北マリアナ諸島(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は4件、教師は4名。初等教育は0名で全体の0.0%、中等教育は500名で全体の92.6%、高等教育は40名で全体の7.4%、学校教育以外は0名で全体の0.0%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 北マリアナ連邦はサイパン、ロタ、テニアンその他11の島からなる。17世紀の半ばにスペインに支配され、1899年ドイツに売却された。その後、第一次世界大戦から第二次世界大戦にかけては日本の統治下におかれ、戦後アメリカ合衆国の国際連合信託統治領となった。さらに1975年から北マリアナ諸島コモンウェルス(CNMI)として米国自治領となった後、2009年に連邦化され、アメリカ合衆国に組み入れられた。
 北マリアナを含む南洋群島(現ミクロネシア連邦及びパラオも含まれる)における日本語教育は1914年の日本軍の占領とほぼ同時に始まったといわれる。時代によって多少異なるが、優秀な児童は概ね3年から5年の期間で日本への留学も可能であった。そのため当時日本語教育を受けた高齢者の中には今でもかなり日本語が話せる人がいる。
 1937年当時のサイパン在住の日本人は、現地人約4千人に対し約2万人であったと言われ、日本人町が栄えていたことがわかる。
 第2次世界大戦後の教育機関における日本語教育は北マリアナ最大のマリアナ高校(創立1969年、現学生数1,200人)で始まったと思われるが、いつからどのようにして始まったのか正確な資料は残っていない。北マリアナ短期大学(NMC)では、1981年学校設立と同時にLiberal Artsの学生を対象とした日本語コース(JA100 Conversational Japanese)が開設された。その後マリアナ観光局(MVA)、日本のシルバーボランティア等の協力を得て、徐々にコースを増やし、以前はビジネス・観光学科に所属していたが、1999年以降は言語・人文学科所属となった。

背景

 日本統治時代の日本人のチャモロ人に対する対応は友好的で公平であったといわれ、そのため対日感情は一般的に良好である。日本人に対する印象も「勤勉」「正直」などで「日本から学ぼう」という思いが見受けられる。

特徴

 北マリアナ連邦の主要産業は観光であり、かつては日本からの投資や観光客も多かった為毎年多くの学校関係者や市民団体が日本から訪れ、交流会等も頻繁に行われていた時期もあった。観光業や接客業に携わっている人々の中には日本語ができる人も多く、日本語ができると就職にも有利と考えられていた。しかしながら、2005年の日系航空会社の日本-サイパン便の廃止や、2018年のデルタ航空による日本からの唯一の直行便の撤退を受けて、北マリアナツーリズムは日本人観光客の減少を余儀なくされ、日本語教育を取り巻く環境にも影響を及ぼした。2019年からは日本への直行便が復活したことにより、日本人観光客が再び増加に転じていくと思われたが、2020年初頭からの新型コロナウィルスの影響で日系、韓国系、中国系、アメリカ系の全航空会社、全フライトは運航を停止し、観光産業は甚大な影響を受けた。その後ユナイテッド航空のみ運航が再開されたが、入国規制、PCR検査や14日間隔離などの規定により観光産業の復調にはまだ程遠い事態となっている。

最新動向

 2020年、全世界で流行した新型コロナウィルスの影響は、北マリアナ諸島にも及んだ。政府の発表で私立・公立学校共々、2020年3月中旬をもって突然の休校となり、その後は学校ごとに試行錯誤しながら学年末を迎えた。卒業式までも通常通りには敢行出来ず、ドライブスルー形式と言う新しい方法で実施する学校もあった。一時は政府から外出禁止令が発せられ、島外とのフライトがなくなり島が孤立すると言う事態も起こった。
 夏休みが明けるころには外出禁止時間も短くなり、9月には新学期の日本語教育も再開できることとなった。ほとんどの学校でオンライン授業が導入され、公立学校では慣れないオンライン授業をする為の教師研修が一ヶ月余りに渡ってオンラインで行われた。また、生徒全員のオンライン学習環境を整えるため、ラップトップやワイファイ機器が配布されるなどと異例の対応が続いている。また、午前中は1クラス9人以下の教室での授業、午後はオンライン授業とするなどのハイブリッド授業も採用されている。学校内でも各種の衛星対策が実施され、新年度開始前に政府による立ち入り検査も行われた。私立高校でもハイブリッド授業から対面授業のみに切り替わった学校もある。生徒に限らず、学校関係者、家族その他全ての人々への心のケアも必要不可欠と考えられる。

教育段階別の状況

初等教育

 2008年から私立マウントカーメル小学校で日本語教育の10週間のプログラムが開始され、1年生から6年生までの約100人を対象に日本文化を中心とした内容で折り紙や書道などを紹介していたが、2011年度に一旦休止となり、その後2012年に規模を縮小して再開したものの、2016年以降、日本語教育は実施されていない。

中等教育

 2020年11月現在、公立ではサザン高校、カグマン高校、マリアナ高校、テニアン高校の4校、私立ではマウントカーメル高校、グレース・クリスチャン・アカデミーの2校で日本語教育が行われている。
 サザン高校では、前後期共に日本語Ⅰが1クラス(約30名)と日本語Ⅱが1クラス(約30名)、ならびにAP クラスが1クラス(約10名程度)開講している。他の外国語は韓国語があり、25名程度が1クラス開講している。
 カグマン高校では外国語プログラムは日本語のみなので、必然的に日本語Ⅰが必須科目となっている。前期は日本語Ⅰを3クラス(それぞれ約30名)、後期は日本語Ⅰを2クラス(それぞれ約30名)と日本語Ⅱを1クラス(約20名)開講している。
 マリアナ高校では前後期共、日本語Ⅰを34クラス(それぞれ約30名)開講している。
 テニアン高校では外国語は日本語とチャモロ語の選択になっており、日本語は前後期とも2クラス(それぞれ25名程度)受講している。
 ロタ高校では日本語の講師が不在の為、日本語のオンラインコースか、チャモロ語かスペイン語の選択となっている。
 マウントカーメル高校では外国語のクラスは日本語のみで、日本語Ⅰを6クラス(それぞれ約20名)開講している。1コマの時間が50分なので前期と後期とで生徒は変わらず、クラスは1年間を通して継続して開講している。
 グレース・クリスチャン・アカデミーでは日本語教育は行われているが、学校の方針で詳細は公表されていない。

高等教育

 北マリアナ短期大学(NMC)では、2020年11月現在、日本語のクラスは前後期とも1クラス20名程度初級日本語クラスI,II、中級日本語クラス、会話の日本語クラス(それぞれ約20名)を開講中。他の外国語クラスとしては初級チャモロ語I,IIと初級カロリニアン語I,II、初級サインランゲージI,II、初級スペイン語I,IIも開講中だが、生徒数が募集定員の10名に満たない場合はクラスが閉講される。

学校教育以外

 景気低迷と日本語の需要低下を受け、ホテル、旅行会社、政府機関などで行われてきた日本語教育はその規模を大幅に縮小している。かつて幼児から年配者まで、50人程度の幅広い学習者に教えていたベスト・アプローチ・ランゲージ・スクールでも2010年頃から学生数が激減し、2011年、学校を閉校することとなった。また2009年にオープンしたプルメリア・ランゲージ・インスティチュートも閉校となった。その一方で、中国人の流入が上昇し、中国語の需要が増しているため、観光客相手の商店では日本語教育に代わって中国語教育が行われていた。しかし、観光客が激減して、観光産業が著しく縮小しているため、学校教育以外での教育は風前の灯である。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-2-4制
 1年生~6年生:小学校 7年生~8年生:中学校 9年生~12年生:高校
 義務教育は高校までとなっているが、卒業後にコミュニティーカレッジ(2年以上)や大学(4年以上)へ進学する者もいる。

教育行政

 教育省の下にPSS(Public School System)が公立校(小学校から高校)を管轄している。私立校に関しては教会付属が主で独自の運営をしている。

言語事情

 公用語は英語で、学校教育も英語で行われているが、現地の人々の大半はチャモロ語かキャロリニアン語を各家庭もしくは公の場で話している。その他、コミュニティーによっては中国語、日本語、韓国語、タガログ語、タイ語、パラオ語、ヤップ語、ポナペ語、トラック語等を話す家庭もある。

外国語教育

 公立高校では卒業のために外国語1単位が必要である。以前は1コマの授業が50分だったため、卒業単位を履修するのに月曜~金曜までの授業を1年間受けたが、現在は1コマが75~80分になったため、半年(1学期)ブロック制で履修できるようになった。
 私立の外国語教育は、学校や校長の方針によって状況は異なり、 採用される教師の資格は公立学校ほど厳しく問われていない。

外国語の中での日本語の人気

 スペインの支配が2世紀半続き、現地のチャモロ人の中にはスペイン語の姓を持つ人が大変多い。歴史的意義からスペイン語を学びたいという人はいるが、実質的に日本語の方が役に立ち日本語ができると将来の就職に有利であると考える学生が多く、日本語を選択する学生が圧倒的に多い。高校でもスペイン語を選択科目に挙げているが実際にスペイン語を開講している学校はあまりない。ある校長の話では教える人が見つからないとのこと。北マリアナ短期大学(NMC)でもスペイン語が開設されたのは数年前であり、それまでは外国語科目は日本語だけであった。

大学入試での日本語の扱い

 北マリアナ短期大学(NMC)にはいわゆる入学試験はない。学生は入学するとき英語と数学のプレースメントテストだけ受ければよく、日本語を含めた外国語の試験はない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 公立高校・私立高校で共に『JAPANESE FOR YOUNG PEOPLE Ⅰ Ⅱ』国際日本語普及協会(講談社USA)を使用している。マリアナバプティストアカデミーでは『Genki』(The Japan Times)も併用している。

高等教育

『新日本語の基礎I』(漢字かなまじり版)海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)
BASIC KANJI BOOK Vol 1』加納千恵子ほか(凡人社)等が使用されている。

学校教育以外

 日本語教育の実施は確認されていない。

IT・視聴覚機材

 公立高校では、近年、日本語のオンラインコースも開始され、コンピューター、インターネット、iPad等を授業に取り入れる事を推進している。Blackboard, College Board AP Classroom, Edmodoを利用しているクラスもある。

教師

資格要件

初等教育

日本語教育は実施されていない。

中等教育

 学士号を取得していることが条件(専攻は問わない)。公立高校では、学士号に加えて、教師としての能力テストPraxis1(一般教養)とPraxis2(専門分野の知識)の合格と、マリアナ大学での幾つかのコース修了も条件となっている。

高等教育

 「修士号以上、高等教育機関での日本語教育経験5年以上の者」が資格要件とされている。

学校教育以外

 日本語教育の実施は確認されていない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 現在、学校制度において日本語教育に携わっている教師は全員が日本人(常勤5人、非常勤1人)。

教師研修

 この地域内での教師研修はない。研修を受ける為には日本、ハワイ、またはアメリカ本土まで行く必要がある。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 日本語教育関係のネットワークは確認されていない。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 国際交流基金、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 日本語教育の派遣は行われていない。

シラバス・ガイドライン

 日本語に関しては統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 共通の評価基準や試験はないが、APテストは年に1回実施している。

日本語教育略史

 
1969年 マリアナ高校で日本語クラス開設。
1981年 北マリアナ短期大学でLiberal Artsの学生を対象とした日本語クラス開設。
2002年 公立校のサザン高校、カグマン高校を新設、同時に日本語クラス開設。
2008年 私立マウントカーメル小学校で日本語クラス開設。
2011年 私立マウントカーメル小学校で日本語クラスが閉講となる。
2012年 私立マウントカーメル高校で日本語クラスが開講される。
2016年 マリアナ高校、マリアナバプティストアカデミーの日本語クラスが教師不在の為に休止。
2017年 マリアナ高校、マリアナバプティストアカデミーの日本語クラスが開講再開。
北マリアナ短期大学の日本語クラスは1学期のみ開講。その後、一時的に閉講。
私立マウントカーメル小学校で日本語クラス開講となる。
2018年 マリアナバプティストアカデミー閉校。
北マリアナ短期大学日本語クラス再開。
2020年 新型コロナウィルスCOVID19の影響により全学校が3月中旬にて休校となる。新年度は例年とは異なる形であるが例年並みの9月より再開される。

参考文献一覧

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