パナマ(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
3 6 132
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 37 28.0%
高等教育 30 22.7%
学校教育以外 65 49.2%
合計 132 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1987年4月、国立パナマ大学で日本語教育がセミナー形式で始められた(受講生100名程度)。その後、1988年4月には日本語が人文学部一般教養科目として昇格、1991年に日本語が単位取得科目として承認された。
 中等教育機関においては、2000年3月より、現地の私立高等学校(1校のみ)において、文系の後期中等教育2年生及び3年生(日本でいう高校2年生及び高校3年生)の科目として日本語が導入された。高等教育機関では上述の国立パナマ大学以外に、2001年1月より国立パナマ工科大学において、JICAのシニアボランティアとして派遣された教師1名による日本語講座がスタートした。

背景

 日本に対する認知度は一般に高いとは言えないが、以前から日本の電化製品や自動車などをはじめとする技術力の高さや伝統的な日本のイメージ(侍、生け花など)への関心は高い。現在では日本のマンガやアニメの愛好家層に日本語学習の需要が高まっている。

特徴

 2017年現在、国立パナマ大学及び国立パナマ工科大学の2大学、私立の高等学校1校で日本語教育が行われている。
 近年は日本のマンガやアニメをきっかけとして日本語学習に興味を持つ者も多いが、需要に対して日本語教師の供給が追いついていないのが現状である。

最新動向

 2012年から、在パナマ日本国大使館の主催で全国日本語弁論大会が開催されている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 公立の中学校、高校では日本語教育の実施は確認されていない。私立では2000年3月より、現地の高等学校(1校)において日本語教育が行われている。

高等教育

 国立パナマ大学では、初級・中級・上級レベルの3コースが開講されている。
 国立パナマ工科大学では初級及び中級レベルのクラスが開講されている。

学校教育以外

 パナマ大学及びパナマ工科大学では、学生だけでなく、一般の学習者も受け入れている。
 両校が一般の学習者を受け入れている背景には、民間の語学学校を教える人材がおらず、開設が難しいという状況がある。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 2-6-3-3制。
 就学前教育が2年間(4~5歳)、小学校が6年間(6~12歳)、前期中等教育3年間(12~15歳)、後期中等教育3年間(15~18歳)であり、公立学校では、後期中等教育修了までの授業料は無償となっている。高等教育機関は大学(4~6年間)、職業専門学校(2~3年間)など。
 就学前教育から前期中等教育までの11年間が義務教育。

教育行政

 初等・中等教育機関は、すべて教育省の管轄下にある。
 高等教育については、国立パナマ大学が独自の大学運営を行っており、その他の大学についても、国立パナマ大学が監督機関としての役割を果たしている。

言語事情

 スペイン語が公用語であり国語。
 地方の先住民の間では、スペイン語と先住民族の言語(8つ)の2つが話されている。

外国語教育

《公立・私立全般》
 外国語のうち、英語教育は公立私立を問わず、小学校1年生から後期中等教育終了(日本でいう高校3年生)まで行うことが義務づけられている。
《公立校の場合》
 2003年度から教育省は公立小学校において、将来的に国民の英語力のレベルアップを目的とする週あたり5~10時間の英語教育のプロジェクトを開始した。
《私立校の場合》
 初等教育機関から外国語教育(英語教育)を始めるところが多く、中等教育機関では、英語教育に加え、第二外国語としてフランス語の授業を行う学校も多い。日本語に関しては、2000年3月より現地の私立高等学校(1校のみ)で授業が開始された。

外国語の中での日本語の人気

 市内でも多くの英語学校が見られるなど、パナマ国民の外国語教育の重要課題は英語習得にある。一方で、高校では第二外国語としてフランス語を学ばせる私立学校が多く、中には小学校4年生からフランス語教育を開始して高校3年生まで学習させる一貫教育の学校もあるなど、第二外国語におけるフランス語の人気は高い。
 日本語は潜在的な人気はあるが、日本語を学ぶことができる機関が少なく、また学習機関が首都にしか存在しないため、実際の日本語学習者の数は少数にとどまっている。
 日本語は英語、フランス語、中国語に次いで、第4位の人気。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育を2000年より行なっている私立高校(1校のみ)では主に教師のオリジナル教材が利用されている。

高等教育

 読解教材として、独自教材、日本の小学校国語科の教科書や『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)など。視聴覚教材としては『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社USA)や『Japan Video TopicsInternational Motion Picture Co.,Inc.(外務省)、会話教材としては、『すぐに使えるスペイン語会話』Language Research Association、廣康好子(ユニコム社)、『日本人のライフスタイル』(NHKインターナショナル)など。

学校教育以外

 【高等教育】と同様。

IT・視聴覚機材

 国立パナマ大学では、1996年に日本政府の文化無償資金協力を受け、LL教室と視聴覚教材編集室が設けられ、自習室には日本語の学習者が利用できるコンピューターが5台設置された。2010年には二度目の文化無償資金協力が決定され、2011年9月に最新視聴覚機材の新LL教室が完成。学生の出欠リストや聴解選択テストの各学生の成績記録がモニターに表れ、また、教室で教材音声を流しながら教師が新たに録音編集した独自教材が作れ、学生もUSBで各自の机の機材から教材を録音できるなど多岐に利用できる。
 国立パナマ工科大学は20台設置され、日本語学習のほかに、日本のアニメ映画、音楽鑑賞などに活用している。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教師としての資格要件は特にない。

高等教育

 日本語教師としての資格要件は特にない。

学校教育以外

 日本語教師としての資格要件は特にない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

《国立パナマ大学》
 1名。常勤雇用。
 毎年学術会議の審査において合格した上で、翌年に外国人として雇用契約書を交わし勤務可能となる。
《国立パナマ工科大学》
 日本語のネイティブ教師(日本人教師)が1名雇用されている。

教師研修

 パナマでは特に日本語教師研修の制度は設けられていない。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2010年第2回中米・カリブ日本語教育ネットのセミナーに国立パナマ大学が参加。第3回セミナーには国立パナマ工科大学も加わり、これを機にパナマ国内の日本語教育ネットワークが生まれた。

最新動向

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育を実施している私立高校(1校のみ)では、毎学期のカリキュラムを外国語教育として教育省に提出する義務がある。
 教育段階:高校2年生及び高校3年生の2年間で、初級から中級前半程度。

高等教育

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

学校教育以外

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 共通の評価基準や試験はない。

日本語教育略史

1987年4月 国立パナマ大学において日本語セミナー開設にあたり、在パナマ日本大使館より授業担当の依頼を受ける
1988年 国立パナマ大学人文学部一般教養科日本語クラスとして認定される
1989年 米軍によるパナマ侵攻のため政情が不安定化し、学生運動も激化したが、その間も日本語のクラスは継続される
1991年 国立パナマ大学において外国語選択科目として日本語が単位取得教科に承認される
1991年より3年続けて国際交流基金の日本語優秀学生研修に受講生が参加(4名)
1992年 第1回国立パナマ大学・日本大使館共催日本語弁論大会開催(於:国立パナマ大学)
1993年 第2回国立パナマ大学・日本大使館共催日本語弁論大会開催(於:国立パナマ大学)
1994年 第3回国立パナマ大学・日本大使館共催日本語弁論大会開催(於:国立パナマ大学)
1996年 日本政府文化無償協力により国立パナマ大学人文学部の新校舎に日本語科のためのLL教室コンピューター自習室(6台)、教材ビデオ編集室が設置される
1997年 国立パナマ大学人文学部語学センター誕生(ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、露語、英語、中国語、日本語科)
1998年 1998年より中央語学センターの前後期の授業料の急激な値上げが続き、受講生の数が急減する。加えて日本経済の停滞も日本語離れに影響を与える
1999年 第4回国立パナマ大学・日本大使館共催日本語弁論大会開催(於:国立パナマ大学)
日本政府文化無償協力により国立パナマ工科大学にLL機材が設置される
2000年 JICAより国立パナマ工科大学にシニアボランティアが派遣され日本語講座が開設される
日本語教育を実施する第1号の現地高校が現れる(2013年現在もこの1校のみ)
2003年9月 国立パナマ大学学長より「2008年から本学の学生は英語を第一外国語とし、その他の外国語の中から第二外国語を必修選択科目として履修する。」との構想が発表される
2004年8月 国立パナマ工科大学にて日本語講座主催によるJAPANフェアーが開催される
2004年10月 国立パナマ大学日本語科主催による“パナマ独立百周年に向けて”にて、日本大使講演並びに学生による運河建設青山技師研究発表
2006年6月 国立パナマ工科大学にて日本語講座主催によるJAPANフェアーが開催される
2006年9月 第5回国立パナマ大学・日本大使館共催日本語弁論大会開催(於:国立パナマ大学)
パナマ工科大学で、日本語講座の10周年を記念して日本文化を含む他文化フェアーが開催される
2007年7月 国立パナマ大学及びJICA海外協力隊共催の「広島、長崎からの平和へのメッセージ」展にて日本語クラスの学生が展覧会参加者に折り鶴の折り方を指導した
2009年 日本政府文化無償資金協力により国立パナマ大学にLL機材(デジタル)の設置が決まる
2009年10月 国立パナマ大学日本語科で、「日本のみんなの歌のコーラス発表会」が開催され、クラスの学生達が日本の歌を合唱した
2010年2月 国立パナマ大学、日本政府文化無償資金協力の二度目の審査決定
2010年4月 パナマ工科大学にJICA短期ボランティア派遣
2011年2月 パナマ工科大学にJICA協力隊日本語教師派遣、授業を行うとともにパナマ人講師の育成を行う
2011年8月 第6回国立パナマ大学主催日本語弁論大会開催(於:国立パナマ大学)
2011年9月 日本政府文化無償資金協力による最新機材視聴覚LL教室が完成
第1回パナマ工科大学主催日本語弁論大会開催(於:パナマ工科大学)
2012年3月 日本大使館の主催で第1回全国日本語弁論大会を開催
2013年2月 第2回全国日本語弁論大会開催
2014年1月 第3回全国日本語弁論大会開催
2015年7月 第4回全国日本語弁論大会開催
2016年5月 第5回全国日本語弁論大会開催
2016年11月 メキシコ国際交流基金の日本語上級専門家による日本語教育セミナーを実施し、14名(当地日本語教師、日本語教師志望者及び日本語教育に関心がある者)が参加
2017年3月 パナマ工科大学にJICAボランティア派遣
2017年6月 第6回全国日本語弁論大会開催
2018年6月 第7回全国日本語弁論大会開催
2019年6月 第8回全国日本語弁論大会開催
2020年1月 パナマ工科大学にJICAボランティア派遣
What We Do事業内容を知る