マダガスカル(2020年度)
日本語教育 国・地域別情報
2018年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
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20 | 47 | 2,532 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
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初等教育 | 46 | 1.8% |
中等教育 | 296 | 11.7% |
高等教育 | 1,180 | 46.6% |
学校教育以外 | 1,010 | 39.9% |
合計 | 2,532 | 100% |
(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
マダガスカルにおける日本語教育は、1968年に発足した日本・マダガスカル友好協会の取り組みを発端とし、1992年には、国立アンタナナリボ大学人文学部が選択科目として日本語教育を導入した。以降、特に私立の語学学校を中心に相次いで創設されたことから、2011年1月にマダガスカル日本語教師会が設立された。2018年度機関調査結果によれば、首都アンタナナリボ市を中心に公立・私立含め計20の機関が存在し、日本語学習者は2,532名であり、アフリカ大陸第3位の学習者数である。また、日本語能力試験(JLPT)が2013年12月に開始されて以降毎年実施されており、2019年12月に7回目となる試験が実施された。
背景
マダガスカルは、人種的・文化的にアジア諸国と近似する点が多いこともあり、日本人及び日本文化に対する関心はアフリカ諸国の中でも比較的高い。また、日本の対マダガスカル経済協力、広報文化活動が高く評価されていることから、同国民が抱く日本への期待や日本留学等の憧れも強い上、マンガ・アニメを中心とする日本のポップカルチャーの世界的普及も相まって、日本語学習が盛んになってきている。
特徴
全体として学習者数は増加傾向にあり、特に私立の語学学校において日本語講座を新規開設する動きが目立ってきている。なお、日本のポップカルチャーや和食、伝統文化に対する興味から日本語学習に関心を持ち始める青少年が増えてきており、日本語教育レベルとしては初級・中級のコースが多い。しかし、すべての語学学校において、マダガスカル人教師のみによる日本語教育が施されており、教師の日本語レベルの向上が必要なこと、日本語習得後の将来的展望が不透明なことから、日本人の日本語専門家派遣が求められている。
最新動向
マダガスカルの日本語学習者数は2018年度機関調査結果によれば、学習者数は2,500名を超え、学習者数はアフリカ第3位である。
2016年3月より開設されている国立アンタナナリボ大学人文学部英語学科「英語・日本語コース」に加え、2019年4月には、マダガスカル語学科に「マダガスカル語・日本語コース」が新規開設された。これに伴い、同大学で日本語を学ぶ学生数も増加し、2020年10月現在、同大学だけでも、日本語を専攻する学生は400名にのぼる。
2020年3月から10月まで、当地における新型コロナウイルスの流行に伴い、大学は一時的に閉鎖となり、JICA海外協力隊日本語教師隊員も一時的に本邦に退避しており、派遣再開の目途はたっていない。また、私立の日本語学校も授業を中断している状況が続いている。なお、一部日本語学校に確認したところ、10月から順次対面式またはインターネットを活用した授業の再開を目指しているとのことである。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
公立ナニサナ高校、公立アンペルフィア高校、ジュールフェリー高校(3校とも首都アンタナナリボ市)で日本語教育が行われている。
高等教育
国立アンタナナリボ大学、国立アンタナナリボ高等技術学院、他私立3校の計5校(首都アンタナナリボ市:4校、地方都市アンチラベ市:1校)で日本語教育が行われている。国立アンタナナリボ大学人文学部には、「英語・日本語コース」及び 「マダガスカル語・日本語コース」の2コースが設置されており、それぞれの言語を学ぶことが義務付けられている。
学校教育以外
語学学校:首都アンタナナリボ市内に20校(2018年度機関調査結果)あり、うち9校で日本語を教える日本語教師がマダガスカル日本語教師会に所属している。また、各学校では、主に会話を中心とする日本語教育が行われている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
5-4-3制。
小学校が5年間(6~10歳)、前期中等教育機関のコレージュが4年間(11~14歳)、後期中等教育機関のリセが3年間(15~17歳)。高等教育機関としては、大学が3~7年間。
教育行政
初等教育、中等教育は国民教育省の管轄下にある一方、高等教育は高等教育・科学研究省の管轄下にある。
言語事情
国語はマダガスカル語であり、公用語はマダガスカル語及びフランス語である。
外国語教育
第二外国語として中学校で英語、高校で英語、ドイツ語、スペイン語、ロシア語を開講している。
外国語の中での日本語の人気
第二外国語としては英語が主流であるが、一部の大学等の高等教育機関では、英語よりも日本語の人気が高い。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
基本的に教師の自作教材と国際交流基金より提供された教材を使用。
高等教育
日本で出版された教材並びに教師の自作教材と国際交流基金より提供された教材を使用。
初級:
- 『日本語初歩』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)
- 『日本語で話そう』高柳和子ほか(英語教育協議会)
- 『JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社USA)
中・上級:
- 『日本語中級』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)
学校教育以外
基本的に教師の自作教材と国際交流基金より提供された教材を使用。
初・中級:
- 『日本語初歩』(前出)
- 『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
- 『AN INTEGRATED APPROACH TO INTERMEDIATE JAPANESE』三浦 昭他(ジャパンタイムズ)
- 『日本語90日』ヒューマンアカデミー教材開発室ほか(ユニコム)
IT・視聴覚機材
マダガスカルの教育機関にはコンピューター等の機材が非常に少ないことから、2010年、在マダガスカル日本国大使館の支援でアンタナナリボ高等技術学院にLL教室が整備され、パソコンを用いた日本語学習が行われている。
教師
資格要件
初等教育
特になし。
中等教育
日本語教育を実践している公立高校の一部の教師は、国際交流基金公募プログラムの日本語教師短期研修への参加のため、訪日経験がある。
高等教育
学士号(専門不問)が必要とされる。日本語学修士号を有する教師は1名のみであるが、一部の教師は国際交流基金主催の短期、長期研修等に参加し、訪日経験がある。
学校教育以外
後期中等教育(高校)を修了したバカロレア(大学入学資格)取得者。日本語学習歴3年以上。一部の教師は国際交流基金主催の短期研修等に参加し、訪日経験がある。
日本語教師養成機関(プログラム)
日本語教師養成を目的とした教育機関、学習プログラムは存在しないがマダガスカル日本語教師会が同目的のための勉強会を週1回開催している。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
2015年11月からJICA海外協力隊員一名がアンタナナリボ大学に派遣されている。2020年10月現在は、新型コロナウイルスの影響により、JICA海外協力隊員が一斉に本邦へ一時待避している状況にあるが、それまでは、1週間に11コマ(1コマ2時間、英語・日本語コース及びマダガスカル語・日本語コースの1年生へそれぞれ週3コマ、英語・日本語コースの2年生へ週2コマ、英語・日本語コースの3年生に週3コマ)、計22時間ほどの授業を行っていた。
教師研修
マダガスカル日本語教師会で実施しており、JICA海外協力隊員が活動の一部として、日本語の教授法の特別授業を月1回実施している(2020年10月現在、新型コロナウイルスの影響により、本邦へ一時待避中のため、特別授業は実施されていない)。特に優秀なマダガスカル人日本語教師は、国際交流基金の海外公募プログラムによる日本語教員短期研修等に応募し、参加している。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
2011年1月、日本語教育関係者によるマダガスカル日本語教師会を設立。2012年より東アフリカ日本語教育会議に毎年参加しており、2016年、2017年には、第4回、第5回会議が当地で開催されたした。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣(2019年10月現在)
JICA海外協力隊
アンタナナリボ大学 1名
その他からの派遣
なし。
シラバス・ガイドライン
初級、中級、上級に分かれたガイドラインを各学校が作成している。
- 初級:日常生活に必要な語彙と、日本語の基礎を学習
- 中級:作文、読解、漢字の習得、日本語スピーチコンテスト初級への参加
- 上級:中級レベルの文章の読解、日本語による説明への理解、日本語スピーチコンテスト上級への参加
評価・試験
マダガスカルの教育機関における日本語科目は、アンタナナリボ大学人文学部の「英語・日本語コース」、「マダガスカル語・日本語コース」では必修科目、それ以外では自由選択科目であり、学期ごとの試験をパスした者には単位が与えられる。また、試験は初級・中級・上級の3種類ある。
日本語教育略史
1970年代 | 日本・マダガスカル友好協会により日本語教育開始 |
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1992年 | アンナナリボ大学文学部にて日本語教育(選択科目)導入 |
2011年 | マダガスカル日本語教師会 設立 |
2013年 | 日本語能力試験(JLPT)新規実施 |
2015年11月 | JICAボランティアがアンタナナリボ大学へ派遣 |
2016年2月 | 日本大使館草の根文化無償資金協力によりアンタナナリボ大学に日本語教育専用の視聴覚(LL)教室をアンタナナリボ大学に建設 |
2016年3月 | アンタナナリボ大学人文学部英語学科の中に「英語・日本語コース」設立 |
2016年9月 | 住友商事よりアンタナナリボ大学日本語コースの学生への奨学金制度開始 |
2019年4月 | アンタナナリボ大学人文学部マダガスカル語学科の中に「マダガスカル語・日本語コース」が新設 |