トルクメニスタン(2022年度)
日本語教育 国・地域別情報
2021年度日本語教育機関調査結果
機関数 | 教師数 | 学習者数※ |
---|---|---|
12 | 56 | 8,865 |
教育機関の種別 | 人数 | 割合 |
---|---|---|
初等教育 | 970 | 10.9% |
中等教育 | 5,375 | 60.6% |
高等教育 | 2,520 | 28.4% |
学校教育以外 | 0 | 0.0% |
合計 | 8,865 | 100% |
(注) 2021年度日本語教育機関調査は、2021年9月~2022年6月にJFが実施した調査です。また、調査対象となった機関の中から、回答のあった機関の結果を取りまとめたものです。そのため、当ページの文中の数値とは異なる場合があります。
日本語教育の実施状況
全体的状況
沿革
トルクメニスタンでは、2007年、ベルディムハメドフ現大統領の命により、アザディ名称世界言語大学(以下、アザディ大学)東洋言語・文学部に国内初の日本語専攻が開設された。当時、同大学にはロシア語をはじめとして、ロマンス・ゲルマン諸語(英、独、仏、西語)、東洋言語(アラビア語、ペルシャ語、トルコ語、中国語)の9つの言語専攻があり、日本語は新たに10番目に開設された。東洋言語・文学部の中では中国語(1995年開設)に次いで5番目に開設された言語である(その後、韓国語とヒンディー語が加わり、2020年現在同大学には12の言語専攻がある。韓国語については、「世宗学堂」が学内でクラスを開講している)。
日本語専攻開設以降、約10年にわたり同大学が国内唯一の日本語教育機関であったが、2015年10月の安倍内閣総理大臣来訪が契機となり、翌2016年度からアザディ大学以外の高等教育機関と、中等教育機関でも日本語教育を開始することが決定した。さらに、日本と理系科目に重点を置いた初等・中等一貫校「アシガバット140番学校」の新設も決まった。
これにより、2016年度よりアザディ大学以外に5つの高等教育機関、12の中等教育機関(5年生~12年生)と1つの初等教育機関(1年生~4年生)で日本語教育が始まった。各機関に配属された教師の多くは、主にアザディ大学卒業生たちである(彼らの多くはそれまで英語教師として初等・中等学校に勤務していた)。2015年まではアザディ大学のみで日本語教育が行われ、学習者数は50人程度、教師数は3~4人程度だったが、2020年10月現在では学習者数が推定で7000~8000人、教師数は35人程度となっている。
初等・中等教育段階では、2016年に1年生(初等教育初年度,140番学校のみ)と5年生(中等教育初年度、140番学校以外)で日本語教育が開始され、毎年順次日本語履修の学年が上がり、2020年度は1年生から9年生まで日本語教育が行われている。また、2020年度からは140番学校の新5年生向けの新たなシラバスが必要となり、140番学校以外の中等教育機関で使用されていた5年生向けの教科書(内容は1~4年生と同じもの)を改訂し、新たに140番学校専用の教科書作成を行うこととなった。2022年には初等・中等教育全ての学年(1年生~12年生)で日本語教育が実施される予定である。
一方、アザディ大学、オグズ・ハン大学を除く高等教育機関では選択科目として日本語講座を開講しており、半年ないし1年のみの履修であるため、学習者数は今後も横ばい状態が続くと予想される。 アザディ大学、オグズ・ハン大学は、それぞれ日本語教師・通訳翻訳者育成、予備教育という役割があるため、学習者数は今後も増加が予想される。
背景
トルクメニスタンでは、高品質で耐久性に優れた日本車や日本製家電製品が人気を博しており、アシガバット市内の半数以上の自動車は日本車(主にトヨタ)である。トルクメニスタン国民は全般に親日的であり、特に日本を技術大国の象徴として認識している傾向が強い。
2000年以降、豊富な天然資源により経済成長を続けるトルクメニスタンとハイテク技術を擁する日本は幅広い分野での協力が可能であるとの認識の下で、両国関係は、政治、経済を中心に急速に発展している。
政治面では、ベルディムハメドフ現大統領が2009年2月に同国首脳として初の訪日を実現。2013年5月には在日トルクメニスタン大使館が開設、同年9月と2015年3月の計3度にわたりに大統領が訪日を実施している。それを受け2015年10月には安倍内閣総理大臣が日本の首相として初めてトルクメニスタンを訪問した。その際、政治、経済、文化など多岐にわたる分野における両国関係の強化及び協力の深化が確認された。翌2016年1月には、在トルクメニスタン日本国大使館(実館)が開設されている。
経済面では、2010年前後から日本企業の大型プラント建設や発電所建設の受注が相次いでいる。先述の安倍首相訪問時には事業規模総額2兆2千億円に上る案件に関する文書に署名が行われた。
このように両国の関係強化が進む中で、トルクメニスタン政府関係者もまた、日本語人材の育成に注目するようになった。2016年度からの日本語教育の急拡大には、こうした背景がある。
特徴
最も学習者数が多いのは中等教育段階であり、全国12の学校で5年生から8年生が学んでいる。これらの学校では、英語、ロシア語に次ぐ第3外国語として日本語が履修されている。初等教育段階(1年生~4年生)では、アシガバット140番学校のみで日本語教育が実施されて いる。高等教育段階で日本語が主専攻として開講されているのはアザディ大学のみである。後述するオグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学は全ての授業を英語または日本語で行うため、入学前に1年間の英語と日本語の予備教育が実施されている。その他の4大学では、選択必修科目として日本語講座が開講されている。
日本語学習理由・目的について、全国を対象とした大規模調査は行われていないが、日本語専門家がアザディ大学の新入生を対象に2017年より独自に「日本語学習の目的・理由」についての調査を行なっている。近年の傾向としては「日本に留学したいから」(75%)「日本語そのものに興味があるから」(70%)「日本に観光旅行をしたいから」(59%)といった具体的な目的を持って入学してくる者が増えてきている。
2020年現在、トルクメニスタンに進出している日本企業は少なく、日本語を活かした主な就職先は、大学や初等・中等学校の日本語教師である。しかし、今後両国の経済関係がさらに強化され日本企業の進出が盛んになれば、新たな就職先が開拓される可能性もある。
また、日本への留学は、協定校との交換留学や、文部科学省の「日本語・日本文化研修留学生」など、限定的である。日本との経済格差に加え、トルクメニスタン政府が大学生の国外への移動を厳しく制限していることもあり、私費による短期・長期留学の実現性は今のところ低い。
最新動向
2020年度は、初等・中等各段階で履修学年が当初の予定通り拡大し、1年生から9年生までが履修している。(ただし、1年生~4年生の初等教育は140番学校のみ)2017年度に比べ履修クラスが増加した学校もあり、学習者数は軒並み増えている。ただ、日本語教育を新たに始めた学校はなく、12校にとどまっている。高等教育段階も、前年度と同じ6機関で日本語講座が設置されているが、実際は激増する学習者数に対し慢性的な教師不足により不開講となっているところもある。
一方、アザディ大学では、2020年度は40人の新入生が入学した(2019 年度は57人、2018年度は30人、2017年度は20人、2016年度は14人、それ以前は毎年10人)。これは、国内の日本語教育が今後拡大していくのに伴い、相当数の教師を輩出する必要があるとの理由である。しかし、実際には大幅な教師の拡充はなく、教師不足にさらに拍車がかかっており、結果として国内の日本語教育全体の質の低下が非常に懸念される状態にある。
また、JETRO「ビジネス短信」によれば、トルクメニスタン政府は観光産業に力を入れてきており、2019年5月にはベルディムハメドフ大統領が日本人観光客向けの入国ビザ発給の手数料を軽減もしくは免除する決定に署名した。今後、徐々に日本人観光客が訪問しやすい環境が整ってくれば、観光業での日本語人材が求められてくる可能性がある。
ここ数年の日本語学習者の増加に伴い、日本への留学や研修、日本語教師採用のための日本語能力証明として日本語の資格試験の重要性が高まってきており、現在トルクメニスタン初の日本語能力試験(JLPT)の2020年12月実施を目指して日本大使館を中心に実行委員会が設立され、準備が行われている。
教育段階別の状況
初等教育(1年生~4年生)
アシガバット140番学校の1校のみで日本語の授業が行われている。当該校では日本語は必修科目であり、週に2コマ(1コマ45分、ただし1年生は35分)開講されている。 2020年度は1年生~9年生が学んでいる。
中等教育(5年生~12年生)
全国の12の中等教育機関で日本語の授業が行われている。下表のように首都アシガバットに4校、アハル州に2校、バルカン州に3校、ダショグズ州、レバップ州、マリ州に1校ずつとなっている。新設校であるアシガバット140番学校以外の11校は、コンテストやテストなどで優秀な成績を収めた実績を持つ学校が、教育省学校局によって選出された。各校とも日本語の授業は週に2コマ(1コマ45分)行われている。2020年度は5年生~9年生が学んでいる。( 2020年度は新型コロナ肺炎対応のため、午前・午後の2部制だった時間割が3部制になり、クラスの人数も最大15名に制限、授業時間も30分に短縮されているため、例年通りのカリキュラムで進むことは非常に困難であると予想される。)
No. | 州 | 都市 | 学校名 | 教師数 |
---|---|---|---|---|
1 | アシガバット | 37番学校 | 2 | |
2 | 61番学校 | 3* | ||
3 | 89番学校 | 3 | ||
4 | 140番学校 | 3* | ||
5 | アハル | ギョクテペ (不開講) |
28番学校 | 0 |
6 | サラフス | 18番学校 | 1 | |
7 | バルカン | セルダル | 10番学校 | 1 |
8 | バルカナバット | 15番学校 | 1 | |
9 | トルクメンバシ (不開講) |
13番学校 | 0 | |
10 | ダショグズ | ダショグズ | 28番学校 | 2 |
11 | レバップ | トルクメナバット | 35番学校 | 1 |
12 | マリ | マリ | 23番学校 | 3 |
* アシガバット140番学校の教師のうち1人は校長を兼任している。
また、教師不足のためアザディ大学の学生4名を非常勤として採用している。
高等教育
2016年度より、先行するアザディ大学に加え、石油ガス大学、運輸交通大学、国際関係大学、国際人文・開発大学、オグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学で日本語の授業が開始された。なお、トルクメニスタンの大学のほぼ全ては首都のアシガバットにある。
No. | 大学名 | 教師数 |
---|---|---|
1 | アザディ名称世界言語大学 | 7 |
2 | オグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学 | 7* |
3 | 国際人文開発大学 | 1** |
4 | 石油ガス大学 | 1 |
5 | 通信情報学大学(2019年改称、旧運輸交通大学) | 1*** |
6 | 国際関係大学 | 0 |
*オグズ・ハン大学の教員は常勤のみであり、このうち1人は筑波大学派遣の日本人である。
**国際人文・開発大学の教員は東京外国語大学派遣の日本人1人のみで、トルクメン人教員はいない。
***アザディ大学非常勤講師が兼務
オグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学は、2015年10月の安倍首相訪問が契機となり2016年9月に新設された、日本型カリキュラムによる工科大学である。開設にあたっては、筑波大学が全面的に協力した。2020年10月現在、筑波大学から派遣されているのは2名(うち、日本語教育担当1人のみ)である。日本語は、予備教育の1年間、そして入学後の4年間実施される。学部では全ての授業が日本語または英語で行われているが、大部分は英語での授業である
国際人文・開発大学には、東京外国語大学Global Japan Officeが設置されている。同オフィスの設置もまた、2015年10月の安倍首相訪問がきっかけである。日本語は、1年間の必修科目として特定の学科(2017年度は国際関係学科など)で履修されている。
アザディ大学、オグズ・ハン大学を除く4機関では、日本語は選択必修科目として1年ないし半年間のみ履修されている。
学校教育以外
アザディ大学に隣接する言語センターで日本語教育が行われている。月曜から土曜まで毎日16:00~18:00と18:00~20:00の2つの時間帯に授業があり、中等学校生、大学生、社会人が学んでいる。授業は各クラスとも週に3回(月水金または火木土)、1回120分で行われている。
教育制度と外国語教育
教育制度
教育制度
2013年度(2013年9月)から、以下の通りの教育年数に改められた。
初等教育:修学年数4年(1年生~4年生)、対象年齢満6歳で入学~9歳
前期中等教育:修学年数6年(5年生~10年生)、対象年齢10~15歳
後期中等教育:修学年数2年(11年生~12年生)、対象年齢16歳~17歳
義務教育期間は上述した累計12年間。
教育行政
初等・中等教育機関、大学を含め全て省の管理下に置かれ、試験日程等の細部に亘り担当省に決定権がある。
2016年に新たに開学したオグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学はトルクメニスタンアカデミーの直轄となっているが、その他の大学は全て教育省直轄または関係する他の省と両方の管轄となっている(例えば、国際関係大学は外務省と教育省、石油ガス大学は石油ガス産業鉱物資源省と教育省など)。
産業界からの人材のニーズを各省が吸い上げ、教育省がとりまとめ、各大学の入学者数に合った予算を教育省が国に請求するという形式ではあるが、実情はかなり異なっている。
言語事情
基本的には多くの学校ではトルクメン語による授業が行われているが、ロシア語による授業が行われている学校も少なからずあり、生徒はどちらの言語で学習したいかを選び入学する学校を決めることができる。また、一部トルコ語で授業をする学校もある。その影響で、大学の新入生はロシア語・トルクメン語のどちらかが第一言語となっており、教師はクラスによって教室言語をどちらにするか判断に迷う場合がある。
外国語教育
トルクメニスタンでは、義務教育課程においてはトルクメン語以外の言語ではロシア語と英語が必修科目となっている。
外国語の中での日本語の人気
外国語の中では、トルコ語やロシア語及び英語の人気が高い。
トルコはトルクメニスタンと地理的に近く、トルコ文化がトルクメニスタンに深く浸透している。また、トルクメン人が査証なしで渡航が可能な国ということもあり、トルコ語が多くの人に学ばれている。
トルクメニスタンは旧ソ連構成国の1つであり、国内で広くロシア語が通じることから、ロシア語も多くの人々によって学ばれている。家庭環境によりロシア語が第一言語の児童もおり、社会で通用する範囲が広いこと、また公文書で用いられるケースが多いことなどを考えれば、ロシア語は外国語というより第二言語の位置づけに近い。
英語は、トルクメニスタンの義務教育課程の必修科目であり、英語教師としての需要もあることから、多く学ばれている。
2016年9月以降、学校教育に日本語と中国語が導入され、上述した3言語以外にドイツ語、フランス語、日本語、中国語が第二または第三外国語として学ばれているが、これらの中では、相対的に日本語の学習者数が多い。
大学入試での日本語の扱い
大学入試で日本語は扱われていない。
学習環境
教材
初等教育
トルクメニスタン教育省の指示により基金の派遣専門家、指導助手、現地トルクメニスタン人日本語教師が共同で開発・編集した小学校用教科書『にほんご1』(1年生用)と『にほんご2』(2年生用)『にほんご3』(3年生用)『にほんご4』(4年生用)を用いている。 教科書は基本的に生徒に貸与となるので、学年が変わると返却しなければならない。そのため教科書への書き込みなどが一切できない。そのため、練習問題等は別途ワークブックを作成するなどの工夫が必要となる。教科書は3年毎に改訂、再出版される。(改訂作業も教科書作成メンバーが行う)
中等教育
上述の小学校用教科書に引き続き中等学校用教科書『にほんご5』(5年生用)、『にほんご6』(6年生用)『にほんご7』(7年生用)『にほんご8』(8年生用)『にほんご9』(9年生用)を用いている。 今後10年生用~12年生用が順次作成される予定。
教科書の扱いについては初等教育と同様。5年毎に改訂、再出版される。(改訂作業も教科書作成メンバーが行う)
高等教育
アザディ大学では、下記の教材を主に使用している。その他の日本語教材を適宜参照しながら、教師自作の教材も併せて使用している。 オグズ・ハン大学の予備教育でも「みんなの日本語」が使用されている。
- 『みんなの日本語 初級Ⅰ』(スリーエーネットワーク)
- 『みんなの日本語 初級Ⅱ』(スリーエーネットワーク)
- 『まるごと 日本のことばと文化 入門~初中級』(三修社)
学校教育以外
アザディ大学に隣接する語学センターでは『みんなの日本語』を用いている。
IT・視聴覚機材
初等・中等学校では教室にコンピューターとプロジェクターが備え付けのところが多く、授業では教科書付属の音声教材の使用、教師が準備した写真等を見せながらの授業も実施されている。大学も設備と利用状況は初等・中等学校とほぼ同様である。
ただし、初等中等学校でも大学でも教室にインターネット接続環境がある施設はごく少数であるため、その場での調べ学習や動画等の利用、双方向のコミュニケーションを取り入れた授業は期待できない。
教師
資格要件
初等教育
【中等教育】の項参照
中等教育
初等教育と中等教育の教師の資格に違いはない。教師の能力を証明するディプロマを取得した者が教師となることができる。ディプロマを取得するためには、大学・高等教育機関で担当科目を専攻する課程を修了し、卒業後2年間の実務義務労働)を終えなければならない。 現在、日本語教師のディプロマを取得できるのはアザディ大学卒業生のみである。
高等教育
アザディ大学の日本語学科では、トルクメン人教師7人が授業を担当している。一般に大学教員になるための資格や教育機関での課程はないが、教師の資格に相当するディプロマ取得者のうち、成績が優秀と認められ、大学からリクルートされた者が指導的立場の大学教員の下で数年間アシスタントを務めて初めて大学講師となることができる。
学校教育以外
アザディ大学に隣接する付属言語センターの講師は同大学の講師以外でも務めることができるが、2017年現在、日本語については他に人材がいないため、同大学の日本語講師が担当している。
日本語教師養成機関(プログラム)
アザディ大学の日本語学科を卒業後に授与されるディプロマには日本語教師の能力を備えているという記述があり、同学科の課程が実質上の日本語教員養成プログラムとなっている。アシガバット市内にはアマン・キケロフ名称教員養成学校という高等教育機関があり、外国語および外国文学のコースもあるが、ここに日本語は含まれていないため、アザディ大学がトルクメニスタン唯一の日本語教師養成機関となっている。
日本語のネイティブ教師(日本人教師)の雇用状況とその役割
2020年10月現在、トルクメニスタンにいる日本語ネイティブ教師は、上級専門家と日本語指導助手を含め4名で、いずれも高等教育機関に勤務している。(上級専門家と指導助手はコロナ禍で日本に帰国、待機中)上級専門家と日本語指導助手が勤務するのはアザディ大学、その他3名は、それぞれオグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学2名と国際人文・開発大学1名である。
オグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学に勤務する日本人教師は、主任講師として授業担当のほかカリキュラム作成やトルクメン人講師たちの取りまとめなどを行っている。国際人文・開発大学にはトルクメン人日本語講師がいないため、カリキュラム作成から授業実施まですべての業務を日本人講師が一人で行っている。
アザディ大学には日本語専攻開設当時から2016年8月まで日本人教師が直接雇用されていたが、2020年10月現在は雇用されていない
教師研修
2015年度より、初等・中等教育機関の日本語教師向け研修が行われている。教育省が日程と参加者を決定、アザディ大学で講師を選定し、担当講師が中心となり研修内容を決定する。2015年度はアザディ大学において4回の研修が実施された。2016年度以降は、主として国民教育大学において実施され、担当講師は国際交流基金派遣の上級専門家と日本語指導助手が中心となっている。
大学講師対象の研修は、2015年度までは年に1回実施されていた。講師は国際交流基金派遣でカザフスタンに赴任していた専門家が出張して務めた。2016年度以降は、上級専門家と指導助手が講師を務め、年に1~2回実施されている。
現職教師研修プログラム(一覧)
トルクメニスタン中等学校日本語教師研修(毎年2~3回)
トルクメニスタン高等教育機関日本語教師研修(毎年1~2回)
教師会
日本語教育関係のネットワークの状況
日本語教育関係のネットワークは存在しない。トルクメン人日本語教師はほぼ全員がアザディ大学出身者で、卒業生ネットワークに近いものがもともとある。しかし、日本語教師としての職務上の情報交換や自主的な研鑽につながるようなネットワーク化の動きはまだない。現状では、トルクメニスタンの公的機関は全て縦割りの行政であり、初等中等教育機関は教育省が、大学は政府の各省庁の管轄となっており、教師が自主的に集まって活動するには、事前に教育省や関係機関に許可を得なければならない。一方で、日本人(日本語ネイティブ)教師は、全員が任期付きの派遣で来ているため、長期間現地に根差した活動を続けていく人材にはなり得ない。また、上記の理由からネットワークの中心となって活動するにも、その都度所轄関係機関からの許可を得なければならない等様々な障壁がある。
最新動向
なし
日本語教師等派遣情報
国際交流基金からの派遣(2023年3月現在)
日本語上級専門家
アザディ名称世界言語大学とトルクメニスタン国民教育大学の併任 1名
日本語指導助手
アザディ名称世界言語大学とトルクメニスタン国民教育大学の併任 1名
国際協力機構(JICA)からの派遣
なし
その他からの派遣
なし
シラバス・ガイドライン
初等教育
2016年度の日本語科目開講に向けて、2015年度中に英語のガイドラインを参照し日本語のガイドラインが作成された。しかしながら、到達レベルの設定、学習時間、進度の見直しをする必要があったため、2016年度に上級専門家と日本語指導助手が中心となって改訂作業が行われた。
中等教育
初等教育と同様
高等教育
高等教育に関しては共通のガイドラインはない。アザディ大学で行われている日本語授業のカリキュラムは以下のとおり。(年度によって若干の違いがある)
講義名 | 1学年 | 2学年 | 3学年 | 4学年 | 5学年 |
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日本語演習 | 462 | 484 | 286 | 228 | |
日本語音声学 | 32 | ||||
語彙論 | 72 | ||||
文法論 | 48 | ||||
翻訳・通訳 | 54 | 96 | 326 | ||
日本語教授法 | 64 | 32 | |||
日本事情 | 24 | ||||
日本語史 | 48 | ||||
特別授業 | 156 | 58 | |||
文体論 | 86 | ||||
日本語・トルクメン語対照 | 130 |
評価・試験
評価・試験の種類
トルクメニスタンでは日本語能力試験(JLPT)が実施されておらず、受験希望者がいる場合には、隣国での受験を余儀なくされるが、学生の出国制限との関係で個人の自由な受験の機会が与えられていなかったが、2020年12月にトルクメニスタン初の日本語能力試験実施が予定されており、その準備が進められている。
2020年10月現在、大学入試等での日本語科目は設置されていない。
日本語教育略史
2007年 | アザディ名称世界言語大学東洋言語・文学部に日本語専攻開設 |
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2012年9月 | アザディ名称世界言語大学の女子学生の日本政府(文部科学省)奨学金留学生試験への受験がトルクメニスタン政府から初めて認められた |
2013年9月 | 筑波大学とアザディ名称世界言語大学間で学術協定締結 |
2015年10月 | 初等、中等学校での日本語科目導入の決定 東京外国語大学と国際人文開発大学間で国際学術交流協定締結 |
2016年9月 | 初等、中等学校での日本語教育開始 石油ガス大学、運輸交通大学、国際関係大学で日本語授業開始 国際人文開発大学に東京外国語大学が日本語教員1人を派遣し、Global Japan Officeを開設 国際交流基金日本語上級専門家1人と日本語指導助手1人をアザディ名称世界言語大学とトルクメニスタン国民教育大学併任で派遣開始 |
2016年10月 | 筑波大学とオグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学間で日本語予備教育支援事業の契約締結 |
2016年11月 | オグズ・ハン記念トルクメニスタン工科大学に筑波大学派遣の日本語教員2人着任 |