米国若手日本語教員(J-LEAP)14期生 年次報告書 「日進月歩!イリノイ州での学びと成長」

ロックポート・タウンシップ・ハイ・スクール
若林 里歩

多様な文化の発信地、イリノイでの日本語教育

アメリカ合衆国の中西部に位置するイリノイ州は、総面積149,997km2、人口約1,270万人の大規模な州です。州都はスプリングフィールドで、第16代大統領エイブラハム・リンカーンゆかりの地として知られています。北東部は高層ビルが立ち並ぶシカゴがある一方、南部や中西部にはトウモロコシや大豆の広大な農地が広がっており、都市と農村の双方の魅力を持っています。音楽ではブルースとジャズ、スポーツでは野球やアメリカンフットボール、さらには即興コメディや近代建築群、美術館など、多様な文化の発信地としても知られています。
日本語教育の規模は、需要や関心は増加傾向にありますが、教育現場は課題を抱えています。実際に、現地の学生向けに公立高校などで日本語プログラムを導入している学校の数はそれほど多くはありません。それどころか、教員の高齢化や後継者不足により、現在開講されているプログラムは縮小や閉鎖の危機にあります。J-LEAPの活動が、イリノイ州および派遣校における日本語教育環境の維持に少しでもつながればと願い、活動する日々です。
現地の学生の多くは、アニメなどのポップカルチャーや日本文化への興味から日本語を履修し始めます。そこから日々の学習を通して学びを深め、日本への旅行、進学や就職などの具体的な目標を持ち、熱心に学びを継続する学生も見られます。

100年の歴史を持つ伝統校でリアルな日本語を!

派遣先のロックポートは、イリノイ州郊外に位置するイリノイ・ミシガン運河の歴史を残す美しい街です。そんな街にあるロックポート高校は100年以上の歴史と伝統を誇る公立高校です。2つのキャンパスに約500名のスタッフと教職員、約4,000名の生徒が所属しており、大規模ではあるものの、地域との連携や学校全体の一体感があるアットホームな学校です。
日本語教育は世界言語のカリキュラムの一環として提供されており、毎年約120名の学生が日本語を学んでいます。プログラムでは単なる文法学習にとどまらず、日本の高校との文通やオンライン交流、放課後の日本文化体験イベントと、リアルな日本語と文化に触れる機会を豊富に提供しています。2026年の春から夏にかけては、横浜の高校との相互訪問プログラムが実施され、学生は日本の学生との交流やホームステイを楽しみました。
この魅力的な日本語プログラムは、私のリードティーチャー(以下、LT)が25年間にわたり、たった一人で拡大・維持してきました。私は2025年の夏にアシスタントティーチャー(以下、AT)として着任し、現在LTとともに日本語教育に携わっています。実体験に基づいた日本文化の紹介やLTが日々の授業で使用しているオリジナル教材のアップデート、個別学習指導や課題の添削など、貢献できる部分を模索しながら日々の業務を担当しています。

日本語教授未経験の私にできること

日本語クラス外でも、さまざまな活動に挑戦しました。ロックポート高校で毎月放課後に行われる日本文化イベントでは、学生に本格的な文化体験を提供したいという思いから、J-LEAPの姉妹プログラムであるJOIコーディネーターを本校に招き、茶道ワークショップを開催していただきました。
アウトリーチ活動としては、近隣の中学校で1日出張授業の機会をいただきました。全6クラス、延べ100名を超える学生を対象にミニレッスンを実施したところ、それをきっかけに、ロックポート高校進学後に日本語の履修を決めた学生が複数名いました。
アドボカシー活動では、在シカゴ日本国総領事公邸での会食にご招待いただき、J-LEAPの活動意義を領事に直接お伝えしました。この交流が実を結び、横浜の高校とロックポート高校の相互訪問プログラムの際には、領事による本校へのご視察が実現しました。さらに、在シカゴ日本国総領事館主催のフォーラムに、J-LEAPとして初の参加も果たしました。そのほか、州外での活動としてミネソタ州のConcordia Language Villages主催の日本語キャンプへ2週間参加しました。
日本語教授未経験の私は、アメリカの日本語教育に自分がどのように貢献できるのかについて悩むこともありました。しかし、1年目を終えた今、周囲の協力を得ながら行動を起こすことで、未経験からでも生み出せる価値や成果があると実感しています。

2年目に向けて新たな一歩を!

1年目は、教育現場での実践を通じて、アメリカの教育方針や環境に順応していく毎日でした。初めはLTの指導のもと、試行錯誤の連続でしたが、1年目を終えた現在では、少しずつ自信と余裕をもって授業をリードできるようになりました。何よりも、指導そのものを楽しめるようになったことに大きな成長と喜びを感じています。また、自身の知識や経験を活かして言語・文化教育に尽力すると同時に、アメリカ文化について、学生から多くのことを教えてもらいました。LTや生徒と互いに楽しく学び合える素晴らしい環境の中で、自身の指導力を高められたことに心から感謝しています。
2年目は、これまでに築いた学生とのつながりと1年目の経験を活かし、学生一人ひとりの個性や背景に一層寄り添った授業づくりを目指します。単に予定された内容をこなすだけでなく、学生の反応や様子に目を配り、状況に応じて指導法を柔軟に調整できる力を身につけていくことが目標です。
日本語クラス外の活動では、イリノイ州の日本語教育環境を知るにつれて、日本に触れる機会やリソースが届きにくい郊外に、より貢献したいという思いが強くなりました。ロックポート高校の学生と本校の周辺地域コミュニティへ、日本の魅力を届ける機会を創出するために、残りの派遣期間も私にできるアプローチを続けていきます。

  • 若林さんともう1名の現地女性が、お揃いのTシャツを着てピースサインをしている。
  • 浴衣姿の若林さんがスライドの写っているホワイトボードの前に立っていて、こどもたちが挙手をしている。
  • テーブルに若林さんのほか男女5人が席につき、パソコンを囲んでディスカッションをしている。
  • ロックポート・タウンシップ・ハイ・スクールの屋内で若林さんが演壇に立って発表をしている。
What We Do事業内容を知る