セネガル(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
1 1 128
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 128 100.0%
学校教育以外 0 0.0%
合計 128 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 セネガルにおける日本語教育は、1980年代に日本大使館スタッフが試み、外部会場において実施していた講座を、JICA海外協力隊員が引き継ぐ形で進展した。1998年に経営・企業・組織高等研究所(CESAG)言語科(日本語以外にもさまざまな外国語を教育している)に選択科目として日本語講座が発足し、JICA海外協力隊員1名が派遣される形で、2000年より実際の教育が開始された。CESAGは西アフリカ中央銀行出資による広域的な経営学専門家育成機関(ビジネススクール)で、セネガルのみならず西アフリカ諸国の幹部候補生が、経営学や会計学、外国語等を学んでいる。2015年9月からは8代目のJICA海外協力隊員が着任して活動にあたっていたが、2017年7月に離任し、それ以降日本人の教師は着任していないが、代わりに旧国費留学生のセネガル人が約30名の生徒に対して日本語の授業を行っている。
 また、2008年2月には高等経営学院(ISM)にアフリカ・アジアセンターが開設され、セネガル人元国費留学生(環境地理学)が初代センター長に就任した(現在は退任)。同センター長は日本語教師ではないものの、日本において習得した日本語能力を活かして2008年3月から日本語入門講座を開設した。同センターには、2009年12月より断続的にJICA海外協力隊員・シニア海外ボランティアが計3名(短期)派遣された。2014年2月にJICA海外協力隊員(長期)が着任し、同学院の生徒に対し日本語を教えていたが、2018年に離任。その後、エジプト国籍の外国人が初心者向けの日本語コースを2019年から担当している。
 2006年から試験的に日本語講座が開設されたCESAG同様のビジネススクールであるアフリカ経営学センター(IAM)においては、教師の不在等の事情から休講(事実上廃止)となっている。
 他には、私立の語学学校としてINTERLANGUAGEが存在し、2017年から初学者向けの日本語のクラスを開講している。2020年11月時点で1名の日本人教師が在籍している。

背景

 セネガル人にとって、日本は豊かで平和を愛する国であるとの一般的認識に加え、過去に両国の間で歴史的しがらみがないこと、日本の経済協力の実績が広く一般国民に認識されてきていること等から対日観は良好である。とりわけ、日本はセネガル同様資源に乏しいにもかかわらず、日本が戦後50年で驚異的な復興を遂げ、経済発展しつつも伝統文化を継承している点が開発モデルとして学ぶべきことが多いと評価され、中学・高校の地理や歴史において日本に関する内容は必修科目となっている。国際交流基金中学高校教員交流プログラムで訪日した社会科教師が、こうした関心の深化に大きく貢献していることも特筆すべき点で、若年有識者層の対日理解と対日関心は質・量ともに極めて高いレベルにある。
 一方、地理的な距離に加えて言語の壁もあり、日本に関する情報が日常的に提供されているとは言い難いが、国営TV局の全国放送のチャンネルにて毎週ジャパン・ビデオ・トピックスが放映されている他、日本アニメの放送に特化した有料放送チャンネルも存在する。しかしながら、欧米に比して人や情報の交流が圧倒的に不足していることも事実である。このため、一般市民の対日理解が未だ表層的なものにとどまっていることは否めないが、セネガル人の日本を知りたいという知的好奇心は概して強く、日本側の積極的な発信が期待されている。
 また、日本とセネガルは経済協力面での関わりが深く、一般無償資金協力案件やJICAの研修プログラム、職業訓練プロジェクト等を通じて日本人との関わりや訪日経験のあるセネガル人は少なからず存在する。また、国費留学生として日本で勉強した経験のあるセネガル人も増えてきている。よって、これらの人々を通じ、日本に対する関心を有する人も多く存在する。しかしながら、日本語教師にフランス語能力が求められるという言語的な障壁から、日本人日本語教師による日本語教育振興は容易ではなく、人材不足が深刻である。さらに、日本語学習が就職や現金収入に直結しないという現状もあって、学習者の長期にわたる動機付けと継続の意欲はいまだ弱いといわざるを得ないのも事実である。
 他方、故サンゴール元大統領が詩人として文化振興に尽力した歴史があること、また、口承文芸の伝統を重視する国民性が顕著であることなどから、セネガル人の日本の俳句や文学、哲学等への関心は極めて高い。セネガル国民は多民族・多言語・多宗教共存国家として長年平和的共存を実現してきたことに誇りを持っており、一般市民を含めて広く文化の多様性への受容力と文化的・知的好奇心を有する。このような観点から、日本に対しては、物質的な豊かさや経済的援助への期待のみならず、職業倫理や歴史、精神文化や自然観への関心も高い。在セネガル日本国大使館は1979年以来35年間以上にわたってフランス語による俳句コンクールを実施しており、2019年度の第32回俳句コンクールには、セネガル国内外から400を超える作品の応募があった。同回の授賞式では、セネガルで著名な詩人であり俳句への造詣も深いジブリル・ディアロ・ファレメ氏による俳句についての講演が行われ、日本の伝統的詩句である俳句に対する理解の深化及び日・セネガル二国間関係の増進へとつながる機会となった。また、2016年には、セネガルの文化教育機関であるサンゴール財団及び教育関係者・有識者の協力を得て、公益財団法人JAL財団が主催する「第14回世界こどもハイクコンテスト“朝”」セネガル大会を開催した。未来を担うこどもたちから477句もの応募があり、大賞5作品と入賞16作品を選考し、表彰した。今後も、俳句を中心として文学や詩を通じた日本語教育の促進も考えられよう。

特徴

 セネガルにおける日本語教育は、日本語会話をコミュニケーション手段としてとらえ、「話せるようになること」を希望する学習者が多く、文法の習得や読解・聴解・記述面の日本語能力は弱いというのが実情である。他方、セネガルは公用語であるフランス語以外に国語としての現地語を21言語有し、その他に下位言語を数多く有することからも、日常的に多言語環境になじんでいるため、耳からの言語習得に優れているという特徴も挙げられる。
 学習者の大多数は、日本語学習が将来的に何らかの就職や現金収入に結びつくことを期待しているが、現在のところ多くても週6時間程度の学習時間であり、実用に結びつく習熟度まで到達することはまれである。また、JICAの研修等による訪日経験者が数多く存在し、彼らの短期滞在が日本語学習の動機となっている例も多いため、日本語学習が必ずしも日本研究や比較文化研究等には直結しないケースがほとんどである。
 最近はインターネットやテレビ等の普及により、日本のアニメやJ-POP等の視聴も可能となったため、日本のポップカルチャーに強い関心を示す若年有識者層が急増しており、その中には少数ながら、インターネット等によるレベルの高い独習者も見られるようになってきている。

最新動向

 特になし。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。
 2009年に日本セネガル職業訓練学校で日本語教育を実施していた期間があったが、諸々の理由により2010年度以降は開講できなかった。
 2013年にダカールとサンルイにある高等経営学院(ISM)附属の中学・高校にて、単発の日本語紹介講座を開講した。

高等教育

 前述のCESAG(経営・企業・組織高等研究所)及びISM(高等経営学院)において、学生(各国からの社会人研修生も含む)への日本語教育が実施されている。CESAGにおいては、35名前後の学生に年25~30時間の入門レベルの講義を実施している。
 課外活動では、学生主体の「CESAGにほんごくらぶ」もでき、大きなイベントとして毎年「CESAGにほんまつり」を実施している。日本語での劇や歌、ダンスなどに取り組み、日本語学習のモチベーションとなっている。その他、スピーチコンテストも実施している。
 2008年3月から日本語講座を開始したISMアフリカ・アジアセンターにおいては、初年度の2008年度は65名の学生が選択科目として日本語入門コースを週4時間、半年で約100時間学んだ。2009年度には、同コースが1学年から2学年まで週6時間で半年学べる体制となり、JICA海外協力隊員(短期)の派遣による教育環境の充実及び日本語学習に対する当地の高い関心を反映して、受講生は144名に急増した。その後も2013年3月までの間にJICA海外協力隊員(短期)、セネガル人日本語教師、シニア海外ボランティア(短期)がそれぞれ授業を行ったが、いずれも短期の断続的な派遣であったため安定した授業運営が行えず、2年間通年のコースであるにもかかわらずコースを修了した学生のレベルは挨拶レベルにとどまっていた。2014年2月から長期のJICA海外協力隊が派遣され、日本語コースの立て直しを試みている。60人の学生が週に3時間の日本語クラスを受講し、2年通年になっている。授業の中では日本語学習をはじめ、文化紹介、日本のビジネスマナーの紹介を取り入れている。これと同時にISMでも日本語クラブを作り、学内での日本・日本文化の浸透をめざすとともに、今後学内外を問わず日本を紹介できる場を提供できるよう活動中である。2016年5月には、初めて「ISM日本祭り」を開催し、各種日本文化紹介を行い、大変な盛況となった。2017年には、同じくISMにて、日本語クラブの学生が中心となり、日本文化に関するプログラムの終了に際する式典を開催した。

学校教育以外

 CESAGの社会人コース(約80ユーロ)として、1ユニット50時間のコースを初級・中級と設けている。受講生は中学生から社会人までさまざまで、日本語教師(JICA海外協力隊員。2020年11月時点で空席)が、レベルに応じた指導を行っている。現在はセネガル人の元国費留学生が日本語の授業を行っている。
 私立語学学校INTERLANGUAGEでは、初心者向けに個別授業の形式で1ユニット20~40時間のコースを提供しており、日本人日本語教師1名の下、平均2~4名が受講している。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-4-3制。
 小学校が6年間(7~13歳)、前期中等教育機関のコレージュが4年間(13~17歳)、後期中等教育機関のリセが3年間(17~20歳)。ただし、幼稚園3年間(3~6歳)などで早期教育を受けた子どもが飛び級をするケースも多く、教育年数は一定しない。高等教育機関は大学(4~6年)、グランドゼコール(高等専門大学、2~3年)、ビジネススクール(経営大学院、2~4年)、職業専門学校(2~3年)など。義務教育は存在しない。

教育行政

 初等・中等機関は国民教育省、高等教育機関は高等教育・研究・開発省の管轄下にある。

言語事情

 公用語はフランス語(教育、公文書等はすべてフランス語)。
 公用語のほかに、2016年11月現在、21の「国語」(ウォロフ語、セレール語、プラール語、ジョラ語、ソニンケ語、マンディンカ語、ハサニヤ語、バラント語、マンカーニュ語、ノーヌ語、マンジャック語、ジャロンケ語、ラーラー語、メニック語、ンドゥット語、オネカン語、サフィサフィ語、カンジャドゥ語、グヌーン語、パヨット語、パロール語)があり、更にその下位言語及び少数民族語としての民族語が多数ある。国語としての認定基準(文化省)は、文法・発音・語彙・スペル・単語構成が統一基準として文章化されていることが条件となる。なお、これら国語の話者は全国に混在しており、言語境界線的なものは存在しないが、現政権のウォロフ語振興政策の影響もあり、国民の大多数がウォロフ語を解し、コミュニケーションの手段として用いている。いずれももともと文字化されていなかった言語であるが、近年地方分権化政策に伴い、遠隔地村落部での識字率向上政策の一環として、文字化を推進する動きが活発になってきており、昨今の国語数の増加もこうした政策の影響であると言える。

外国語教育

 小学校(または幼稚園)1年からフランス語(公用語)を履修(必修)。
 中学1年より第一外国語を履修(必修)。英語またはアラビア語からの選択だが、ほとんどが英語を選択するのが現状。
 中学3年より第二外国語を履修(学校による選択、選択校においては必修)。スペイン語、ロシア語、ドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、アラビア語から選択。また、英語は高校卒業時まで教えられている。なお、フランス語も中学卒業時までは文法等の言語教育がなされるが、その後高校においては「文学」として教えられるのみで、言語教育としての授業はなくなる。
 大学においては、文学部以外の学部では外国語必修科目はないのが現状。他学部学生も文学部の外国語科目を選択はできるが、入学と同時に外国語をほとんど学ばなくなる学生が多いのも事実である。他方、文学部では入学当初2年間の教養課程において、「現代言語」科目としてセネガルの国語またはヨーロッパ言語から週2時間の言語教育を受けることが義務づけられている。
 このような状況において、セネガルの大学生の英語力は総じて低いレベルにとどまっており、近年の国際化の動きの中で英語教育を重視する私立大学の動きが目立ってきている。前述のISMCESAG等の私立の経営学センターにおいては、授業そのものを英語で行ったり技術英語コースを設けたりして、学生の外国語、とりわけ英語の能力の向上に努めている。

外国語の中での日本語の人気

 オプション科目として高等教育機関(私立の経営大学院)で教えられているが、経済・ビジネス分野への関心から、学生の人気は高いといえる。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。
 2009年に日本セネガル職業訓練学校では日本語教育を実施していた期間があったが、日常生活の挨拶表現など、きわめて入門的な性格を帯びた初歩の授業であるため、特別な教材はなかった。

高等教育

 主に国際交流基金の寄贈教材及びフランス語による日本語初級教材。いずれの教育機関においても、初級クラスの教育の主軸となるのは『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)で、学習事項に応じて『エリンが挑戦!にほんごできます。』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)や『JAPANESE FOR BUSY PEOPLE』国際日本語普及協会(講談社USA)などを補助的に使用している。また中級レベルで『なめらか日本語会話』富阪容子(アルク)や『日本語中級からのスキルバランス』財団法人放送大学教育振興会(凡人社)、『360枚のカードで学ぶ中級会話』坂本勝信他(アルク)等を使用。また、『ジャパン・ビデオ・トピックス』(外務省)や『エンサイクロペディア・ジャパン』等日本に関する視聴覚広報資料も活用。併せて自主制作教材を使用している。

学校教育以外

 初級学習者については高等教育に同じ。中級学習者については、『なめらか日本語会話』(前出)や『日本語中級からのスキルバランス』(前出)、『360枚のカードで学ぶ中級会話』(前出)等を使用するほか、自主制作教材を使用。学習者のレベルに応じた指導を行っている。

IT・視聴覚機材

 前述のCESAGISMにおいては、インターネットを利用した、日本語学習のサイトやフランス語による日本関係のサイトなどを学生に紹介している。また、SkypeFacebookを通じて、日本の大学と交流することもある。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。
 2009年に日本セネガル職業訓練学校では日本語教育を実施していた期間があり、日本留学経験のある教師が教えていた。

高等教育

 特に資格要件はない。

学校教育以外

 特に資格要件はない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師を養成する機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 JICAからの派遣の形(2020年11月時点ではなし)以外では、語学学校にて個人契約で1名が確認されている。

教師研修

 現職日本語教師対象の研修はない。ただし、2007年度にはJICAと国際交流基金の共催による日本語教師研修が、国際交流基金カイロ日本文化センターで開催され、同研修会にJICA海外協力隊員も日本語教師として参加している。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 公的な日本語教育関係のネットワークは存在しないが、セネガル国内の複数の機関で日本語教育が実施されている昨今の状況から、教師及び関係者間でネットワークを構築したいとの意欲が高まってきている。国際交流基金パリ日本文化会館、カイロ日本文化センターをはじめとする国際交流基金海外拠点所在国の日本語教育関係者や、チュニジア、モロッコ等アフリカにおける日本語教育先進地域の関係機関との情報交換・人的交流を活発化したいという動きが出てきている。

最新動向

 特になし。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣

 なし

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1990年前後 日本国大使館の広報文化担当官が外部会場において講座実施
1998年 経営・企業・組織高等研究所(CESAG)言語科目に日本語講座(選択科目)発足
2000年 経営・企業・組織高等研究所(CESAG)言語科にて日本語教育開始
2006年 アフリカ経営学センター(IAM)に日本語講座開設(休講中)
2008年 高等経営学院(ISM)にアフリカ・アジアセンター開設・日本語講座開設
2009年 高等経営学院(ISM)に社会人向けの日本語入門講座開設
2017年 語学学校INTERLANGUAGEが日本語入門講座開設
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