パラグアイ(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
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13 | 59 | 1,262 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
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初等教育 | 413 | 32.7% |
中等教育 | 244 | 19.3% |
高等教育 | 1 | 0.1% |
学校教育以外 | 604 | 47.9% |
合計 | 1,262 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
パラグアイにおける日本語教育は、日本人移住者の子弟を対象に、日系人コミュニティ運営の「私塾」(学校教育以外の機関)として、戦前移住の入植と同時に1936年より開始された。その後、戦後移住においても各移住地の造成に伴い、それぞれの日本人会運営の日本語教育施設「日本語学校」が建設された。1970年代初期より、JFやJICAから日本語普及活動事業への支援を受けることにより日本語学習熱が高まり、学習内容も小学校レベルから中学・高校レベルへと拡充された。
しかしながら、近年、一世の減少、非日系人との婚姻の増加、日系家庭の少子化、家庭内における日本語会話の減少などに伴い、日系社会における日本語学習者はやや減少傾向にある。日系社会では日本語と日本文化の継承を目的にした「国語としての日本語教育」と「外国語としての日本語教育」が並存している。
一方で、外国語としての日本語教育に関心を持つ非日系人の日本語学習者の数が年々増加しており,外国語としての日本語を正規の教科に導入した教育文化省公認の私立小・中学校が設立されるなど、学習者層の広がりがうかがえる。 また、首都アスンシオンでは非日系人の日本語学習者の増加を受けて、無償資金協力で設立された「パラグアイ・日本・人造りセンター」、「北海道人会はまなすセンター」、アスンシオン日本人会運営の「JAPAN BUNKA」で主に非日系人を対象とした日本語クラスが開かれている。
非日系人の間で子どもの将来における有用性を鑑みて、日本語学習に関心を寄せる親が増えつつある。また、例年「日本語能力試験」が全国レベルで開催されており、近年、都市部におけるN5・N4受験者の増加が目立つ。これも日本語クラスを受講する非日系が増えてきている表れである。
背景
パラグアイの日本人移住者は長きにわたりパラグアイの農業の発展に寄与し、社会的に高い評価を得ており、また、各分野にわたる日本政府の多大な開発援助に対する評価もあり、パラグアイは親日国として知られている。 パラグアイの主な日本語学習者である日系人子弟は、先進国として目覚ましい発展を遂げ世界に貢献する日本に対し、日系人として誇りを抱いている。彼らは父祖の国の言葉を継承し、日本語学習を通じて日本をよりよく知りたいという願望をもっており、日本とパラグアイを繋ぐ存在であることを自覚している。
ただし、前述のように、日系世帯での日本語使用時間の減少とともに、日本語を母語としない年少者のなかには、日本語学校で日本語を勉強する子ども自身の動機付けが薄くなってきているという事実もある。
一方、パラグアイ人は、戦後目覚ましい経済成長を遂げた日本に憧憬の念を抱き、日本との親善、交流を深めるため、国際理解・異文化理解の一環として、子どもに日本文化に関する知識を得させようと、日本語教育を行っている学校に子弟を入学させる親が多く、日本語を学習するパラグアイ人の数が増加傾向にある。また、青少年層では日本のアニメやポップカルチャーの人気が高く、その影響から日本語や日本文化に興味を持つようになるケースも多い。
特徴
日本人会運営の日本語学校で学習する日系人子弟は、日系人として日本語を話し、読み書きができる段階(日本語能力試験N2程度)に到達することを目指して学習しているため、初等・中等教育レベルまでが最も盛んで、学術的なレベルで日本語・日本文化を深く研究する高等教育機関などは存在しない。
非日系人の日本語学習者は、日本文化に関する知識を得て、日本との親善・交流を深め、将来何らかの形で訪日したいという願望があり、週に1~2回の授業を受ける程度の初歩段階ではあるが、日本語能力試験を受験する学習者も増えており、日本語学習の質的向上がうかがわれる。
最新動向
特になし。
教育段階別の状況
初等教育
バイリンガル校である私立日本・パラグアイ学院、私立ニホンガッコウ、私立サクラ日本教育センターの3校で日本語が必修科目となっているほか、私立三育学院で日本語が選択科目となっている。
中等教育
バイリンガル校である私立日本・パラグアイ学院、私立ニホンガッコウ、私立サクラ日本教育センターの3校で日本語が必修科目となっているほか、私立三育学院で日本語が選択科目となっている。
高等教育
私立ニホンガッコウ大学の全学部で日本語が必修科目となっている。
学校教育以外
日系人子弟を対象とする日本語教育は、各地域の日本人会が組織的に運営する私設の日本語学校で行われている。小・中学校の生徒は、現地校でのスペイン語による各教科の勉強と並行して日本語を学習しているが、高校レベルになると時間の制約もあり、日本語学習を継続する者は少ない。また、幼稚園を併設する日本語学校も多く、幼児期から日本語・日本文化に触れる機会を与えている。
日系人子弟を対象とする日本語学校以外には、日本の援助で建設された「パラグアイ日本・人造りセンター」、パラグアイの北海道人会が運営する「はまなすセンター」並びにアスンシオン日本人会運営の「JAPAN BUNKA」において非日系人を対象とした日本語クラスが開かれている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
9-3制。
初等教育が9年間(6~15歳:義務教育)、日本の高校にあたる中等教育が3年間(16~18歳:人文科学及び専門技術科(商業、工業、農牧などの各コース)の2分野に分かれる)。高等教育機関は大学及び高等師範学校。
教育行政
学校教育機関は、教育科学省の管轄下にある。
言語事情
主要言語はスペイン語。公用語はスペイン語及びグアラニー語。
幼稚園、小学校、中学校ではスペイン語及びグアラニー語を必修科目として勉強する。
先住民の言葉であるグアラニー語は主に地方において広範に使われており、大半の市民がスペイン語とグアラニー語を解する。
外国語教育
高校では英語が必修。日本語を含めその他の外国語教育については特別の規定がない。
外国語の中での日本語の人気
アニメやドラマの影響などで、日本語は高い人気を得ているが、英語と比較すると学習者は少ない。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
(下記【中等教育】を参照のこと。)
中等教育
日本において日本語教師自身が学習した際に使用した、外国人向け日本語教育用教材を使用するほか、初心者用として絵入りテキストなど、独自の教材を開発したり、パラグアイ日系・日本人会連合会全パラグアイ日系人教育推進委員会の開発した教材を利用したりしている。また、日本語学習帳(マス目ノート3種)を日本語教師の会とパラグアイ日系・日本人会連合会が共同作成し、日本語学習者に提供している。
高等教育
(上記【中等教育】を参照のこと。)
学校教育以外
日系子弟対象の日本語学校では、主に日本の株式会社光村図書出版の国語教科書が使用されている。また、外国語としての日本語教育教材としては、パラグアイ日系・日本人会連合会全パラグアイ日系人教育推進委員会において、シニアボランティアの指導のもとに各校の教師によって構成された教材開発実務委員会で開発・作成された初級教材『にじ改訂版』と、その副教材が使用されている。また、JICA開発教材『にほんごドレミ』、『にほんごジャンプ』及び『にほんごチャレンジ』も併用している。その他、「ひろこさんのたのしいにほんご」(凡人社)を使用している学校もある。
「パラグアイ・日本 人造りセンター」では、JF寄贈教材のほか、初心者用として絵入りのテキストなど、独自の教材を開発している。
IT・視聴覚機材
教師が情報収集や教材作成にインターネットを利用している他、授業でパワーポイントを使う教師も多い。また、学習者が日本語サイトから情報収集したり、日本の同年代の学習者とメールのやりとりをしたりすることもある。
教師
資格要件
初等教育
(下記【中等教育】を参照のこと。)
中等教育
日本語教師としての資格要件は特にない。日系人の場合は日本語能力がN2、もしくはN1、パラグアイ人の場合はN3以上のレベルが一般的な基準である。大学で教育学を専攻した教師は数名いるが、教員経験がない場合もある。
高等教育
(上記【中等教育】を参照のこと。)
学校教育以外
日本語教師として特に資格要件はないが、パラグアイ人教師の場合は日本語能力試験N3以上の合格者、日系人教師の場合は日本語能力試験N1合格者、日本人教師の場合は日本の高校または大学卒業者の有資格者が一般的な対象基準になっている。
日本語教師養成機関(プログラム)
教師養成としては、JICAの日系人を対象にした日系研修がある。そのうち、日本語教師を対象にしているのは以下のとおりである。
- 1.日系継承教育研修(教師育成Ⅰ):継承教育を担う教師としての基礎知識、継承教育・言語(発達)教育の基礎理論を理解、実践方法、継承教育におけることばに関する知識及び指導技術、継承教育における文化的活動の基礎的指導技術
- 2.日系継承教育研修(教師育成Ⅱ):継承教育・言語(発達)教育の応用理論を理解し、実践方法、継承教育におけることばに関する知識及び指導技術、初級コースのコースデザイン方法、文化的活動の指導計画作成方法及び指導技術
- 3.日系継承教育研修(教師育成Ⅲ):継承教育を担う教師として継承教育に関する知識を深めるとともに、初中級及び中上級レベルの指導に関する知識・技術及び学校運営や人材育成に関する基礎的な知識の習得
- 4.日系社会の幼児教育:幼児教育の理論、及びものごとを論理的に構築し、実験や観察に基づいて実証していく力を習得する。
- 5.特別支援教育:特別支援教育についての知識と実践力を習得し、当該国の教育現場に還元できるよう講義及び実習で研修する。
そのほかには、JFのプログラムである、「日本語教育指導者養成プログラム」と「海外日本語教師日系人研修プログラム」などがある。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
パラグアイの日本語教育機関に常勤、または非常勤として正規に雇用されている日本人教師の割合は、全教師の3割程度で、日本語教育(初級、中級、上級)の上級を担当している。
教師研修
国内研修としては、パラグアイ日系・日本人会連合会・全パラグアイ日系人教育推進委員会が主催する日本語教師合同研修会(年1回)、幼児教育分科会(年1回)、教師研修会(基礎:年5日間×2回で1コース、応用:年1回)。2018年度はJICA助成金の関連もあり、研修内容が大幅に見直された。そのため、検討の末、重要かつ実施可能と考えられる研修のみを行うことに決定する。以前、行っていた校長・教務・運営者研修に関しては、2017年度より、JICAシニアボランティアの連合会配属が見直されたため、不在の状態でのプログラムの構成や講師などの確保が難しくなったため、2018年より不定期開催となっている。
訪日研修としては、JF及びJICAの日本語教師研修がある。
現職教師研修プログラム(一覧)
パラグアイ日本人会連合会・全パ日系人教育推進委員会 主催
- 1.日本語教師合同研修会:年1回、各日本語学校が持ち回りで開催。日本語教師が一番多く出席する研修である。内容としては教材研究やグループ活動、講義、また、JICAなど研修に参加した教師による簡単な研修報告など。
- 2.幼児教育分科会:年1回、幼稚園を持つ各日本語学校が持ち回りで開催。幼稚園教師を対象に、日本語を使用した実技指導や研究保育など、幼児教育の基礎知識の向上を目的としている。
- 3.教師研修会 基礎コース(前半・後半):6.5日間、年2回行われる。日本語教師としての基本技能、日本語文法、日本文化など幅広い知識を得ることを目的としている。
- 4.教師研修会 応用コース:研修内容が見直され、2018年より基礎コースに続く研修としてリニューアルする。より実践的な知識・技術の習得を目標とする。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
パラグアイ各地の日本人会が運営する、主に日系人子弟対象の日本語学校は、パラグアイ日系・日本人会連合会・全パラグアイ日系人教育推進委員会のもとに連携を保持している。これは2002年度に、従来の教師を中心にした「パラグアイ日本語教育研究協議会」と連合会「教育推進委員会」が合併したものである。
全パラグアイ日系人教育推進委員会はパラグアイにおける日系日本語教育の統轄機関として、各種教師研修の企画実施、教材開発のほか、年刊機関誌『みおつくし』の発行、スピーチコンテスト、作文コンクール、日本語能力試験など各種日本語普及事業を通し、パラグアイにおける日本語教育の推進活動を行なっている。また、毎年行われるパラグアイの全日系人教師を対象にした合同研修会と、年2~3回開催の各学校長を集めた運営委員会を開催し、「パラグアイにおける日本語教育はどうあるべきか」などをテーマに活発な意見を交換し合い、問題点の検討・協議を行なっている。
また、全パラグアイ日系人教育推進委員会とは別に、教師の親睦・交流を目的とした「教師会」が組織されている。
最新動向
世代の交代・社会的変化などにより、日系人に対しての「父母・母国から受け継ぐ継承日本語」、また非日系人に対しての「外国語・外国文化としての日本語」を教えることの並立を可能にするため、今後、二世・三世教師の育成が重要性を増してくる。そのため、2008年より年に2、3回、教師経験が豊富な教師数名が自発的に勉強会を行い、現地で行われる日本語教師研修会の講師となれるよう研鑽を積んでいる。2019年には、勉強会のまとめが製本され、関係者への販売を開始した。さらに近年、非日系人への日本語・日本文化の浸透とともに、非日系人日本語教師も見られる。ここ数年の基礎コース研修では、教師経験ゼロや、こういった非日系教師が受講することが多く、研修内容を大幅に見直すことになった。
2020年は新型コロナの世界的流行により対面での授業ができなくなったことにより、オンライン授業を取り入れることになった。今後、オンライン授業だけでなく、テクノロジーを活用した授業、教材などのニーズが増えていくことが予想されるため、必要な技術や知識も教師育成のための研修内容として組み込んでいる。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣
なし
国際協力機構(JICA)からの派遣
なし
その他からの派遣
詳細不明
シラバス・ガイドライン
統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムはない。
評価・試験
JFが実施する日本語能力試験が行われている。小学部・中学部卒業には、それぞれ日本語能力試験のN3、N2合格を条件とする日本語学校もあるが、全ての日本語教育機関に共通した評価基準や試験はない。
日本語教育略史
1936年 | 日本人移住地ラ・コルメナで日本人移住者子弟を対象に、日系人コミュニティ運営の私塾にて日本語教育開始 |
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1956年 | 富士日本語学校開校 |
1957年 | ラ・パス日本語学校開校 |
1961年 | サンタロサ日本語学校開校 |
1963年 | イグアス日本語学校開校 |
1965年 | チャベス日本語学校開校 エンカルナシオンが私塾として開校 |
1966年 | エンカルナシオン(私塾)がエンカルナシオン日本語学校に改称 |
1967年 | アスンシオン日本語学校開校 |
1976年 | 1956年頃に開校された3校が統合し、アマンバイ日本語学校として開校 |
1988年 | ストロエスネル文化協会日本語学校開校(現エステ日本語学校) |
1993年 | ニホンガッコウ開校 日本語教育(正規科目)開始 |
1994年 | カピタンバード日本語学校開校 |
1998年 | サクラ学校開校 |
1999年 | 1961年ピラポ移住とともに各地区で日本語学校が開校され、そのピラポ地区4校の日語校が統合して社団法人ピラポ日本人会立「ピラポ日本語学校」がスタート |
2001年 | 日本・パラグアイ学院にて日本語教育(必修)開始 サクラ学校にて、日本語教育(正規科目)開始 |