)での日本語教室開始。エルサルバドル人教師が指導 |
2011年 | ホセ・シメオン・カニャス中米大学(UCA)へのJICA海外協力隊派遣開始 |
2012年 | JICAシニア海外ボランティア派遣開始 |
2013年 | 当地にて第5回中米・カリブ海日本語セミナー開催 |
2015年 | ホセ・シメオン・カニャス中米大学(UCA)が国際交流基金によるJFにほんごネットワーク(さくらネットワークメンバー)に認定される |
2016年 | エルサルバドル日本語教師会発足 |
2018年 | 日本語能力試験第1回(7月)開始 |
2020年 | エルサルバドル日本文化センター(エルサルバドル日本語教師会運営)のオンライン教室開始 |