ニューカレドニア(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
36 | 56 | 3,426 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 0 | 0.0% |
中等教育 | 3,262 | 95.2% |
高等教育 | 104 | 3.0% |
学校教育以外 | 60 | 1.8% |
合計 | 3,426 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
1982年に、ボドゥー中学、ラペルーズ高校、ヌメア商工会議所で、第二外国語として日本語教育開始。当初、日本語教師は1名のみであったが、1985年以降、徐々に日本語教育が拡大・発展している。2010年には27機関3000人の学習者がいたが、2015年に2090人と減少、その後微減傾向にあるが学習者数は安定している。また、日本語は外国語の中で英語、スペイン語に次ぎ3番目に学生が多く、引き続きもっぱら第二外国語として教えられている。
教師に関しては、これまでは正規教員になるための方法として、中等教育教員資格の「カペス・レゼルベ」という形で認められていたが、2017年からは、ポスト数が非常に限られた中等教育教員資格(カぺス・エクステルヌ)日本語部門に合格しなければならなくなった。2014年よりニューカレドニアの教育省は在日本フランス大使館を通じ日本語指導助手2名を公募し、毎年7か月の任期で雇用している。また、2021年1月から中等教育機関にフランス本国から2名の日本語教員が派遣されている。
背景
1892年(明治25)に初めてニッケル労働移民として日本人男性600名が渡航して以来、1919年までに5,000名を超える移民がニューカレドニアに渡った。定住した移民は農業・漁業・商業・建設業などさまざまな職業に就き、戦前のニューカレドニア社会の中産階級の構成員となった。しかし、戦争の勃発によって強制収容所生活や日本への強制送還を余儀なくされ、現地で築いた家族との生活を奪われることになる。戦後、日本とニューカレドニアの関係は少しずつ回復し、日本政府は1972年に首都ヌメアに日本国名誉総領事館を置いた。1992年には「日系人移民百年祭」が、2012年には「日系人移民120年祭」が開催された。
このような100年以上にさかのぼる日本との歴史的な関わりを背景に、約8000人の日系人がいるほか、ニューカレドニア日本親善協会(アミカル・ジャポネ)など日本とニューカレドニアとの交流を推進する市民大体も複数存在する。また、姉妹都市提携をしている山形県鶴岡市とラフォニア市を始め、市レベルでの交流も盛んである。ニッケル産業や観光のほか、市民の草の根の交流を中心とした日本との関わりの深さが日本語教育の発展を支えてきたと言える。ヌメア-東京/大阪間は直行便が就航しており、日本は大人気の家族旅行の行先となった。ニューカレドニアの人々にとって日本はヨーロッパよりも身近になってきているともいわれる。
特徴
ニューカレドニアでは、開始当初から中等教育を中心に日本語教育が実施されてきた。上記の日本との関係の深さに加えて、若年層を中心にマンガやアニメなどの影響で発展している。第二外国語としての学習が主で、中学校、高校の他、職業訓練校などでも教えられている。
最新動向
フランス本土と同様、2021年のバカロレア改定とそれに伴う新プログラムの導入は、中等教育現場に大きな影響を与えている。今回の改定は外国語科目にとどまらず、中等教育後期(高校)の全科目に渡る大きな改革であり、また評価方法も高校3年終了時の最終試験のみから、高校2年次、3年次の学期中に複数回行われる継続評価(contrôle continu)へと変更される。
このバカロレア改革の影響で、ニューカレドニアでは2020年には第三外国語科目が廃止されることになっており、これまでヌメアのラペルーズ高校では第三外国語としても日本語選択できたが、2019年の卒業生を最後に第2外国語科目のみとなった。
また、観光科、コマースインタナショナル科、アシスタントマネージャー科の職業専門コースでは、数年前まで別々のコースごとに日本語のコースが設けられていたが、現在一つのクラスで一斉に授業を受けることになるなど、クラス数縮小の影響も出ている。
なお、2019年7月に10年ぶりに日本語科目の準視学官がフランス本土よりニューカレドニアを訪れ、多くの日本語の授業を見学するとともに、2021年のバカロレア改定とそれにともなって2020年から本格的に始まる新しいプログラム(カリキュラム)についての情報提供が行われた。
教育段階別の状況
初等教育
(詳細不明)
中等教育
中等教育段階では、公立私立の中学校・高等学校で、第二外国語として日本語教育が行われている。第二外国語プログラムの到達目標は高く、表記学習に時間を要する日本語においても、同じ時間数でスペイン語やイタリア語と同様の達成レベルが求められている。中等教育機関が日本語コースを導入、維持する理由の一つとして、「優秀な学生の集まるクラスをつくる」というものがある。一方、後期中等教育段階の職業教育機関である職業リセ及び技術リセで、就職に役立てるために日本語を学ぶ学生も少なくない。ホテル・レストラン関係のコースでは日本語科目が必修になっている。
高等教育
ニューカレドニア大学では1990年に日本語教育が開始された。日本語学科の開設には至っていないものの、第二外国語科目の選択の一つとして日本語を学ぶことができる。
学校教育以外
ヌメア市には民間語学学校JAPONICAがあり、外国人向けのフランス語クラスとともに、日本語クラスが開講されている。プライベートレッスンも行われている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
フランス本国に準じる。
教育行政
共和国高等弁務官管轄下にある、教育省所属の学区長が、初等から高等教育に至る総てを統括。
言語事情
ニューカレドニアでは公用語のフランス語のほか、周辺の島々から移住してきた人々の言語やクレオール言語、そして8の先住民の言語(オーストロネシア語族オセアニア語派に属する言語)が話されている。フランスの植民地として統合されて以降、フランス語に統一する方向で言語政策がとられてきたが、フランスを含めた欧州全体の言語政策の影響もあり、1992年以降はフランス語を母語としない学習者には、原則として現地語とフランス語の二言語教育が行われている。
外国語教育
第一外国語は英語(必修科目)。第二外国語、第三外国語は中学2年から実施されており、スペイン語、日本語、ドイツ語、イタリア語、メラネシア語2種、ギリシア語、ラテン語の中から選択履修する。
外国語の中での日本語
2012年より「ニューカレドニア・日本高等学校ネットワーク」(COLIBRI)に、ニューカレドニア高校5校が加盟しており、日本でフランス語を学んでいる高校生とニューカレドニアで日本語を学んでいる高校生同士の交換留学プログラムに参加している。
必修科目の英語以外の外国語の中では、フランス語に比較的近く、学びやすいという理由でスペイン語を選択する学習者が最も多い。
大学入試での日本語の扱い
フランス本国と同様、バカロレアの科目として日本語が採用されている。
学習環境
教材
初等教育
(詳細不明)
中等教育
教師自作の教材が奨励され、多く使われている。『エリンが挑戦!にほんごできます。』国際交流基金、『まるごと 日本のことばと文化』国際交流基金(三修社)、ウェブサイト『まるごと+』のコンテンツも活用されている。
また、以下の教材がニューカレドニアで制作されている。
山田由美子著
『日本語を話そう Manuel pédagogique de japonais Classe de Seconde』
『日本語を話そう Livret de japonais Classe de Première』
『日本語を話そう Livret de japonais Classe de Terminale』
Sandra Leilloux, Atsuko Delrieu, Yoshie Poncheele共著『Lexique Japonais – Français』
Atsuko Delrieu著 『Lexique Français Japonais』
Anne Le Bail著 『Livret de Kanji』
Anne Le Bail et Katsuko Le Bail共著 『Cahier d’exercices en Japonais - Hiragana Katakana』
Yann Pennanec’h著 『Manuel de Kanji Tome 1』、『Manuel de Kanji Tome 2 』
高等教育
フランスの大学で発行された日本語教科書『Parlons japonais』東伴子など。
学校教育以外
(詳細不明)
IT・視聴覚機材
(詳細不明)
教師
資格要件
初等教育
(詳細不明)
中等教育
フランス本国に準じる。大学卒以上。Licence(学士号)、あるいはMaîtrise(修士号)。正規教員ポストに就くには、フランス本国同様Agrégé(中等教育上級教員職)、あるいはCAPES(中等教育教員職)が必要である。なお、現在日本語の正規教員ポストに就いている者は、bi-admissible à l’Agrégation (正規教員資格を持つ者で、アグレガシオンの筆記試験に2回以上合格している者)1名のほか、全てCAPES résérvé(准中等教育教員職)保持者である。
高等教育
フランス本土に準ずる。
学校教育以外
日本語を趣味、教養として習える民間語学学校、プライベートレッスンがある。
日本語教師養成機関
日本語教師養成を行っている機関、プログラムはないが、定期的に教育委員会がコンピューターを駆使した教材の作成、教授法などのセミナーを企画している。2017年3月に初めてJF派遣専門家(パリ日本文化会館日本語教育アドバイザー)による現職教師向けセミナーが実施された。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
現地雇用優先のため、原則としてアシスタント以外はフランスの教員資格を持たない日本人教師を雇用しない。期限付きの臨時講師としての雇用は行われている。条件や役割はノンネイティブ教師と同様である。
教師研修
2018年からニューカレドニア教育委員会の主催で、新しいバカロレアに関する研修が年に数回実施されている。これは、科目別の研修であるが、日本語のみではなく外国語科目として実施されている。
日本語科目単独の研修としては、2019年7月に国民教育省の日本語科目担当の準視学官がフランスからニューカレドニアを訪れ、新しいバカロレアに関する研修を実施した。
現職教師研修プログラム(一覧)
なし。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
「ニューカレドニア日本語教師会」が2002年に視学官の提唱で生まれ、活動を行っていたが、ニューカレドニアにおける日本語教育と日本文化の普及のためよりいっそうの積極的な活動を目指し、2008年からは「ニューカレドニア日本文化日本語普及会」が組織され、アソシエーションとして登録された。ニューカレドニア日本文化日本語普及協会の活動は勉強会の実施、教科書作成のほか、日本祭りなどの行事の企画、学校交流の促進、習字などの文化行事への派遣など。
最新動向
2016年現在、教育省所属の学区長に任命された日本語視学官を中心に、日本語教育情報を掲載したウェブサイト(Le Japonais en Nouvelle Calédonie-Site disciplinaire et culturel)が運営され、広く教師間の情報共有、ネットワーク促進に貢献している。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
国際協力機構(JICA)からの派遣
JF、JICAからの派遣は行われていない。
その他からの派遣
民間日本語学校(日本語教師養成機関)から関係機関へ派遣
日本語教育略史
1982年 | ボドゥー中学、ラペルーズ高校、ヌメア商工会議所にて日本語教育開始 |
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1998年 | 中等教育段階に、准中等教育教員資格(カペス・レゼルヴェ)が設置される。 |
2002年 | ニューカレドニア日本語教師会発足 |
2008年 | ニューカレドニア日本文化日本語普及会設立 |
2012年 | 「日仏高等学校ネットワーク」のニューカレドニア部門発足 |
2014年 | 公立中等教育機関への日本語指導助手派遣プログラム開始 (ニューカレドニア教育委員会管轄) |
2016年 | フランス政府が中等教育教員資格(カぺス・エクステルヌ)に日本語部門を新設することを決定 |
2017年 | 中等教育教員資格(カぺス・エクステルヌ)日本語部門の第一回試験が実施される |