クロアチア(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
6 | 21 | 441 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 209 | 47.4% |
学校教育以外 | 232 | 52.6% |
合計 | 441 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
旧ユーゴスラビア時代は、当時の首都にあったベオグラード大学にて日本語教育が行われていた。1991年のクロアチア独立後は、1996年頃から首都ザグレブの一部の高校が選択授業として日本語コースを開講したほか、2004年から地方の一部小学校も日本語コースを選択授業として開講した。しかしながら、大半の初等・中等教育機関では教員や予算の不足などにより日本語教育が廃止された。高等教育機関については、2004年にザグレブ大学哲学部が副専攻コースとして日本学コースを設置したほか、2015年にプーラ大学(正式名称:ユライ・ドブリラ大学プーラ)人文学部がクロアチアでは初めて学位の取得可能な日本語・日本文化学科を設置し、同年に学部課程を、2020年に修士課程を設置した。
背景
日本のポップカルチャー(アニメやマンガなど)が若年層を中心に人気であるほか、日本のスポーツ(柔道、空手、剣道、合気道など)や文化(俳句、盆栽、生け花、折り紙など)の愛好家が存在する。
特徴
クロアチアでは、日本語教育は主に高等教育機関で行われており、約200名(2022年11月現在)が日本語を学んでいる。日本語学習の動機としては、アニメやマンガをきっかけに勉強を始める者が多いほか、日本文化や日本語自体に対する興味から勉強を始める者もいる。
最新動向
- プーラ大学人文学部で2020年に修士課程(日本学)が設置され、2022年にクロアチア国内の大学では初めて同課程を修了した修士号取得者を輩出した。
- ザグレブ大学哲学部において、学部課程と修士課程の設置に向けた動きがある。
教育段階別の状況
初等教育
一部の小学校・中学校において日本語コースが選択科目として開講されることがある。
中等教育
日本語教育を行っている学校は確認されていない。
高等教育
- 1.ザグレブ大学哲学部インド・極東学科日本学コース
- 2004年に設置された定員30名、3年間の全学向け副専攻コースで、日本語、日本史、日本文化などの授業を提供している。履修条件として、主専攻における2年生までの科目を履修し終えていることが定められているため、履修できるのは早くても3年生になってからである。2007年に第1期の修了生(約20名)を輩出し、その後も修了生を継続的に輩出している。現在は、学部課程(主専攻コース)と修士課程の設置に向けた動きがある。在学中や修了後に、文部科学省国費外国人留学生制度や大学間の交換留学制度などを利用して、日本に留学する者もいる。全学向けコースであるため、学生のバックグラウンドは文系・理系に関わらず多様であり、修了後の進路は幅広い。
- 2.プーラ大学人文学部アジア研究科日本語・日本文化学科
- 3年間の学部課程(2015年設置)と2年間の修士課程(2020年設置)により構成される。クロアチアでは唯一日本学の学位取得が可能な高等教育機関である。他の専門分野とのダブル・ディグリー取得も可能である。教育プログラムは日本語教師、通訳・翻訳者、日本研究者、観光ガイドなどの育成を念頭に構成されており、日本語、日本文化や日本文学などのコースのほか、プーラ大学があるイストラ県で盛んな観光業への就職も視野に入れ、観光ビジネスに特化した日本語の授業などを行っている。学部課程・修士課程で合計約170名の学生が在籍している(2022年11月現在)。
学校教育以外
ザグレブ市、スプリット市、リエカ市にある民間の語学学校やNGOなどが日本語講座を開講している。
また、クロアチアではこれまで、クロアチア日本語教師会、ザグレブ大学及び在クロアチア日本国大使館の共催(JF協力)により、「日本語スピーチコンテスト」が開催されてきた。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
8-4(3)制。
小・中学校(小学校・中学校一貫教育、7~14歳)が8年間、高校(15~18歳)が4年間(普通高校)、又は3年間(職業高校)。高等教育機関は大学。
小学校、中学校、高校(又は職業高校)の12年間(又は11年間)が義務教育。
教育行政
教育・科学省の管轄下にある。
言語事情
クロアチア語が公用語。
外国語教育
小学校1年生から高校4年生まで外国語(必修)として英語を履修する。また、学校によっては第二外国語としてドイツ語、イタリア語、フランス語、スペイン語等を履修できる。
外国語の中での日本語の人気
プーラ大学人文学部アジア研究科日本語・日本文化学科では入学者数が増加傾向にあり、ザグレブ大学哲学部日本学コースでは日本学の学位を取得できないにもかかわらず毎年一定数の学生が履修しているほか、語学学校でも継続的に日本語コースを開講しているなど、日本語への関心が高い層は一定数存在する。
大学入試での日本語の扱い
プーラ大学人文学部アジア研究科日本語・日本文化学科修士課程の入学試験では、日本学の学位を有していない入学希望者には日本語試験を課している。
学習環境
教材
初等教育
(詳細不明)
中等教育
(詳細不明)
高等教育
日本で出版された教科書・教材などを使用している。 大学教育では、『みんなのにほんご』、『とびら』、『げんき』などの教科書が利用されている。
学校教育以外
『げんき』や『まるごと 日本のことばと文化』など、日本で出版された教科書・教材を使用している。
IT・視聴覚機材
高等教育機関では、オンライン教材が利用されることもある。
教師
資格要件
初等教育
(詳細不明)
中等教育
(詳細不明)
高等教育
(詳細不明)
学校教育以外
特になし。
日本語教師養成機関(プログラム)
無し。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
2022年11月現在、ザグレブ大学哲学部日本学コースでは、雇用されている教員6名(常勤准教授2名、常勤講師1名、外国人講師1名、助手1名、非常勤講師1名)のうち、3名(常勤准教授、常勤講師、外国人講師)が日本人教員であり、日本語などのクラスを担当している。プーラ大学人文学部アジア研究科日本語・日本文化学科では、雇用されている教員13名(常勤准教授2名、常勤講師1名、常勤助手1名、非常勤講師9名)のうち、1名(非常勤講師)が日本人教員であり、日本語などのクラスを担当している。
教師研修
2008年より、クロアチア在住の日本語教師を対象に、JF派遣の日本語専門家(ハンガリー常駐)による日本語教育セミナーが行われている。
現職教師研修プログラム<一覧>
- 1.JFブダペスト日本文化センター日本語専門家による日本語教師向けセミナー
2009年より開催されており、2014年5月には、ザグレブ大学哲学部でセミナーが開催された。 - 2.JF欧州日本語教育研修会
2008年より、クロアチアからも日本語教師1名が、フランスのアルザス地方で開催される同研修会に参加している。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
「クロアチア日本語教師会」
クロアチア国内の各日本語教育機関に所属する日本語教育関係者の間で情報交換・交流を行っている。2008年10月発足。
最新動向
なし
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣(2023年3月現在)
なし
国際協力機構(JICA)からの派遣
なし
シラバス・ガイドライン
なし
評価・試験
各クロアチアの日本語教育機関は、JFが実施する日本語能力試験を、現地日本語学習者の到達度を測るために非常に重要な試験として位置付けており、毎年、ブダペスト(ハンガリー)、リュブリャナ(スロベニア)、サラエボ(ボスニア・ヘルツェゴヴィナ)などの近隣国にて実施される同試験に参加する者がいる。
日本語教育略史
1996年 | ザグレブ第7高等学校、ザグレブ芸術高等学校で日本語教育開始(既に閉講) |
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1997年 | ザグレブ第2高校、第16高校、ザグレブ古典高校で日本語教育開始(既に閉講) |
2004年 | ザグレブ大学哲学部が日本学コース(副専攻コース)を設置 スティエパン・ラディチ小学校で日本語教育開始 |
2007年 | スプリット市の民間語学学校が日本語講座を開講 |
2008年 | クロアチア日本語教師会発足 |
2015年 | プーラ大学人文学部が学部課程を設置 |
2020年 | プーラ大学人文学部が修士課程を設置 |