スーダン(2020年度)

日本語教育 国・地域別情報

2018年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
1 1 130
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 0 0.0%
学校教育以外 130 100.0%
合計 130 100%

(注) 2018年度日本語教育機関調査は、2018年5月~2019年3月に国際交流基金が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 1991年3月から1993年までの間、国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所において、日本人ボランティア教師による日本語教育が公開講座として開設されていた。しかし、スーダンの人権状況の悪化などに伴い、日本政府が講じたODA支援原則停止措置の影響から、1995年、日本人ボランティア教師はスーダンより引き揚げた。その後、これに代わるものとして、国際交流基金の日本語教育に対する支援を受けたスーダン人日本語教師2名による公開講座が実施されたが、1998年に同講座も閉講した。
 2000年には、日本語講座開設の準備を実施していた私立アハリア大学が、2003年9月に日本人日本語教師1名を採用し、一般社会人を対象とする日本語講座(6か月コース)を同年12月に開講したが、資金難により現在は閉講している。また、AOTSスーダン同窓会(ASAS)が技術者を対象とした短期の日本語コースを開講していたが、現在では中断されている。
 2011年12月からは、1990年代に日本語教育を提供していた国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所が日本語公開講座を再開し、スーダン人講師とJICA海外協力隊員による講座運営が始まった。スーダンにおける唯一の公的な日本語学習機関として、我が国の技術や日本文化に関心を持つ学生が履修しており、日本語・日本文化普及の拠点として機能している。

背景

 日本は、1992年度に、スーダンにおける人権状況の急激な悪化に伴い、他のドナー諸国とともに対スーダンODAを緊急・人道援助を除き原則停止した。その結果、JICA海外協力隊、JICAハルツーム事務所が相次いで撤退・閉鎖した。また、同時期にスーダン在住の日本企業関係者もスーダンから撤退した。2020年現在も、日本人駐在員の数は数人程度にとどまっている。
 スーダンの経済状況も大きく停滞したままであったが、1999年に産油国となり、また、2005年1月の南北包括的和平合意の署名により20年以上にわたり継続してきた南部スーダンとの紛争に終止符が打たれ、各国による「平和の定着」に向けた支援が開始された。日本政府も同年4月のオスロ会合にてスーダンの「平和の定着」に向けた支援を表明し、積極的な支援を実施した。2007年8月にはJICAスーダン事務所が再開され、2009年にはJICA海外協力隊派遣が再開された。しかし、2018年の反バシール前大統領のデモ等により治安状況は悪化、危険度レベルの上昇によりJICA海外協力隊は撤退し、2020年現在も帰任できていない。
 スーダンの言語政策の特徴として、スーダン政府が1990年より施行した「アラビア語化政策」があげられる。この政策は、スーダンの公用言語を、それまで英国植民地政策の影響により広く一般的に使用されていた英語からアラビア語に変更することを目的としたもので、この政策の施行により、スーダンの義務教育及び高等教育において、英語に代わりアラビア語を用いた教育が実施されることとなったため、以前に比べ高い水準の英語を話す人の割合は減少傾向にある。
 しかし、南北包括和平合意により、公用語であるアラビア語に加え英語が実用語とされたことなどを受け、2006年からは初等教育第3学年(Grade3)より英語を学ぶことが定められた。

特徴

 日本政府は、1992年にスーダン共和国に対するODAの原則停止を行うまでは、国立ハルツーム大学のほかにも、スーダンにおける日本の経済協力事業等の関係者の間で日本語学習を希望する人も多く、JICA事務所がスーダンでの日本語教育を主導して行ってきた。日本政府がスーダンへの経済協力を停止した後でさえも、日本の科学技術の高さや日本文化に対して理解のあるスーダン国民、主に首都圏に住む人々から、日本語講座の再開に対する要望が多く寄せられた。しかし、スーダン人自身で日本語講座を再開することは、財政面からも難しいと言える。

最新動向

 2017年7月25日、第1回日本語スピーチコンテストがハルツーム大学、アフリカ・アジア研究所にて開催された。また、同年12月には同じくアフリカ・アジア研究所で第一回日本語能力試験を実施予定であり、これらはスーダンにおける日本語学習者が増加していることを反映していると言える。
 2018年12月より、前バシール政権の退陣を求めるデモ等が各地で発生し、治安が悪化したことを受け、同月より上記研究所を含むスーダン国内の大学が閉鎖されたため、大学機関における日本研究及び日本語教育は停止したが、2019年10月より再開。
 一方で,治安悪化を受け、2019年6月にスーダンの危険度レベルが3に引き上げられたことに伴い(現在はレベル2)、JICA海外協力隊が国外退避したため、同協力隊で日本語講師として派遣されてきた人材の活動も停止。また、同協力隊が積極的に参加してきた日本関連イベントの実施が困難な状況になったことで、有志での日本語学習の機会等も減少している。2020年は新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、引き続きイベントの実施は大きな制約を受けている。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

学校教育以外

 2011年12月に、国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所にて日本語公開講座が開設され、スーダンにおける唯一の公的日本語学習機関として、ハルツーム大学を含む市内の大学生・大学院生、及び技術者・医療関係従事者等を中心とした社会人が履修している。なお、同大学は日本研究に対して学位を授与はしていないものの、日本語講座の履修を、アフリカ・アジア研究所の大学院入学準備課程の単位として認定している。
 また、スーダン在住邦人の自宅等で、有志の日本語教室が不定期に開催され、上記大学附属語学講座の履修生も、AOTSスーダン同窓会(ASAS)等が不定期で開催している有志による語学勉強会で情報を交換するなど、小規模な草の根の学習会を通じて日本語に触れる学生も一定数いる。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 8-3制。
 1993年の改定により、初等教育が8年間(6~13歳)、中等教育が3年間(14~16歳)とされた。また高等教育機関である大学は学部により修学年数が異なり、短期大学3年、経済・社会学部等文科系学部は4年、工学系学部は5年、医学系学部は6年となっている。2008年1月より週休二日制が導入された。

教育行政

 初等・中等教育は教育省(Ministry of Education)、高等教育は高等教育省(Ministry of Higher Education)の管轄下にある。

言語事情

 スーダンの公用語はアラビア語で、広く一般的に使用されている。またスーダンは、1899年から1956年までの間、英国・エジプトによる共同統治を受けていた影響から、政治・外交・国際経済分野などで英語も広く使用されている。特に富裕層については英語話者が多く、ハルツーム市内の私立学校及び大学において英語教育は盛んである。その他、特に地方都市においては各部族の言葉が使用されている。

外国語教育

 国立ハルツーム大学をはじめとするスーダンの国立大学及び私立大学の文学部などでは英語、フランス語の教育が実施されている。特にハルツーム大学は、教養学部にて英語、フランス語、ロシア語及び中国語の講座が開講されており、アフリカ・アジア研究所では、スワヒリ、ハウサ、アムハラ、ペルシア、トルコ、ウルドゥ、中国の各言語コースが用意されている。なお、中国語に関しては中国より講師を受け入れている。
 首都ハルツーム市内のブリティッシュ・カウンシル、仏文化センター、独文化センター及び孔子学院は、それぞれ英語、フランス語、ドイツ語及び中国語の一般向け講座を開設している。中国系企業の進出と中国在留者の増加に伴い、中国語に対する関心が急激に高まっており、中国への留学者も増加傾向にある。また中国同様にスーダン市場への進出が顕著なマレーシアやインド等も、スーダンの大学に留学生を送り込む一方、多くのスーダン人学生を留学生として自国に受け入れている。

外国語の中での日本語の人気

 日本の科学技術や日本文化、日本からの開発援助等に大きな関心を抱くスーダン国民の日本の情報一般に対する関心は、特に大学生及び社会人を中心に少なくないものと見受けられるが、日本語教育に関しては、スーダンでは教師・教材の手配が困難であることに加え、学位取得、就業機会の点で他言語に比べて不利な状況にあるため、低調な状況にある。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

学校教育以外

 国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所が公的機関として唯一日本語学習環境を提供しているが、日本人講師及びスーダン人の日本語話者の不足により教授環境は十分整備されているとは言えず、継続的に利用されている指定教科書もない。

IT・視聴覚機材

 国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所では、2013年より日本語講座専用LL教室の整備と教材の整備を実施しており、日本語学習ソフトウェアがインストールされたパソコン30台が設置され、クラス実施以外の時間でもリスニング・リーディング・スピーキング等の自習が可能となった(2012年度対スーダン草の根文化無償資金協力による支援)。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

学校教育以外

 資格要件はなく、日本へ国費留学生(博士課程)として留学経験のあるスーダン人及びJICA海外協力隊として派遣された日本人が教師として日本語を教えている。日本語を学習したいスーダン人の数に比べて、日本語教師の数は著しく限られている。また、2020年現在JICA海外協力隊が退避中のため、当地における同協力隊の日本語講師はいない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 スーダン大学が日本人講師を自らの予算で確保することは困難な状況にある。

教師研修

 現職の日本語教師対象の研修はない。

教師会

 日本語教育関係のネットワークは確認されていない。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

    

なし

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。

評価・試験

 共通の評価基準や試験はない。

日本語教育略史

1991年 国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所において、日本人ボランティア教師による日本語公開講座開設(~1993年)
1993年 国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所において、スーダン人日本語教師による日本語公開講座開設(~1998年)
2003年 私立アハリア大学にて日本語講座(6か月・一般社会人対象)開設(2016年現在は閉講)
AOTSスーダン同窓会(ASAS)が技術者を対象とした短期の日本語コースを開講(2016年現在は中断)
2011年 国立ハルツーム大学附属アフリカ・アジア研究所が日本語公開講座を再開
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