セルビア(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

2018年度日本語教育機関調査結果に関する帯グラフ。機関数は23件、教師は35名。初等教育は167名で全体の21.0%、中等教育は171名で全体の21.5%、高等教育は378名で全体の47.4%、学校教育以外は81名で全体の10.2%。

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1975年に、ベオグラード大学言語学部東洋言語学科に日本語の授業が設置され、セルビアにおける日本語教育が開始された。
 1986年には、言語学部内に日本語・日本文学専攻課程が開設され日本語・日本文学を専門に学ぶことが可能となった。その後、日本語教育への関心は徐々に高まりつつある。

背景

 セルビアでは、劇的な戦後復興を成し遂げた国、経済大国、先端技術を有する国、歴史と伝統を重んじる国として日本への評価・関心が非常に高い。また、旧ユーゴ紛争後、民主化が実現した2000年頃から本格的に始められた日本政府の経済協力が市民生活の改善に寄与したとして高く評価されており対日感情は非常に良好である。また、日本の伝統文化や武道は高い人気を誇っている他、日本のアニメを放映する衛星チャンネルもあるなどポップカルチャーに対する人気も高い。これらの良好な対日感情、日本文化への高い関心から日本語の学習を始める者が多く見られる。

特徴

 セルビアで実施されている外国語教育は、主に英語、ドイツ語、フランス語、ロシア語等であり、学習者達は、留学・就職を意識した実利的な動機によって外国語学習に取り組んでいる場合が多い。日本語学習に関しては、上記【背景】にも記載のあるとおり、親日感情、日本文化への関心や、欧州言語とは全く異なる言語への挑戦等の非実利的な動機によって始められるのが一般的である。しかしながら、近年は海外進出する日本企業への就職や日本での学業・研究活動等を動機とした学習者も増加している。

最新動向

  • ベオグラード大学の日本学科生を初めとした日本語学習者のレベル(特に会話)は、最近10年で著しく向上している。ベオグラード大学に日本語教育を専門とする東京外国語大学の講師が派遣されるようになったこと、インターネットの普及により、本人に意思があればいくらでも日本語を聴くことができるようになったこと、日本人のチャットフレンド等を探すことが容易になったことが理由として考えられる。
  • 2014年10月から三菱商事、ベオグラード大学、大使館の協力により、「日本語教育拡大施策」としてセルビア各地の高校・小学校で日本語授業を実現し、日本語学習者数の増加に貢献してきたが、2019年3月に施策を終了した。
  • 2019年7月、セルビアの教育関連法が改訂され、セルビアの4年制の高等学校で第3外国語として学べる正規科目として、日本語・日本文化が新たに選択科目化された(ベオグラード言語専門高等学校においては以前から正規科目としての設置が許可されており、2013年にセルビア全土の高校において課外授業としての日本語教育導入は許可されていた。中国語・中国文化も今回同時に選択科目化された)。

教育段階別の状況

初等教育

「日本語教育拡大施策」によって一時期は約10校で日本語授業(課外授業)が行われていたが、2019年秋現在に日本語教育は行われていない。

中等教育

 ベオグラード言語専門高等学校に日本語コースが設置されている。同校での日本語教育は1992年より開始され2017年で22年目を迎えており、毎年12名の生徒が専門的に日本語を学習している。
 2018年秋には、スレムスキ・カルロフツィ言語専門高等学校でも日本語コースが開講された。また、2014年から課外授業として日本語授業を行ってきたベオグラード第八高等学校では、2018年に(法の改正に先立って)日本語を正式な選択科目とすることに成功した。

高等教育

 ベオグラード大学言語学部東洋学科の日本語・日本文学専攻課程は、1986年より正式に設置された。周辺国では最も長い日本研究の歴史を誇り、旧ユーゴ地域の日本研究の中心となっている。旧ユーゴ紛争時の国連制裁やその後の経済的混乱等の度重なる困難を乗り越えながら規模を拡大している。しかしながら、セルビアでは日本語を活かせる職場等の選択肢が少なく、卒業生の多くは日本語とは関係のない仕事に就き、大学の研究者ポストもほぼ空きがないので、日本語能力を活かせる職場の拡充が急務である。

学校教育以外

  • ノビ・サド日本友好協会及び在留日本人が協力し、ノビ・サド大学(ベオグラードの北70キロ)のクラブ活動として日本語教育が実施されており、約70名が日本語を学んでいる。2013年、同クラブ活動の成果が評価され、同大学での日本語の選択科目化が2014年10月に実現されている。
  • ベオグラード市内にある2カ所の民間語学学校に日本語コースが設置されており、毎年約10名の受講者が日本語を学んでいる。教師はベオグラード大学日本語専攻の卒業生である

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 セルビアの教育制度は、初等教育8年(第一段階4年、第二段階4年)、中等教育4年(ギムナジウムと各種専門高等学校の2種類に分類)、高等教育3年以上で構成されており、義務教育は初等教育期間の8年とされている。

教育行政

 初等から高等教育機関まで全て、セルビア教育省が管轄している。

言語事情

 多くの地域ではセルビア語が公用語として使用されているが、少数民族が住む地域では、ハンガリー語、スロバキア語、アルバニア語等が使用されている。また、ハンガリー語で学校教育を行う地域もある。

外国語教育

 初等教育より選択科目として外国語授業が設置されている。小学1年生から第1外国語を、小学5年生から第2外国語を学ぶ。第1外国語と第2外国語は、英語、ドイツ語、ロシア語、フランス語、スペイン語、イタリア語の中から学校が選択するが、通常は英語が第1外国語である。中等教育機関でもほぼ同様だが、一部の学校は第3外国語を設置している。外国語教育のレベルは総じて高く、セルビアの都市部のギムナジウムの生徒は英語による講演をほぼ問題なく理解する。

外国語の中での日本語の人気

 ベオグラード言語専門高等学校やベオグラード大学言語学部では、日本語コース入学希望者が募集定員を超えており、入学最難関の言語の1つとなっている。また、民間語学学校での日本語受講者数の増加傾向からも、人気は高まっていると言える。

大学入試での日本語の扱い

 入学試験では、日本語は試験科目にない。

学習環境

教材

初等教育

 国際交流基金事業図書展への日本ブースにて展示した図書から、日本語教育及び折紙教本等が寄贈されている。

中等教育

 ベオグラード言語専門高等学校では、日本で出版された教科書・教材、万博記念基金助成で寄贈されたLL機材が活用されている。国際交流基金による日本語教材寄贈、図書展展示図書の寄贈等により、毎年、日本で出版された最新の教科書が入手できる体制にある。

高等教育

 ベオグラード大学は、日本で出版された教科書・教材を使用している。上記同様、国際交流基金の教材助成、図書展展示図書の寄贈を受けている。

学校教育以外

 民間語学学校でも、図書展展示図書から適宜、日本語学習教材の寄贈を受けている。

IT・視聴覚機材

  • ベオグラード大学では、日本語能力試験等で学生との連絡にメーリングリストを活用している。またインターネットを利用した情報収集の方法を指導している。
  • ベオグラード大学及びベオグラード言語高等専門高等学校に対しては、草の根文化無償資金協力により最新のLL機材が導入されており、インタラクティブ・スマート・ボード、パソコン等が配備されており、有効に活用されている。

教師

資格要件

初等教育

 正規科目の場合、大学で教職を取った者が教える資格を有する。課外授業であれば資格要件は特になし。

中等教育

 初等教育と同様。JICAシニア・ボランティアが日本語授業の支援を行っている。

高等教育

 該当分野で大学・大学院を卒業していることが通常の要件であるが、日本人が日本語を教える場合等には要件が緩和されている模様。現地人としては、ベオグラード大学言語学部日本語・日本文学専攻課程を卒業し、日本留学も経験した者等が授業を行っている。2007年頃から、東京外国語大学から派遣されている日本語教師が会話等の実践的な日本語授業を展開している。

学校教育以外

 日本語教師としての資格要件は特になし。ベオグラード大学言語学部日本語・日本文学専攻課程卒業者や、日本への留学経験者が日本語教師として働いている。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。ブダペストの国際交流基金事務所で毎年開催されている日本語教師向けの研修会に各回数名の教師が参加している。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 2019年現在、ベオグラード大学に6名(うち2名は東京外国語大学より派遣されている)。

教師研修

 日本語教師対象の研修はない。国際交流基金の日本語教師研修プログラムに参加している。他に、定期的に国際交流基金より派遣される日本語教育専門家の来訪の機会に、セルビア日本学会が中心となりセルビアの日本語教師を集め研修会を開催している。

現職教師研修プログラム(一覧)

 日本語教師対象の研修はない。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2013年5月にベオグラード大学言語学部が中心となりセルビア日本学会が立ち上げられ、日本語教師間の連携が図られている。会員は40名程度。

最新動向

 上記のとおりセルビア日本学会が立ち上げられ、日本語教師間の連携の向上が目指されている。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣(2019年10月現在)

JICA海外協力隊 

 ベオグラード言語専門高等学校及びスレムスキ・カルロフツィ言語専門高等学校 1名 

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 国際交流基金が実施する日本語能力試験が唯一の機会となっている。セルビアではベオグラード大学言語学部が現地実施機関となり、毎年12月に実施されている。

日本語教育略史

1975年 ベオグラード大学言語学部東洋言語学科にて日本語の授業開始
1986年 ベオグラード大学言語学部内に正式に日本語・日本文学専攻課程設置
1992年 ベオグラード言語専門高等学校にて日本語専修コース設置
2012年 ベオグラード大学言語学部に対して草の根文化無償資金協力にて最新LL機材を提供
2013年 セルビア日本学会がベオグラード大学言語学部を中心として発足
セルビア教育省より一般中等教育機関での課外授業としての日本語の授業認可
ベオグラード言語専門高等学校に対して草の根文化無償資金協力にて最新LL機材を提供
2019年 セルビアの4年制の高等学校で第3外国語として学べる正規科目として、日本語・日本文化が新たに選択科目化

参考文献一覧

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