キューバ(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
1 | 2 | 28 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 0 | 0.0% |
高等教育 | 28 | 100.0% |
学校教育以外 | 0 | 0.0% |
合計 | 28 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
キューバにおける日本語教育は、1970年代頃から少人数の語学学校(学校教育以外)で実施されていたが、1980年代後半にはいずれの学校も廃校となってしまい、一時期、日本語教育実施が途絶えた。しかし、1992年にハバナ大学外国語学部にキューバ人日本語教師による日本語講座が開設されて以来、同大学が主に学生及び社会人を対象とした日本語学習機関の中心的存在として現在まで継続している。なお、現在の教師数はキューバ人教員2名及びJICAのボランティア1名。
その後、1994年には「クバナカン観光公社」にて、1998年にはアジアの家(CASA DE ASIA)にて、2002年にはフィンレイ研究所(INSTITUTO FINLAY)及び国立芸術学院(INSTITUTO SUPERIOR DE ARTE※現在の国立芸術大学)にて、2003年には観光省・観光業訓練学校にて、それぞれ日本語講座が開設された。しかし、多くの講座が人手不足などにより中止された。また、青年の島(Isla de la Juventud)及びハバナにて日系人を対象として開設された日本語教室も継続が困難となり、再開の目途は立っていない。2016年9月に、サンクティ・スピリトゥス大学及びサンクティ・スピリトゥス県の博物館グアジャベラの家にて新規講座が開設されたが,日本語教師の不足により2019年9月にはいずれも閉鎖され、2020年現在は、元教師がプライベートで教えているのみ。2019年には再びアジアの家で日本語講座(初級)が開始され、コロナ禍の影響を受け一時閉鎖していたが、2022年9月に再開され、現在は初級と中級レベルを2名の日本人教師と1名のキューバ人教師が教えている。国立芸術大学においては、コロナ禍で、唯一の日本人日本語教師がキューバを離れてしまったが、2021年12月に元JFの日本語成績優秀訪日研修生が、初級レベルを開始した。
背景
1960年代及び1970年代、キューバでは頻繁に日本映画(黒沢明監督作品及び「座頭市」などの時代劇)が上映されたところ、その影響を受けて日本文化に対し関心を抱き、日本語学習を開始する人々が多くを占めていた。
キューバは、ソ連崩壊後の経済政策として観光客誘致による外貨獲得を目指しており、特に、観光業従事者に対する外国語教育に力点を置いているため、観光業訓練学校などで日本語教育を導入したが、日本人観光客の数が伸び悩んだことを理由に2005年に日本語講座の中止が決定された。日本語学習の主な目的としては、ホテル従業員、通訳、観光ガイドなどの観光業に就くことのほか、武道やアニメなどの日本文化に興味を持った延長や、教養のひとつとして身に付けたいなど、さまざまなことが挙げられる。
特徴
キューバでは、潜在的な日本語学習希望者は多いと思われるが、教育省及び高等教育省の外国語カリキュラムの中に含まれていないことから、公的な教育機関での新たな日本語教育実施は困難となっている。また、数少ない日本語教育実施機関においても教師不足や教材不足などの問題が解消されないなど、日本語教育体制が確立されていないため、学習希望者の受け入れが十分に果たされているとは言えない状況にある。実際、当国における全ての日本語講座において、受講者募集の際、選抜を行って受講人数に制限を設けており、毎年、応募者全員は受け入れることができないでいる。
コロナ禍の影響を受け、その重要度が増しているインターネット環境については,医療機関及び教育・研究機関において優先的に整備が進められ、携帯電話のデータ通信サービスも改善してきた。また2021年の通貨統合政策の影響で、700%以上のインフレが起こっている中、国営企業一社で管理されているインターネット及び通信関連サービスは、依然急激な値上げを伴うことなく一定の価格を維持しており、キューバペソのみで生計を立てる多くの国民にとっては高額に感じられ、接続も不安定であることからデータ量の多い動画やオンライン会議などのサービスへのアクセスはまだ制約が多い。
最新動向
一時期の日本人観光客の急増及び日本企業の進出により、旅行ガイドや日系企業として働きたいとのインセンティブが働き、学習希望者が大きく拡大してきていたが、現在そのような就職先を確保することは困難であり、日本語に興味を抱く人の多くは、日本のマンガやアニメなどのポップカルチャーから刺激を受けている。キューバは各地に「オタク」(日本文化愛好家の意)グループが存在するなど、日本への関心から日本語の学習に興味を持つ人々は一定程度確認され、特に青少年の間で人気がある。JFからも日本語アドバイザーが頻繁に派遣され、教師間の交流を促進するとともに、教授法のレベルアップがはかられている。また、2022年10月には、コロナ禍で赴任が延期されていたJICAの日本語教育ボランティアが到着し、ハバナ大学で講義を始めた。他方、日本語教育を実施できる機関の不足、さらに教材及び教師の不足、依然として不安定なネット環境などの課題は引き続き存在し、さらなる改善が求められる。
教育段階別の状況
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。(2021年から中国語教育が第2言語として実施される政府協定が2020年に結ばれたことから、アジアへ興味を持つ生徒の間で、日本語教育への関心も高まることが期待される)。
高等教育
ハバナ大学外国語学部、国立芸術大学で日本語教育が行われている。
ハバナ大学外国語学部においては、日本語コースは選択科目であり取得単位として認められていなかったが、2011年より第二外国語としての単位取得が認められるようになった。以上のことから当国で、「日本語(主)専攻」という条件を付けている、国費留学制度の日本語・日本文化研修留学生の応募資格を持っているのは、ハバナ大学外国語学部の学生のみとなっている。(芸術大学については同留学制度の応募資格に合致しないことになる。)
学校教育以外
博物館であるアジアの家で一般市民向け(基本的に中学生以上)に日本語教育(初級・中級)が行われている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
6-3-3制。
就学前課程1年間(5~6歳、幼稚園に相当)の後、小学校が6年間(6~12歳)、中学校が3年間(13~15歳)。その上に高等学校が3年間(16~18歳)、高等専門学校は3~5年間。高等教育機関は大学、職業専門学校が2~3年間など。小学校から中学校までの9年間が義務教育。
教育行政
初等、中等教育機関は教育省、高等教育機関は高等教育省の管轄下にある。
言語事情
スペイン語が公用語であり国語になっている。英語はホテルや空港など外国人観光客が多く集まる場所で使用されるのみである。
外国語教育
小学校4年生より第一外国語を履修(主に英語。必修)する。
外国語の中での日本語の人気
教師不足などにより教育機関での学習者は少なめだが、根強い人気があり、インターネットが普及してきたことを受け、ネット教材を活用して独学する者の数は増加している可能性が高い。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
主に『みんなの日本語』や『まるごと 日本のことばと文化』などを使って、初学者から日本語及びスペイン語で授業が行われている。キューバで出版された日本語教材はない。
学校教育以外
【高等教育】に同じ。インターネットを利用し独学する者の数は増加している可能性は高い。
IT・視聴覚機材
ハバナ大学では文化無償協力により設置されたLL機材を利用し、会話練習が行われている。また、アジアの家にもコンピュータ及びオーディオ機材が日本の社団法人によって導入されたが、日本語教育に使用できるソフトがないことから、使用開始されていない。
教師
資格要件
初等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
1960年代、1970年代に語学学校で日本語を学習したキューバ人が中心となって日本語教育を実施しており、近年ではJFの日本語教育プログラムや交換留学制度で訪日した若手のキューバ人も教鞭を執っている。また、2022年10月に、JICAの日本語教育ボランティアが赴任した(2年の予定)。
学校教育以外
資格要件の基準は特にない。
日本語教師養成機関(プログラム)
キューバ独自の日本語教師養成システムがないので、JFの日本語教師研修プログラムを最大限活用して教師のレベルアップを図っている。また、2022年からはJICAの日本語教育ボランティアが教師の指導にもあたっている。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
キューバは60年以上に亘る社会主義政権による国家であり、外国人が就労許可を得るのは容易ではないが、2015年には、民間企業から派遣された日本人教師が、さらに、2016年から2年間国際交流基金助成を通じ派遣された日本人教師、それぞれ1名が教鞭を執っていた。また、国立芸術大学には、10年以上に渡り、直接契約で教鞭を執っていた日本人講師が1名いたが、コロナ禍でキューバを離れて以降、帰国していない。
教師研修
JFの日本語教師プログラム及び中米カリブ日本語教師セミナー以外に教師が研修を受けられる機会はほとんどない。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
日本語教育関係のネットワークは確認されていない。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
なし
国際協力機構(JICA)からの派遣(2022年10月現在)
シニア海外協力隊
ハバナ大学外国語学部 1名
その他からの派遣
(情報なし)
日本語教育略史
1970年代 | 少人数の語学学校にて日本語教育開始 |
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1980年後半 | 上記日本語学校が廃校 |
1992年 | ハバナ大学外国語学部にて日本語教育開始 |
1994年 | クバナカン観光公社にて観光業従事者向けの日本語講座開設 |
1998年 | アジアの家にて日本語教育開始 |
2002年 | フィンレイ研究所、国立芸術大学にて日本語講座開設 |
2003年 | 観光省・観光業訓練学校にて日本語講座開設 |
2005年 | クバナカン観光公社、観光省・観光業訓練学校の日本語講座中止 |
2006年 | フィンレイ研究所の日本語講座中止 |
2013年 | ハバナ市において、日系人対象の新規講座が開設 |
2014年 | アジアの家日本語講座一時中止 |
2015年 | ハバナ大学に、日本人日本語教師が派遣 |
2016年 | サンクティ・スピリトゥス大学及びグアジャベラの家に、日本語講座が開設 |
2017年 | ハバナ市における日系人対象の日本語講座中止 |
2018年 | サンクティ・スピリトゥス大学及びグアジャベラの家の日本語講座中止(2020年キューバ人教員が個人授業を再開) |
2018年 | アジアの家日本語講座再開 |