米国若手日本語教員(J-LEAP)14期生 年次報告書 「ミネソタ州で広がるつながり、深まる学び」

ハーディング・ハイ・スクール
澁谷 こはる

ミネソタってどんなところ?

ミネソタ州はアメリカ中西部、カナダのすぐ南に位置しています。陸地面積は全米12番目の広さで、日本の本州とほとんど同じ。人口は約583万人(2025年7月)です。州のニックネームは「Land of 10,000 Lakes」で、実際には15,000以上の湖があるそうです。The Great Lakes(五大湖)の一つであるスペリオル湖や、ミネソタからルイジアナまでつながるミシシッピ川があり、四季の移り変わりと自然豊かな環境が特徴です。暑い日は35度以上にもなる夏にはカヤックやビーチバレー、−30度を記録することもある冬にはスキーやアイススケートが楽しめます。北欧系移民の歴史があり白人が人口の約80%を占めますが、近年はソマリアをはじめアフリカ、中東、アジアなどからの難民、移民も多く、言語・文化的な多様化が進んでいます。1955年にはセントポール市と長崎市の姉妹都市提携が結ばれました。なんと日本の自治体と外国の都市との姉妹都市、第1号です。
ミネソタ州はアメリカ国内でも教育水準が高いのですが、決して日本語を学ぶ機会が多いとはいえません。しかし、日本文化やポップカルチャーに興味を持ち日本語を学ぶ意欲のある学習者は多く、高校および大学では複数の日本語プログラムが設置され、日本語補習校が2校あります。また「森の池」というイマージョンキャンプ(学習目標言語のみで生活するキャンプ)には、他州から参加する学習者もいるほどです。

ハーディング・ハイ・スクール

ハーディング高校は1926年に設立されたセントポール市の公立高校で、IB(国際バカロレア)プログラム実施校です。黄緑と赤が印象的な正面玄関から校舎に入ると、世界各国の国旗が飾られたアトリウム、そして日本の庭があります。教師は約100人、生徒は約1,600人。そのうちアジア系の生徒が約57%です。言語学習プログラムも充実しており、日本語に加えてモン語、スペイン語、カレン語、フランス語、ネイティブアメリカンの言語であるラコタ語、ダコタ語、オジブエ語から選択できます。
日本語プログラムは1999年から始まり、現在は日本語1〜5の授業があります。教師は2人、生徒は約160人の比較的大きいプログラムです。ハーディング高校はセントポール公立学校区で唯一の日本語プログラム実施校ですが、学校区の全高校対象のオンライン授業(日本語1〜3)もあり、約50人の生徒がオンラインで日本語を学んでいます。わたしはリードティーチャー(以下、LT)とのチームティーチングで対面およびオンラインで日本語を教えています。授業後のわたしの楽しみは、日本語3、4、5の生徒との「交換ノート」のお返事を読むことです。見開きページの左側にわたしからの質問を書き、生徒はその質問に日本語でお返事を書きます。右側の「ギャラリー」は自由に絵やメッセージをかくページです。生徒との関係性をもっと深めたい!という思いで始めたので、「今日ノートがありますか?」「今日の質問は何ですか?」のような生徒のポジティブな反応がとてもうれしいです。

日本語でつながる、日本文化でつながる

1年目のわたしの目標は、日本語の生徒との関係性を深めること、そしてもう一つ、日本語の教室外でもつながりを広げ、日本のことばや文化、魅力に触れる機会をつくることでした。そのために、LTと相談して月に1日「アドボカシーデー」を設定することにしました。アドボカシーデーには、ハーディング高校の他科目のクラス、普段オンラインで教えている生徒の高校、近所の中学校などを訪問しました。ESL(英語が母語でない生徒向けの英語授業)やモン語のクラスで日本文化体験(折り紙、けん玉、箸で豆掴み、福笑いなど)をしたり、英語のクラスで俳句や4コマ漫画についての授業をしたりしました。勇気を出して日本語の教室から一歩踏み出してみたことで、廊下を歩いていると「こんにちは〜!」と挨拶してくれる生徒も増えていきました。
特に印象的だったのは、世界史のクラスと日本語のクラスで行った千羽鶴プロジェクトです。世界史の授業で第二次世界大戦を扱うタイミングで、戦時中の日本の生活やセントポールと長崎市の姉妹都市関係、千羽鶴を紹介し、生徒たちと折り鶴を作りました。日本語のクラスでも鶴を折り、できあがった千羽鶴はLTが夏季休暇中に長崎へ訪れた際、長崎商業高校にお贈りしました。この活動を通して平和について考え、何かアクションを起こすことの大切さに気づくきっかけになっていたらいいなと思います。

1年目の学びとつながりを土台に、2年目も一歩ずつ

湖や川などの美しい自然、街に立ち並ぶベトナム、エチオピア、インド、ウクライナ、日本などのバラエティ豊かなレストラン、美術館やシアター、ライブハウスなどのアート施設、大変なときはお互いに支え合うコミュニティの強さ。1年前はミネソタのことをほとんど知らなかったわたしですが、この1年でたくさんの魅力を発見しました。
わたしは日本での日本語教育経験はありましたが、外国の日本語教育に一定期間携わるのは初めてでした。派遣先が発表されたときは「わくわく!でも、ちょっとドキドキ!」という気持ちでしたが、LT、同僚の先生方、ホストファミリー、J-LEAPの先輩方、同期、友人、日本や他の国から応援してくれる方々、そして国際交流基金とローラシアン協会のあたたかいサポートのおかげで、充実した1年目になりました。また、他州の学校見学や、全米の外国語教師が集まるACTFL (全米外国語教育協会)の年次大会への参加、森の池や日本関連イベントでのボランティアも、貴重な学びの機会となりました。
2年目の目標は、1年目に築くことができた関係性やつながりをさらに深めること、そして新たなつながりも積極的に広げていくことです。常にオープンマインドでいること、楽しむことを忘れずに、一日一日を大切にしながら一歩ずつ成長していきたいと思います。

  • 教室のプロジェクターを使って挨拶などの授業を行っている。
  • 手書きのイラストや日本語の文字が書かれたノート。
  • ハーディング・シニア・ハイスクールの前に澁谷さんが立っている。
  • 「ミネソタ州セントポール市ハーディング高校の生徒さんより千羽鶴をいただきました!長崎商業高校を訪問するにあたって、授業で初めて折った鶴で準備してくださったそうです!」という張り紙と千羽鶴が掲示されている。
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