米国若手日本語教員(J-LEAP) 13期生 総合報告書
日本語教育の魅力を知った2年間

クランフォード・ハイ・スクール
宮本 菜摘

学生と一緒に成長した2年目

2年目は、日本語2のクラスを1年間担当し、教師として大きく成長する機会をいただきました。
授業の内容や文法を考え、ユニットプラン(授業計画)を作成したり、授業で使うワークシートやプロジェクト課題などの授業教材作成に加え、宿題や試験添削などの成績管理、中間試験と期末試験の作成、学生や保護者への対応など、アシスタントティーチャー(以下、AT)の枠を超えた幅広い業務を一貫して担当しました。
その中で特に難しさを実感したのは、特別な学習プランがある学生や集中することが難しい学生など学習能力やニーズに違いがある学生の学習意欲を維持することでした。
学生の参加意欲を引き出し、集中力を切らさないよう単語学習にかるたや神経衰弱、ビンゴゲームなどを取り入れたり、日本語を学ぶだけでなく文化紹介をユニットに組み込んだりするなど、学生に「日本語が楽しい!」「クラスに来たい!」と思ってもらえる授業づくりを心がけました。そして学生から「日本語のクラスが一番好き」「授業が整理されていて楽しく、ちゃんと勉強ができていると感じる」などポジティブなフィードバックをもらった時、根気よく授業案を練り直し、学生ひとりひとりに向き合った日々の努力が報われたと感じました。
また、25人という大人数のクラスのユニットプランや授業を任せていただくなど、多くの授業を担当する機会をいただけた2年目は、日本語教育や教室環境の作り方、学生との向き合い方をこれまで以上に主体的に考えられるようになった1年でした。そして、自ら課題を見つけて試行錯誤しながら改善しつづけたことで、自立した教師として大きく成長するとともに、学生と共に学び続けることの大切さを実感した1年となりました。

中学生との出会いが教えてくれたこと

2年間を通してさまざまな場所でたくさんの学生と先生方にお会いし、一つ一つの出会いがたくさんのことを教えてくれました。なかでも、同じクランフォード学区にある中学生との出会いが一番印象に残っています。
中学生が日本人である私と交流をして、目をキラキラ輝かせながら話してくれた顔を今でも忘れることができません。そして日本語教育を続けるうえで忘れたくない大切な光景となりました。
1年目に中学校の授業に参加しました。学生は勉強した日本語を使って、たくさんの質問をしてくれました。初めて日本人と話す学生もいて、目を輝かせ、身を乗り出し、いっぱいのエネルギーでたくさん話そうとする学生を見て、「日本人であること」が学生にとっては日本とつながると感じられる特別なインパクトを与えられているのだと実感しました。
2年目には中学校の先生とお弁当ワークショップをしました。プレゼンテーションを一生懸命に理解しようと頑張る学生、卵焼きやかにかまぼこなど初めて見る食べ物を前に興味津々の学生、出身地を聞いてくれて、「ぼくも行きたい!」と言ってくれる学生、そして「ぼくが高校生になった時に、みやもと先生はいないの?」と一緒に日本語を勉強したいと思ってくれる学生など、中学生のうちから日本に興味を持ち、勉強してくれていることに心が温かくなったことを覚えています。そして、これまで日本文化を作り上げ、広げてくれた方々に感謝の気持ちでいっぱいになりました。
中学生との出会いは、改めて日本語教育の意義を教えてくれた機会となりました。そして日本語と日本文化を楽しんでもらえる活動をこれからも続けていきたいという強い思いに繋がっています

日本語のクラスを通して学生の人生を豊かに

2年間、日本から遠く離れたアメリカの東海岸で活動する中で、いつも大切にしていたことがあります。1つは日本の魅力を伝え、日本をより身近に感じてもらうこと。もう1つは日本語のクラスを通して、学生の視野を広げ、人生をより豊かにすることです。
授業では、文法だけでなく、どの教材にも日本の文化や日本での経験について積極的に取り入れることで「日本から来たATだからこそできる授業」を心がけていました。またリードティーチャー(以下、LT)がお休みの際は、学生が日本文化に触れる良い機会だと捉え、さまざまな文化紹介を行いました。
特に2年目は、はんこワークショップやけんだま、ちぎりえなどの体験型の活動を積極的に取り入れました。なかでもはんこワークショップは、想像以上にはんこ文化に興味がある学生が多く、普段集中することが難しい学生も意欲的にはんこ作りを楽しんでくれていたことが印象的でした。学生が一番楽しかった日本語のクラスでの活動としてはんこワークショップと話してくれたり、授業の後に教室にきて「インクパッドはどこで買えるの?」と聞いてくれたりしました。その姿をみて学生の新しい興味や関心を広げることに貢献できたことを感じ、胸が熱くなりました。日本語の授業では言語を学ぶことだけでなく新しい価値観や文化に出会うことができ、学生たちの人生が豊かになる可能性で溢れていることを改めて実感しました。
毎日ATとしてできることは何か、学生の人生を豊かにするために何ができるか試行錯誤しながら学生と向き合ってきた結果、1年間担当した日本語2の半分以上の学生が日本への修学旅行に参加を希望し、手続きを進めてくれました。また今年卒業した4年生の中には、日本へ留学プログラムのある大学への進学を決め、「いつか日本に住みたい」と話してくれました。
少しでも日本を身近に感じてもらい、学生にとって将来の選択肢や可能性を広げるきっかけのひとつになれたのであれば、これ以上嬉しいことはありません。

今後J-LEAPに参加されるみなさまへ

私は日本語教師養成講座を修了後、未経験でJ-LEAPに参加しました。2年間で新しいユニットの作成や日本語2の授業を担当するなど、多くの挑戦の機会をいただき、日本語教師として大きく成長することができたと思っています。でも、最初はLTのことが大好きな学生を前に、一人で授業や文化紹介をした際には思うように盛り上げることができず自信をなくしたこともありました。それでも、毎日少しでも学生を楽しませようと心がけていたことで、少しずつ学生も私に慣れ、一緒に授業を頑張ってくれるようになりました。日々、柔軟性と忍耐力をもって、目の前の学生と向き合い続けていたら、学生にも必ず伝わるのだと実感することができました。
これから派遣されるみなさんも異国での生活やアメリカの教育に戸惑い、悩まれることもあるかもしれませんが、2年は長いようであっという間です。一人の人間として柔軟性と忍耐力が磨かれ、日本語教師として視野と知見が広がる2年間を、存分に楽しんでいただきたいです!
私はJ-LEAPに参加させていただいたおかげで日本語教育の魅力を知ることができ、研究関心を深めることができました。今後はアメリカの大学院へ進学し、日本語教育についてさらに学びを深めていくつもりです。そして、これからも日本語教育を通して学生の可能性を広げ、一人でも多くの学生の人生を豊かにすることに貢献していきたいと思います。

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