トリニダード・トバゴ(2022年度)

日本語教育 国・地域別情報

2021年度日本語教育機関調査結果

機関数 教師数 学習者数※
1 1 150
※学習者数の内訳
教育機関の種別 人数 割合
初等教育 0 0.0%
中等教育 0 0.0%
高等教育 3 2.0%
学校教育以外 147 98.0%
合計 150 100%

(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月に国際交流基金(JF)が実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。

日本語教育の実施状況

全体的状況

沿革

 トリニダード・トバゴの日本語教育は、1993年に国立語学学校(NIHERST SCHOOL OF LANGUAGES、当地高等教育を担当する国の機関)で始められた。講座は一般成人のみを対象とし1998年まで続けられたが、学習者数の減少、講師の都合などの諸事情により廃止され、その後、1999年9月に西インド諸島大学(the University of the West Indies : UWI)セント・オーガスティン校言語学習センター(Centre for Language Learning : CLL)で、社会人を対象とした日本語講座が開講した。2013年に大学の単位取得可能な科目として正式に認定され、また、2018年からは同センターにおいて日本語能力試験の実施や日本語スピーチコンテストが開催されるなど、日本語教育普及に係る取り組みが強化されている。2019年8月、同センターは 20年以上の長きに亘る日本語教育の貢献が認められ、外務大臣表彰を受賞した。
 2022年9月現在、同センターでは入門・初級・初中級の3レベルが設けられており、アニメ、まんが、J-POPへの関心や、JETプログラムへの参加希望者の増加などを反映して、日本語学習者数は年間150人前後とここ数年一定数を維持している。
 西インド諸島大学以外では、民間の語学学校が2019年まで日本語講座を開講していたが、現在は海外の語学学校と提携し、オンライン講座を提供している。

背景

 日本との歴史的関係が浅く、地理的要因もあり、両国間の人物交流・往来は限定的であるが、政府レベルにおいては、在トリニダード・トバゴ日本国大使館及びJFを通じた文化交流事業、JETプログラム(The Japan Exchange Teaching Programme)、国費外国人留学生制度などの事業が実施され、日本のイメージは良好で日本への憧れを持つ者は多い。また、国内では日本車が多く使用されており、日本からの中古車や中古部品の輸入も活発なことから、日本に親近感を持っている者は少なくない。西インド諸島大学(UWI)セント・オーガスティン校は外国語教育を非常に重視しており、日本語講座はその一部として歓迎されている。

特徴

 同センターにおける学習者は大学生及び20代から30代の社会人が中心で、規模はさほど大きくない。学習の動機としては、日本語そのものに対する興味のほか文化的興味が多く挙げられる。日本のアニメや漫画を始めとするポップ・カルチャーに対する興味から日本語を学び始める学生が最も多いが、柔道・剣道・空手などの武道を習っていることがきっかけで日本語に興味を持つ学習者もいる。JETプログラムへの参加、日本への旅行、留学、就職などを動機とする学習者も増えている。

最新動向

 西インド諸島大学セント・オーガスティン校では、2022年9月からCEFR A1レベルの第二言語習得が卒業必要条件となったため、スペイン語・フランス語・中国語とともに日本語も必要単位(3単位)を取得できる講座が新しく開設された。2022年9月現在、入門レベルの2クラスが設定されている。
また、2020年3月から2022年7月までオンラインで授業を行ってきたが、大学が正式に対面授業を再開した後もオンライン授業を希望する学習者が多かったため、対面コースと並行してオンラインコースも開設した。周知が進めば、国内のトバゴ島及びカリブ海地域の他の国々からの受講が期待できる。
学生数は、2020年9月から2022年4月まではコロナ禍の影響で減少したが、同年9月に新講座が開設されたこともあり、現在はコロナ禍以前のレベルにまで回復している。

教育段階別の状況

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 1999年9月から、西インド諸島大学人文教育学部言語学習センターにおいて日本語講座が開設されており、2022年9月現在、第二外国語の選択科目としての授業と社会人向けの授業が行われている。

学校教育以外

 オンラインで日本語講座を開講している語学学校がポートオブスペインに1校ある。

    

教育制度と外国語教育

教育制度

教育制度

 トリニダード・トバゴは元英国領であり、教育制度は英国の制度に基づいている。教育段階別の対象年齢は、原則、幼稚園が3~5歳、小学校(7年制)が5~11歳、中・高等学校(7年制、5年制及び2年制)が11~18歳、及び大学(18歳~)となっている。
 1966年制定の教育法により、義務教育は6~15歳までが対象となっている。

教育行政

 教育省が教育行政全般を管轄している。高等教育機関としては、西インド諸島大学、トリニダード・トバゴ大学(UTT)などの総合大学のほかに政府がCommunity College制度を設けている。職業教育はCommunity Collegeを通じて行われている。

言語事情

 公用語、主要言語とも英語であるが、日常的には地元の方言(トリニダード・トバゴクレオール語)が使用されている。。英語以外の言語としては、パトア語が一部の地域で話されているほか、ベネズエラを中心とするスペイン語圏からの移民によりスペイン語が、中国人コミュニティ内で中国語が話されている。また、スペイン語話者の増加の影響で、交通標識にスペイン語が併記されている。

外国語教育

 2005年、当時の政府によってスペイン語が第一外国語に指定され、その後、現政府によって中等教育における履修科目に組み込まれた。これはスペイン語を国語としている国々、特にベネズエラが地理的に非常に近いこと、また、英国領になる前からスペイン人が当地を訪れていた歴史的な理由に基づいている。
 その他、フランス語、ヒンディー語(国民の約35%はインド系のため)などの教育が行われている。西インド諸島大学言語学習センターでは、ポルトガル語、ドイツ語、アラビア語(2022年9月現在休講中)、中国語、ヨルバ語、韓国語(2022年9月現在休講中)などのコースも設けられている。

外国語の中での日本語の人気

 上記外国語教育環境などの関係もあり、スペイン語、フランス語が多く学ばれているが、西インド諸島大学言語学習センターにおける年間日本語講座受講者数が、2000年の20人弱から2013年には100人を超え、2019年には150名を超えたことから、日本語の人気が確実に高まってきていることが分かる。現在、同センターの日本語学習者数は、スペイン語、フランス語についで多い。しかしながら、2013年秋には同大学内に孔子学院が開設されるなど中国語の存在感が高まっており、韓国語とともに受講希望者が増加している。

大学入試での日本語の扱い

 大学入試で日本語は扱われていない。

学習環境

教材

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 『まるごと 日本のことばと文化』 独立行政法人国際交流基金(株式会社三修社)が使われている。

学校教育以外

 民間の語学学校が独自に選択した教材を使用。

IT・視聴覚機材

 西インド諸島大学言語学習センター内に、インターネットが使用できるランゲージ・ラボラトリー、オーディオ、ビデオなどの設備が設置されている。また、2000年には、文化無償資金協力により、当地の国立高等教育院に対して語学学習のための機材が供与されている。

教師

資格要件

初等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

中等教育

 日本語教育の実施は確認されていない。

高等教育

 西インド諸島大学言語学習センターの外国語教師(日本語教師を含む)は、大学卒業の資格、及び外国語教育理論の知識と経験が必要条件となっている。

学校教育以外

 特別な資格要件なし。

日本語教師養成機関(プログラム)

 日本語教師養成を行っている機関、プログラムは確認されていない。

日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割

 西インド諸島大学言語学習センターでは、2022年12月現在2名の日本人教師が非常勤教師として雇用されており、入門レベルから初中級レベルを担当している。

教師研修

 国内では、現職の日本語教師対象の研修は確認されていない。言語学習センター内での語学教師研修や、JF日本語教育専門家による研修、中米カリブ日本語教師ネットワーク主催・JF助成の「中米カリブ日本語教育セミナー」などに参加し、日本語教師としての能力・知識向上に努めている。

現職教師研修プログラム(一覧)

 特になし。

教師会

日本語教育関係のネットワークの状況

 国内では日本語教育関係のネットワークは確認されていないが、西インド諸島大学言語学習センターは、2017年に中米カリブ日本語教育ネットワークに加盟した。これは、中米・カリブ地域における日本語能力と日本語教育能力の向上及び同地域における日本語教師間の交流の場として活動しているネットワークで、月一回の代表者会議への出席、ネットワーク主催の日本語コンテスト開催への協力、日本語教育セミナーへの参加、準備協力などを通して、中米・カリブ地域の日本語教師との交流を図っている。

最新動向

日本語教師派遣情報

国際交流基金からの派遣

国際協力機構(JICA)からの派遣

 JF、JICAからの派遣は行われていない。

その他からの派遣

 (情報なし)

シラバス・ガイドライン

 統一シラバス、ガイドライン、カリキュラムは確認されていない。

評価・試験

評価・試験の種類

 日本語能力試験が年1回7月に西インド諸島大学言語学習センターにおいて実施されている。

日本語教育略史

1993年 国立語学学校(NIHERST SCHOOL OF LANGUAGE)にて一般成人対象の日本語教育開始(~1998年)
1999年9月 西インド諸島大学(the University of the West Indies)にて日本語講座開
2013年9月 西インド諸島大学が日本語講座を正規の単位科目として認定
2018年7月 日本語能力試験実施開始
2022年9月 西インド諸島大学で、日本語が第二言語選択科目となり、それに伴い新講座が開設
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