アルメニア(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
8 | 23 | 321 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 29 | 9.0% |
中等教育 | 100 | 31.2% |
高等教育 | 66 | 20.6% |
学校教育以外 | 126 | 39.3% |
合計 | 321 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
アルメニア高等教育における本格的な日本語教育は、1992年私立エレバン人文大学での日本語専攻の開設により始まった。その後、2009年にロシア・アルメニア大学が、2010年にエレバン国立言語大学が、2014年にエレバン国立大学が日本語教育を開始した(なお、エレバン国立言語大学は2017年に日本語講座を閉講した後、2021年に再開した。)。現在アルメニアで日本語教育を行っている高等教育機関は3校となっており、ロシア・アルメニア大学は第一外国語として、エレバン国立大学及びエレバン国立言語大学は第二外国語として日本語を教えている。また、2015年には、ロシア・アルメニア大学がJFの「さくらネットワーク」機関として認定され、アルメニアにおける日本語教育の推進において中心的な役割を担っている。
その他、2009年に設立されたアルメニア・日本科学教育文化センター「ヒカリ」や、2014年に設立されたアルメニア・日本教育・文化交流センター「いろは」といった学校教育以外の機関も、アルメニアにおける日本語教育の普及・促進において重要な役割を果たしている。
背景
当地は欧米を中心としたアルメニア人ディアスポラとの関わりが深いことから,欧米の文化・言語が比較的浸透している一方で、日本については地理的に遠いこともあり、日本語教育の歴史は浅く、学習者も欧米諸国語と比較すると少数である。そのような中でも、最近ではアニメやドラマなどの影響で、日本語に関心を持つ若者が増えている。
特徴
日本語教育はアルメニアの日本語教師の熱心な活動により、また、2015年の日本大使館の開設等の影響もあって、着実な発展を遂げており、教育機関数、教師数、学習者数ともに増加傾向にある。また、日本人教師の数は限定的であるが、高等教育機関と日本の大学との交流の活性化等により、教育の質の向上を図っている。
最新動向
JFプログラムによるアルメニア人日本語教師の訪日研修等が行われているが、日本人日本語教師の不足、アルメニア人教師の日本語能力の向上といった従来からの問題については、未だ改善の余地がある。他方、近年特に高等教育における日本語教育への関心が高まっていること及び学校教育以外の日本語教育機関が増えてきていることから、日本語学習者は増加傾向にある。
アルメニアでは毎年日本語弁論大会が開催されているが、2015年からは在アルメニア日本国大使館より大使杯が授与されている。また、2016年12月に開始された日本語能力試験は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により実施が困難であった2020年を除き、エレバンにおいて毎年開催されている。
教育段階別の状況
初等教育
(【中等教育】参照のこと)
中等教育
ロシア・アルメニア大学の付属リツェイで2014年9月より日本語講座が開講された。また、ギュムリ市のシラク大学付属高等学校においても、2015年10月より日本語講座が開講され、2016年4月からはシラク大学へ移行する形で継続されたが、両校とも財政事情等により2017年に閉講となった。
高等教育
現在日本語教育を行っている高等教育機関は、ロシア・アルメニア大学(アルメニア人教師3名、日本人教師1名、日本語学習者33名)、エレバン国立大学(アルメニア人教師1名、日本語学習者39名)、エレバン国立言語大学(アルメニア人講師1名、日本語学習者33名)の3校である。ロシア・アルメニア大学は、筑波大学、山形大学、京都大学及び神戸大学と学生交換協力協定を有しており、大学間交流の促進が図られている。
留学に関しては、文科省の国費外国人留学生プログラムを利用して留学するケースがほとんどである。
学校教育以外
2009年に設立されたアルメニア・日本科学教育文化センター「ヒカリ」(アルメニア人教師3名、日本語学習者15名)、2014年に設立されたアルメニア・日本教育・文化交流センター「いろは」(アルメニア人教師3名、日本人教師3名、日本語学習者65名)に加え、2018年に設立された「クール・ランゲージ」センター(アルメニア人教師1名、日本語学習者35名)が日本語講座を開講するとともに、日本文化紹介などの活動を行っている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
初等・中等教育は4-5-3制。
アルメニアにおける教育の基準としては,旧ソ連時代からの10年制学校教育制度が維持されていたが、2001年に11年制に、さらに2006年には12年制に移行となった。12学年のうち、第1~4学年が初等教育、第5~9学年が前期中等教育、第10~12学年が後期中等教育にあたる。第10~12学年は高等教育を希望する者が進学する。義務教育課程は第1学年から第9学年までの9年間であったが,2017年以降は第1学年から12学年までの12年間となった。
高等教育については、多くの高等教育機関では旧ソ連の高等教育システムと同じく5年制の大学教育課程を設けている。しかし、最近では4年間の学部教育課程、さらに2年間の高等専門教育課程を備えた6年制への移行が進みつつある。
教育行政
初等、中等、高等教育機関のほとんどが教育省の管轄下にある。
言語事情
公用語はアルメニア語である。年配者の間ではロシア語も幅広く通じるが、若年層では英語を理解する者が増えている。
外国語教育
外国語教育は初等教育において開始される。第2学年よりロシア語(必修)教育が開始され、第3学年及び第5学年で、さらに1言語づつ学習するが,英語が大部分で、そのほかにドイツ語、フランス語などがある。高等教育での外国語教育は専攻・教育機関により異なり、統一された基準等はない。
外国語の中での日本語の人気
英語・フランス語・ドイツ語など欧米の言語に人気があり、アジア圏の言語としては中国語の学習者数が最も多いが、日本語や韓国語を専攻する学生も増えてきている。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
『BASIC KANJI BOOK VOL1、2』加納千恵子ほか(凡人社)
『毎日の聞取り50日 VOL1、2』宮城幸枝他(凡人社)
中等教育
『みんなの日本語』(前出)
『BASIC KANJI BOOK VOL1、2』加納千恵子ほか(前出)
『毎日の聞取り50日 VOL1、2』宮城幸枝他(前出)
高等教育
『みんなの日本語』(前出)
『BASIC KANJI BOOK VOL1、2』加納千恵子ほか(前出)
『中級における和露・露和通訳』M.A.ミーシナ著(1995)モスクワ、トリヴォーラ出版
『漢字マスター』シリーズ N5-N1 (2011)、三修社
『文法スピードマスター』シリーズN5-N1 (2010)(2011)、Jリサーチ出版
学校教育以外
『みえこさんの日本語』シリーズ(2007-2013年)MIEF(Mie International Exchange Foundation)出版
『「まるごと」りかい、「まるごと」かつどう』、入門A1(2013年)三修社
『初級日本語』東京外国語大学留学生日本語教育センター(凡人社)
『BASIC KANJI BOOK VOL1、2』加納千恵子ほか(凡人社)
『毎日の聞取り50日 VOL1、2』宮城幸枝他(凡人社
『新日本語の中級会話DVD』海外技術者研修協会(スリーエーネットワーク)
『日本語初歩』国際交流基金日本語国際センター(凡人社)
IT・視聴覚機材
日本語教育の現場ではIT・視聴覚機材は使用されていない。
教師
資格要件
初等教育
特に定められていない。
中等教育
特に定められていない。
高等教育
特に定められていない。
学校教育以外
特に定められていない。
日本語教師養成機関(プログラム)
存在しない。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
ロシア・アルメニア大学 - 1名
エレバン国立大学 - 0名
エレバン国立言語大学 - 0名
「ヒカリ」センター - 0名
「いろは」センター - 3名
「クール・ランゲージ」センター - 0名
現職教師研修プログラム(一覧)
JFによる日本語教師訪日研修がある。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
アルメニア日本語教師会が2012年に結成された。
最新動向
2016年から毎年、アルメニア日本語教師会の主催で日本語弁論大会及び日本語能力試験(JLPT)が実施されている。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
JF、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
日本語教育略史
1992年 | エレバン人文大学で日本語専攻開設 |
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2009年 | ロシア・アルメニア大学が選択科目として日本語教育を開始 |
2010年 | エレバン国立言語大学で選択科目として日本語教育を開始 |
2012年 | エレバン人文大学が廃校 |
2013年 | アルメニア・日本科学教育文化センター「ヒカリ」で日本語講座が開講 |
2014年 | エレバン国立大学が第二外国語として日本語教育を開始 ロシア・アルメニア大学の付属リツェイで日本語講座が開講 アルメニア・日本教育・文化交流センター「いろは」で日本語講座が開講 |
2015年 | シラク大学付属高校で日本語講座開設(2016年9月よりシラク大学に移行する形で継続) |
2016年 | ロシア・アルメニア大学が「さくらネットワーク」機関に認定 |
2017年 | エレバン国立言語大学及びシラク大学での日本語講座が閉講 |
2018年 | 語学教育センター「クール・ランゲージ」センターで日本語講座が開講 |
2020年 | 語学教育センター「インスパイア」で日本語講座が開講 |
2021年 | エレバン国立言語大学で日本語講座が再開 |
2022年 | 語学教育センター「インスパイア」で日本語講座が閉講 |