コスタリカ(2022年度)

日本語教育 国・地域別情報

2021年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
10 44 829
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 0 0.0%
学校教育以外 829 100.0%
合計 829 100%

(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 コスタリカの日本語教育は、1978年、コスタリカ大学(UCR)本校(モンテス・デ・オカ市)における日本語の選択第二外国語としての導入をもってスタートした(同時に、この日本語講座へのJICA海外協力隊派遣が開始された)。非営利団体(2009年よりコスタリカ日本人会)が運営する「日本文化教室(旧日本文化センター)」でもこの頃から日本語講座を開講した。なお、同教室は、2014年に私立の語学学校「日本文化センター」として独立し、現在に至っている。
 1990年代前半にはコスタリカ大学(UCR)日本語講座の授業数が増える一方、コスタリカ大学(UCR)と並びコスタリカの二大国立大学と称されるナショナル大学(UNA)の文学言語学部(エレディア市)に対しても、1993年にJICA海外協力隊(日本語教育隊員)の派遣が始まり、1988年に第二外国語としての日本語講座が設置された。1997年にはコスタリカ大学(UCR)オクシデンテ校(アラフエラ県サンラモン市)に対するJICA海外協力隊(日本語教育隊員)の派遣が開始され、それまで首都圏のみで行われていた日本語教育の地方展開の皮切りとなった。
 この他、1992年に幼稚園から高校まで一貫教育を実施しているラ・グラン・エスペランサ学院(サンタバルバラ市)で日本語が必須科目として採用された(2022年12月時点、閉校を確認)。
 コスタリカ大学(UCR)本校及びオクシデンテ校、並びにナショナル大学(UNA)、で社会人向け講座が開かれている他、私立の語学学校でも日本語を取り入れるところが出てきており、2009年にCIDICentro Internacional de Idiomas、サンホセ市)、2011年にNLANew Learning Academy 、モラビア市)で日本語講座が開講される他、いくつかの語学学校でも日本語コースが設置されている。また、2020年からのコロナ禍でオンライン授業システムが発達したため、個人でオンライン講座を開設している傾向が見られる。

背景

 コスタリカは日本とは地理的に遠く、経済的影響が少しあった程度であり、過去においては日本語への関心が必ずしも高くなかったが、さまざまな日本文化を通して日本語への関心が高まっている。特に、青少年を中心としたアニメ・マンガ、コスプレなど、日本のポップカルチャーの人気は非常に高く、日本のアニメは頻繁にテレビで放映されている他、アニメグッズショップやメイド喫茶などもあり、また、複数のアニメ愛好団体が年間を通してアニメ・マンガ、コスプレ、アニメソング・カラオケ大会といったイベントを企画、実施している。また、空手、柔道、合気道、剣道などの武道も盛んであり、これらをきっかけに日本語や日本文化に関心を持つ若者も増えてきている。

特徴

 コスタリカにおける日本語教育の特徴として、「異文化・異言語への興味」から学習を始める者、「日本への留学希望などの理由」により学習を始める者がいる一方、上記のような若い層を中心に、「ポップカルチャーを中心とする日本文化への興味から、マンガや日本のポピュラーソングを日本語で読みたい、あるいは、歌いたい」といった動機から日本語を学び始める学生が多い点が挙げられる。
 学習レベルは未だ発展途上段階にあり、複数のレベル設定を行っている学習機関の中上級相当コースでも実用水準へ到達するのは難しく、それ以上のレベルを求める者は、個人レッスンを受けるしかないのが現状である。しかしながら、2015年に中米カリブ地域で初めて国際交流基金・日本語能力試験(以下、JLPT)をコスタリカで実施したことや同年から初めた中米・カリブ地域日本語スピーチコンテストなどが学習者のモチベーションとなり、コスタリカ人の日本語レベルは徐々にではあるが確実に上がってきている。なお、2022年のJLPTはコロナ禍のため、受験者数に(200名の)上限を設けたところ、上限を超える受験希望が寄せられ、N4、N3への受験者数が増加傾向にあることが右を物語っている。また、日本語学習者数も増加傾向にあり、現在の年間平均学習者数は約800名程度になっている。

最新動向

 2020年からの新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の世界的な感染拡大により、全世界のJICA海外協力隊日本語隊員(以下、JOCV)は一時退避となった。このため、コスタリカでは、JOCVを派遣していた高等教育機関(コスタリカ大学(UCR)、ナショナル大学(UCR)での日本語教育は2020年以降停滞(両大学での日本語講座は休講)していたが、2022年7月にコスタリカへのJOCVの派遣が再開し、両大学での日本語講座が再開した。
2019年以降中止していたJLPTを2022年12月に2年ぶりに開催した。
コロナ禍では、オンラインツールを用いて(ビデオ)弁論大会や俳句コンテストを実施するなど、当国の日本語学習者のモチベーションの維持・向上、及び中米諸国の日本語教師との連携強化、日本語学習者同士の関係構築を行っている。日本語学習者相互の親睦を深めるとともに,日本の文化,社会,教育などに関する理解を増進することを目的として実施していた日本語学習者大運動会,日本語学習者文化祭なども2020年以降の新型コロナパンデミックの影響により中止していたが、2023年以降、順次再開を予定している。
コスタリカでは日本語学習者数が増加傾向にあり、また、いくつかの教育機関(コスタリカ工科大学(TEC)など)から日本語講座開講希望が寄せられている。他方、当国の日本人日本語教師が減少傾向にあるため、これら潜在的日本語学習意欲者のニーズを拾いきれていない状況にある。そのような背景からコスタリカ日本語教師会では,JF・日本語教師長期研修プログラムなどによりコスタリカ人教師の育成を図りながら、同国における日本語教育の普及と発展に努めている。

教育段階別の状況

初等教育

 公立の初等教育機関では、日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 公立の中等教育機関では、日本語教育の実施は確認されていない。 私立の中等教育機関で、国際関係の教科の中で日本語を扱うところもある。

高等教育

 コスタリカ大学(UCR)本校及びオクシデンテ校並びにナショナル大学(UNA)において、それぞれ日本語コースが選択第二外国語として開設されている。

学校教育以外

 サンホセ首都圏を中心に、私立の語学学校(日本文化センター、CIDINLAなど)が一般向けに日本語講座を設けており、その学習内容は学習者のレベルに応じており、JLPT対策講座などの学習者のニーズに合わせたコースも開講している。
 コスタリカ大学(UCR)の語学センター(Casa de Idiomas)、大学附属博物館(サンラモン市))及びナショナル大学(UNA)では、一般人(他大学の学生や社会人、高校生、中学生)向け日本語コースがある。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

  • 就学前教育(Pre-escolar)5年間
  • 初等教育(Primaria)6年間
  • 中等教育(Secundaria もしくは Media)5年もしくは6年間
  • 高等教育(Superior)4年間以上

義務教育は就学前教育の最終2年間、初等教育の6年間、中等教育の5年もしくは6年間が義務教育。そのうち、初等教育、中等教育の始めの3年間の計9年間を一般基礎教育期間(Educacion general basica)と呼ぶ。

教育行政

 コスタリカの教育機関は、基本的にすべて教育省(Ministerio de Educacion Publica)の管轄。但し、高等教育については、直接的には国家大学学長審議会(Consejo Nacional de Rectores)が監督の任に当たる。

言語事情

 公用語、国語ともスペイン語。
但し、国内各地の先住民居住区ではブリブリ、カベカル、グアイミなどそれぞれの民族語(idioma materno:母語)も使用されており、(スペイン語を公用語として習得することを前提に)二言語教育を採用している教育機関もある。

外国語教育

 公立の初等教育においては、従来国語(スペイン語)のみの教育が一般的であったが、20世紀末頃から英語の授業を取り入れる学校も増加している。中等教育以降においては、英語が必須科目。第二外国語(主にフランス語)を取り入れる中等教育機関も増えている。2020年に公共教育省が発表した「コスタリカ バイリンガル国家を目指して(Hacia la Costa Rica bilingüe)」では、国民の第二外国語(英語、フランス語、イタリア語、ドイツ語、ポルトガル語、中国語)修得を推進する方針が示された。
私立学校は学校によって学習開始時期、学習言語が異なるが、ほとんどの学校が初等教育から英語を必須科目としている。
 国立大学の公開講座を中心にドイツ語、イタリア語、ポルトガル語、中国語、韓国語、ロシア語、アラビア語の語学講座が開講されている。特に、中国語は、2009年8月にコスタリカ大学(UCR)内に孔子学院が開設されてから、ナショナル大学(UNA)、国立技術大学(UTN)や国立遠隔大学(UNED)などでも公開講座として中国語の語学講座が開講された他、私立の語学学校などで中国語の語学講座が開講され、学習者数は把握できていないものの、相当数のコスタリカ人が中国語を学習しているとされる。また、韓国語は、2010年2月にナショナル大学(UNA)、2013年にコスタリカ大学(UCR)で韓国語講座が開講され、2020年7月にコスタリカ大学(UCR)内で世宗学堂が設立された。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 JOCV日本語教育隊員が独自に作成した教材が、コスタリカ大学(UCR)とナショナル大学(UNA)にて用いられている。

学校教育以外

 日本で出版された教材(「みんなの日本語」、「まるごと 日本のことばと文化」など)が使用されている他、独自の教材(教師自作教材など)が用いられている。

IT・視聴覚機材

 多くの日本語教育機関(学校教育、語学学校、個人のオンライン講座など)でインターネット上にあるさまざまな学習ツールが用いられている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 大学の正式教員として教壇に立つ場合、日本語教育関連の修士号を所持していることが必須だが、実際に該当する者はほとんどいない。JOCVが教える場合無償なので、同資格は必要とされない。

学校教育以外

 日本語教師としての特段の資格要件はないが、言語のみならず、日本文化・日本事情についても幅広い知識と教授能力が要請されることが多い。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 コスタリカ大学(UCR)本校及びナショナル大学(UNA)ではJOCVが日本語講座を担当している。その他機関においても、一般に日本人が授業を担当しているが、コスタリカ人教師・アシスタントが育成されつつあり、徐々にコスタリカ人教師が日本語講座を担当する例が見られるようになった。

教師研修

 JFメキシコ日本文化センターが不定期に実施する研修に、当国日本語教師が自主的に参加している。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2007年2月に「コスタリカ日本語教師の会」発足。随時、情報交換や勉強会を行っている。また、日本語教育セミナー、日本語弁論大会、日本語能力試験などの企画・運営について意見交換も行っている。
 2009年9月、コスタリカ日本語教師会が中心となって、中米・カリブ地域における日本語能力と日本語教育能力の向上及び同地域における日本語教師間の交流の場として、中米・カリブ日本語教育ネットワーク(中南米地域における最大の日本語教育ネットワーク)が設立された。同ネットワークでは毎年中米カリブ日本語教育セミナーを開催している他、2015年8月には第1回中米カリブ地域日本語スピーチコンテストを開催した(2022年12月時点で、第3回を実施)。また、同ネットワークはコロナ禍でも、オンラインによる日本語研修会や俳句コンテストを行うなど精力的に活動を継続している。

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

 なし

国際協力機構(JICA)からの派遣(2022年10月現在)

JICA海外協力隊

 コスタリカ大学 オキシデンテ校 文学部現代言語学科 1名
 ナショナル大学 言語哲学学部 1名
 コスタリカ大学 文学部現代言語学科 2名

その他からの派遣

 (情報なし)

日本語教育略史

1978年 コスタリカ大学(UCR)で選択第二外国語として日本語を導入と同時に、同学への最初のJICA海外協力隊員(以下、JOCV)日本語教育隊員を派遣
1985年ごろ 日本文化教室(現:日本文化センター)で日本語講座開始
1993年 ナショナル大学(UNA)の文言語学部への最初のJOCV(日本語教育隊員)を派遣
1998年 コスタリカ大学(UCR)サンラモン分校への最初のJOCV(日本語教育隊員)を派遣
コスタリカ大学(UCR)にて社会人向け日本語講座開始
2000年 第1回日本語弁論大会を在コスタリカ日本国大使館、コスタリカ日本語教師会及びJFとの共催で開催(以降、2015年、2020~21年を除き、同大会を毎年開催)
2002年 コスタリカ工科大学(TEC)にて社会人向け日本語講座実施
2009年 第1回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
2010年 第2回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
2013年 Casa Manga、コスタリカ大学(UCR)グアピレス校で公開講座開始
Trade Station社で社員向け日本語講座実施
2015年 第7回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
第1回中米・カリブ地域日本語スピーチコンテスト開催(於:コスタリカ)
JFがコスタリカ日本語教師会をコスタリカにおける日本語教育拠点(さくらネットワーク)に認定
国際交流基金・日本語能力試験(以下、JLPT)実施(中米・カリブ地域初開催)
2016年 第8回中米・カリブ日本語教育セミナー開催(於:コスタリカ)
JLPT実施
コスタリカの日本語教員がメキシコシンポジウム(日本語教師研修)に参加
2017年 コスタリカ人日本語教師がメキシコで開催の日本語教師夏期短期集中講座に参加
コスタリカ人日本語教師が南米スペイン語圏日本語教育連絡会議に参加
JLPT実施
コスタリカ日本語教師会 Facebookによる日本語教育情報発信開始
2018年 第1回日本語学習者大運動会の開催
コスタリカ人日本語教師がメキシコで開催の日本語教師夏期短期集中講座に参加
第1回日本語学習者文化際の開催
JLPT実施
2019年 第2回日本語学習者大運動会の開催
コスタリカ人日本語教師がメキシコで開催の日本語教師夏期短期集中講座に参加
JLPT実施
コスタリカの日本語教員がメキシコシンポジウム(日本語教師研修)に参加
2020年 コスタリカの日本語教員がメキシコ日本語教師会主催の日本語教師夏期短期集中講座にオンラインで参加
コスタリカ日本語教師会主催で第1回オンライン日本語教師研修会(中米・カリブ地域の教員対象の研修会)の実施
ビデオ日本語弁論大会の実施
2021年 コスタリカの日本語教員が第12回中米カリブ日本語教育セミナーに参加
2022年12月現在 JLPTの実施
コスタリカの日本語教員が第13回中米カリブ日本語教育セミナーに参加
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