ペルー(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
13 | 81 | 3,761 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 1,156 | 30.7% |
中等教育 | 998 | 26.5% |
高等教育 | 10 | 0.3% |
学校教育以外 | 1,597 | 42.5% |
合計 | 3,761 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
1908年(明治41年)カニエテ市、サンタ・バルバラ耕地内に教師1名、生徒9人でペルー初の日本人小学校が創設された。1920年(大正9年)には首都リマに里馬日本人小学校が創設され、最盛期には約1800名の生徒が在籍した。そのほかにも、カヤオ、ワチョ、チンボテ、ワンカヨなどにおいて1941年までに50校の日本人小学校が創設された。これら学校は文部省に在外教育施設として認可され、日本とペルーの正規の指導要領にもとづき、日本語とスペイン語で教育が行われた。
1930年代にペルー政府により排日政策がとられ、太平洋戦争勃発後の1942年、連合国側であったペルー政府により、公使館、ペルー中央日本人会が閉鎖され、多くの日本人小学校が閉鎖、没収された。一部学校では学校名を日本語からペルーの名前に変更したり、校長をペルー人に変えるなど、存続に向けた努力も行われたが、戦前から現在まで残っているのはカヤオ日本人小学校(現ホセ・ガルベス校)、1928年4月18日創立の時習寮(現サンタ・べトリス幼稚園)の2校のみである。
戦後、1965年に接収した日本人小学校の補償としてペルー政府から1万㎡の土地がペルー中央日本人会に提供され1967年に同地に日秘文化会館が落成した。1984年にはペルー中央日本人会は二世が中心となりペルー日系人協会(APJ)と名称を改めた。また、1948年創立のラ・ビクトリア日系人学校、1972年創立のラ・ウニオン校をはじめ、各地において小中学生を対象とした学校(いわゆる日系校)が創設され、政府の認定校(公教育機関)となって現在に至っている。
背景
2019年に日本人ペルー移住120周年を迎え、現在ペルーの日系人は約10万人強となった。ペルー日系人協会(APJ)日本語普及部を中心に日本語教育普及活動を行っている。現在は継承語としての日本語教育でなく、外国語としての日本語教育である。前述の日系校では、日本語のみならず日本文化や年中行事、習慣などの指導にも力を入れている。
一方で、それら日系校卒業生のほとんどが十分な日本語能力を得ることができず、日本の大学への進学選択は容易ではない。また、大学で日本語を勉強してもほとんどの場合、単位を取得することは不可能な上、クスコなどの観光都市の一部例外を除き国内において日本語を生かした職につくのは容易ではないのが現状である。
特徴
2022年12月現在、大小含めて30以上の日本語教育機関がある。
日本語学習者は、幼稚園レベルから大学レベルまで幅広く、近年はオンラインでの日本語指導がされるようになっている。
日本語学習者は初級レベルが多く、日系人、非日系人、老若男女を問わない。主な学習動機として、(1) 日本語そのものへの興味、(2) マンガ・アニメなどの日本のポップ・カルチャーへの関心、(3)日本への留学などがあげられる。マンガやアニメなど、日本のポップ・カルチャーへの関心から学習を開始する若年層が多数を占める。また、学習者が力を発揮する機会として、年2回の日本語能力試験や全国日本語弁論大会などがある。
最新動向
ペルー日系人協会(APJ)日本語普及部を中心に、日本語教師の育成を目的とした日本語教師養成講座や南米スペイン語圏日本語教育会議、日本語教授法バーチャル研修会が定期的に開催されている。
教育段階別の状況
初等教育
下記【中等教育】参照のこと。
中等教育
2022年12月現在、リマではラ・ウニオン総合学校やラ・ビクトリア校など、日系人が設立し、ペルー教育省の公認を受けた3つの小中学校において第二外国語として日本語が教えられている。これらの学校では、既に非日系人の子弟が過半数を超えている。
高等教育
2022年12月現在、リマ市内の国立サンマルコス大学、国立ラ・モリーナ農業大学、私立サン・イグナシオ・デ・ロヨラ大学(USIL)の語学センターで日本語講座を開講している。USIL大学以外では正規の単位取得科目にはなっていない。また、南部タクナ市のホルヘ・バサドレ大学語学センターでも日本語が開講されている。一般的に、日本語教育を実施している大学が少ないため、日本語に関心を持つ多くの大学生は、民間の日本語教育機関で日本語を学んでいる。
学校教育以外
リマ市、トルヒーヨ市、クスコ市の民間学校で日本語教育が行われている。ペルー日系人協会(APJ)が開講している日本語コースは特に生徒数が多く、2022年12月現在、約700名が在籍している。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
6-5制。
初等教育が6年間(6~12歳)、中等教育(日本の中学、高校に相当)が5年間。計11年間が義務教育である。
教育行政
教育機関のすべてが教育省の管轄下にある。
言語事情
公用語はスペイン語。
地方ではケチュア語やアイマラ語なども公用語となっている。
外国語教育
公立の小学校では英語は必修ではないが、一部の学校では教えている。私立学校では、学校により英語のほかに、フランス語、ドイツ語、イタリア語などが幼稚園の時から教えられている。大学では、一般に、第二、第三言語として、なんらかの外国語を習得する(中~上級レベルに到達する)ことが求められるため、学生は大学の語学センターや民間学校で外国語を学ぶ。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
下記【中等教育】参照のこと。
中等教育
日本で出版されたテキストから必要な部分もしくは使用可能な部分を選択、または自作教材を使用している。
- 『まるごと 日本のことばと文化』(三修社)
- 『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』スリーエーネットワーク(スリーエーネットワーク)
- 『こどものにほんご』子どもの日本語研究会(スリーエーネットワーク)
- 自作教材
高等教育
- 『みんなの日本語初級Ⅰ、Ⅱ』(前出)
- 『まるごと 日本のことばと文化』(三修社)
- 自作教材
学校教育以外
ペルー日系人協会(APJ)
『みんなの日本語』と『学ぼうにほんご』
特別コースのみ『まるごと日本のことばと文化A1』
IT・視聴覚機材
多くの日本語教育機関にはコンピューターが設置されている。数も使用方法も機関によってかなり違いがあるが、基本的なプリント教材作成、インターネットからのダウンロード、CD、DVDなどの視聴覚教材を使ったクラス活動はどの機関でも行われているようである。
教師
資格要件
初等教育
下記【中等教育】参照のこと。
中等教育
特に資格や条件は必要ない。
養成方法としては、ベテラン教師が研修やセミナーまたは実体験で得た知識をもとに、若手教師を養成している。
高等教育
語学センターでの日本語講座では特に資格や条件は必要ない。
学校教育以外
特に資格や条件は必要ない。
日本語教師養成機関(プログラム)
ペルー日系人協会(APJ)日本語普及部が日本語教授法バーチャル研修会を実施している。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
2022年12月現在、13名の日本人の日本語教師がペルー各地で活動している。
教師研修
ペルー日系人協会(APJ)日本語普及部が日本語教授法バーチャル研修会を実施している。
訪日研修としては、JF及びJICAが実施している日本語教師研修がある。
現職教師研修プログラム(一覧)
なし。
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
リマ市在住の日本語教師を中心とした「ペルー日本語教師会」があり、弁論大会への協力、日本語能力試験への監督員の派遣、セミナーの開催、教材の貸し出しや相談の随時受け付けなどを行っている。
日本語教師派遣情報
国際交流基金からの派遣(2023年3月現在)
なし
国際協力機構(JICA)からの派遣(2022年10月現在)
JICA海外協力隊
ペルー日系人協会日本語普及部 1名
その他からの派遣
(情報なし)
日本語教育略史
1908年 | カニエテ市に日本人小学校が設立 |
---|---|
1920年 | リマ日本人小学校設立 |
1920~30年代 | 各地に日本人小学校50校が設立 |
1942年 | リマ日本人小学校閉鎖、他のほとんどの小学校が閉鎖 |
1948年 | ラ・ビクトリア校設立 |
1967年 | 日秘文化会館落成 |
1972年 | ラ・ウニオン校設立 |
1976年 | ペルーで初めての日本語教育短期巡回講師による研修会実施 |
1978年 | ペルー日本語教師会設立 |
1991年 | ペルー日系人協会(APJ)日本語普及部設立 |
2015年~ | 南米スペイン語圏日本語教育連絡会議を開催 |