ホンジュラス(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
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5 | 20 | 355 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
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初等教育 | 21 | 5.9% |
中等教育 | 21 | 5.9% |
高等教育 | 27 | 7.6% |
学校教育以外 | 286 | 80.6% |
合計 | 355 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
ホンジュラスにおける日本語教育は、従来から主にJICA海外協力隊員によって行われ、1970年代後半から約20年間、ホンジュラス自治大学テグシガルパ校にJICA海外協力隊員日本語教師が派遣されてきたが、90年代後半に日本語教師の派遣は打ち切られた。 その後、各方面からの日本語学習の機会を求める声の高まりを踏まえて、日本大使館、JICA事務所及び元国費留学生などが中心になり日本語教育の充実に向けた検討が進められ、2001年、ホンジュラス国立教育大学テグシガルパ校の教室を会場として、2004年には、ホンジュラス国立自治大学サンペドロスーラ校及び2008年には同教育大学サンペドロスーラ校にて、JICA海外協力隊による日本語教室が開設された。 しかし、現地治安情勢の悪化により、2013年の危険レベルの引き上げに伴い、それまで上記2都市で日本語の授業を行っていたJICA海外協力隊が一斉に撤退したことにより、現在は元国費留学生などの現地人が日本語授業を行っているが、今後の持続性の観点から、現地人講師の育成が重要な課題となっている。
背景
ホンジュラスは中南米での最貧国のひとつであるが、戦後の奇跡的復興から世界第二位の経済大国への発展を遂げた日本人への憧憬の念が共通意識としてあり、日本に学びたいという関心が従来から存在している。これにアニメ、ポップカルチャーなどを通じた一般国民への日本文化の浸透が加わり、日本及び日本文化への関心も多様化している。
特徴
日本語講座の学習者数は年々増加しており、日本語への関心・興味の高まりが見受けられる。学習者の多くは、日本の先進技術、戦後の高度成長、高い生活水準などへのあこがれや、伝統文化、近代文化、特にポップカルチャー(アニメ、マンガなど)への興味から日本語を学び始めている。学習者は、高校生から社会人まで幅広い層にわたるが、特に大学生が多い。
最新動向
国費留学を念頭において日本語学習を行っている者が漸増しており、ここ数年間のホンジュラスの国費留学生選考試験には多くの日本語学習者が受験している。
また、2015年以降日本語弁論大会が実施されており(在ホンジュラス日本大使館、JICAホンジュラス事務所、ホンジュラス帰国留学生の会(AHBEJA)の共催及びJFの助成)、日本語学習のレベルアップ及び学習意欲喚起の役割を果たしている。なお、2020年は新型コロナウィルス感染拡大により同弁論大会は中止され、多くの日本語教育機関も一時閉講を余儀なくされたが、2020年9月時点で全ての機関がオンラインでの授業を開始した。今まで地理的事情から、参加出来なかった地方の学生なども取り込み、生徒数は増加傾向にある。
2023年2月時点では、新型コロナウイルスの感染も落ち着き、活発な活動が増えている。また、対面授業も再開し、国立フランシスコ・モラサン教育大学内(UPNFM)にて、元国費留学生のホンジュラス人講師が、24名の生徒を対象に日本語の授業を行っている。
今後は、持続性の観点から、現地人日本語講師の育成を中心としつつ、全体的なレベルアップが求められる。
教育段階別の状況
初等教育
- 《エデンスクール》
- 帰国留学生がスペイン語、英語及び日本語のトリリンガルスクールとして2010年にサンペドロスーラにて開校。
2023年2月時点では、ホンジュラス人講師が、おおよそ10歳以上の児童60人を対象に、45分の日本語授業を週に3回行っている。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
- 《ホンジュラス国立教育大学 テグシガルパ校》
- 同大学外国語学部では、JICA海外協力隊日本語教師隊員により、選択科目のひとつとして週4回日本語クラスが行われていた。しかし、2013年の渡航情報引き上げに伴い、同隊員を含め首都テグシガルパからボランティアが撤退し、一時は同校の日本語クラスは閉鎖を余儀なくされた。2016年、同大学言語センターにて元国費留学生により日本語クラス(単位認定なし)が再開講された。
学校教育以外
テグシガルパ市、サンペドロスーラ市において一般向け日本語講座が開講されている。
- 《ホンジュラス帰国留学生の会(AHBEJA)》
- 2014年5月より、ホンジュラス帰国留学生の会(AHBEJA)の運営で、元国費留学生を講師として、ホンジュラス国立自治大学内にて日本語教室が実施されている。同組織は、国内最大規模の日本語教育機関であり、ホンジュラスにおける日本語教育の中核的な役割を目的に、2015年度にJFのさくらネットワークに登録された。
2023年2月時点で、レベルに応じて12週に及ぶ日本語教室が、年に3回行われている。総生徒数は104名。 - 《在サンペドロスーラ日本名誉総領事館》
- 2004年6月に開講しその後閉講したが、元国費留学生を講師として、2017年2月より再開講された。
2023年2月現在では、1名のホンジュラス人講師が23名の生徒に対して、レベルに応じてオンラインで週に4回(金曜日・土曜日)日本語の授業を行っている。 - 《精神文化院》
- 2002年にホンジュラス人講師により、開講された。2017年以降は、開講当時よりも講師数及び生徒数が増えており、ホンジュラス人講師により日本語教室が開講されている。
2020年よりオンライン授業を開始し、2023年2月時点で、74名の生徒に対して9人のホンジュラス人講師が日本語の授業を行っている。例年と比べると学生数は減ってきている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
6-3-3制。
初等教育が6年間(6~12歳)、前期中等教育が3年間(13~15歳)、後期中等教育が3年間(16~18歳)。高等教育は大学4年間。
義務教育は、初等教育の6年間。
教育行政
初等、中等、高等教育が教育省の管轄下にある。
言語事情
公用語はスペイン語。
私立学校では英語、スペイン語のバイリンガル教育を行っているところが多いが、現地社会内での英語の普及は極めて限られている。また、ガリフナ語などの少数言語を第一言語とし、スペイン語を第二言語とする、先住民系民族及びアフリカ系民族が存在する。
外国語教育
公立学校では、公用語のスペイン語で授業が行われており、英語教育は前期中等教育から開始されている。
一方、バイリンガル教育を行っている私立学校においては、幼児教育から後期中等教育までバイリンガル制度が敷かれている。バイリンガル教育を行う私立学校は年々増加している。また、私立学校の一部においては、英語、スペイン語、フランス語の3か国語を授業に取り入れているところもある。
なお、高等教育の授業はスペイン語で行われている。
外国語の中での日本語の人気
ホンジュラスの外国語学習人口は英語が圧倒的に多く、第2位にフランス語、第3位にドイツ語と並び、日本語は第4位に位置する。
2008年から2009年にかけて、テグシガルパ市及びサンペドロスーラ市の複数の大学(合計7大学)において中国語講座が次々と開講されたこともあり、中国語学習者が急増した。
また、2018年からホンジュラス教育大学テグシガルパ校の言語センターに韓国人の教師が派遣されており、韓国語学習者も増えてきている。
なお、2018年から2019年にかけて、ドイツ語の授業を展開する機関の増加に比例し、ドイツ語の生徒数が急速に増えた。
一方2020年3月に入り、新型コロナウィルスの感染拡大による政府の外出禁止令に伴い、公共教育機関が一斉に閉鎖・休校となった。さらに、一部ではネイティブの教師が全員帰国するなどの例もあり、多くの外国語教育機関に影響があった。
2020年は、多くの機関がオンライン授業を開講し、対面式の授業を再開している外国語教育機関はなかった。外国語全体を見ると学習者数は減少した。
2023年2月時点では、国立フランシスコ・モラサン教育大学内(UPNFM)にて、元国費留学生のホンジュラス人講師1名が、24名の生徒を対象に対面授業を行っている。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
日本語教師が作成した独自の教材及びJFから寄贈された日本語教材を使用している。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
日本語教師が作成した独自の教材及びJFから寄贈された日本語教材を使用している。
学校教育以外
日本語教師が作成した独自の教材及びJFから寄贈された日本語教材を使用している。
教師
資格要件
初等教育
元国費留学生が日本語教師になっている。
中等教育
日本語教育の実施は確認されていない。
高等教育
元国費留学生が日本語教師になっている。
学校教育以外
元国費留学生が日本語教師になっている。
日本語教師養成機関(プログラム)
日本語教師養成を行っている機関、プログラムは確認されていない。JICA海外協力隊員が派遣されていた当時は、国立教育大学テグシガルパ校においてJICA海外協力隊員が現地人教師の指導にあたっていた。 2016年以降は、国際交流基金プログラムの日本語教育機関教師研修に参加し、教授法を学び、教師会にフィードバックしている(2016年以降は、ホンジュラス国内から、おおむね毎年1名が採用され日本で研修を受けている)。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
日本人教師の雇用は確認されていない。
教師研修
中米のJICAボランティアの日本語教師は、JFメキシコ日本文化センターがメキシコ市で開催している日本語教師短期研修会に出席している。またJF事業により日本語教師長期研修に参加した者が、その経験を生かし、他の日本語教師に対して、年に2回程度セミナーを開催している。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
2009年に「中米カリブ日本語教育ネットワーク」が設立された。中米・カリブ地域の日本語教師がセミナーを開き、意見交換及び短期研修を行い、同地域における日本語教育の発展を目指している。
最新動向
2009年に設置された「中米カリブ日本語教育ネットワーク」にホンジュラスから代表者が参加し、情報収集の上、国内の各日本語教育機関の教師へ伝達している。また、日本語弁論大会入賞者の中米カリブ地域大会への出場について、教師会での協議の上、ホンジュラス代表を選出している。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
JF、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
(情報なし)
評価・試験
共通の評価基準や試験は確認されていない。日本語教育略史
2001年 | テグシガルパのホンジュラス国立教育大学の教室を会場として、JOCVによる日本語教室開設 |
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2002年 | サンペドロスーラ市の精神文化院において日本語講座開講 |
2004年 | サンペドロスーラ市の日本名誉総領事館においてJOCVによる日本語講座開講 ホンジュラス国立自治大学サンペドロスーラ校にて、JOCVによる日本語クラス開講 |
2008年 | ホンジュラス国立教育大学サンペドロスーラ校にて、JOCVによる日本語講座開講 |
2010年 | 元国費留学生により、サンペドロスーラ市にエデンスクール開校 |
2013年 | 危険情報の引き上げによりテグシガルパ市及びサンペドロスーラ市からJOCV撤退、日本人講師による日本語教室閉鎖 |
2014年 | 元国費留学生(ホンジュラス人)を講師として迎え、国立自治大学内で日本語教室を再開講 |
2016年 | ホンジュラス国立教育大学テグシガルパ校言語センターにて、ホンジュラス人教師1名による日本語教室開講 |
2017年 | 在サンペドロスーラ日本名誉総領事館においてホンジュラス人教師1名による日本語講座開講 |
2020年 | 3月時点で、新型コロナウィルスの影響により、一時、全日本語教育機関が休講となったが、9月時点で全機関がオンラインでの授業を開始した。11月時点で、対面式の授業を行っている機関はない。 |
2023年 | 2月時点で、国立フランシスコ・モラサン教育大学内(UPNFM)にて、元国費留学生1名が、24名の生徒を対象に対面授業を行っている。 |