ラトビア(2022年度)

日本語教育 国・地域別情報

2021年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
3 5 175
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 73 41.7%
高等教育 72 41.1%
学校教育以外 30 17.1%
合計 175 100%

(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 ラトビアにおける日本語教育は、日本語通訳・翻訳者であるエドガルス・カッタイ氏が、1987年に国立ラトビア大学外国語学部の講義室を借りて、日本語コースを開始したことに始まる。同コースは、夜間に学習を希望する社会人及び学生を対象としていたが、その後も社会人を対象として地道に続けられた(2011年3月から休講中)。さらに、同コースに在籍した知日家のブリギッタ・クルーミニャ女史が、1990年に日本語夜間塾を独自に開塾した。同塾は主に子どもを対象としていたが、中には学生、社会人も見られた。同塾は1993年9月からリガ市の公立の全日制「日本語文化学校」に昇格した。
 1996年に、ラトビア大学外国語学部東洋学科に日本語コースが設置され、日本語文化学校の卒業生のための進学の受け皿となった。その後、同コースは1999年9月より日本学プログラム(The Bachelor Program of Japanese Studies)と改名され、2000年8月から同大学の外国語学部は現代言語学部に、2006年から東洋学科はアジア学科に名称が変更され、更に学部の統合により2010年度以降、人文科学部アジア学科となっている。
 1999年、クルーミニャ女史は日本語文化学校を離れ、新たに私立の日本語塾「言語」を設立。
 2001年9月には、日本語文化学校はリガ市の学校再編のため統廃合となり、「リガ文化学校」と名称変更した。  2004年、ラトビア文化アカデミー附属ノルディックセンターに日本語講座が新設された。その後、「ノルディスティカ」として独立し不定期に開講していたが、現在は廃止。2016年には、ラトビア文化アカデミーの東アジア異文化コミュニケーションプログラムの学生を対象に日本語の3年間の学士プログラム選択することができたが、現在は他の国に焦点を当てたプログラムが行われている。

背景

 外国語習得の有用性は広く認識されており、親日感情を背景として、子どもに日本語を学ばせたいと考える親も少なくない。
 ラトビアにおける日本語学習熱は、主にラトビア人による俳句集の翻訳(1980年代ラトビアで発刊)が火付け役となっている。また、ラトビア国民の間では、日本の伝統武道(空手、合気道、柔道など)に対する関心が高い。一般的には日本の高水準の技術や伝統文化といった対日イメージが、親日感情の基礎になっている。

特徴

 日本語は特殊語の一つとして扱われ、他の外国語(特に英語、フランス語、ドイツ語)と比較すると学習者の数は少ないが、年々希望者が増えている。学生のみならず一般市民の間でも日本語学習に対する関心が高い。
 学習動機としては、日本の文化・伝統への関心、日本語そのものへの語学的興味などであるが、アニメ・マンガなどの日本のポップカルチャーへの関心から日本語を学習し始める人が増えてきている。
 問題点としては、英語のように日常的に使用する機会は少なく、また、日系企業の進出がないことから、日本語を使う就職先を見つけるのは難しく、日本語の習得を活かせる場が非常に限られているということである。また、日本語能力試験がラトビアで受験できないため、学習到達度を把握することが難しい。

最新動向

 ラトビアにおける日本語学習者の学習目的も多様化しており、中でも、漫画やアニメなど、日本のポップカルチャーをきっかけに学習を始める若年層が多い。UniConというイベントが2013年からコロナ禍を除き毎年開催され、漫画やアニメの他、コスプレを中心に盛り上がりをみせている。
また、2002年より毎年1回日本語弁論大会が開催され、日本語学習者が日頃の学習成果を発表する場となっている。
 一方、現在のラトビアにおける日本語教育を巡る問題点は、日本人教師が極めて少ないことである(ラトビア大学とリガ文化学校に1名ずつ)。今後、何らかの理由で日本人教師が退職した場合、日本人教師は一人もいなくなり、日本語教育を終了せざるを得ない状況にある(そのほかの日本語教育機関(講座)では、いずれも外国人教師が教授している) 。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 ラトビアには、教育科学省で定めた正規の科目の他に、選択科目を特別に教えている公立学校がいくつかある。その選択科目として唯一日本語を教えているのがリガ文化学校(10学年から12学年)である。そこでは第3外国語として日本語が教えられている(4時間/週)。日本語熱の高さは、漠然とした日本への関心が親の世代のみならず子どもの間にも浸透していることの現れである。

高等教育

 1997年には、ラトビア大学に日本語学科が開設されたが、1999年には日本学コースに再編された。日系企業の進出がない状況のため、日本語を使う仕事に就くのは難しいが、それにもかかわらず入学希望者は多い。同学科の入試科目に日本語はない。日本の文部科学省、大学間のプログラムなどで、毎年数名の学生が日本に留学している。早稲田大学、関西外国語大学、関西学院大学、筑波大学、山形大学、国際教養大学、文京学院大学、北海道大学、徳島大学、神奈川大学、兵庫教育大学との間において、大学間協定を結んでいる。

学校教育以外

 リガ市では一般向けの日本語講座が3か所ある。1999年の秋に開設された私立の日本語塾「言語」(週3~4回、各クラス合計約30名)の日本語・文化コース、2019年夏に開設された私立の日本語塾「Learn Japanese Riga」(生徒約30名)、私立学校「Tornakalns Private Secondary School」で2020年10月に開設された日本語クラス(約10名)である。また、独学か個人教師などについて、個人的に日本語を学習している人はかなりいると思われるが、正確な人数は把握できない。

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 6-3-3制。
 基礎学校(日本の小学校、中学校に相当する)は9年間で、1年生から6年生までの「第1段階」(7~13歳)と、7年生から9年生までの「第2段階」(13~16歳)に分けられる。中等学校(日本の高校に相当する)は3年間(16~18歳)。高等教育機関は、大学(4年間)、カレッジ、アカデミー、技術短期大学(2~4年)、職業専門学校(2~3年間)など。
 義務教育は5歳から16歳(日本の幼稚園(2年間)から中学校3年までに相当する)までの11年間。

教育行政

 初等、中等、高等教育機関のほとんどが教育科学省の管轄下にある。

言語事情

 国語(公用語)はラトビア語。
 憲法は、ラトビア語が唯一の「公用語」である旨定めている。他方、総人口の約41%の比重を占めている他民族の永住者(ロシア人、ベラルーシ人、ウクライナ人など)の間では、主にロシア語が使用されており、国民全体に占めるロシア語を解する人々の割合は非常に高い。
 2022年9月、同年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受け、国会でラトビア語のみによる教育への移行を規定した改正教育法が可決され、2025年までの3年間で就学前教育及び初等教育をラトビア語のみで行うよう段階的に移行することが定められた。

外国語教育

 一般的には3年生で開始され、第一外国語は原則として英語(必修)。
 6年生で第二外国語をロシア語、ドイツ語、フランス語などの欧州言語から選択するのが一般的。
 ただし、外国語教育に重点を置く傾向がある学校では、小学1年生より外国語教育が開始されている。こうした学校は、英語、フランス語、ドイツ語、北欧諸国語などをそれぞれ専門とし、第一外国語としてそれらの言語が教えられている。また多民族国家であることから、民族学校が多数あり、ロシア語、ポーランド語、ウクライナ語などで一部の授業が行われている。
 2022年11月、ラトビア教育・科学省が12学年までは第2外国語の学校教育をEUの公用語又は教育分野の国際条約により定められている言語に限定することを計画中である旨発表した。日本はラトビアと教育分野の協定を締結していないが、学校教育では第3外国語も教えることが可能で、第3外国語の教育に関しては第2外国語の様な規制はない。

外国語の中での日本語の人気

 日本語は特殊語の一つとして扱われ、他の外国語(特に英語、フランス語、ドイツ語)と比較すると学習者の数は少ないが、学生のみならず一般市民の間でも日本語学習に対する関心が高い。他方、日本語と並ぶのが中国語であり、孔子学院による講師の派遣や教材の支給など、教育支援が充実している。また、2016年には韓国の世順学堂がリガ市に設立されており、韓国文化の人気の高まりの中で、韓国語学習者の増加も想定される。今後、日本語学習を実施する各教育機関に対する支援の拡充を行わなければ、後れを取ることが懸念される。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 10年生から『みんなの日本語』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)を用いた文法の学習と話すことに重点を置いた授業を交互に行っている。

高等教育

 初級のコースでは、『初級日本語 げんき』坂野永理ほか(ジャパンタイムズ)、中級以降では、『An Integrated Approach to Intermediate Japanese 中級の日本語〔改訂版〕』(ジャパンタイムズ)や『KANJI LOOK AND LEARN』(ジャパンタイムズ)を用い、国際交流基金日本語教授法シリーズの『中・上級を教える』を参考に教師が独自に作ったものや副教材などを適宜併用している。

学校教育以外

 主に、教師が独自に開発した教材を使用している。

IT・視聴覚機材

 初等・中等教育機関においては、インターネット、コンピューターを授業において、例文提示、文化事例、時事問題などの紹介で使用することがある。
 大学においては、インターネット上のクラウドに、学生は課題の動画を提出したり、教師と学生間で学習ツールを共有したりしている。またGoogle formなどを使い、日本人にアンケートをとる課題も課している。 CDDVDの利用については、教材の付録としての聞き取り用のCDJF開発の『DVDで学ぶ日本語 エリンが挑戦!にほんごできます。』を副教材として必要とする場合に、適宜使用している。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 ラトビアの教員資格に準じて、大学で日本語教育教員養成課程を履修・修了していること、日本語教育能力検定試験に合格した者、これらと同等以上の能力があると公的に認められる者。

高等教育

 修士号(取得場所は問わない、専門は日本語教育または日本語学)

学校教育以外

 特に日本語教師としての資格要件はない。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムはない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 2023年1月現在、ラトビア大学に1名、リガ文化学校に1名の日本人教師が雇用されている。

教師研修

 国内には、特に現職日本語教師のための研修制度はない。
 訪日研修としては、JFの日本語教師研修がある。

現職教師研修プログラム(一覧)

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 2003年にラトビア日本語教師会が発足したが、2023年現在は解散し、日本語教育関係のネットワークはない。

最新動向

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 JFJICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムは確認されていない。

評価・試験

 共通の評価基準や試験は確認されていない。

日本語教育略史

1987年 国立ラトビア大学外国語学部の講義室にて夜間、社会人及び学生を対象にエドガルス・カッタイ氏が日本語コース開設
1991年 ブリギッタ・クルーミニャ女史が子どもを対象に日本語夜間塾を独自に開塾
1993年 クルーミニャ氏による夜間塾がリガ市の公立の全日制日本語文化学校に昇格
1997年 ラトビア大学外国語学部東洋学科に日本語コース設置
1999年 同日本語コースを日本学プログラム(The Bachelor Program of Japanese Studies)と改名
ブリギッタ・クルーミニャ女史が日本語塾「言語」を設立
2000年 ラトビア大学外国語学部が現代言語学部に改称
ブリギッダ・クルーミニャ女史によるラトビア語・日本語辞典刊行
2001年 日本語文化学校がリガ市の学校再編のため統廃合となり、リガ文化学校と名称変更
2002年 ラトビア日本語弁論大会の実施を開始
2003年 ラトビア日本語教師会が発足(その後解散)
2004年 ラトビア文化アカデミー附属ノルディックセンターに日本語講座新設 (その後廃止)
2006年 ラトビア大学現代言語学部東洋学科がアジア学科に改称
ブリギッタ・クルーミニャ女史による和良学習漢字辞典を発行
ラトビア大学にて一般公開講座開講(現在休講中)
2010年 ラトビア大学現代言語学部が統合により人文科学部に改称、アジア学科は変更なし
2011年 エドガルス・カッタイ氏が開設した日本語コース休講
2016年 ラトビア文化アカデミーのラトビア・東アジア異文化コミュニケーションプログラムに日本語講座追加
日本語講座のプログラムは2019年に終了
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